まるで影絵のような写真が撮れる!?印象的なシルエット撮影テクニックをご紹介
はじめに
影絵というと薄い紙をハサミで上手く切り取って、それを太陽や電灯にかざすとシルエットになって遊ぶことを誰もが知っているかと思います。影絵は対象となる被写体の輪郭しか出ないために物語性を強く感じ、とても印象的に見えますよね。
写真撮影でも簡単にその遊びが出来ることをご存知でしょうか?今回はそんな影絵写真の世界を楽しんでもらえたらと思います。
毎年冬の時期に開催されているこのイベントは、背後の人物やはた織り機などは全て本物となっています。実際に肉眼で見ると、ちゃんと障子の向こう側で人がはたを織っているので非常に面白いですよ。
この作例は今年の倉敷・美観地区でのイベントにて撮影したものです。こちらは障子の奥の人物は作り物ながら奇麗な動くシルエットで表現していました。このあと人力車に乗った花嫁さんが登場しますが、車夫の方がシルエットが美しく思えたので満月の月と白壁を取り入れて撮影しました。
逆光撮影は敵か味方か??
よく、逆光(太陽に向かって撮影)では顔が暗く写り、表情が判らないので順光(太陽を背にして撮影)で写真を撮りましょうと聞いたことがあるかと思いますが、影絵作品を作るには必ず逆光が基本となりますので逆光を味方に付けた撮影となります。
この作例は愛媛・松山城の背後に太陽が沈むシーンを写したものです。適度に雲間から陽ざしが海へ映り込み、このような見事な金波のグラデーションを背景に影絵のような松山城が撮影できました。
影絵撮影におすすめのカメラ機材
影絵撮影をするときの機材ですが、松山城の夕景のような撮影対象があらかじめ決まっている撮影でしたら、同じ場所であまり動かないことが多いのでカメラと三脚でじっくりと撮影出来ます。
対して、スナップ撮影でしたら逆光でシルエットになりそうな場面は急に出てくることが多く、カメラは軽くて動きやすいものを推奨します。被写体の輪郭が分かりやすく、かつ強調できるような微妙なアングル調整やフレーミングをとっさの判断でするには、軽くて小さいカメラの方が適していると言えるでしょう。
この被写体の場合、人物のシルエットを小さくして、周りの黒い額縁(トンネルの部分)を影絵にしたものです。
ミラーレス一眼カメラはファインダーから目を離さずに撮影画像を確認でき、被写体に集中できるメリットが素晴らしいです。また、カメラ本体に強力な手振れ防止機能があり、暗い場所でも三脚いらずで撮影できます。そして、本体が軽量な点も撮影のしやすさに繋がります。
今回の撮影レンズは主にM.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROです。高倍率ズームでしかも接写も得意とするレンズのため、幅広い撮影で便利に使うことができます。
しかもこのレンズとOM-D E-M1 Mark IIIを組み合わせると、なんと7.5段という手振れ補正効果を発揮します。筆者の場合、手持ちの夜景撮影でシャッタースピード3秒でも手振れしませんでした!
