マクロで撮ろう桜!|クニさんの季節の花レシピ

マクロで撮ろう桜!|クニさんの季節の花レシピ

はじめに

春が近づいてくると、桜の開花時期が気になって気になって仕方がない、なんて方も多いのでは?
毎日開花予想をチェックして撮影計画を立てているだけでもワクワクしますよね。
特に写真をやっている方なら、きっと桜を撮らずにはいられないはず!
花にそれほど興味がない人でも、なぜか桜には特別な感情を抱いていたり、桜って不思議な花です。
そんな桜をマクロで撮る、いろいろな方法についてお話しします。

心に触れた主役を見つけよう

マクロ撮影の基本はまず観察です。
花を見つけても漠然と撮るのではなく、よく観察して何かしら心に触れるものを見つけましょう。

■撮影機材:OLYMPUS OM-D E-M5 Mark III + M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
■撮影環境:絞り優先AE・F2.8(+1.3)・ISO400・ピクチャーモード Portrait

咲き始めの桜。
よく見ると、咲いた花の上から二つの蕾が覗いていました。
まるでキョロキョロと春を探すアンテナのようで、とてもかわいく思えました。
そこでこの蕾を主役に選んでピントを合わせました。
あれ? 花がボケていてはダメなんじゃない?
そう思われるかもしれませんが大丈夫。主役は蕾なので、見せたい蕾にピントが合っていればOKです。

咲いている花以外にも目を向けよう

せっかく撮影に行ったのに、もう散ってしまった後だった……。
ガックリして帰ってしまった経験のある方もいらっしゃるかもしれませんね。
でもそこで諦めず、よく観察してみてください。
すると、今まで気づかなかったものが見えてくることがありますよ。

■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
■撮影環境:絞り優先AE・F2.8(+0.7)・ISO200・ピクチャーモード Portrait

花びらがすっかり落ちてしまって、ガクだけが残った桜です。
普通なら撮影せずに諦めてしまうところですよね。
でも花を落としたガクをよ~く見てみると、星型のかわいい形をしていることに気づきました。
そこでこのガクを正面から写し、空に星が瞬いているようなイメージで撮影しました。
周囲のガクが面白いボケになって、縦横無尽に空を飛び回っているようなイメージになりました。

特徴的な部分をクローズアップしよう

マクロ撮影の面白さといえば、なんといってもクローズアップして大きく写すことですよね。
花をよく観察して、面白いと感じる部分や特徴的な部分を見つけましょう。
そしてその気になった部分を思い切りクローズアップで切り取ってみましょう。

■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO
■撮影環境:絞り優先AE・F3.5(+1.3)・ISO200・ピクチャーモード Natural

桜の特徴の一つは、細長くか弱いシベ。このシベに注目しました。
一番手前のシベに近づいてクローズアップすると、他のシベが完全にボケてしまいます。
マクロではピントの合う範囲がごく狭いので、近づくとピントが合っていない部分がこのように大きくボケて、肉眼では見えない不思議な世界になるのです。
このボケを活かすのがマクロによるクローズアップの一番の面白さです。

■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO
■撮影環境:絞り優先AE・F3.5(+0.7)・ISO200・ピクチャーモード Natural

こちらもシベを主役にしました。
先程よりも更にクローズアップし、一本のシベだけを主役にしました。
花の真横から撮ることで、手前の花びらが前ボケとなり、主役の一本以外のシベを隠してくれました。
普通ならたくさんのシベが画面に写り込んで主役が目立たなくなってしまいますが、このようにうまく前ボケを使うことで見せたい主役だけを際立たせることができるのです。

背景を意識しよう

写真に大事なのは主役。
でも主役ばかりに気を取られていると背景への意識が疎かになってしまい、主役を活かすことができません。
もちろん主役は大事ですが、その前後に何があるかをしっかり確認することも重要です。
主役を邪魔するものがないか、主役を活かせるか、よく観察して背景を選びましょう。

■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
■撮影環境:絞り優先AE・F3.5(+1.0)・ISO200・ピクチャーモード Portrait

ある公園で珍しくチューリップと桜が同じタイミングで満開になりました。
そこで、チューリップを背景に桜を撮影。
色とりどりのチューリップを背景のボケにすることで、春らしいあたたかな雰囲気の作品に仕上がりました。

■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
■撮影環境:絞り優先AE・F2.8(-1.0)・ISO200・ピクチャーモード Portrait

咲き始めた桜の背景に、木漏れ日の光の円いボケを散りばめました。
大きくやわらかな光のボケにするために、絞りは開放に設定しています。
絞りを絞ってしまうと小さな硬いボケになり、主役が背景に埋もれて目立たなくなってしまいます。
さらに、光のボケが重ならないように主役を背景の暗い部分に配置して、より主役を引き立てることを狙いました。

春らしいやわらかなグラデーションを見つけよう

春といえばどんなイメージを思い浮かべますか?
明るい、楽しい、あたたかい、元気、パステルカラーなどなど、ポジティブなイメージが多いのではないでしょうか。
ぜひそんなイメージを写真に写し込みましょう!

