選ばない理由を探すことがとても難しい 最適解のミラーレス一眼|OM SYSTEM OM-1
はじめに
2022年3月にOMデジタルソリューションズから発売された「OM SYSTEM OM-1」は、マイクロフォーサーズ規格に準拠した最新のミラーレスデジタル一眼カメラだ。これまで同社はオリンパス社から継承したミラーレス一眼カメラ「OM-D」シリーズを主軸に販売を行ってきたが、このOM-1の発売にあわせシリーズ名を「OM SYSTEM」へと変更した。更にこのカメラの「OM-1」という名称は、かつてオリンパスが販売していたフィルム一眼レフカメラの銘機「オリンパス OM-1」の名を受け継いだものであることからも、OMデジタルソリューションズがこのカメラにかける想いは並々ならぬことがわかる。
新シリーズ最初のカメラとして発表されたOM-1だが実質的にはこれまでのOM-Dシリーズの後継機であり、現時点では最上位機に位置する製品と考えてよいだろう。その立ち位置からOM-D E-M1 Mark IIIおよびE-M1Xからの進化形といえる。事実、筆者もOM-1を発売と同時に導入し撮影に使用してきたひとりだが、その基本的な設計思想はOM-Dシリーズのそれと共通したものであり、多少の変化はあれども操作性などに戸惑うことはない。
発売後、一時期は品薄になるほどに多くの方が実際に購入したと聞いており、また各ジャンルの撮影を想定したレビュー記事も多く公開されていることからもOM-1の基本的な情報はすでに多く目にされていることだろう。そこでここでは発売直後からおよそ4ヶ月間にわたり、OM-1で様々な被写体を対象に撮影を行なってきたプロ写真家の視点からレポートをお送りすることにしたい。
OM SYSTEM OM-1の特徴と主なスペック
まずはOM-1の基本的な情報に触れておこう。OM-1はマイクロフォーサーズ規格のミラーレス一眼カメラで、有効画素数約2037万画素の4/3型イメージセンサーを搭載している。フルサイズセンサーのおよそ1/4の大きさとなるセンサーサイズであることから、使用するレンズの実焦点距離の二倍にあたる数値が35mm判換算の焦点距離となり、フルサイズセンサー搭載カメラとほぼ同じ画角の画像を得る為には1/2の焦点距離のレンズを選ぶ必要がある。つまりこれは同じ焦点距離のレンズであれば2倍の望遠効果を得ることができるという特性にもなる。
これにより同じ画角を得るのであれば、カメラ本体および使用するレンズの大きさもフルサイズセンサーを搭載したカメラのシステムと比べると小さく、質量も軽量にしやすいといった特徴がある。ただしマイクロフォーサーズセンサーはフルサイズセンサーと比べると小さいセンサーであることから、これまではフルサイズセンサーほどの高画素化が難しく、高ISO感度撮影時にはノイズが発生しやすいとされてきた。これらのデメリットを克服すべく最新の技術を投入し開発されたカメラが、このOM-1なのである。
■マイクロフォーサーズ規格準拠レンズ交換式カメラ
■有効画素数約2037万画素4/3型裏面照射積層型Live MOS センサー採用 スーパーソニックウェーブフィルター搭載
■アスペクト比4:3
■常用ISO感度200-25600 拡張ISO感度 L80・L100(ISO80・100相当)・32000-102400
■連写H 最高約10コマ/秒・低振動連写 最高約10コマ/秒・静音連写 約20コマ/秒・静音連写SH1 最高約120コマ/秒(ブラックアウトなし)・静音連写SH2 最高 約50コマ/秒(ブラックアウトなし)
■プロキャプチャー 最高約20コマ/秒・連写SH1 最高約120コマ/秒・連写SH2 最高約50コマ/秒(要対応レンズ使用)
■メカニカルシャッター1/8000~60秒/バルブ・電子先幕シャッター1/320~60秒・電子シャッター1/32000~60秒
■ハイスピードイメージャAF 1053点(クロスタイプ位相差AF)/1053点(コントラストAF)
■撮像センサーシフト式ボディ内手ぶれ補正 5軸7.0段分(対応レンズ使用で8.0段分)
■視野率約100%/約1.48倍~約1.65倍 アイポイント約21mm 約576万ドットOLEDビューファインダー
■3.0型2軸可動式背面液晶モニター 約162万ドット
■スロット1/スロット2 UHS-I/II対応 SD/SDXC/SDHCメモリーカードスロット
■MOV(MPEG-4AVC H.264/HEVC H.265) C4K・4K ・FHD・ (60p/50P/30p/25P/24P), 4K・タイムラプス動画対応
■三脚ハイレゾショット(JPEG 80M/50M/25M・RAW 80M画素相当)/手持ちハイレゾショット(JPEG 50M/25M・RAW 50M画素相当)
■無線LAN(2.4GHz/5GHz)・Bluetooth(Ver.4.2 Bluetooth Low Energy)内蔵
■防塵防滴IP53/IPX1 OMDS(オリンパス)製IP53/IPX1対応レンズとの組み合わせ時に有効
