ニコン Z fc|小型でクラシカルな外観×最新技術=旅にぴったりなミラーレス一眼
はじめに
Z fcは、ニコンZ 50に続いて発売されたDXフォーマット(APS-C)のミラーレス一眼カメラですが、何よりもまずそのクラシカルな外観に魅了された方は多いのではないでしょうか。筆者もそのうちのひとりです。今回は「連れて歩くだけで写欲の上がる」そんな本機とともに長崎を訪れる機会を得たので、実際の使用感を旅先での写真とともにお伝えします。
小型軽量と独立ダイヤルによる使いやすさ
今回は本機(質量:約445g ※)とともに標準ズームレンズであるNIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR(約135g)と、望遠ズームレンズNIKKOR Z DX 50-250mm f/4.5-6.3 VR(約405g)の2本を持参したのですが、トータルで約985g、なんと驚異の1kg以下。メイン機として使っているZ 6IIがカメラ本体だけで約705g(※)あることを考えると、この軽量さはなるべく荷物を軽くしたい旅にはピッタリの装備と言えます。
※バッテリー及びメモリーカードを含む
個人的にはZ 50と比較してカメラ本体が少し大きい印象でしたが、実はZ fcの方が5g軽いという点は驚きでした。グリップはありませんが、フラットな本体は機内持ち込み用のバッグでの収まりも良く、またすんなりと取り出すことができて、空港で搭乗を待つひとときや機窓からの景色も気軽に撮ることができました。
窓の外にブロッケン現象が!慌ててカメラを取り出してパチリ。機内でも手元に置いておけるサイズというのは非常に重要です。
搭乗までの待ち時間に、飛行機を真横から撮影できるスポット(待合スペース)へ。
本機に標準ズームレンズの組み合わせだと見た目がかなりコンパクトなので、レストランやカフェでの食事の撮影も仰々しくなくスマートに行える点がメリットと言えます。
本機はNikon FM2の外観を踏襲したデザインにより、露出補正とシャッター速度、そしてISO感度の設定は、それぞれカメラ上部に独立したダイヤルが設けられています。これにより変更したい設定にダイレクトにアクセスできるので、ダイヤルの位置さえ感覚で覚えてしまえばファインダーを覗きながらの設定変更が容易に行えます。私は日頃から動きのある被写体もAモードのままで撮影してしまうことが多いのですが、希望のシャッター速度になるようにISO感度で微調整……そんな撮り方もとても操作がしやすく感じられました。
ローアングルでのタテ位置撮影がしやすいバリアングルモニター
Z fcはZシリーズ初のバリアングルモニターが搭載されたことで、ローアングルでの撮影でヨコ位置のみならず、なんといってもタテ位置が非常に撮りやすくなったことも特筆すべき点のひとつ。今回はたくさんの猫たちと出会ったのですが、このバリアングルモニターが大活躍してくれました。
使いやすくなった瞳AFと動物AF
現在はZシリーズのどの機種でも(一部機種はファームアップにより)瞳AFと動物AFを使用することが可能です。しかし、機種によってはAFエリアモードでオートエリアAFを選んでおきつつ、カスタムメニュー内の「オートエリアAF時の顔と瞳認識」の項目で「顔認識と瞳認識する」や「動物認識する」といった項目を選択しておく必要があります。
一方、本機ではZ 6IIなどと同様にデフォルトでAFエリアモードの選択肢として「ワイドエリアAF(L-人物)」「ワイドエリアAF(L-動物)」「オートエリアAF(人物)」「オートエリアAF(動物)」という項目があります。iボタンでよく使うショートカット的なメニューを呼び出し、AFエリアモードからすぐに設定を変更することができて非常に便利となりました。
路地に佇む黒猫を発見。カメラはまず猫の体全体を捉えてピントを合わせていましたが……
こちらに気づいて振り向くと動物AFの本領発揮。猫の目をキャッチしたあとは猫の動きに合わせてフォーカスポイントも移動してくれました。