影絵撮影のポイント
対象となる被写体をどのようにしてシルエットにするかですが、まずは逆光の被写体(無ければ背景が明るい被写体)にカメラを向けて電子ダイヤルの露出補正(+-)で光と影を強調してみましょう。
逆光で太陽を入れるような撮影時にはゴーストやフレアが発生する可能性があります。そんな時には太陽を外すなどしてゴースト・フレアが発生しないような画角で撮影しましょう。また、レンズが汚れているとより発生しやすくもなりますのでご注意ください。
この作例は逆光でネコちゃんのシルエットを撮影しましたが、太陽の周りにゴーストが発生してしまいました。
以下の作例のように、同じ被写体でも露出補正によって大きく表現が変わるかと思います。
次に影絵写真が成功するポイントとして、対象となる被写体を大きく撮影することをお勧めします。望遠で遠くの被写体を大きく逆光で撮影しても良いのですが、望遠レンズで撮影した場合、主役が近い被写体になればなるほどピントが合う範囲が狭くなるため、なかなか切り絵のような写真が撮れないかと思います。
ピントが合う被写界深度が深い、広角~標準レンズで被写体に出来るだけ寄って逆光で大きく撮影すると輪郭がくっきりと撮影できる可能性が高くなり、影絵効果が強く発揮できるので広角~標準レンズを使うのがお勧めです。影絵の場合はハサミで紙を切った輪郭の部分がとても大切なので、ここがポイントとなります。
また、以下の動画は望遠で逆光の海を行く船をシルエットで撮影したものですが、船の速度が速いので影絵になるタイミングがほんのわずかしかないことがわかります。
この被写体は広島県のしまなみ海道にある、因島の白滝山山頂に建てられている鐘撞堂です。夕暮れ時は鐘撞堂がシルエットとなりこれだけでも絵になりますが、動画のように人物を入れるとより影絵効果が高まることが感じられます。
また、動画では三脚を立てて自分を入れたので撮影できませんでしたので、静止画では若干アングルを変え鐘の下に小さな太陽をとり入れてみました。
あえての望遠で撮影するときの注意点ですが、この被写体のように平面であまり奥行きが出ないように撮影すると成功しやすいです。左右対称のフェリーなどはとても良い被写体ですね。
こちらはカラフルな影絵写真です。銅像の中には魅力的な形をしているものがあります。もともと影絵には向いている被写体ですので、夕暮れ時はこんな素敵な影絵写真になることもあります。太陽が沈んでからもチャンスを見つけて撮影してみてください。
今や日本のウユニ塩湖と呼ばれる、香川県の父母ヶ浜での鏡面写真です。鏡面写真は被写体が水面に反射して、同じ被写体が下部にも写りこんで非常にフォトジェニックな写真が撮影できますが、この作品は同時に影絵の面白さも含まれていることがわかりますね。
影絵撮影テクニックあれこれ
影絵+夜景
作例のように夜にも光がある場所ならば、沢山の影絵写真を作ることが楽しめます。こちらは夜のストリートスナップ中に見つけた自転車。背後の街灯の灯りで自転車がシルエットになりました。
影絵+屋内施設
こちらは四国水族館のコブシメという烏賊(イカ)のアート。ライトアップされているのでその前を通過する人は全て逆光となり、人物が影絵となります。この様に太陽が無くても影絵作品になる被写体が沢山あることがわかります。
影絵+近代美術
近代美術館には撮影可能な屋外展示がある場所も多く、この様に手軽に影絵写真を楽しむことができます。
この作例は鳴門の渦潮と自分の手を使って渦の中心をつまんで見た写真です。
影絵+多重露光
また影絵写真とカメラ機能の多重露光機能を使用すると、こんなユニークな作品が作れたりします。
カメラを多重露光モードにセット後、1枚目は自分の手を太陽をかざしながら逆光で影絵にし、2枚目を北広島にある、形が非常に珍しい天狗シデという木を撮影すると・・・
このような写真になりました。まるで自分の手が刺繡のようになりましたね。
まとめ
いかがでしたでしょうか。一言で影絵写真と言ってもなかなか奥が深く、工夫次第で様々な影絵写真が出来る可能性がまだまだあるかと思います。興味が出ましたら是非試してみてくださいね。
■写真家:虫上智
1968年岡山県生まれ。高校を卒業後、写真家 緑川洋一氏に師事。地元のカメラ店で撮影業務などを学び2000年に独立。現在はスタジオ撮影、フォト講座、執筆、フォトコン審査、講演等を受け持つ。ライフワークでは心象風景、自然写真、水中写真を撮影。
日本写真家協会(JPS)会員、日本写真講師協会 認定フォトインストラクター、OM SYSTEMゼミ講師、フォトカルチャークラブ講師、フォトマスターEX(総合)一級