■耐低温仕様 動作保証気温-10℃~+40℃(動作時)
■大きさ 約134.8mm(W)×91.6mm(H)×72.7mm(D)
■質量 付属充電池およびメモリーカード含む、アイカップなし599g
製品外観
OM-1にM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO IIを装着。カメラ正面のメーカーロゴは引き続き「OLYMPUS」となっているが、今後発表される製品は順次「OM SYSTEM」に差し替えられる予定とのこと。OLYMPUS銘のカメラはこのOM-1が最後になるかもしれない。レンズ脇には新シリーズ名の「OM SYSTEM」の銘板が設けられている。
OM-1(右)とE-M1 Mark III(左)を正面から比較。E-M1 Mark IIIより幅0.7mm、高さ0.7mm、厚み3.8mm大きくなっているが見た目通りほぼ同じ大きさと考えて良いだろう。フロントダイヤルの形状と位置、機種名エンブレムなどの違いはあるが全体のフォルムやカメラとしての印象はそのまま継承している。
OM-1(右)とE-M1 Mark III(左)を背面から比較。こちらも正面同様にボタン類の細かな形状や配置の位置変更はあるものの、印象・操作性は継承されている。新しい点としてはリアダイヤル、Fnレバーの形状変更とAF-ONボタンが新設されたことが挙げられる。なお背面液晶モニターの裏側表面にもグリップ部に貼られているものと同じ貼り革が施されており、高級感の演出に一役買っている。
OM-1(右)とE-M1 Mark III(左)を上面から比較。フロントダイヤル/リアダイヤルの形状と配置、モードダイヤル・電源レバーの形状が変更された。本体上面の周縁部の段が無くなりなだらかな形状となっている。
E-M1 Mark IIIの操作系から、いちばんの大きく変更された点はフロントダイヤル/リアダイヤルの形状変更だ。E-M1 Mark IIIではフロントダイヤルはシャッターボタンと同軸に、リアダイヤルはカメラ上面に設けられていたものが、OM-1ではフロントダイヤル/リアダイヤルともにE-M1X同様の埋め込み式となった。これにより持ち運び時などの接触で意図せずダイヤルが回ってしまう事態を避けることができる。
バリアングル方式を採用した背面液晶モニターは約162万ドット3.0型(E-M1 Mark IIIは約104万ドット)。静電容量方式タッチパネルを採用しているので指先でのタッチ操作が可能。
二つあるメモリーカードスロットはスロット1・2ともにUHS-IIに対応した(E-M1 Mark IIIはスロット1のみUHS-IIに対応)。またそれぞれのスロットごとに撮影データの書き込み設定が可能。静止画を指定したスロットのメモリーカードのみに記録する[標準]、指定したメモリーカードの残容量が無くなったらもうひとつのメモリーカードに書き込みを切り替える[自動切り替え]、スロット1・2それぞれのメモリーカードに指定した画質モードで書き込む[振り分け]、スロット1・2両方のメモリーカードに同じ設定の画質モードで画像を記録する[同一書き込み]の4パターンが選べる。
リチウムイオン充電池は新型のBLX-1に刷新。標準撮影可能コマ数は約520枚(E-M1 Mark III採用のBLH-1は約420コマ)。これまでのBLH-1の直方体形状からかまぼこ形状へと変わりわずかに小さくなるとともに10g軽くなった。なおBLX-1とBLH-1に互換性はない。
ファインダーの自動切り替え機能用のアイセンサーがファインダー下部に配置されたことで接眼部の形状が刷新。それに伴いアイカップも新形状に変更された。OM-1ではEVFのパネルに約576万ドットの有機ELディスプレイ(OLED)を採用したことで、今まで以上により自然に近い見え方となっている(E-M1 Mark IIIは液晶ディスプレイ、約236万ドット)。
ファインダー倍率は 0.83倍 (35mm判換算)、表示遅れは0.005秒、高速フレームレート120コマ/秒に対応。雨中や雪中での撮影時でも曇りにくい防曇処理が施されている。なお同じく有機ELディスプレイを採用しているE-M5 Mark IIIのEVF(約236万ドット)と比較すると圧倒的に画質が高い。
カメラ上面左端に配置されたドライブ/AFボタンは中心部が窪んだ形状となり親指で押しやすくなった。電源スイッチのレバー形状も変更された。ドライブボタンの前面傾斜部には外部ストロボ用の汎用フラッシュ端子が用意されている。最近のカメラでは省かれることが多いが、プロユースの大型ストロボではいまでもカメラのシャッタータイミングとフラッシュ発光をシンクロさせる為のケーブルを使用する機会が多いので、E-M1シリーズも含め汎用フラッシュ端子が装備されていることは我々プロにはありがたい。
