ヒマワリを撮ろう!|上手に撮る方法をプロが紹介 ~吉住志穂~
はじめに
夏の花といえば真っ先に思い浮かんでくるのがヒマワリではないでしょうか。大きなものは大人の背丈以上に伸びることもあり、青空を背に咲く姿はまるで太陽のよう。漢字で書くと“向日葵”で、これは太陽の動きを追いかけることから付けられたそうです。しかし、蕾(つぼみ)が大きくなると動きは止まり、開花の頃には東向きに咲いてとどまります。そのため、ヒマワリを正面から撮るとき、順光で撮りたければ午前中、逆光なら午後と目的に合わせて撮影の時間帯を変えるといいですね。ヒマワリの魅力を引き出すべく、一輪をアップで撮るのはもちろん、広大なヒマワリ畑を写したり、花の一部をクローズアップしてみましょう。
青い空と白い雲との組み合わせ
元気なヒマワリに青い空と白い雲の組み合わせは夏のイメージにぴったりです。空を広く写し込むには画角が広めのレンズがおすすめ。広角系のレンズは背景の写る範囲が広くなるので、画面に青空を広く取り入れることができます。広角ズームや標準ズームの広角側を使うといいでしょう。また、ヒマワリに近づくことで遠近感も生まれるので、迫力のある画面になります。青空を濃く写したいなら順光がベスト。ヒマワリは東を向いて咲くので、午前中に撮影すればヒマワリを正面から狙った時に、濃い青空を背景にすることができます。
咲き揃う姿
一輪だけでも迫力のあるヒマワリがこちらを向いて咲き揃う姿は圧巻ですね。写真を見ると、とても密集して咲いていますが、手前と奥とでは花の密度に違いがあるのがわかるでしょうか。手前は隙間があるのに対し、奥は隙間がわずかしかありません。つまり、密集感を出すには遠くのヒマワリ畑を狙うのがポイントです。ヒマワリ畑の手前から奥まですべてを写したくなりますが、手前の隙間が多い部分はフレームアウトさせて撮ると密集感を引き出すことができます。
花びらが透けたようになる逆光
ヒマワリは東を向いて咲くことから、午前中に正面から撮ると順光になります。逆に、後ろ側から撮ると逆光になりますね。ヒマワリは順光で撮られることが多いのですが、私はこの逆光のヒマワリが大好きです。光が後ろから当たるので、花びらが透けたようになります。背景のボケているヒマワリも同じ光が当たっているわけですから、この輝きのあるボケが生まれるのです。順光で撮る姿とは違った魅力を感じますね。
明暗差をつけて鮮やかな黄色に
逆光で一輪をアップにしました。花は明るいのに背景は真っ黒です。これは背景にある森が逆光で影になっていたためです。同じ逆光でも花びらは薄いので光を透過しますが木々や山の斜面などは厚みがあるので光を通さず暗くなります。そのため、明暗差がある部分でヒマワリに露出を合わせると、背景はこのように黒く写ります。黒い背景に花びらの鮮やかな黄色が映えますね。肉眼ではこのように黒くは見えないので、コントラストのつき方をライブビューで確認したり、一枚撮ってみるといいでしょう。次第にどれくらい明暗差があると黒く写るかのカンが身についてきますよ。
シルエットで狙う
夏雲がもくもくと湧き上がって、太陽を遮りました。すると空は明るいのに、地上のヒマワリは日陰になります。光があるのとないのでは大違い。あの輝くようなヒマワリの姿にはなりません。雲が流れて太陽が出そうなときは光を待ちますが、ここはシルエットで撮ってみようと思い立ちました。ピントは主役のヒマワリですが、露出は背景の空に合わせます。すると、明暗差があるので、空は適正露出、ヒマワリは暗く写りました。こう撮りたいと決めて挑むより、いま目の前にある花の魅力をどうしたら引き出せるのかを考え、工夫して撮りましょう。
やわらかい光で優しい雰囲気に
この日は曇っていたので、青空を背景にしたような一般的なイメージの写真は撮れませんでしたが、こんな優しい雰囲気のヒマワリもいいですよね。光がやわらかいときは影が出にくく、ハイキーな写真に向いています。プラス2の大幅な露出補正をかけることで、曇りの日特有の色の濁りを感じさせず、明るく仕上げることができました。画面下には前ボケを入れて、ふんわり感をアップさせています。晴れている時に同じような明さの補正をかけると露出オーバーの失敗写真になりかねないので注意してください。
一部分をクローズアップ
大きな花は一部分をクローズアップする撮り方も楽しめます。ヒマワリは花びらの並びが美しいので、全体の1/4の部分を狙ってみました。また、逆光なので花びらが透けて、きれいですね。このような形を意識した作品は造形にこだわって、とにかく綺麗な花びらを探してください。虫に食われていたり、枯れかけているもの、不揃いな部分は避けましょう。クローズアップをするにはマクロレンズがあると便利ですが、ヒマワリは花自体が大きいので望遠ズームでも部分アップが撮れます。右上のわずかな背景の部分も緑のボケよりも黄色いボケを入れると全体をヒマワリで埋めることができます。
フィルター効果
夕暮れの光で撮影したヒマワリ畑。午後、正面から撮ると逆光になるので、中心部の厚い部分は暗く、花びらだけが透けて見えます。全体的に色がくすんでいますが、夕暮れに撮影したのに加え、カメラ内のデジタルフィルターの効果を使ったためです。この機種ではアートフィルターと呼ばれる機能の中からヴィンテージと呼ばれるタイプを選んだので、昔の写真を見ているかのようなレトロ感のある仕上がりになりました。みなさんがお使いのカメラにもこのような写真に効果をつけられる機能が備わっていれば、作品作りに取り入れてみるのもいいでしょう。もちろん、合う、合わないがあるので、シーンによって使い分けてみてください。
まとめ
各地で観光用に広大なヒマワリ畑が作られているので、ワイドに、アップにとさまざまな狙い方ができるでしょう。同じ撮り方ばかりではなく、ポジションやアングルを工夫して、作品のバリエーションを増やすことも大切です。また、写真は光が大切だと言われますが、今回もいろいろな光が出てきましたね。日中の強い順光、逆光。曇りの日のやわらかな光。夕暮れの光。光によって印象が変わるので、撮り方もそれに合わせて変えていきましょう。この夏、ぜひ太陽の花、ヒマワリの撮影に挑戦してみてください。
■写真家:吉住志穂
1979年東京生まれ。日本写真芸術専門学校卒業。写真家の竹内敏信氏に師事し、2005年に独立。「花のこころ」をテーマに、クローズアップ作品を中心に撮影している。2021秋に写真展「夢」、2022春に写真展「Rainbow」を開催し、女性ならではの視点で捉えた作品が高い評価を得る。また、写真誌やウェブサイトでの執筆、撮影講座の講師を多数務める。