OM SYSTEM M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO|マイクロフォーサーズのポテンシャルを最大限に引き出すPROレンズ標準ズーム
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はじめに
OM SYSTEM M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROはマイクロフォーザーズ規格に準拠したズームレンズだ。35mm判換算で広角端24mm相当から望遠端80mm相当をカバーしており、また開放絞り値F2.8の明るさを持っていることから大口径標準ズームレンズとなる。OM SYSTEMでは光学性能や耐候性が高いレベルの製品を「PROレンズシリーズ」としており、このレンズもそのなかの一本である。
発売は2013年とすでに10年近くも経つとともに、昨年2022年には後継モデルとなる「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II」が登場しているが、現時点においてはまだOM SYSTEMの現行製品としてラインナップされており、いまであればまだ店頭にて新品を手に入れることも可能だろう。そこで今回はこのM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROの特性を改めて検証しよう。
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROの主なスペック
■マイクロフォーサーズ規格マウント
■広角端12mm~望遠端40mm (35mm判換算24~80mm相当)
■レンズ構成 9群14枚(非球面EDレンズ1枚 非球面レンズ2枚 DSAレンズ1枚 EDレンズ2枚 HDレンズ1枚 HRレンズ2枚含む)
■最短撮影距離 ズーム全域0.2m
■最大撮影倍率 0.3倍(35mm判換算 0.6倍相当)
■フォーカシング機構 Movie and Still Compatible(MSC)機構
■絞り羽枚数 7枚(円形絞り)
■開放絞り値 F2.8
■最小絞り値 F22
■大きさ 最大径69.9mm 全長84mm フィルターサイズ62mm
■質量 382g (レンズキャップ、レンズリアキャップを除く)
■防塵防滴仕様 保護等級1級 IPX1
※OM SYSTEM(オリンパス)製防滴対応カメラとの組み合わせ時に有効。防塵設計
レンズ外観
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OM SYSTEM OM-5に装着したED 12-40mm F2.8 PRO。35mm判換算では広角端が24mm相当、望遠端が80mm相当の標準域をカバーする標準ズームレンズであり、使用頻度の高いレンズとなるだけにカメラボディに装着したシルエットがスマートなデザインであることは、扱いやすさの面も含め好感が持てる。
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鏡筒の長さは広角端12mm(左)と望遠端40mm(右)とで伸縮をする。最短撮影距離は全焦点域において0.2m。望遠端においてはレンズ先端から被写体まで7cm(最大撮影倍率35mm判換算0.6倍)まで近づいてのクローズアップ撮影が可能。広角端では9cmまで被写体に近づいてのワイドマクロ撮影もできる。
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鏡筒はPROレンズシリーズ特有の金属外装となり高級感のあるデザイン。マウントに近い位置に太いズームリングが、レンズ先端側にすこし細めのフォーカスリングが配されている。それぞれのリングに刻まれたパターンは異なっており、慣れれば指を添えた際の触感でリングの違いを判断できる。またAFとMFをフォーカスリングのスライド操作で瞬時に切り替えることができる「マニュアルフォーカスクラッチ機構」を搭載。フォーカスリングの回転両端にはストッパーが設けられているので、事前にフォーカス位置を最短距離にマニュアルで固定したうえで撮影を行うといった使い方にも向く。
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レンズ鏡筒マウント部にはファンクションボタン「L-Fn」が用意されている。このボタンはカメラに用意されているFnボタンと同様に「ボタンの設定」メニューから好みの機能切り替えを割り当てることができる。たとえばこの「L-Fn」に「AFStop」を割り当てておけば、「L-Fn」ボタンを押している間だけAFを停止させることができる。
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マウント接合部は堅牢な金属製。周辺部にはほこり、水滴の侵入を防ぐシーリング用リングが嵌め込まれており、これにより対応カメラとの組み合わせで強力な防塵防滴性能を発揮する。
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同梱の専用フード。外れ防止ロック付き。ロックの解除には横のボタンを押しながらフード全体を回す機構。収納時はフードを逆さ付けすることも可能だが、その場合にも取り外す際にはロックボタンを押しながら回す必要がある。
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開放絞り値がF2.8と明るい標準ズームレンズだが、マイクロフォーサーズ規格の特性から、同じ画角が得られるレンズでも、フルサイズ一眼カメラ用の開放絞り値F2.8標準ズームレンズと比べると圧倒的にコンパクトかつ軽量だ。同じくコンパクトなOM SYSTEM OM-5との組み合わせでは、女性の小さな手のサイズであっても無理なく操作できるだろう。
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M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROに専用フードを装着し、カメラグリップ ECG-5を装着したOM-5と組み合わせたスタイル。グリップを大きくすることでカメラのホールド感を高めより安定した撮影が行える。PROレンズの高級感と合わせ見た目も強い印象となる。
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M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROには、後継モデルとしてM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO IIが昨年発売されている。実はこの二本のレンズの基本設計はほぼ共通したものであり、外観もOM SYSTEMとなったブランド名とレンズ名のロゴ以外はほぼ変わりがない。違いとしてはM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO IIでは最新の工作精度をもってのレンズ組み立てや、最新のレンズコーティング技術などを積み重ねたことにより、より高い画質を引き出しているとのことだ。