とあるおうちの前の路地で寛ぐ猫ちゃんを発見。ちょうど飼い主さんがおられたので一緒に撮らせていただきました。この時は動物よりも人物優先、iボタンから設定をオートエリアAF(人物)にパパッと変更して撮影。操作性の良さは重要です。
尚、この動物AFは「犬と猫にのみ対応」であり、後日動物園を訪れた際に試してみましたが「ネコ科の大型動物」はダメでした、残念!(笑)
高ISO感度とローライトAFの実力
本機の最高常用ISO感度は51200であり、ローライトAFと組み合わせることで、かつてなら撮影が不可能であったような暗闇でも動物撮影が可能に。肉眼では気付かなかった暗闇にいる猫までカメラは捉えてくれました。
夜も更けた時間に駐輪場全体を照らす街灯はなく、とにかく暗い場所でしたが翌朝同じ場所を通りかかると印象は一変。実はこんな場所でした。
やわらかい仕上がりと解像感の良さ
今回持参した2本のレンズは、以前Z 50を初めて手にしたときにキットレンズとは思えない描写力を体感して手に入れましたが、Z fcでも変わらずそのパフォーマンスの良さを実感。個人的にニコン機らしいと感じる、しっかり芯がありながらもやわらかい絵作りの他、ピクチャーコントロールの詳細設定で簡単に変更ができる「クイックシャープ」を使用することで、数キロ以上先の海上にあってモヤっとしてしまうような被写体もシャキッと描写することができ、レンズのヌケの良さをしっかり体現してくれています。外観のレトロさに今の新しい技術を組み合わせたハイブリッドなカメラの楽しさ・素晴らしさを実感するものでした。
稲佐山へ上がるロープウェイより。夕刻のやわらかな陽射しに包まれる街の空気感をうまく捉えてくれました。
午後の出島ワーフ付近を散策中の一枚。こちらもよく晴れた日の午後の逆光をうまく捉えてくれています。
黒島へ向かうフェリーより九十九島を望む。クイックシャープを+2.0に上げることで、遠くの山上にある風力発電機もよりはっきりと捉えることができました。
稲佐山山頂展望台より撮影。望遠レンズを通して初めて目にする端島(通称 軍艦島)の、確かに軍艦のような姿をした島影にひとりテンションアップ。次回は実際に訪れてみたいものです。
佐世保に向かって航行中の自衛隊の護衛艦を海上で発見、目一杯望遠の250mm(35mm判換算375mm)でクイックシャープを+2に設定。拡大して見ると甲板にはマスクをした自衛官の姿や「こんごう」という護衛艦の船名、またその奥に位置する島の造船所名と会社の標語までもがしっかり見て取れます。のちに地図上で確認すると、護衛艦までの距離はおそらく約10km程のようでした。
まとめ
サイズ感と性能の両面から、本機が手軽な旅カメラとして非常に使いやすいカメラであることを実感する良い機会となりました。今回は上記の2本のレンズを連れて行きましたが、個人的には旅の装備としてここに35mm判換算で35〜50mmの明るい単焦点レンズを1本足したいところ。10月1日にZ fc本体とのSpecial Editionキットとして発売となったNIKKOR Z 28mm f/2.8 (Special Edition) (DXフォーマット機では35mm判換算で42mm相当−レンズ単体は11月19日発売予定)がまさにピッタリの画角。次の機会にはぜひこのレンズも一緒に連れて旅に出たいものです。
■写真家:クキモトノリコ
学生時代に一眼レフカメラを手に入れて以来、海外ひとり旅を中心に作品撮りをしている。いくつかの職業を経て写真家へ転身。現在はニコンカレッジ、オリンパスカレッジ講師、専門学校講師の他、様々な写真講座やワークショップなどで『たのしく、わかりやすい』をモットーに写真の楽しみを伝えている。神戸出身・在住。晴れ女。
公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
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