表現の可能性は無限大!OLYMPUS アートフィルター徹底解説 Part.2
はじめに
前回の記事では、基本となるアートフィルターの種類や効果についてお伝えしました。今回は応用編として、このアートフィルターをどのように自分の作品に取り入れてゆくとよいかについて解説いたします。
→前編のアートフィルター解説記事 Part.1はこちら
カメラ任せにせず、アートフィルターでオリジナリティを追求する
カメラのモードダイヤルで「ARTモード」を選択すると簡単にアートフィルターでの撮影ができますが、一方で絞りとシャッター速度はカメラ任せのプログラムモード同様となり、どのアートフィルターを選んでもホワイトバランス(WB)はAUTOからスタートすることになってしまいます。このモードでもWBやその他の細かな設定の変更は可能ながらも手間がかかることから、結果的に「仕上がりはアートフィルターを使いつつもカメラ任せで撮った」ということになりやすくなります。
一方で、意外とご存知ない方も多いのですがP/A/S/Mのモードでも色の仕上がり設定である「ピクチャーモード」の選択肢の中にアートフィルターが入っています。これらのモードで撮影しつつアートフィルターを選択すると、例えばAモードで絞りを開放に設定してボケを表現しながら、アートフィルターのポップアートで色鮮やかに、かつホワイトバランスは「電球」にする、といった自由な撮り方が実現します。もちろん露出補正も併用できます。
アートフィルターの種類や効果は、写真の明るさ(露出)や色合い(WB)によって様々な表情を見せてくれます。これらの機能や設定をフルに活用することで「自分の求めるオリジナルな表現を追求する」という撮り方は十分にできると考えます。
尚、ピクチャーモードやWBの他にも、アスペクト比やハイライト&シャドウコントロール(カメラ上でトーンカーブを調整する機能)など複数の設定を、スーパーコントロールパネルやライブコントロールを使用することで直感的に組み合わせて変更することができます。
明るさによって効果の差が出る例
スターライト効果は露出によってそのエフェクト具合が変化します。
ドラマチックトーンは露出によってその効果のかかり具合が変化します。
明るさの調整を利用した例
ざらっとした粒状感の他、白と黒のコントラストがかなり強くなるラフモノクローム。オリンパスのカメラには、カメラ上でトーンカーブを調整できる「ハイライト&シャドウコントロール」という機能があるのですが、この機能(または後述のOlympus Workspace)でハイライトを目一杯明るく、シャドウを目一杯暗くすることで切り絵のような写真に。もちろんシチュエーションにもよりますが、白っぽい曇り空を背景にわかりやすい特徴のシルエットを持つ被写体を選ぶことがポイントです。
ホワイトバランスによって印象がガラリと変わる例
その1−デイドリームⅡ
当初はどう使ってよいやら戸惑うことの多かったデイドリームですが、ある夕暮れ時にアンバー系の色になる「タイプⅡ」とホワイトバランス「蛍光灯」の組み合わせでなんとも幻想的な光景となることを発見。以来、お気に入りの設定となりました。
他にも同じくデイドリームⅡでWBの蛍光灯や電球など、色温度を低くする設定にすることで、光の状況にもよりますが、透明感を持たせたり幻想的なイメージにすることができる場合も多く、紅葉シーズンに活躍してくれています。
その2−クロスプロセス
前回も少しご紹介しましたが、クロスプロセスⅠは毎年紅葉シーズンに活躍してくれるアートフィルターのひとつ。背景や葉の緑と赤や黄色の紅葉のコントラストを非常に綺麗に表現してくれます。この時に、ホワイトバランスの色温度設定で4000〜5000Kあたりにすることで緑や紅葉の色の微調整ができます。
画面全体が真っ赤になるクロスプロセスⅡは、そのままだとどんな場面で使ってよいのやらイメージしにくいという方も多いのではないでしょうか(私自身がそうでした)。このクロスプロセスⅡでホワイトバランスを3000〜4000Kの色温度に下げると、思いもよらない色合いを生み出してくれることがあります。これもその時のお天気など光の状況に左右されますが、晴れた日のコスモスとは非常に相性が良く、ぜひ試していただきたい設定です。
パソコンソフト「Olympus Workspace」を活用する
画像処理ソフト「Olympus Workspace」を使用することで、それぞれのアートフィルターにおいてカメラ上の設定にはない「カラーフィルター効果」や「周辺光量の調整」といった機能を取り入れることができます。そしてピクチャーモードとアートフィルターの設定が別項目となっているため「モノトーンのリーニュクレール」や「セピアのウォーターカラー」といった、カメラ上の設定では不可能(カメラでは「モノトーン」「リーニュクレール」が同列にあり、どちらか一方しか選べないため)なことも可能となります。