外部入出力端子部。上から3.5mm径マイク端子/3.5mm径ヘッドフォン端子/タイプD、HDMI端子/USB Type-C端子となる。HDMI出力は外部モニターへ映像とカメラ情報を表示させる[モニターモード]、外部レコーダーへ保存用の映像を出力する[記録モード]、対応するHDMI機器にRAW形式で映像を出力する[RAWモード]が選択できる。USB端子はUSB3.0対応。
PD規格に対応したモバイルバッテリー(27W以上)やACアダプターを対応ケーブルでUSB Type-C端子に挿すことで給電/充電しながらのカメラ動作が可能。PCソフト「OM Capture」でのカメラリモートコントロール時も給電しながらのテザー撮影が可能だ。
なおOM-1では付属のACアダプター(F7-AC)とUSBケーブルで直接電源コンセントに接続してバッテリー充電を行う。従来のバッテリー充電器は付属していないので、カメラ外部で充電するには別売りのバッテリー充電器 BCX-1を購入する必要がある。
パワーバッテリーホルダー HLD-10(別売)。OM-1はE-M1 Mark III同様に外付けパワーバッテリーホルダーを装着することで、充電池を1個追加装填可能。縦位置撮影用グリップとしてシャッターボタン、フロントダイヤル、リアダイヤル、マルチセレクター、十字ボタン、AF-ONボタン、ISOボタン、露出補正ボタン、ロックレバーが設けられている。
HLD-10を装着したOM-1(手前)とE-M1X。この形態となるとシャッターボタン周囲のボタン類配置なども含めてE-M1Xとの共通点が多く見られる。
HLD-10を装着したOM-1(右)とE-M1X(左)の背面。パワーバッテリーホルダー一体型のE-M1Xと比べると全体的に小さくなっており、実際に手にするとわずかなサイズ差でありながら、より凝縮されたホールド感が得られる。
OM-1ではBluetooth接続に対応したワイヤレスリモコン RM-WR1(別売)にも対応している。およそ5mの通信距離範囲内ならシャッターボタンの押下で静止画シャッターオン・動画撮影開始/終了の操作ができる。ただし同じくBluetoothでの接続となるスマートフォンアプリとの併用は不可。またリモコンとカメラを付属のケーブルで接続することで有線リモートスイッチとしての使用も可能。ピンジャック式(φ2.5)のE-M1 Mark IIIやE-M1Xでも有線接続でなら使用できる。リモコンは防塵防滴仕様(無線接続時IP57/有線接続時IP51)となっているので屋外のネイチャー撮影などでも安心して使用できる。
OM-1と同時期に発売されたM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO IIとの組み合わせ。前モデルのM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROから刷新された際に、防塵防滴性能もIP53に引き上げられたレンズであることから、OM-1との組み合わせではこれまで以上の耐候性を発揮する。なおFnボタンが設けられているレンズでは、OM-1のカメラ設定でFnボタンに機能を割り当て可能だ。
35mm判換算にして300-800mm(内蔵テレコン使用時375-1000mm)相当の超望遠ズームレンズM.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PROとの組み合わせ。最大1000mmクラスの超望遠レンズとしては軽量コンパクトなレンズだが、レンズ本体だけでも314.3mmの長さとなることから、OM-1との組み合わせではパワーバッテリーホルダーを装着した形態の方がより安定したホールドとなる。特に縦位置撮影時には必須と言えるだろう。
OM-1の画質を検証する
OM-1ではこれまでOM-Dシリーズに搭載されていた撮像センサー[4/3型Live MOS センサー]が[4/3型 裏面照射積層型 Live MOS センサー]に刷新された。有効画素数は約2037万画素とこれまでと変わりないが、センサーの構造が裏面照射積層型となったことでダイナミックレンジの拡大とノイズの低減が見込めるという。なお裏面照射積層型とは、これまで一部のフルサイズセンサー搭載カメラなどで採用されていた裏面照射型センサーの発展型センサーである。E-M1 Mark IIIやE-M1Xでは表面照射型センサーを採用していたのでこのOM-1では二段階分一気に進化したと言ってもよいだろう。
また撮影したデータを画像へと処理する画像処理エンジンはE-M1 Mark IIIのTruePic IXからTruePic Xへと進化した。これらの組み合わせによりOM-1ではこれまでより大幅な画質向上がなされたとOMデジタルソリューションズは謳っている。そこで実際にOM-1,E-M1 Mark III,E-M1Xを撮影比較することで画質の検証を行なった。なおこれらの検証はカメラで記録されたままのJPEG画像で行っている。
解像感検証