■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO
■撮影環境:絞り優先AE・F3.5(+1.7)・ISO200・ピクチャーモード Portrait

グリーンから赤へ変わる美しいパステル調のグラデーションが、春らしい明るく楽しそうな雰囲気を演出してくれました。
パステル調の色合いを活かすために、少し明るめの露出補正をかけています。
この背景の色は、地面に広がる葉っぱの緑と赤いボケの花です。
絞りを開放にして撮ることで葉っぱや花の形が消えて色だけのシンプルなボケとなり、主役を引き立ててくれます。

前ボケを活かして主役に視線を集めよう

上記の後ボケとは逆で、主役の花の前に他の花などをボカして写すことを前ボケといいます。
前ボケを入れることで枯れた花や直線的な葉っぱなどの邪魔なものを隠し、主役に視線を集めることができます。
また画面に大きくボケが入っていると、ふんわりやわらかなイメージにもなりますよ。

■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
■撮影環境:絞り優先AE・F2.8(+0.7)・ISO200・ピクチャーモード Portrait

花の密集からちょっとだけ顔を出した一輪の桜。
そのまま撮ると周囲にあるたくさんの花が視界に入り、せっかくの主役の印象が弱まってしまいます。
そこで手前に咲く花を前ボケにして周囲の花を隠し、主役だけに視線が集まるようにしました。
ふんわりやわらかな前ボケを作るコツは、開放絞りで撮影すること。
絞ってしまうと前ボケにした花の形が見えてしまい、煩雑な印象になってしまいます。
前ボケと併せて木漏れ日の後ボケを入れて、春の陽射しに誘われてちょっと顔を覗かせたような、爽やかなイメージに仕上げました。

人工物も活かそう

風景写真や花写真で背景に人工物が写っていると「ここでは撮れないな」と諦めてしまう方、いませんか?
諦めるのはまだ早いです。
工夫次第で、人工物であっても主役を引き立てる背景に変身することもあるんです。

■撮影機材:OM SYSTEM OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
■撮影環境:絞り優先AE・F2.8・ISO200・ピクチャーモード Portrait

少し日が傾いて、オレンジ色の夕日が桜を照らす……
という写真ではありません(笑)。
まるで夕日のように写っているオレンジ色の丸いボケ、実は背景にあるカフェの照明の明かりなのです。
この写真だけ見ると、背景にカフェがあることも照明があることもわからないですよね。
絞りを開放にして大きくボカすことで、人工物もこのような背景として使えるんです。
背景に人工物があってもすぐに諦めず、なんとか活かせないかと試行錯誤してみましょう!

おわりに

遠くの絶景地に行かなくても、近所の公園や道路沿いの並木など身近なところでたくさん見ることができるのが桜です。
梅や桜など枝に咲く花は撮るのが難しく、ついつい同じような撮り方ばかりになってしまいがち。
でも背景や前景を意識したりちょっと視点を変えてみたりすることで、いろいろなバリエーションの作品を作ることができます。

ここに挙げた撮り方はほんの一例です。
いろいろな撮影方法にチャレンジしながらぜひ自分なりの撮り方を見つけてくださいね!

 

 

■写真家:くにまさ ひろし
1971年生まれ。大阪在住。身近にあるちょっとした幸せ「プチ・ハピ」をテーマに、マクロレンズで花や虫たちの小さな世界をふんわりやさしく描く。各種写真教室では、マクロ撮影の面白さを楽しくわかりやすくお伝えすることを意識している。

写真展 2020年、2022年「花色の息吹」(大阪・東京)、2021年「花の鼓動~Life~」(大阪)、2023年、2024年「Nature Flowres」(東京)
写真集「花色の息吹」(風景写真出版)

日本風景写真家協会 会員
一般社団法人 日本写真講師協会認定インストラクター
フォトマスターEX(総合)
カメラのキタムラ写真教室/OM SYSTEMゼミ/リビングカルチャー倶楽部 他講師
クニさんの花マクロ写真塾 主宰

 

 

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