マクロで撮ろう紫陽花!|クニさんの季節の花レシピ
はじめに
春になったと思ったら、あっという間に季節は初夏に。ジメジメした梅雨の季節も、もうすぐそこです。
この季節の代表的な花といえば紫陽花ではないでしょうか。
鞠のように丸くてかわいいいタマアジサイや、清楚な姿のガクアジサイが思い浮かびますね。
紫陽花には改良された品種が数え切れないほどたくさんあり、それぞれ個性的な色や姿をしていてバリエーションも豊富です。
そんな花の特徴を活かしながら撮影した紫陽花の作品をご紹介します!
ファインダーを覗いてボケを確認しよう
空を見上げているような一輪の花を主役に。
背景に光のボケを入れるため、少し低い位置から見上げるように撮影しています。
円ボケがちょうど花の真上に来るようなポジションを選び、花から光が飛び出しているようなイメージの一枚にしました。
背景の緑色の円ボケは葉っぱに当たった光の反射がボケたもの。青い部分は空です。
肉眼で見ていてもこのようなボケの形には見えません。ファインダーを覗いて主役の花にピントを合わせることで、背景のボケ具合を確認することができます。
ファインダーを覗きながら、一番いいボケの入り方を探しましょう。
慣れてくると、光の反射状況からどのようなボケになるか想像がつくようにもなりますよ。
雨の日には雫を撮ろう
紫陽花というと雨が似合う花というイメージですよね。
雨が降ると外出も億劫になりがちですが、紫陽花には絶好の撮影日和です。
雨の日には雨の日にしか撮れない作品を撮ることができますので、ぜひ撮影に出かけてください。
蕾の上にちょこんと載った雫を主役にしています。
雫の中に写り込みがあれば、ピントは写り込みに合わせたいところです。
写り込みがなかったり、写っていてもあまりきれいな写り込みでない場合は、雫の周囲にピントを合わせて形を強調するのがいいでしょう。
蕾だけでなく、ガクの表面にもたくさんの雫が付いていました。
その雫を手前に置いて絞り開放で撮影することで大きくボカし、キラキラした透明感を狙いました。
主役の雫にばかり目を奪われがちですが、主役の前後に何があるかもよく観察して表現に活かしましょう。
なお、僕が使用しているOM SYSTEMのカメラとレンズはしっかりした防塵防滴機能を備えています。
おかげで雨の中の撮影でも機材の心配をせず撮影に集中できるのはありがたいです。
クローズアップでボケを活かそう
ガクアジサイの花びらのように広がっている部分は、花ではなくガクです。
ガクの真ん中にちょこんと載っている、小さくて丸い部分が花。
花なのですが、こちらも本来の花ではなく、結実することのない装飾花の蕾です。
その装飾花の真ん中にあるかわいらしい蕾を主役にしてクローズアップしました。
最短撮影距離付近まで近づいて撮ることでガクの部分が大きくボケて、前ボケのような面白い効果を得られました。
ガクの後ろから光が当たっているので、花が光に照らされたような明るいイメージになっています。
ここまでクローズアップすると、思ったところにピントを合わせるのは大変です。
なかなかピントが合わない場合は、三脚を使って撮影しましょう。カメラが安定するので、ピント合わせがしやすくなりますよ。
主役と背景を意識しよう
ガクアジサイを下から見上げるようにして、空に向かって伸びていこうと手を広げているような姿を表現しました。
花の向いている方向を広くあけて空を大きく入れ、木漏れ日のボケを散りばめることで初夏のみずみずしい空気感や希望あふれる未来をイメージしています。
主役の花は白、背景の光のボケも白です。背景に気を配らずに白い花と背景の円ボケを重ねてしまうと、主役の花が背景に溶け込み、印象が弱くなってしまいます。
そのため、背景の暗い部分に主役の花が重なるようポジションを調整しながら撮影しました。
同じ場面でも、背景によって印象は変わります。
より主役を活かせる背景を選ぶことが大切です。
効果的なボケが得られる角度を探そう
雨の日、紫陽花の葉に張られた蜘蛛の巣に雫がいっぱい付いていました。
その中の一つの雫にピントを合わせて前後の雫を大きくボカし、光が溢れ出しているような表現を狙いました。
このとき蜘蛛の巣とレンズを平行に構えるとピントの合う範囲が広がって、雫があまりボケてくれません。
撮影のコツとしては、蜘蛛の巣に対して横や斜めの角度から捉えること。
