オリンパス M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO レビュー|PROスペックはそのままに小型軽量を実現した標準ズームレンズ

礒村浩一

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使い勝手の良い焦点距離域を採用

 オリンパス「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO」は、マイクロフォーサーズマウント用の標準ズームレンズだ。35mm判換算にして24-90mm相当の画角を持ち、高画質レンズシリーズのM.ZUIKO PROレンズながら、開放絞り値をF4.0にすることで、コンパクトかつ軽量なレンズサイズを実現している。同じくM.ZUIKO PROレンズシリーズにはこれまで標準ズームレンズとして「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO」「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO」がラインアップされている。

 これらのうち「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO」は高倍率ズームレンズとなることから、実質的な標準ズームレンズとしては「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO」と、この「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO」の2本が同じカテゴリーのレンズということになる。この2本の違いは、望遠端が5mm(35mm判換算10mm相当)の差と開放絞り値がF値にして1段分の違いとなる。なお両者の質量の差はフードを装着した状態で実測およそ132g、本レンズの方が軽い。

主なスペックと外観

オリンパス M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO E-M1 MarkIIIとの組み合わせ
 M.ZUIKO PROレンズ共通の高い剛性感と外装の高級感を継承しており、E-M1 MarkIIIとの組み合わせでは精悍な印象となる。

M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO の主なスペック

■マイクロフォーサーズ規格マウント
■広角端12mm〜望遠端45mm (35mm判換算24〜90mm相当)
■レンズ構成:9群12枚(HRレンズ2枚、DSAレンズ1枚、スーパーHRレンズ1枚、非球面レンズ2枚、EDレンズ2枚)
■最短撮影距離:0.12m(広角端) / 0.23m(望遠端)
■最大撮影倍率:0.25倍(35mm判換算0.5倍)
■絞り羽枚数:7枚(円形絞り)
■大きさ:最大径63.4mm 全長70.0mm
■質量:254g
■フィルターサイズ:58mm
■防滴仕様:保護等級1級(IPX1)*オリンパス製防滴対応カメラとの組み合わせ時に有効

画質を検証

 軽量コンパクトとなったといえども、M.ZUIKO PROレンズを名乗るからには画質にも期待がかかる。そこで広角端と望遠端それぞれで撮影した画像を細かく見てみよう。

広角端12mmの解像力検証

M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO作例
 広角端12mmで撮影。開放絞りF4.0から最小絞りF22まで一絞りごとに撮影して、画像の中央部および周辺部の解像状況を等倍表示して確認する。以下画像は等倍で該当箇所を切り出したものだ。
12mm_画像中央部
■画像中央部写真
開放絞りF4.0からF5.6はビルの窓枠の細い線、奥の建物のバルコニーの手すりなどを含め極めて細かく解像している。またF8.0からF11でも高い解像力が見られる。F16で若干緩くなるがまだ十分に解像しており、最小絞り値のF22ではかなりの緩さが認められる。
12mm_画像周辺部
■画像周辺部写真
広角域の周辺画像としては開放絞りF4.0でも驚くほどに解像しており、F5.6からF8.0にかけて解像力がピークを迎える。F11では若干の低下が見られるもののまだ十分な解像力を保っている。F16では小絞りによる回折現象で解像力低下が顕著になりF22では緩さが目立つ。

望遠端45mmの解像力検証

M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO作例
 望遠端45mmで撮影。開放絞りF4.0から最小絞りF22まで一絞りごとに撮影して、画像の中心部および周辺部の解像状況を等倍表示して確認する。以下画像は等倍で該当箇所を切り出したものだ。
45mm_画像中央部
■画像中央部写真
開放絞りF4.0ではビルの窓枠やアンテナなどの細い線なども十分に解像している。F5.6からさらに解像力が高まりF8.0からF11で非常に高い解像力が見られる。F16でもまだ十分に解像しており、最小絞り値のF22ではさすがに緩さが認められるものの実用範囲だ。
45mm_画像周辺部
■画像周辺部写真
画像中央部同様に開放絞りF4.0から驚くほどに解像しており、F5.6からF8.0にかけてが解像力のピークとなる。F11で若干低下が見られるものの、まだまだ優れた解像力を保つ。F16では小絞りによる回折現象による解像力低下が顕著になり、F22では全体に緩さが目立つ。

 検証の結果として、広角端・望遠端共に開放絞り値F4.0から画面全域でとても優れた解像力を発揮しており、さらにF8.0まで絞り込むことでこのレンズが最も解像力が上がるピークを迎える。
 F11からF16まででも十分に高画質をキープしているので、撮影状況に応じて最適な絞り値を選択できる。ただし絞り込みすぎると小絞りの影響が出てくるので、通常はF16までの絞りの範囲で撮影することを心がけると高い画質の画像を得ることができるだろう。

M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROとの比較

 M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PROの位置付けとしては、同カテゴリーであるM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROより開放絞り値を1段抑えたF4.0とすることで、レンズ径を小さくするとともにレンズ全体をひとまわりほどコンパクトに、かつ軽量化したモデルということになる。

 M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROも開放絞り値F2.8通しのレンズとしては十分にコンパクトなレンズではあるが、より小型なカメラであるOM-D E-M10 MarkIIIやPENシリーズとの組み合わせでは、レンズの大きさがカメラボディのサイズに勝ってしまうことも少なくなかったと感じる。

 それ故に今回のM.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PROの発売は、これらのカメラユーザーにとっても高い画質を保持しながらコンパクトなレンズを選ぶことができるメリットのあるものだといえる。

