OM SYSTEM M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8レビュー|携行性と高画質を両立したハイコストパフォーマンス単焦点中望遠レンズ
はじめに
OM SYSTEMの「M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8」は、マイクロフォーサーズ規格に準拠した単焦点レンズだ。35mm判換算にして90mm相当、開放絞り値はF1.8の明るい中望遠レンズとなる。メタル調の外装であることからクラシカルなイメージのレンズだが、デジタル専用設計レンズであるため解像力は極めて高い。オリンパス(当時)のマイクロフォーサーズ用単焦点レンズとしては最初期にリリースされたレンズのひとつであり、シルバータイプが2011年9月、ブラックタイプは2013年6月に発売されている。以来10年以上ものロングセラーとなっている定番レンズだ。
M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8の主なスペック
マウント | マイクロフォーサーズ規格マウント |
焦点距離 | 45mm (35mm判換算90mm相当) |
レンズ構成 | 8群9枚(E-HRレンズ2枚) |
最短撮影距離 | 0.5m |
最大撮影倍率 | 0.11倍(35mm判換算 0.22倍相当) |
フォーカシング機構 | Movie and Still Compatible(MSC)機構 |
絞り羽枚数 | 7枚(円形絞り) |
開放絞り値 | F1.8 |
最小絞り値 | F22 |
大きさ | 最大径56mm 全長46mm フィルターサイズ37mm |
質量 | 116g (レンズキャップ、レンズリアキャップを除く) |
防塵防滴仕様 | なし |
レンズ外観
PEN E-P7に装着したM.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8。このレンズの外装は樹脂製だが、見た目はシルバーモデル・ブラックモデルいずれもメタル調なので、金属外装のE-P7との組み合わせはクラシカルなスタイルとなりとても相性がよい。PENシリーズと組み合わせたときのサイズ感もバランスの良いものとなる。
このレンズの開放絞り値はF1.8と極めて明るく、それにより大口径レンズと呼ばれる製品だ。そのうえ35mm判換算90mm相当となる中望遠レンズではあるが、マイクロフォーサーズ規格の特徴から、とてもコンパクトなサイズに仕上がっている。筐体のサイズは最大径56mm 全長46mmと手のひらで包み込めるほどに小さい。質量は116gと標準的な大きさのみかん一個分程度の重さ。日常的に使用する標準ズームに追加して持ち歩いても苦になることはないだろう。
フォーカスリングは鏡筒の長さの1/3ほどを占める幅広のもの。回転はスムーズでありながら適度にトルク感もある。フォーカス機構は鏡筒が伸び縮みしないインナーフォーカスタイプ。MFでのピントの送りは急過ぎず遅過ぎずで、適度なリングの回転度合いで精密なピント合わせが可能。AFはMovie and Still Compatible(MSC)機構を採用しており高速かつとても静かだ。ムービー撮影時でも作動音はほとんど気にならない。
マウント部は頻繁なレンズ交換にも耐えられる堅牢な金属製。このレンズは軽量なのでマウントにかかる負荷は大きくないが、やはり樹脂製マウント部より安心できる。
M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8専用レンズフード「LH-40B(シルバー・別売)」を装着したところ。レンズのサイズからすると大きく深いフードだけに遮光性は高い。必要に応じて使用するとよいだろう。なお装着時はレンズ先端に嵌められているデコレーションリングを取り外したうえでフードをはめ込む。
電子ファインダー(EVF)搭載のOM-1との組み合わせでは、レンズの小振りさが際立つがバランスは悪くない。フード装着のスタイルもいい感じ。
マクロコンバーター MCON-P02(別売)をM.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8先端に装着すると、最短撮影距離を約0.5mから約0.25mまで縮めることができる。これにより、さらなるクローズアップでの撮影が可能となる。35mm判換算90mm相当で最短撮影距離約0.5mだと少し物足りない場合があるので、この組み合わせは結構便利でオススメできる。(ステップアップリングSUR-3746を併用)
実写でM.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8の解像力を確認
絞りをF8.0まで絞りレンズの解像力を確認する。フォーカスを合わせたブーゲンビリアの白い花と被写界深度の範囲に含まれた赤い包葉のディテールが極めてシャープに描写されていることが判る。花びらの細かい筋や葉脈もしっかりと分離している。実勢価格3万円前後の製品とは思えないほど高い解像力だ。
M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8実写作例
単焦点レンズ初心者にも最適な中望遠レンズ
2011年にシルバータイプが発売されたM.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8は、そのとても小さくかつ軽量なサイズ感と中望遠という扱いやすい画角で、マイクロフォーサーズ規格のミラーレス一眼において、標準ズームの次に手に入れたい「単焦点レンズ最初の一本」として長年人気の高いレンズだ。
OM SYSTEMには現在、同じ焦点距離45mmの単焦点レンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 45mm F1.2 PRO」もラインナップされているが、こちらはポートレイト撮影に最適となる描写を重視して設計されたレンズであると同時に、PROレンズならではの防塵防滴・堅牢性などを実現した製品だ。それだけに同社の単焦点レンズのなかでも大きさ・質量ともに上級クラスとなっていることから、これら二本のレンズには明確な設計思想の違いがある。このようにユーザーの求めるものをわかりやすい形で提供するというマーケティング手法により、マイクロフォーサーズをカメラ・レンズともに選択幅の広いシステム足らしめており、それは現在のOM SYSTEMにも継承されている。
それだけにこのM.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8の存在は、マイクロフォーサーズシステムのなかでも特別な意味のあるものといえるが、それのみならずこのレンズでの撮影では、写真の楽しみ方を分かりやすく味わうことができる。標準ズームレンズという日常的に便利なレンズと違い、中望遠レンズの限られた画角に収める被写体は撮影者の明確な意図を反映するものとなり、引いては作品性を高めることにも繋がるはずだ。ズームレンズとは異なる単焦点レンズの不自由さをあえて選択することで撮影者の構成力のトレーニングにもなる。そして手のひらに包めるほどのサイズでありながら驚くほどに高い画質を持つこのレンズは、コストパフォーマンスの面から見てもでも非常に優秀だ。マイクロフォーサーズユーザーであれば、ぜひ一度手に取ってみていただきたいレンズである。
■model:EARLY WING 渡邉春菜
■写真家:礒村浩一
写真家。女性ポートレートから風景、建築、舞台、製品広告など幅広く撮影。全国で作品展を開催するとともに撮影に関するセミナーの講師を担当。デジタルカメラの解説や撮影テクニックに関する執筆も多数。写真編集を快適に行うためのパソコンのプロデュースも担当。