リニューアルされた「元祖PROレンズ」M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II×OM SYSTEM OM-1
はじめに
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROはOM SYSTEMの前身であるオリンパスのマイクロフォーサーズシステムの初めてのPROレンズである。初代OM-DであるE-M5の登場から半年ほど遅れて登場したM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROは、オリンパスユーザーの誰もが待ちに待ったF2.8通しの標準ズームレンズである。
オリンパスからOM SYSTEMとなり、フラグシップのOM-1が登場したタイミングでM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROもII型へとリニューアルされた。まさにOM-1の性能に合わせたリニューアルと考えてもいいだろう。
先代から完成されていた性能
まさにタイトル通り。M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROは最初のPROレンズだが、完成度自体はかなり高かった。II型では何が変わったのか?ざっくり言えばOM-1に合わせた防塵・防滴性能の向上(IP53)と逆光耐性の向上だ。防塵・防滴性能に関しては先代がIPX1(簡易的な防水レベル)だったが、II型ではIP53と特に防塵性能が大きく向上している。あまり大きな声では言えないが、個人的には先代からほぼ防水レベルのスペックだったような気もする…。
つまり、より過酷な状況でも撮影ができるよと言うことだ。OM-DやOM-1を使っている人であれば水を浴びたりするのはもはや常識の範囲内のレベルかもしれないが、さらにその常識の範囲が広がったと言うこと。どれだけ高画質なカメラでも撮影ができなければ意味がないので、過酷な条件でも撮影を安心して続けられ事も機材のスペックとして考えるべきだろう。
OM-1と組み合わせて散歩しながら撮影してみる
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO IIはマイクロフォーサーズ規格のレンズであり、マイクロフォーサーズ規格のいいところは高画質を保ったまま全体のシステムを小型軽量化することが可能なことだ。私の感覚ではマイクロフォーサーズは銀塩135をデジタルに置き換えるシステムであり、ボディサイズやレンズのサイズ、組み合わせた時のバランスはフルサイズやAPS-Cのシステムよりも非常に良いと感じる。
小さくて軽いカメラは気軽に写真を楽しむことができるので写真との距離感がグッと近くなる。OM SYSTEMが謳っている「機動力」はまさにこのことである。
まずは日常に潜む景色をM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO IIで写しとってみた。
ファーストショットは近所の麦畑にて。引いてヨシ、寄ってヨシなのは先代譲り。レンズの製造技術の向上により更に描写に磨きがかかったように感じる。さらにOM-1にはハイレゾショットが搭載されているので、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO IIの性能を最大限に引き出すことが可能だ。
OM-1は手持ちハイレゾショットの処理速度も劇的に速くなった事もあり、より気軽にハイレゾを楽しめるようになった。M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO IIとOM-1は鉄板の組み合わせかもしれない。最大撮影倍率が換算0.6倍とハーフマクロを超えた倍率で撮影ができるのも利便性の高さにつながっている。
岡山駅から徒歩10分くらいの距離にある城下カフェ。ランチで頼んだコーヒーとカレーをパチリ。標準ズームは出番が多い事もあり、テーブルフォトでも活躍してくれる。同じ標準ズームにより高倍率なM.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROがあるが、カバーする焦点距離が長い分サイズも大きくなる。テーブルフォトを撮る時はなるべく小型軽量なカメラとレンズで撮りたい(と思ってしまう)ので、OM SYSTEM OM-1とM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO IIはいい組み合わせだ。
焦点距離が長くなるほど、被写体との距離が近くなるほど手ブレのリスクは大きくなるが、OM-1は手ぶれ補正もよく効くので望遠側で寄って撮影してもほとんどブレない。店内のような薄暗い環境でも2〜3枚撮影しておけば1枚はブレていない写真が撮れているので、撮影にかける時間も最小限で済む。
仕事柄、遠出やロケが多いので旅の記録の一つとして料理を撮影する事も多いので、この組み合わせはちょうどいい。M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO IIの良いところは、通常のF2.8通しの標準ズームであれば望遠側が70mm止まりのものが多いが、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO IIは換算80mmと約10mm長いのだ。換算70mmと80mmの差は意外と大きいのと、マイクロフォーサーズの強みの撮影倍率の高さの相乗効果で他のフォーマットと比べても使い勝手は飛び抜けて良い。マイクロフォーサーズを使った後にAPS-Cやフルサイズのカメラを使うと「寄れない」と思う時がよくある。
OM-1との組み合わせだと気軽に手持ちハイレゾショットが使えるため、ほぼ全てのシーンで手持ちハイレゾショットを使ってしまいがちだが、通常の2000万画素でも十分な描写力だ。