同じ条件の元、OM-1,E-M1 Mark III,E-M1Xのそれぞれで桜の木を撮影。画像中央部を等倍で切り出して比較を行なった。OMデジタルソリューションズではOM-1ではより解像感が高まっていると謳っているが、今回の撮影ではいずれの画像も非常に解像感が高く機種間の違いはほとんど見られない。細かい違いとしては若干ではあるが、花の淡い桜色がE-M1 Mark III/E-M1Xと比較すると少し深みのあるものとなっている点が挙げられるが、これは淡い色の桜の花は明るく白く写りやすいものであることから、OM-1では拡大されたダイナミックレンジによる効果で色の深みが引き出された結果かもしれない。
ISO感度の違いによる画質検証
高速道路の橋梁をOM-1で夜間撮影。カメラぶれを防ぐ為にカメラは三脚に固定。シャッターボタンはリモートスイッチを使用して押している。ISO感度を基準感度の200から常用感度上限の25600まで、さらに拡張感度上限の102400まで1EV分ごとに変更し、撮影した画像の中央部を等倍で切り出し比較した。注目点は橋梁の暗部のノイズと掲げられた横断幕の文字や橋梁鉄骨部の精細さとする。基準としてISO200の画像と比較することで画質の違いを確認した。
ISO200から1600まではまったく遜色もなく、躊躇うことなくこの感度を選択できる画質。ISO3200ではわずかながらも暗部にノイズを感じるが目を凝らさなければ判らない程度である。ISO6400になると暗部のノイズもそれなりに増えるが高感度撮影としては十分なレベルだろう。ISO12800~25600となったところで暗部のみならず中間調の部分でもノイズが目立つようになり文字や橋梁鉄骨部のディテールが緩くなってくる。ISO51200を超えるとカラーノイズも目立つようになり、最高感度のISO102400ではディテールが大きく崩れノイズも盛大に発生している。
同じ条件の元、OM-1,E-M1 Mark III,E-M1XのそれぞれでISO6400に固定して撮影。こちらも画像の中央部を等倍で切り出し比較した。E-M1 Mark III/E-M1Xと比較すると明らかにOM-1の画像はノイズ・ディテール保持の両面で優れていることがわかる。特にディテール保持による解像感の高さが際立つ結果となった。
上記の結果からもわかるように、OM-1では特に高ISO感度領域での画質向上が際立っている。これまでフォーサーズセンサーはそのサイズから高感度特性の引き上げが難しいと言われ続けてきたが、OM-1では新たに導入された裏面照射積層型センサーと新しい画像処理エンジンTruePic Xの組み合わせによって大幅に引き上げられている。一方、今回のテストにおいてはOMデジタルソリューションズが謳っているほどの解像感の改善を感じることはできなかった。とはいえ筆者としてはすでに十分に高い解像力を有していると判断している。むしろ三機種を同時に併用しても仕上がりに差が出ない点は。業務的な運用としてはメリットと捉えることができる。
ハイレゾショット
これまでOM-D機に搭載されてきたハイレゾショットは、もちろんOM-1にも引き続き搭載されている。これはカメラ内に搭載されたセンサーシフト方式の手ぶれ補正機構を転用した機能で、イメージセンサーを0.5ピクセル単位でずらしながら8枚の画像を撮影し合成処理することにより解像度を補完するというものだ。これによりOM-1では通常は約2037万画素(5184 x 3888)で記録される撮影画像を、最大で約8000万画素相当(10368 x 7776)にまで拡張し保存することができる(三脚ハイレゾショット)。これを利用することによりフォーサーズセンサーの弱点のひとつである解像度の上限を補うことも可能だ。
実際に筆者が請け負う撮影業務のほとんどは約2037万画素の画像で事足りており、通常は5000万画素もの高解像度のカメラを必要とすることはほとんどない。それでも要件によっては高解像度な画像が必要となることもあるが、そのような場合でもこのハイレゾショットで得られる画像でほぼ賄えている。ただしハイレゾショットの特性上、動きのある被写体はぶれて写ってしまうのでその点は念頭にいれておき、正しい使い所を見極める必要はある。なお三脚ハイレゾショットで設定可能なISO感度はL80,L100、200~1600に限定される。
ハイレゾショットには、手持ち撮影時でも有効となる「手持ちハイレゾショット」モードもある。このモードにすると12枚の連写が行われ、そのコマ間に撮影者の揺れで発生するわずかな画角のずれを、ハイレゾショットでの補完用画像サンプルとして利用し合成処理を行うことで、最大5000万画素相当(8160 x 6120)にまで拡張した画像を保存できる。
ただE-M1 Mark IIIまでは撮影後の合成処理に10秒前後かかっていた為、通常の撮影ほどテンポよく撮影を進めるのは難しかったのだが、このOM-1では合成処理が大きく短縮され5秒ほどの処理時間となった。これにより撮影テンポも上がるので、スナップ撮影といったこれまでは難しかった撮影シーンでも、ハイレゾショットを積極的に利用して高画素の画像を得ることもできるだろう。なお手持ちハイレゾショットでは設定可能なISO感度はL80,L100、200~102400と、三脚ハイレゾショットとは違い制限がない。