その角度から狙うことで、ピントを合わせた雫と前後の雫との距離が離れ、大きな光の円ボケを描いてくれます。
どの雫にピントを合わせるかによって、ボケ方や写真の印象が大きく変わります。
ピント位置の正解はありません。いろいろなところに合わせて撮ってみて、自分の撮りたいイメージに合う一枚を見つけ出してください。
とことんクローズアップを楽しもう
ガクの一辺を真横からクローズアップ。
絞り開放の効果でピントを合わせたガクの縁以外の部分が大きくボケて、不思議なイメージになっています。
この写真をぱっと見ただけではもはや紫陽花を撮ったとはわかりませんね。
何の花なのかわかるように撮らないとダメなのでは?と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、そんなことは気にしなくてもぜんぜん構いません。
近づいてクローズアップすることで、肉眼では見えないような不思議な表現をできるのがマクロの面白さです。
おもしろいと思ったところを、思い切ってクローズアップで切り取りましょう。
レンズの焦点距離によるボケの違いを知ろう
30mm(35mm判換算で60mm)の標準マクロで、シベをクローズアップ撮影しました。
望遠系のマクロでここまで近づくと背景の円ボケが大きくなりすぎて、少しフラットすぎる印象になってしまいます。
背景のボケを小さめにして光がキラキラとした感じを出したかったので、焦点距離の短い30mmマクロを使って背景の円ボケを小さくしました。
背景のボケはレンズの焦点距離が長いほど大きく柔らかくなり、焦点距離が短いほど小さなボケになります。
やみくもに大きくボカすのではなく、表現したいイメージに合った焦点距離のレンズを選ぶことも大事です。
ボケを小さくするためには絞りを絞るという方法もありますが、絞るとピントの合う範囲が広くなるため主役以外にもピントが合って見えるものが多くなったり、前ボケや背景のボケの形がはっきりしてきます。
そうすると画面が煩雑になって主役が目立たなくなりますし、ふわっと柔らかな雰囲気にはなりません。
思いがけない発見を楽しもう
ガクアジサイの装飾花の一つを真横から撮影しました。
ピントは中心の蕾に合わせているので、ガクの部分が大きくボケて前ボケのような効果になっています。
ガクの上、奥のシベがボケて蜃気楼のようにゆらゆらと揺れているような、ちょっと不思議な絵になりました。
ガクの下には何やら怪しげな光を放っているようなボケが見えますね。
こちらは花の中心部分にある真花。本当の花の部分です。
青や緑の真花がボケてこのようにボワっと不思議な雰囲気になりました。
実はこれは狙ったものではなく、偶然このような面白いボケになってくれたもの。
このように思いがけない発見があるのもクローズアップの面白さです。
おわりに
同じ花を撮っても、ピント位置やレンズの焦点距離によって作品のイメージは大きく変わります。
また、前ボケや後ボケの入れ方によっても印象はガラリと変わります。
最初から撮りたいイメージを明確に思い描いて撮ることは難しいかもしれませんが、一枚撮っただけで終わらず、もっと別の表現はないか、もっとおもしろい絵にならないかとレンズやピントなどを変えながらたくさん撮影してみてください。
思いがけない一枚が見つかるかもしれませんよ。
ここに挙げた撮り方はほんの一例です。
いろいろな撮影方法にチャレンジしながらぜひ自分なりの撮り方を見つけてくださいね。
■写真家:くにまさ ひろし
1971年生まれ。大阪在住。身近にあるちょっとした幸せ「プチ・ハピ」をテーマに、マクロレンズで花や虫たちの小さな世界をふんわりやさしく描く。
各種写真教室では、マクロ撮影の面白さを楽しくわかりやすくお伝えすることを意識している。
写真展 2020年、2022年「花色の息吹」(大阪・東京)、2021年「花の鼓動~Life~」(大阪)、2023年、2024年「Nature Flowers」(東京)
写真集「花色の息吹」(風景写真出版)
日本風景写真家協会(JSPA)会員
一般社団法人 日本写真講師協会認定インストラクター
フォトマスターEX(総合)
カメラのキタムラ写真教室/OM SYSTEMゼミ/富士フイルムアカデミーX/NHKカルチャー/リビングカルチャー倶楽部 講師
クニさんの花マクロ写真塾 主宰