OM-1の性能だけでなくM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO IIの性能の高さもあっての高画質なので、良いカメラには良いレンズが必要不可欠だ。OM SYSTEMのPROレンズはどれを買ってもハズレがないと思っているが、初めてのPROレンズにはM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO IIがオススメだ。小型・軽量、防塵・防滴、F2.8通し、35mm判換算24〜80mmの焦点距離とまずはこれ一本あれば十分楽しめる一本に仕上がっている。
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROと悩んでいる人も多いかもしれないが、望遠はそこまで必要なく小型・軽量とF2.8を優先したいのであれば、迷う事なくM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO IIだ。
散歩をしながらの撮影は肩の力を抜いて撮影できるので好きだ。1/2.3型の小型センサーを搭載したコンパクトカメラから中判のデジタルカメラまで色々と機材を購入しているが、その中でも画質と気軽さのバランスが絶妙なのはマイクロフォーサーズだと思っている。OM-1とM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO IIの組み合わせは「トップクラスの気軽さ」だ。
ネイチャーシーンに持ち出してみる
OM SYSTEMのシステムといえばネイチャーフォトと言う人も多いのではないだろうか。ハイレゾショットやライブNDなどはネイチャーシーンで活躍してくれる機能であり、防塵・防滴性能は水濡れや砂埃などが多い現場でも安心して撮影できる。個人的に被写界深度が深いこともメリットであり、風景のようにパンフォーカスで撮影することが多い場合はマイクロフォーサーズの深い被写界深度がメリットとなる。
絞り込まなくても深い被写界深度が得られると言うことはシャッタースピードが遅くなる事もないし、スローシャッターを使いたい時はライブNDも搭載されているので便利だったりする。小型・軽量であることも体力の消耗を最小限に抑えられるので余裕を持って撮影が可能だ。
ネイチャーシーンでは小型・軽量のカメラが嬉しい。OM-1で撮影する時はほとんど(8〜9割)手持ちハイレゾショットでの撮影なので、ハイレゾに耐えられるレンズが必須となる。M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO IIはハイレゾショットの解像度にも余裕で耐えられる性能だ。森や山の中を散策する時はなるべくコンパクトな機材を心がけているが、F2.8通しのレンズでコンパクトな設計なのはマイクロフォーサーズならでは。
撮影倍率も高いためマクロレンズの出番はほとんどなく(30mmと60mmとマクロレンズもラインナップされているが……)レンズ交換する事なく様々なシーンに対応できるのはM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO IIの魅力の一つだ。
自然風景の撮影の中でも滝や川の撮影が特に好きだ。風景は基本的に静的な被写体だが、滝や川は動的な被写体なので色々な表情を見せてくれる。滝や川は水であるため撮影のリスクももちろんある。滝などは近づいて撮影すると飛沫を浴びる事もあり(ほぼ100%濡れます)、レンズやボディをかばいつつ撮影をした経験をお持ちの方もいるだろう。
私がOM SYSTEMのシステムを使う大きな理由になっているのが防塵・防滴性能の高さだ。普通では撮れないような距離感・アングルの撮影が容易にできるのだ。もちろん撮影者もカメラと同じ目に合うわけなのでその覚悟も忘れずに。OM-1にM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO IIを組み合わせていれば滝を撮る時も安心して撮影ができる。
前玉を濡らす事で水滴を画面のアクセントにする事もでき、水面ぎりぎりからの撮影も怖がる必要もない。実際、今回の撮影で夢中でシャッターを切っていたらカメラが半分川に沈んでいた。水辺での撮影は特にコネクタ部分の蓋がしっかり閉まっているかのチェックは重要だ。いくら防塵・防滴性能が高いカメラであってもコネクタが剥き出しの状態であれば水没してしまう。
まとめ
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO IIは大幅なリニューアルというわけではないが、確実に先代よりも進化している。特に防塵・防滴に関しては、カメラボディは完璧でもレンズ側から水没という可能性もゼロではないため、ボディとレンズが同等の防塵・防滴性能であればより安心感も増しカメラの性能も引き出せる。逆光耐性も大きく向上し、抜け感の良さが解像感の高さにも貢献している。
OM SYSTEM初のフラグシップ機のOM-1が登場したこのタイミングでのリニューアルも納得だ。OM-1でOM SYSTEMデビューをする人も間違いなくいるだろう。その時に最初の一本としてリニューアルされたM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO IIがラインナップされていることはとても重要だ。
OM SYSTEMとして新しいスタートを象徴するOM-1。そのOM-1をしっかりとサポートするM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO IIが同時に発売されたことはユーザーとしても心強い。M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROがリニューアルされたことで、もしかしたらあのレンズもリニューアルされるのでは……?と色々と妄想が膨らむのだった。
■写真家:木村琢磨
1984年生まれ。岡山県在住のフリーランスフォト&ビデオグラファー。広告写真スタジオに12年勤務したのち独立。主に風景・料理・建築・ポートレートなどの広告写真の撮影や日本各地を車で巡って撮影。ライフワーク・作家活動として地元岡山県の風景を撮影し続けている。12mのロング一脚(Bi Rod)やドローンを使った空撮も手がけ、カメラメーカー主催のイベントやセミナーで講師を務める。