OM SYSTEM『OM-1 Mark II』レビュー|吉住志穂
はじめに
OM SYSTEMのフラッグシップモデルとして、新たにOM-1 Mark IIが発売されました。OM-1の後継機となり、外観はほぼ変わりありませんがOM SYSTEMのロゴが入り、「II」のマークをボディの下部に見ることができます。有効約2,037万画素のイメージセンサーを搭載し、画像処理エンジンは「TruePic X」。メニューやボタン、ダイヤルの操作感はそのままに8.5段分の手ぶれ補正機能、ライブGND、14bitハイレゾショットといった機能を新たに搭載しています。ファインダーの視野率は100%で、約576万ドット。背面のモニターは3.0型・約162万ドットで、明るいところでも見やすいです。バリアングル式なので、縦位置、横位置の撮影ともにローアングル、ハイアングルの撮影がしやすく便利です。
システムとしての携帯性
OM SYSTEMカメラやレンズは一眼カメラの中でも小型軽量なのが魅力です。フラッグシップ機であるOM-1 Mark IIであっても持ち運びしやすいサイズ感で、合わせてレンズもコンパクトな作りなので、長時間の撮影でも楽しめます。また、レンズ交換時にセンサーへのゴミがつきにくいのは安心感がありますし、高い防塵防滴性能がカメラ内部を守ってくれるので、集中して撮影ができます。
ハイレゾショット
メニューの中にコンピュテーショナル撮影の項目があり、ここにはOM-1 Mark IIならではの機能が集まっています。そのトップにあるのがハイレゾショット。複数の画像を合成することで、より高解像でノイズの少ない画像を得ることができる機能です。三脚を使用して撮影する「三脚ハイレゾ」(約8,000万画素)と手持ちで撮影できる「手持ちハイレゾ」(約5,000万画素)から選択できるので、撮影の自由度が高くなります。また同時に記録するRAWの記録ビットが、「12bit」と「14bit」から選べるようになりました。「14bit」はデータ容量が大きくなってしまいますが、階調再現性は高くなりますので、風景撮影などではかなり効力があるでしょう。通常撮影、三脚ハイレゾ、手持ちハイレゾを実際に撮影して同じ大きさに拡大してみると、通常撮影よりもハイレゾで撮影した画像の方がより解像感が高くなっているのがわかります。
通常撮影と比較してみると、三脚ハイレゾ、手持ちハイレゾともに、よりレンガの部分をシャープに写しているのがわかります。
NDとGND
コンピュテーショナル撮影にはNDフィルターをかけることなく、明るい場所でもスローシャッターが切れるライブND機能があります。
さらにOM-1 Mark IIの新たな機能として、明暗差のある部分で輝度差を少なくするためのライブGNDが加わりました。
通常のガラスフィルターにハーフNDフィルターがありますが、その効果をデジタルで再現するという機能です。GNDの段数を2/4/8から選ぶことができ、8では3EV分の減光効果があります。また、グラデーションの境目の強弱をSoft/Medium/Hardから選択することができます。Softにすると境目がなだらかになり、Hardははっきりするので、被写体によって使い分けるといいでしょう。また縦横だけではなく、斜めに効果をかけることもでき、上下の位置調整も可能です。減光効果の違うフィルターを複数持つことなく撮影できるのは、とても便利です。
地上の景色に露出を合わせると、空が白っぽくなってしまうのでGNDをかけて空と地上の露出を揃えました。山の稜線が平らに近いので、そのあたりに境目を持ってくることで、違和感なくグラデーションをつけることができます。
通常撮影ではコントラストが高く、空に露出を合わせると鳥居の部分は真っ暗です。そこで、斜め左上にGND効果をかけ、全体の露出を明るくしました。すると明暗差が縮まり、全体的に諧調豊かになりました。
深度合成
コンピュテーショナル撮影の項目にはOM SYSTEMのカメラではお馴染みの深度合成も含まれています。クローズアップ撮影では被写界深度が極めて浅くなります。絞りを絞り込めば被写体全体をシャープに写すことはできますが、絞り込むと背景もくっきりと写ります。しかし、この深度合成を使うと、背景はぼかしつつ、主役の部分だけをシャープに写すことができるのです。これは連写と合成機能を利用したもので、手前から奥へと自動でピント位置をずらしながら連写し、それをカメラ内で合成しているのです。花や昆虫、アクセサリーなど、小さな被写体をクローズアップするときに便利です。合成時に上下左右7パーセントカットされるので、それに合わせて広めにフレーミングしておく必要があります。
AI被写体認識AF
カメラが被写体を検知してピント合わせを行う「AI被写体認識」は人物、モータースポーツ、鉄道、飛行機、野鳥、犬・猫の6種類。「顔・瞳検出」機能は以前からありましたが、この「AI被写体認識」の枠組みに含まれました。野良猫にカメラを向けてみると、顔の部分を認識し、瞳の部分もAF枠が表示され、認識していることがわかります。目をつぶっていても認識されていました。
まとめ
様々な機能が搭載された新モデルですが、OM-1からの買い替えの大きなポイントとなるのはライブGNDでしょうか。風景を撮る時には、明暗差のある朝や夕暮れのシーンで効果を発揮するでしょう。コンパクトなシステムでありながら高画質で手ぶれ補正も強力、高い防塵防滴性能と、とても使い勝手の良い仕様なので、どのようなシーンでも安心して使えるのが魅力的なカメラです。
■写真家:吉住志穂
1979年東京生まれ。日本写真芸術専門学校卒業。写真家の竹内敏信氏に師事し、2005年に独立。「花のこころ」をテーマに、クローズアップ作品を中心に撮影している。2021秋に写真展「夢」、2022春に写真展「Rainbow」を開催し、女性ならではの視点で捉えた作品が高い評価を得る。また、写真誌やウェブサイトでの執筆、撮影講座の講師を多数務める。