手持ちハイレゾショットモードにした状態で散策しながらのスナップ撮影。1コマ撮影ごとに背面モニターで確認できるようになるまで5秒ほどのタイムラグが発生するが、それ以外はなんら普通の撮影と変わらない感覚で撮影できる。そもそも筆者はスナップ撮影においては即時モニターで確認することも少ないので、タイムラグ自体はあまり気にならない。ただし動く人や風に揺れる物体などはぶれて写るのでそれを見越しておく必要はある。
より自由度の高まったAFシステムとインテリジェント被写体認識
OM-1ではAFシステムが大幅に強化されている。E-M1XおよびE-M1 Mark IIIでは121点であった像面位相差AFセンサーが、OM-1で撮像素子のほぼ全画面をカバーする1053点に拡充された。さらにイメージセンサーのひとつひとつの画素のフォトダイオードを4分割としたことで縦横両方向での位相差情報を取得できるようになった。これに TruePic X の高速演算能力と新しいAFアルゴリズムを組み合わせたことで、さまざまな被写体において高い精度でのAFおよび低輝度AF限界-5.5EVでのAFが可能となった(S-AF、ISO 100相当、F2.8レンズ装着時。E-M1 Mark III/E-M1Xは低輝度AF限界-3.5EV)。さらに顔優先/瞳優先AFもより高い精度と追随性を獲得した。これらは動画撮影時にも対応している。
AFエリアはAllターゲット(1,053点)、Singleターゲット(1点)、Smallターゲット(9点)、Crossターゲット(39点)、Middleターゲット(63点)、Largeターゲット(165点)と、ユーザー自身で点数と移動ステップ数を設定できるカスタムターゲット(4パターン設定可)が選択可能。フォーカスモードはシングルAF、シングルAF+MF、コンティニュアス AF、コンティニュアス AF+MF、マニュアルフォーカス、追尾AF、追尾AF+MF、プリセットMF、星空AF、星空AF+MFから任意のモードを選択できる。
E-M1Xに搭載されていたインテリジェント被写体認識機能がOM-1にも搭載された点にも注目したい。このインテリジェント被写体認識機能は、これまでOMデジタルソリューションズがオリンパス時代から培った膨大な被写体の情報を基に、人工知能(AI)の基礎技術のひとつであるディープラーニングにより統計的に判別し被写体を認識する機能だ。E-M1Xではモータースポーツ、飛行機、鉄道、鳥の4種類だったが、OM-1ではこれに犬猫が追加されて5種類となった。
このインテリジェント被写体認識機能を活かしたAI被写体認識AFを実際に使用すると、その認識率の高さに驚く。対象の被写体であればこの機能を積極的に利用しよう。筆者は正直いうとそれほど動きものの撮影を得意とするカメラマンではないのだが、このAI被写体認識AFを利用することで、特に動きの早い飛行機(ヘリコプターも含む)、鉄道、鳥の追尾撮影ではAFの歩留まりが確実に高くなる。これぞ技術の進化というものだろう。
なお、E-M1 Mark IIIにはインテリジェント被写体認識機能およびAI被写体認識AFは非搭載である。これはE-M1Xのように画像処理エンジンを二個使用しなければ処理しきれないほどのパワーが必要だったからだ。それを一個の画像処理エンジンで処理できるTruePic Xの能力は素晴らしいものだ。ところで、E-M1Xでは被写体検出追尾AFを有効にするにはフォーカスモードをC-AF+TRに設定する必要があったが、OM-1ではS-AF、C-AF、C-AF+TRのいずれでも有効となった。この点も進化した点だといえる。
被写体をファインダーで捉え続ける超高速連写
カメラにおいてシャッタースピードは露出をコントロールするための機構であると同時に、写真表現に時間という事象を閉じ込める欠かせないファクターとなる。特にハイスピードなシャッタースピードは肉眼では捉えきれない瞬間を静止画に焼き付けていくことで、そこに特別な意味を持たせることができるのだ。昔からその特別さを得るためにカメラメーカーはこぞって速いシャッタースピードと、それを連続して記録できる連写速度を競ってきた。それは現在フィルムからデジタルになったことでメカニカルな制限を大きく超え、すでに電気的な限界への挑戦となっている。実はこの電気的な限界というものが意外なほどにやっかいなもので、カメラ開発の現場では膨大な時間をかけて、極僅かとも思える改善策を無数に積み上げることで、結果的に驚くほどの進化に繋げるという作業を繰り広げているのだ。