 以下はM.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO(左)とM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO(右)との外観の比較だ。カメラはどちらもE-M1MarkIIIである。

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■正面:開放絞り値の違いによるレンズ径の違いに注目
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■上面:広角端 両者をカメラに装着して並べると太さ、長さ共にその違いがよくわかる。なおM.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PROではマニュアルフォーカスクラッチ機構とL-Fnボタンが省かれた。
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■上面:望遠端 M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROの方が、焦点距離が10mm長いにも関わらず、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PROの方が、圧倒的に繰り出しが短いことがわかる。

 これら2本のレンズの解像力の違いを確認すべく、前項で行なった解像力テストと同様の撮影をM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROでも行いその結果をM.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PROと比較したところ、これら2本のレンズの解像力はほぼ同等、もしくは条件によってはM.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PROの方が上であることを確認した。

 大きく重いレンズでなければ高い画質とならないといった常識は、このレンズの登場でもはや意味をなさなくなったのだ。これにより撮影者は開放絞り値の明るさで選ぶか、レンズの大きさ軽さで選ぶかといった選択が、画質に妥協することなく可能となったことになる。

 一方、F4.0という開放絞り値だと浅い被写界深度によって大きな背景ぼけを演出するといった撮影は難しい。その点ではやはり明るいレンズには勝てないが、被写体と背景の位置関係をうまく調整するなど撮影時に工夫をすることで、それなりにカバーすることも可能だろう。

 そもそもマイクロフォーサーズ規格のカメラは、その構造から背景をぼかしにくいという特徴があるのだから、そこは割り切って明るい単焦点レンズを用意するなどして、より効果的な演出を心がけたい。

 ところで、これまでに筆者はM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROを発売開始の2013年当時から長年愛用してきているのだが、このレンズの不満点として唯一、逆光での撮影時にハイライト部が明るく滲むことがある点が気になっている。そこで、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PROでも同様に輝度差の大きい状況を画面内に再現して検証を行うことにした。

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レンズの焦点距離はワイド端12mm。絞り値をF4.0に揃えて撮影。快晴の空で輝く太陽を、ビルの最上部で隠す構図を作ったうえで露出補正を行ないビル壁面に露出を合わせている。
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M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROとM.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PROそれぞれで撮影した画像を等倍にしてその部分を切り出し確認する。両者の描写を確認すると、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROで見られるわずかな光の滲みが、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROではまったく見られない。これは様々な状況下での撮影を行う私にとって、とても嬉しい改善点だ。

M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO 実写作例

オリンパス M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO作例1
■使用機材:E-M1 MarkIII,M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO
■撮影環境:ISO64 F10 1/25 マニュアルモード WBオート
オリンパス M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO作例2
■使用機材:E-M1 MarkIII,M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO
■撮影環境:ISO200 F5.6 1秒 絞り優先モード -0.7EV WBオート
オリンパス M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO作例3
■使用機材:E-M1 MarkIII,M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO
■撮影環境:ISO200 F5.6 1/1000 絞り優先モード +0.3EV WB晴天
オリンパス M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO作例4
■使用機材:E-M1 MarkIII,M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO
■撮影環境:ISO200 F5.6 1/1000 絞り優先モード WB晴天 手持ちハイレゾショット
オリンパス M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO作例5
■使用機材:E-M1 MarkIII,M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO
■撮影環境:ISO200 F4.0 1/2000 絞り優先モード WBオート
オリンパス M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO作例6
■使用機材:E-M1 MarkIII,M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO
■撮影環境:ISO200 F5.6 1/1600 絞り優先モード WBオート
オリンパス M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO作例7
■使用機材:E-M1 MarkIII,M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO
■撮影環境:ISO200 F5.6 1/800 絞り優先モード -0.3EV WBオート
オリンパス M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO作例8
■使用機材:E-M1 MarkIII,M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO
■撮影環境:ISO200 F5.6 1/1000 絞り優先モード +1.0EV WBオート
オリンパス M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO作例9
■使用機材:E-M1 MarkIII,M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO
■撮影環境:ISO200 F4.0 1/2000 絞り優先モード +0.7EV WBオート
■モデル:夏弥<https://ameblo.jp/beautiful-summer12/>
オリンパス M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO作例10
■使用機材:E-M1 MarkIII,M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO
■撮影環境:ISO200 F5.6 1/800 絞り優先モード +0.7EV WBオート
■モデル:夏弥<https://ameblo.jp/beautiful-summer12/>
オリンパス M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO作例11
■使用機材:E-M1 MarkIII,M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO
■撮影環境:ISO200 F5.6 1/125 絞り優先モード +1.0EV WBオート
■モデル:夏弥<https://ameblo.jp/beautiful-summer12/>

画質に妥協しない軽量コンパクトなPROスペック標準ズームレンズ

 M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PROはM.ZUIKO PROレンズシリーズに相応しい高画質の標準ズームレンズである。2013年にM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROを発売してすでに9年近く経っていることからも、オリンパスが今このレンズを最新の技術でリリースすることの意味は大きいと考える。

 高い画質をキープしたまま軽量コンパクトサイズに作り上げた標準ズームレンズは、今後のミラーレス一眼カメラの方向性を示す意思表示と捉えることもできるだろう。大きく重いレンズでなければ高い画質のレンズにはならない。

 そんな常識さえも過去のものとしてしまう可能性を、この小さく軽いレンズに見ることができる。

オリンパス M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PROとE-M5 MarkIIIの組み合わせ
E-M5 MarkIIIとの組み合わせ
※本記事の作例は全て緊急事態宣言前に撮影されたものとなります

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