オリンパス M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PRO×木村琢磨|「OM SYSTEM」を冠した最初のレンズで風景スナップを撮る!
はじめに
先日、OMデジタルソリューションズ(オリンパス)より新ブランド「OM SYSTEM」が発表された。M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PROは新ブランドを冠した最初の製品となる。レンズにはOM SYSTEMと書かれており、いよいよOMデジタルソリューションズとしての本格的な新章が始まるのだと思うとワクワクする。このM.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PROは、換算焦点距離が40mmと人気が高い焦点距離であり日常使いにぴったりな一本だ。OM SYSTEMのブランドステートメントにもあるように「どこにでも持ち歩ける」「感じたものが思ったままに撮れる」を体現した様なレンズだ。
ファーストインプレッション
まず、M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PROを手にして思ったことは「小さい・軽い」と言うこと。この「小さい・軽い」は私がマイクロフォーサーズを使う理由のひとつであり、それだけでなく写りもいいのだから満足度は高い。F1.4の大口径でこのサイズ感は気軽に持ち歩くにはちょうどいい。
そして、このサイズ感を最大限に活かすのであればOM-D E-M5 Mark IIIとの組み合わせがベストだろう。かつてのOMシリーズを思わせるサイズ感とフォルムは写欲を掻き立ててくれる。PROレンズということで性能に関してはお墨付きだ。OMデジタルソリューションズユーザーにとってPROレンズは安心材料となる。
PROレンズにはF1.2の大口径単焦点シリーズがラインナップされており、広角側から17mm(換算34mm)、25mm(換算50mm)、45mm(換算90mm)と定番の焦点距離をカバーしている。F1.2ではないが、今回ここに20mm(換算40mm)がラインナップされたことでより表現の自由度が高まった。特に今回ラインナップに加わったM.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PROはF1.2シリーズよりもはるかにコンパクトであり、いままでOM-D E-M1XやOM-D E-M1 Makr IIIにはぴったりだったがOM-D E-M5 Mark IIIにはちょっと大きすぎてバランスが悪い……と思っていた不満を解消してくれる一本だ。
M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PROを手にして、もう一つ「おっ?」と思ったことがある。それはレンズキャップだ。「OLYMPUS」から「OM SYSTEM」になっているのだ。ボディには「OLYMPUS」と「OM-D」、レンズには「OM SYSTEM」が。もしかしたら今しか見れない組み合わせになるのかもしれない。
換算焦点距離40mmの丁度感とPROレンズの安心感
私が主に撮影にしている被写体は風景であり、普段であればズームレンズを使っての撮影がメインとなる。今回はM.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PROとOM-D E-M5 Mark IIIを組み合わせて、風景写真を撮影しに出かけてみることにした。換算40mmといえばスナップを撮るのにちょうどいいと感じる焦点距離だが、風景写真でもそのちょうど良さを実感した。
35mmと50mmの間の焦点距離は人によっては中途半端に感じるかもしれないが、個人的にはどちらの焦点距離も兼ね備えた撮りやすい焦点距離だと思う。35mmよりも主題を明確にしやすく、50mmよりも広く写せるので、慣れると40mmこそ真の標準なのではないか?と思うほどだ。
M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PROは「小型・軽量」だけでなく、描写も信頼のPROレンズクオリティなのでそれだけで撮影が楽しくなる。開放F1.4はボケ味だけでなく解像感も両立されているので主題を明確できる。
私がマイクロフォーサーズの気に入っている点は、そのセンサーサイズが生み出すちょうどいいバランスだ。システム全体のサイズ感だけでなく、被写界深度のバランスもちょうど良く、あまり絞らなくてもパンフォーカスを狙うことができるので風景写真との相性も良い。浅い被写界深度が必要であれば、M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PROやF1.2シリーズのPROレンズもラインナップされているので自由度も高い。
マイクロフォーサーズレンズ全般に言えることだが最短撮影距離が短く、最大撮影倍率が大きいレンズが多いため、ほとんどのレンズでマクロ撮影が可能だ。M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PROも例外ではなく最短撮影距離が短い(撮影倍率0.22倍)。近接撮影になるほど被写界深度がより浅くなるため、F1.4のF値と組み合わせるとそれだけで雰囲気のある写真が撮れてしまう。ピントが浅いということは自分が何を見せたいのか、どこにピントを合わせたいのかを明確にしていないと、ただボケただけの写真になってしまうので注意が必要だ。