OM-1は現時点において圧倒的ともいえる連写速度をもったカメラだ。物理的にシャッターを駆動させるメカニカルシャッターと電気的に露光時間を制御する電子シャッターのハイブリットな機構を有することで、それぞれのメリットをうまく使い分けている。通常はメカニカルシャッターを使用して1コマ撮影および秒間最高10コマまでの連写撮影を制御しており、フォーカルプレーンシャッターならではのメリット(動体歪みが発生しない、フリッカーが起きにくい、1/250フラッシュ同調速度など)を活かせる。一方、電子シャッターならではのメリット(静音無振動シャッター、高速連写、高速シャッタースピードなど)を活かすことができる撮影モードも豊富に搭載しており、これらを目的に合わせて適切に選択することでさまざまな写真表現への対応が可能だ。
特筆すべきは電子シャッターでの撮影時には、最高でおよそ秒間120コマという超高速な連写が可能な点だ。[静音連写SH1]モードを選択することでこれまでには考えられなかった被写体の瞬間的な姿を捉えることができる。実際には筆者としてはここまでの高速連写撮影を行うことは稀ではあるが、この機能は表現の大きな可能性に繋がるものだ。ただし[静音連写SH1]モードではピント、露出は1コマ目で固定されるといった制限もあるので、追尾AFなどを活かした撮影を行う場合は[静音連写SH2]モード(最高約50コマ/秒)を選択すると良い。なお[静音連写SH1] [静音連写SH2]モードではシャッターが下りた瞬間でも画面が暗転しないブラックアウトフリーとなっており、シャッターを切りながらもEVFもしくは背面モニターで被写体を確認しながらの撮影が可能だ。これだけの高速連写を可能とすることができたのも、画像の高速処理を可能とした新画像エンジンTruePic Xを採用したことによるところが大きい。
OM-1ではプロキャプチャーの秒間最高コマ数も倍増された。プロキャプチャーとは撮影時にシャッターボタンを押した瞬間から一定の時間を遡って画像を保存できるという機能だ。たとえば枝にとまった鳥の飛び立つ瞬間を撮影しようとした際に、飛び立つ瞬間にシャッターのタイミングが合わず撮り逃してしまうことも多いが、このプロキャプチャー機能を使えばAF/AE固定で最大120コマ/秒(AF/AE追従最大50コマ/秒) の連写を開始し、シャッターボタンを全押しする前の状態から最大70コマの画像を保存することができる(E-M1 Mark III/E-M1XではAF/AE固定で最大60コマ/秒、AF/AE追従最大18コマ/秒の連写で最大35コマの画像を保存可能)。
ここまでくるともはや動画との境目はわずかな差となり写真というものの立ち位置が曖昧になりかねないが、技術としてはこれまで難しかった撮影を、いともたやすく叶えてくれる性能を備えたツールの存在はとても心強い。
高い画質と創造性をサポートするテクノロジー
高い解像感とノイズの少ない高感度特性を得たOM-1だが、その基本性能を最大限に引き出すためのテクノロジーが惜しみなく搭載されているのもこのカメラの特徴だ。画質の低下の大きな一因となるカメラぶれを抑制する機構やイメージセンサーへのほこりやゴミの付着を軽減する機構などがそれだ。ここではこれらの機能に注目する。
驚異的な効果をもたらす手ぶれ補正
カメラ内のイメージセンサーを手持ち撮影時に発生するカメラのぶれを相殺する方向に動かし、相対的にセンサーに到達する光束のずれを抑制することで露光中に像がぶれて記録されることを防ぐ機構が「手ぶれ補正機構」だ。オリンパスではデジタル一眼レフカメラEシリーズの頃からこの機構をカメラに搭載してきており、ミラーレス一眼のOM-DシリーズおよびPENシリーズにおいてはより効果の高い機構を採用してきた。そしてOM-1ではそれを継承するとともに更に磨き上げたことで、イメージセンサーが生み出す高画質を最良な状態で記録できるようにされている。
OM-1に搭載された「手ぶれ補正機構」はボディ単体の補正効果としてシャッタースピード換算7段分の効果を持つ。これは単純計算にして1/250秒のシャッタースピードでの手持ち撮影時に手ぶれが発生する程度を、1/2秒の撮影時でも得られるということになる。この効果の数値はE-M1 Mark III/E-M1Xでも同等となってはいるが、OM-1に搭載される際に動作アルゴリズムの改良がなされたことで、レンズ軸回転により発生するぶれの軽減がなされたと聞く。
更にレンズ内手ぶれ補正機構が搭載されている対応レンズとの組み合わせでは「シンクロ手ぶれ補正機能」の効果により最大で8段もの補正がなされるという(E-M1 Mark III/E-M1Xでは7.5段)。最近では多くのメーカーのカメラに手ぶれ補正機構が搭載されているが、センサーサイズの大きさのメリットもあり補正効果の高さではOM SYSTEMの製品は群を抜いている。その効果はM.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PROのような超望遠レンズでの撮影時には驚異的な効果を発揮する。35mm判換算にして1000mm超えの超望遠レンズを手持ち撮影でぶらさずに行えるというのは、少し前まではまったく考えられなかった事態だ。
