オリンパス PEN FT 縦型ファインダーでのぞく世界|フィルムの世界を楽しもう
はじめに
こんにちは。kanakoです。
今回は「OLYMPUS PEN FT」を使った記事です。このカメラはレンズ交換式ハーフカメラで、通常の2倍の枚数を撮影することができます。ファインダーを覗くと縦構図で切り取られており、普段とまた違った見え方を楽しむことができます。縦型ファインダーでのぞく世界について書いていきますので、最後まで見てもらえたら嬉しいです。では、さっそく見ていきましょう。
機材紹介
1966年にOLYMPUSから発売されたレンズ交換式ハーフカメラです。
画面サイズ | 24×18mm (ペンサイズ) |
レンズ | (F1.4 標準付) G ズイコーオート S F1.4 f=40mm 完全自動絞り (F1.8 標準付) F ズイコーオート S F1.8 f=38mm 完全自動絞り TTL ナンバー/F ナンバー表示付 |
レンズ交換 | バヨネット式ペンマウント |
シャッター | B, 1~1/500秒 |
ファインダー | ポロプリズムファインダー0.8倍, マイクロプリズムおよび特殊フレネルレンズ付, 5倍ルーペ使用 |
ミラー | 横開きショックレス・クイックリターン・ミラー |
フィルム装填 | ELシステム |
フィルム巻上 | レバー式1 ストローク巻上 |
露出調節 | TTL ナンバーシステム, 開放/絞り込み両測光方式 |
測光範囲 | F1.4 標準付で EV3~EV17 (ASA100) |
電源 | 水銀電池(1.3V) 使用 |
フィルム感度目盛 | ASA25~400 |
セルフタイマー | レバー式, 約11秒 |
大きさ・重量 | (F1.4 標準付) 127(幅)×69.5(高)×68.5(厚), 630g (F1.8 標準付) 127(幅)×69.5(高)×62.5(厚), 600g |
使い方
TTL露出計
ファインダーをのぞくと、左側に露出計指示窓が見えます。
指示窓には0から7までのナンバーが書いてあります。
これがTTLナンバーで、正確な露出を決めることができます。
露出の測り方
◇シャッタースピードを先に決める場合
室内や暗い被写体は、1/30秒か1/60秒、屋外や明るい被写体は、1/125秒や1/250秒にします。次に、被写体をファインダーでのぞき、針の指しているTTLナンバーを読みとり、絞り環にセットすれば適正露出になっています。露出計指示窓の針が、上や下の赤いゾーンに入ってしまう場合や、絞り環にないTTLナンバーを指している場合は、あらかじめセットしたシャッタースピードが合っていないので、セットし直す必要があります。
◇TTLナンバーを先に決める場合
まず被写体の条件によって適当なTTLナンバーを絞り環にセットします。
室内や暗い被写体は1か2、屋外や明るい被写体は4か5が適当です。次に被写体をファインダーでのぞきながら、シャッタースピードダイヤルを回転して、露出計指示窓の針があらかじめセットしたTTLナンバーを指すようにすれば適正露出です。シャッターダイヤルを左に回して止まったときは、B(バルブ露出)になっているので注意が必要です。
作例
では縦型ファインダーでのぞいた世界をご覧ください。使用フィルムは、LomoChrome Metropolis 35mm ISO 100–400、レンズはオリンパス G.Zuiko Auto-S 40mm F1.4です。
Snap
桜を撮りに出掛けた際、撮影した1枚。
枝越しに見える洗濯物。白と水色で春らしい組み合わせに惹かれてシャッターを切りました。
小型で持ち運びがしやすく、ちょっとした散歩にも連れて行きたいカメラです。
冬のある日、雪山にロープウェイで登った思い出。
−4℃で手がかじかみながらピントを合わせて撮影しました。
凍りついた望遠鏡と白の世界。縦型ファインダーをのぞくことによって、余白が生み出すminimalな写真。
ご飯屋さんに向かう途中、「なんか好きだな」と思った景色。
後で見返すと、どちらも車のお尻だけが見えていて、家と家の間にある左右のシンメトリーな構図に惹かれたのかなと考えました。