M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PROはPROレンズであるため、防塵・防滴性能もバッチリで滝のしぶきを浴びながらの撮影も全然余裕だ。最前面のレンズにはフッ素コーティングが施されており、水滴が流れ落ちやすいのでメンテナンスも簡単だ。レンズが濡れそうなシーンを撮影する場合は、ブロアーを用意しておくと簡単に水滴を取り除くことができる。是非ブロアーを一つカメラバッグに忍ばせておこう。
自分のフィールドに持ち出してみる
風景を撮影する上で解像感も重要なポイントとなる。OMデジタルソリューションズには画素数を向上させるマルチショット機能のハイレゾショットを搭載している機種があり、今回組み合わせているOM-D E-M5 Mark IIIにも搭載されている。OM-D E-M5 Mark IIIのハイレゾショットは三脚が必須となるため、小さな三脚でもいいので一つ用意しておくと便利だ。
シングルショットで2000万画素あり、ハイレゾショットを使用することで最大8000万画素(RAW記録時)での撮影も可能なので、ここぞというときはハイレゾショットで撮影している。高画素撮影ということはレンズに求められる性能も必然的に高くなるが、M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PROはハイレゾショットでも余裕を感じさせる写りだ。私の場合、レンズは資産だと考えているので今後ボディが高画素化しても対応できるレンズはお得感がある。
M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PRO+OM-D E-M5 Mark IIIの小型軽量コンビはものすごく楽だ。機材が小さい、軽いだけで撮影するときの気持ちの余裕も全然違ってくる。とくに山や森など足場が悪いところを歩くときや長距離移動する時にその恩恵を実感する。小さいカメラはアングルの自由度も高く、片手で撮影できるので、ファインダーを覗きながらだと大変なシーンでもバリアングルモニターを見ながらフレーミングも可能だ。
ズームレンズの魅力は焦点距離の自由度の高さだ。一方で、考え方によっては選べる焦点距離が多い分だけ迷うこともあるということだ。カバーしている焦点距離が広いほど悩みも増える。しかし、M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PROの様な単焦点レンズだと焦点距離で迷うことはない。ズームできないことをメリットに変えてしまうと軽快な撮影が可能となる。換算40mmは使いやすい焦点距離なのでズームしか持っていない、使ったことがないという人にとって単焦点デビューにもってこいの一本だ。
森の中や木々に囲まれたロケーションは日中でも意外と暗い。OM-D E-M5 Mark IIIには強力な手ぶれ補正が搭載されているが、被写体ブレを抑えるとなればシャッタースピードを確保する必要がある。F1.4の明るさがあれば、森の中などのロケーションでも十分なシャッタースピードを得られる。
まとめ
OM SYSTEMブランド第一弾として登場したM.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PROは、想像以上に撮影していて楽しいレンズだ。小型・軽量に防塵・防滴、F値の自由度の高さにPROレンズクオリティの描写性能と、マイクロフォーサーズの魅力がギュッと詰まった一本に仕上がっている。そして、M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PROの小型・軽量を生かせるOM-D E-M5 Mark IIIがラインナップされていることは、OMデジタルソリューションズのマイクロフォーサーズシステムの強みだ。
撮影に持ち出す際についつい便利なズームレンズに手を伸ばしがちだが、単焦点レンズだけ持って撮影に出かけてみるのもいいだろう。M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PROは単焦点レンズの気軽さと描写を十分に楽しむことができ、画角が制限されることで新しい一枚に出会うことができるだろう。自分の好みに焦点距離を合わせるのではなく、レンズの焦点距離に自分を合わせてみるのもいいかもしれない。風景から日常スナップまで幅広く使えるレンズなので、是非いろいろなシチュエーションに持ち出してみて欲しい。
■写真家:木村琢磨
1984年生まれ。岡山県在住のフリーランスフォト&ビデオグラファー。広告写真スタジオに12年勤務したのち独立。主に風景・料理・建築・ポートレートなどの広告写真の撮影や日本各地を車で巡って撮影。ライフワーク・作家活動として地元岡山県の風景を撮影し続けている。12mのロング一脚(Bi Rod)やドローンを使った空撮も手がけ、カメラメーカー主催のイベントやセミナーで講師を務める。