OM-1にて新たに搭載された「手持ち撮影アシスト機能」は撮影時のEVF画面および背面モニターにカメラのぶれ具合をリアルタイムに表示する機能である。画角の中央部に表示された四角い枠のなかに、レンズ光軸が向いている方向を点として浮かばせるように表示させることで、カメラがどのようなぶれ方をしているかを確認し、それを極力抑えるようにして撮影することによって手ぶれの発生を起こさないようにすることができる。光軸の点を四角枠のなかから出さないようにカメラをホールドすることで、手ぶれ補正機能を最大限に活かした撮影が行える仕組みだ。なお「手持ち撮影アシスト機能」の枠線表示はカメラ設定にて表示/非表示の切り替えが可能。
忘れた頃に効果を思い出す伝家の宝刀ダストリダクション機構
レンズ交換式デジタルカメラの大きな問題のひとつに、マウント内のイメージセンサーに付着するほこりやゴミの問題がある。これらのほこりやゴミはレンズ交換を行う際に外部から舞い込んだものと、カメラ内部で発生する機械的なダストが原因のものがあり、これらがセンサーの表面に付着することでレンズからの光を遮り影が発生し画像に黒点や細い線として記録されてしまうのだ。このほこりやゴミを除去するにはセンサーをブロアの風で吹くか直接拭いて掃除する必要があるが、かといって敏感な部材であるセンサーの表面に触れるのはとても注意が必要な行為だ。本音を言うとできるだけ触りたくない。
しかし筆者の経験では20年近くの間に使用してきたオリンパスの歴代機ではゴミが付着して困ったことは数えるほどしかない。オリンパス機には2003年発売の同社初のデジタル一眼レフカメラE-1の頃から強力なダストリダクション機構が備えられており、この効果によってほとんどのほこりやゴミは瞬時に弾き飛ばされてしまうからだ。現在では各社のカメラにもダストリダクション機構が搭載されているが、筆者の経験上OM SYSTEM/OLYMPUS機のダストリダクション機構はそれらのなかでもダントツに強力だと感じている。
OM-1のダストリダクション機構はイメージセンサー最前面に設けられたガラスカバーを、電源オンと同時に30000回/秒以上の超高速で瞬時に振動させることにより表面に付着したほこりやゴミを弾き飛ばすというものだ。この効果は非常に高く、うっかりするとセンサーを清掃する必要性そのものまでも忘れてしまうほどだ。ただし油分や海の塩分などを含んだ汚れはダストリダクション機能では完全に除去できない場合があるので、その際はメーカーによるクリーニングを受けることをお勧めする。
デジタルならではの表現を拡げる コンピュテーショナルフォトグラフィという考え方
これまでオリンパスのカメラではデジタルカメラならではといえる様々な機能を積極的に取り入れてきた。撮影した画像の彩度をあえて極端に上げてカラーバランスを変化させたり、わざとノイズの強い画像となるように画像処理を加えるアートフィルターや、人物の肌を認識して滑らかにするeポートレート(美肌処理)などの機能だ。今となっては各社多くのカメラやスマートフォンのカメラにも搭載されており身近なものとなっているが、これらデジタル処理を前提にした機能をいちはやく取り入れたことによって、オリンパスPENシリーズなどは個性的なカメラとして受け入れられてきた。もちろんこれまでのOM-Dシリーズでもこれらデジタル処理を前提にした機能を搭載することで、デジタルカメラならではの表現をユーザーに提供してきている。
今回、OM-1をリリースするにあたりOM SYSTEMではこれらの機能をあらためて「コンピュテーショナルフォトグラフィ」と位置付けたことにより、これまで以上にデジタル処理を前提とした画像作りを前面に押し出し、OM-1およびそれに続くモデルの性格を明確にしようと考えていることが伺える。そもそもコンピュテーショナルという言葉にあまり馴染みがないかもしれないが、この言葉自体は2000年台前半頃からコンピューターに関する研究者の間では用いられていたともいわれており、コンピュテーショナルフォトグラフィを簡単に解釈するならば、レンズを通して光学的に捉えた映像をカメラ内でデジタル処理したうえで出力・記録する手法と理解してもよいだろう。
筆者にとってもすでにデジタル処理を伴う画像の制作は日常的なものとなっており、OM-1にも搭載されている「ライブコンポジット機能」などはすでに欠かせない表現手法として利用している。
ライブコンポジット
ライブコンポジットはOM-1/OM-Dにおいて代表的なコンピュテーショナルフォトグラフィのひとつだ。任意に設定された露出設定で撮影した複数の画像を比較明合成と呼ばれる方法により自動的に合成、保存することで星の周回運動を夜空に輝線として描くことなどができる。OM-1ではこれまで最高ISO1600までに制限されていた感度設定が、最高ISO6400まで設定可能となった。1コマにおける露光時間は1/2~60秒の範囲で選択する。またOM-1ではライブコンポジット撮影時に手ぶれ補正機能を併用できるようになった。星へのピント合わせには星空AFが便利。