筆者が実際にこの二本のレンズを撮影に使用してその違いを確認したところ、確かに新型のレンズの方がより解像感が高まっており、さらに輝度差の大きなシーンなどで発生していた光の滲みも大きく改善されていた。ただ、それらは極めて高い解像性能の要求と、暗い室内から明るい窓を撮影するといったようなかなり限られた状況下での違いでもあるので、ほとんどの被写体において、この初期型のM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROは十分に第一線で活躍してくれるはずだ。
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■撮影環境:F2.8 1/1600秒 ISO200 絞り優先モード +1.3EV WB晴天 仕上がりモードNatural S-AF 単写 S-IS Auto
広角端12mm、開放絞りF2.8にて撮影。画面中心および周辺の建物の描写で解像感を確認すると、中心部・周辺部のいずれでも解像感が高く、クリアで線の細い描写であることがわかる。
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO実写作例
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■撮影環境:F5.6 1/640秒 ISO200 絞り優先モード +0.7EV WB晴天 仕上がりモードNatural S-AF 単写 S-IS Auto
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■撮影環境:F5.6 1/1250秒 ISO200 絞り優先モード WBオート 仕上がりモードNatural S-AF+MF 単写 S-IS Auto
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■撮影環境:F2.8 30秒 ISO6400 マニュアルモード WB晴天 仕上がりモードVivid MF 静音連写 S-IS Auto
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■撮影環境:F2.8 60秒 ISO1600 マニュアルモード WB4200K 仕上がりモードNatural MF 単写 IS OFF ライブコンポジット100コマ合成
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■撮影環境:F5.6 1/800秒 ISO200 絞り優先モード +0.3EV WBオート 仕上がりモードNatural S-AF+MF 単写 S-IS Auto
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■撮影環境:F6.3 1/640秒 ISO200 絞り優先モード +0.7EV WBオート 仕上がりモードNatural S-AF+MF 単写 S-IS Auto
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■撮影環境:F5.6 1/80秒 ISO200 絞り優先モード +1EV WB晴天 仕上がりモードNatural S-AF 単写 S-IS Auto
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■撮影環境:F6.3 1/125秒 ISO200 絞り優先モード -0.3EV WBオート 仕上がりモードNatural S-AF+MF 単写 S-IS Auto
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■撮影環境:F2.8 1/1600秒 ISO200 絞り優先モード +1.3EV WBオート 仕上がりモードNatural S-AF+MF 単写 S-IS Auto
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■撮影環境:F5.6 1/2秒 ISO200 マニュアルモード WBオート 仕上がりモードi-Finish MF 単写 IS OFF ライブコンポジット8コマ合成
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■撮影環境:F4 1.3秒 ISO200 絞り優先モード +0.3EV WB晴天 仕上がりモードi-Finish S-AF+MF 単写 S-IS Auto
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■撮影環境:F11 1/60秒 ISO200 絞り優先モード +0.3EV WB晴天 仕上がりモードNatural S-AF+MF 単写 S-IS Auto
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■撮影環境:F4.0 1/20秒 ISO200 絞り優先モード WBオート 仕上がりモードNatural S-AF 単写 S-IS Auto 協力:高エネルギー加速器研究機構 SuperKEKB加速器
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■撮影環境:F4.0 1/4秒 ISO200 絞り優先モード -1.3EV WB晴天 仕上がりモードVivid S-AF+MF 単写 S-IS Auto
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■撮影環境:F8.0 1/250秒 ISO200 絞り優先モード +0.7EV WBオート 仕上がりモードNatural S-AF+MF 連写L S-IS Auto
PROクオリティな高画質レンズを手にするひとつの選択肢
M.ZUIKO DIGITAL 12-40mm F2.8 PROはオリンパス(当時)が『高い光学性能と防塵防滴、堅牢性を有し、どんな状況下でも常に高画質を提供する』ことを目指して、2013年に発売を開始したPROレンズシリーズ最初のレンズだ。以来、広角から望遠、魚眼、単焦点レンズなど数多くのモデルが発売され、2023年1月の現時点で15本のラインナップとなっている。
いずれのレンズもPROレンズの理念の下、このレンズと同時期に発売されたE-M1から、最新のOM-1/OM-5に至った現在でもOM/OM-Dシリーズのカメラの性能・画質を最大限に引き出してくれる。そのなかでも発売以来10年近くもPROレンズを代表する1本として最前線で活躍しつづけてきたM.ZUIKO DIGITAL 12-40mm F2.8 PROのポテンシャルは、後継モデルが出た現在でも劣ることはない。
発売開始から年月が経っていることから、これまで多くの製品が流通していることもあり、中古市場においても、価格も含め比較的手に入れやすい製品が多く存在する。もちろん画質が向上した最新型のM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO IIを選ぶメリットは十分に高いが、ユーザーが求める範囲で最適解を得られる選択肢があることはとても幸せだ。マイクロフォーサーズユーザーであればこれを機に、ぜひPROレンズが持つ高い画質と高品位な製品での撮影にトライしてみてはいかがだろうか。
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■写真家:礒村浩一
写真家。女性ポートレートから風景、建築、舞台、製品広告など幅広く撮影。全国で作品展を開催するとともに撮影に関するセミナーの講師を担当。デジタルカメラの解説や撮影テクニックに関する執筆も多数。写真編集を快適に行うためのパソコンのプロデュースも担当。