さらに、やはりカメラ上の設定では不可能な「効果の追加の重ね掛け」も可能です。作例ではヴィンテージをベースに、可能な限りの効果の全部盛りをしてみました……この写真がいいかどうかは別ですが。笑
またウォーターカラーで仕上げたものをプリントすると、モニターで見ていたよりはるかに淡い色となることが多く、モニターで見ている通りの仕上がりにするには明るさやホワイトバランス、仕上がり設定での調整が必要となることが多いことも覚えておきたいポイントです。
下の作例では、ウォーターカラーでWBをオートから晴天にしただけでガラリと色の鮮やかさが変わり、さらに仕上がり設定をVividにすることでより鮮やかになったことがわかります。
そのほかにも、ヒストグラムを見ながらトーンカーブの調整をするといったことももちろん可能です。尚、以前はあとからアートフィルターをかけるにはRAWデータで撮影しておくことが必要でしたが、現在ではJPEGで撮った画像でもOlympus Workspace上やスマートフォンのアプリ「OI.Share (OLYMPUS Image Share)」であとからアートフィルターへの変換が可能です。とはいえ、RAWデータの方がより細かく自由に様々な画像処理や調整をすることができます。
映り込みや多重露出とアートフィルターの相性
ガラスや水面への映り込みはガラスや水を通すことや反射によりコントラストが低くなり、インパクトに欠けてしまいがちです。また複数の写真を重ねる多重露出も主題の存在感が薄れてしまうことがあります。そんなときにもアートフィルターの効力によりイメージした作品に近付けることが多々あります。個人的には色のインパクトが足りない時にはポップアートⅡをよく使いますし、コントラストの強弱でそこに写っているものの存在感を際立たせたい時にはドラマチックトーンをよく使用します。
ピクチャーモードがVividだと、水中の金魚の赤色が強調されはするものの、全体としてインパクトに欠けます。そこでポップアートⅡにすることで、全体的に暗めになることで緑色も深みが出てより一層赤が際立つと同時に、水面の波紋とそこに映るフラミンゴ(このフラミンゴは実は造りものですが)の存在感も強調されました。
営業時間外のレストランの外から、カメラの正面の壁に描かれた虎とレンズの前にあるガラスの映り込みを撮影しています。ドラマチックトーンにすることで虎のインパクトと虎に食べられそうになっている通行人の存在感が強調されました。
こちらもガラス越しの店内と映り込みですが、ドラマチックトーンの暗い部分を起こしてくれる効果によりディテールが浮き上がってきました。
多重露出で全体的に白っぽくなってしまいましたが、ポップアートⅡにすることで暗い中に浮かび上がる金魚や照明の鮮やかさがしっかり伝わるようになりました(カメラ内多重露出にて3枚合成)。
Vividの仕上げでも良さそうではありますが、香港の街のギラギラとしたエネルギーや混沌とした様子を伝えるには、OLYMPUS Workspaceでドラマチックトーンを選びつつ、仕上がり設定をVividにしました(カメラ内多重露出にて4枚合成)。
まとめ
私自身は以前から作品づくりにも必要な際にはアートフィルターを躊躇なく取り入れてきたのですが、今から数年前まではアートフィルターに対して否定的な意見も割と多かった印象です。その理由のひとつに、例えば「たいしたことのない写真でも、アートフィルターの力を借りることでカッコよく見えたりする」ということが挙げられ、その点に関してはそういった側面があることは否めないと思います。
一方で「カメラの設定に頼るものであり、誰が撮っても同じような仕上がりになる」という意見もあるようですが、この点については異論を唱えたいと思うのです。アートフィルターは、ほぼカメラ任せで撮影することもできますが、実はかなり細かな設定が可能なので自分のイメージを表現するためのツールとして十分に使えるものです。カメラで設定できるパターンだけでも962通りもあり、そこにさらに露出の調整やホワイトバランスの変更など細かな調整を加えて造り込んでゆくことで、オリジナリティ溢れる作品になるはずです。
これからもこの表現力を助けてくれるツールを使って様々な写真撮影を楽しんでゆきたいとともに、たくさんの方にもアートフィルターの楽しさや表現の可能性を知っていただけたらと思います。
■写真家:クキモトノリコ
学生時代に一眼レフカメラを手に入れて以来、海外ひとり旅を中心に作品撮りをしている。いくつかの職業を経て写真家へ転身。現在はニコンカレッジ、オリンパスカレッジ講師、専門学校講師の他、様々な写真講座やワークショップなどで『たのしく、わかりやすい』をモットーに写真の楽しみを伝えている。神戸出身・在住。晴れ女。
公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員