OM-1ではライブコンポジット撮影においても手ぶれ補正機能を有効にすることができるようになった。これにより三脚を使用できないような状況でも、ブレを最小限にするようにしてしっかりとホールドすれば、手持ちでの夜景や星景撮影が可能となる。ある程度の慣れが必要だし全コマでぶれのない撮影が可能とまではいかないが、これまででは考えられなかったシーンでの撮影が可能となるのは驚きでしかない。
ライブND
ライブNDもコンピュテーショナルフォトグラフィの代表的な機能。シャッター優先モード、マニュアルモードで使用可能となり、カメラへ取り込む光量を減衰させるNDフィルター同様の効果をデジタル処理にて擬似的に得られる機能だ。効果はND2(-1EV)から1EV間隔でND64(-6EV)まで選択が可能(E-M1 Mark III/E-M1XではND2からND32まで)。一般的に水の流れなど動きのある被写体をスローシャッターで撮影する時などに使用する。ライブビュー上では事前にスローシャッター効果の確認を行うこともできる。
ライブND64を使用して川の水をぶらして流れを表現。日中の明るい日差しの下でもライブNDの効果でスローシャッターでの撮影が可能となった。ただしND64を適用しても露光時間4秒の露出バランスを取る為には絞りをF22まで絞らなくてはならず、それにより全体の解像感が失われてしまった。できることならば更に-1EV分の減光効果が得られるND128の設定も追加して欲しいと思う。
早朝日の出の浜辺を撮影。朝日に輝く海の表面をスローシャッターでぶらして撮影することで静かさと力強さを同時に表現。ただし30秒の長秒露光を行う為にND1000(-10EV)フィルターをレンズに装着したうえで、OM-1のライブND機能(ND8 -3EV効果)を併用した。これにより必要以上に絞りを絞ることなく、解像力が高まるF5.6で撮影を行うことができた。無理にライブNDのみで撮影するのではなく、必要に応じてガラスフィルターとの併用を検討するとよい結果を導き出せる。
OM-1で利用できるコンピュテーショナルフォトグラフィには、上記以外にも先の章にて紹介した「ハイレゾショット」や、被写体を手前から奥までピントを合わせる位置を変えながら撮影したのちに合成して擬似的に深い被写界深度に納めた画像を得ることができる「深度合成」、露出を変えながら撮影した複数枚の写真を合成することで暗部からハイライト部までの階調をひとつの画像で表現する「HDR撮影」なども用意されている。もちろんデジタル処理にばかり頼っていては写真の本質が見えにくくなってしまうが、これらの機能は通常の光学的な写真の範疇を超えた表現方法と捉え、デジタルならではの作品を生み出すツールとしてうまく活用することが大切だろう。
筆者にとっての最適解を引き出してくれた、ちょうどよい最前線カメラ
今回は4ヶ月間という長期間にわたり、筆者が実際に業務としての撮影にOM-1を用いたうえでの主観的なレポートとさせていただいた。それだけに前機種から改善された点、変わっていない点などがより明確になっているはずだ。筆者はすでに業務使用のカメラとしてOM-1をメイン機として運用しているが、これまでマイクロフォーサーズ機の弱点であった高感度特性に関しては十分に満足のいく仕上がりと感じている。さらにOM-1の画質であれば、最も画質が高いとされる基本感度のISO200に加え、常用でISO3200、高感度撮影が必須となる状況ではISO12800までは躊躇なく使用できる。画像自体の解像力はすでに申し分のないレベルであることからも、OM-1はプロの現場でも十分に通用するカメラだと断言できる。
時折マイクロフォーサーズのフォーマットに不安を持つ意見も耳にするが、フルサイズ機より深い被写界深度は、むしろ業務撮影においては解像力の面から絞りすぎによる画質低下を引き起こすことのない適切な絞り値を選べるメリットとなっている。4:3の比率もトリミングを前提とする撮影ではむしろ自由度が高いのである。なによりOM-1では防塵防滴能力も大幅に強化されており、ちょっとやそっとでは荒天に負けることもない。もはや撮影できない理由を探す方が難しいほどだ。
OM-1というカメラはコンピュテーショナルフォトグラフィという言葉を前面に掲げることとなった最初のカメラであることからも、高精度なメカニカルと自由度の高いコンピュテーショナル機能が深く融合した一台となっている。これはオリンパスからカメラ技術を継承したOMデジタルソリューションズが目指す方向性のメッセージとして受け取れるものだ。非常に完成度が高いカメラだけに個人的にはすでに十分な資質をもったカメラとなっていると感じているが、なによりかつての銘機「OM-1」という名を50年の時を経たいま、威風堂々と継承したカメラであるだけに、応援の意味も込めて今後の進化をまだまだ楽しみにしてしまうのである。
■写真家:礒村浩一
写真家。女性ポートレートから風景、建築、舞台、製品広告など幅広く撮影。全国で作品展を開催するとともに撮影に関するセミナーの講師を担当。デジタルカメラの解説や撮影テクニックに関する執筆も多数。写真編集を快適に行うためのパソコンのプロデュースも担当。