高さのあるものを画角内に整理して、収めることができるのが魅力的です。
海へ続く横断歩道と手すり、そこに人が立っているような電柱。
このカメラを持ち歩いていない時は、見過ごしていたであろう瞬間。
不思議と「このカメラでのぞくとどんな感じなんだろう?」と思い撮影しました。その一瞬が想像を超えた1枚です。
Flower
森の中を歩いていると見つけた、枯れかけている花。
絞りは開放(F2)で撮影し、ボケ感がとても美しい1枚です。
どこかに消えていきそうな儚さを感じました。
そして、ハーフカメラでこの描写が撮れることに驚きました。
桜の花びらに触れようとする瞬間。
拡大してみると分かりますが、粒子感や粗さがあります。
デジタルでは真似できないナチュラルな粒子の表現で、絵画のような雰囲気が出るのでお気に入りです。
冬のはじまり頃、田んぼ道を車で通りかかった時に見つけた花。
どうやら枯れた花が好きで、立ち止まることが多いです。
この時は早朝で、F1.4で撮影しました。
花たちの中にも物語があって強く生きようとする姿が印象的な1枚です。
西陽に透けたコスモスが風に揺られる瞬間。
どこか踊っているような1枚。
逆光で撮ると光が強くボケ感が出なくなるので、半逆光+ローアングルで撮影して立体感を出しています。
Daily life
朝の身支度の風景。
青が集まる中、鏡の中に映るカーテン。そして朝の優しい光。
このカメラだと飾らない日常も大切にしたくなる1枚を撮ることができます。
雨の日、神社の階段を登る途中で見つけた水の波紋。
水たまりがあるとついつい波紋を見てしまいます。
この時は波紋が集まる瞬間を狙いシャッターを切りました。
はっきりとは写っていない曖昧な描写も魅力的です。
真っ白な雪景色の中で、光が当たってキラキラとしている雪のカケラたち。足跡が影になっていて、雪の中にあった陰影に感動しました。
縦型ファインダーだと、自分が見せたいものによりクローズアップできます。
ひっそりと呼吸をしているかのような1枚。
実家に帰った際、たまたま見つけたタンスの中の光と影。
慌ててカメラを取りに行き撮影しました。
日常の中でも発見が増えていく、発見に繋がっていく感覚を覚えました。
Portrait
鍵盤に添える指が綺麗で撮影したお気に入りの1枚。
室内で撮影し、絞りは開放で「YAMAHA」にピントを合わせて撮っています。粒子とボケ感が創る、柔らかみのある質感が特徴的です。
熊や鹿の飾り。
どこかアンティーク調な空間でのセルフポートレートを撮影しました。コンパクトかつ外観も可愛らしいので、セルフポートレートも楽しむことができます。
夏の晴れた日、川遊びをしていたときの1枚。
川の流れもあり、水面に当たる光がゆらゆらとしている瞬間を撮影しました。
色んな水の質感を捉えることができ、 曖昧と鮮明の絶妙な描写が印象的です。
古い建物に差し込む光と影、そしてバレリーナ。
40mmは室内でも撮影しやすいです画角です。
室内ですが、入る光も強いので少し絞って撮影しています。
少し絞るとシャープな写りを味わうことができます。
おわりに
いかがでしたでしょうか?
今回は、OLYMPUS PEN FTを使った『縦型ファインダーでのぞく世界』についてご紹介しました。スナップ・花・日常・人など様々なジャンルを、縦型ファインダーでのぞいて撮影しました。
絞り開放では、曖昧で柔らかみのある描写に対し、絞るとくっきりとしたシャープ感のある描写が魅力的です。縦でのぞくことで、自分が見せたいものにクローズアップでき、生み出す余白が1枚の作品感を強めることができると考えます。
また、部分的なものに目を向けることができます。
日常の中でも発見が増えていく、発見に繋がっていく感覚があり、小さな幸せに気づくことができるカメラです。
是非、皆さんも縦型ファインダーでのぞいて撮影なさってみてください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
■写真家:kanako
1995年生まれ、長崎県出身。2020年、Canon fotomoti×curbon主催の次世代スター発掘キャンペーンにて、次世代スターに選出。陰影をテーマとしたポートレートを中心に独自の世界観を演出している。