OM SYSTEM OM-3|クラシカルな外観と最新機能を楽しむ旅と日々

はじめに
2025年3月1日に発売されたOM SYSTEM OM-3は、往年のフィルム一眼レフカメラのOM-1に似たクラシカルな外観を持ちながら、フラッグシップ機にも負けないような機能を備えたミラーレス一眼カメラです。今回は本機の特徴と実際に使ってみた所感を、旅と日々の撮影からご紹介します。

■撮影環境:F8.0, 1/320秒, ISO 200, WB 晴天, カラープロファイル2
カラーからモノクロまで、バリエーション豊かな仕上がり設定
OM-3には、PEN-F、E-P7に続いてカラープロファイルコントロールとモノクロプロファイルコントロールが搭載されています。PEN-Fと同様にカメラフロント部にあるダイヤルを回すことでこれらの機能、そして標準の仕上がり設定(ピクチャーモード)とアートフィルター、そしてカラークリエイターの切り替えができるようになっています。
その中でカラープロファイルコントロールとモノクロプロファイルコントロールに関しては、以前の記事で詳しく解説しているため、今回は簡単にご紹介します。

カラープロファイルコントロール
同じ写真で比較すると違いがわかるかと思いますが、Naturalとカラープロファイル(以下CP)のプリセット、CP1は同じ、CP2になると色に深みが増し、CP3は彩度も明度も高くなり、CP4では全体的にフラットな仕上がりとなっています。
■撮影環境:F1.8, 1/6400秒, +0.3段, ISO 200, WB 晴天
建物の内外ともに素敵な装飾が施されている19世紀末に建てられたビル。階段と手すりの曲線が美しいのですが、CP2よりもCP3を用いることで建物の重厚感が伝わる仕上がりとなりました。
■撮影環境:F1.8, 1/125秒, -1.0段, ISO 1250, WB オート
シドニーから北へ約160kmの街、ニューカッスルを訪ねました。郊外ののんびりした街のちょっとシャビーな雰囲気を出すには、CP2よりもCP4のフラットさが自分の気持ちにぴったり合いました。
■撮影環境:F4.0, 1/800秒, +0.3段, ISO 400, WB 晴天
明石海峡大橋と星空を撮影。VividよりもCP3の方が夜空はしっかり暗く、橋のライトアップと星は鮮やかに表現できています。
■撮影環境:F1.8, 1秒, ISO 1250, WB オート, 三脚使用
ほぼ満開のミモザは黄色が鮮やかで綺麗ですが、カメラの設定で色の鮮やかさが強いと黄色がキツく、色飽和を起こしてしまいます。むしろフラットでやわらかい印象に撮ろうとCPのプリセット4を選んだところ……今度は黄色の彩度が低くなり過ぎてしまいました。そこで、CPの黄色の彩度をプリセット4の既定値(-4)から(-1)に上げてみたところ、フラットな印象のままで黄色の鮮やかさを表現することができました。
こうして自分が思うイメージに合わせて色を作っていくことができるのが、このプロファイルコントロールの楽しいところです。
■撮影環境:F1.8, 1/4000秒, +1.0段,ISO 200, WB 晴天
モノクロプロファイルコントロール
こちらでも、モノクロプロファイル(以下MP)のプリセット、MP1はモノトーンと同じ、MP2は全体的にコントラストが上がって深みが増す印象です。MP3は赤のフィルターが加わることで、被写体の赤色が抜けて白くなり、青空と白い雲のコントラストが際立ちます。MP4は全体的にコントラストが低く、柔らかい印象の仕上がりになります。
■撮影環境:F8.0, 1/500秒, -0.3段, ISO 200, WB 晴天
THE額縁構図となる場所を見つけました。通常のモノトーンとMP2とを比較すると、床や壁のディテール、奥の建物のレンガの質感、そして空の部分で粒状感の違いがわかります。
■撮影環境:F8.0, 1/500秒, -0.3段, ISO 200, WB 晴天, MP2
MP2とMP3で設定を変更して撮影。MP3の赤いフィルター効果により、空の表情が豊かになったとともに、木々のディテールも描写されています。
■撮影環境:F8.0, 1/320秒, +0.3段, ISO 200, WB 晴天, MP2
放置されたショッピングカートが夕方の光を受けて、長い影を伸ばしていました。MP4にすることで夕方のやわらかい光の中に佇む様子が伝わってきます。
■撮影環境:F1.8, 1/3200秒, +0.3段, ISO 200, WB 晴天
カラークリエイター
カラークリエイターは、カメラ内で30種類の色相と-4から+3までの8段階の彩度を自由に調整し、バリエーション豊かなカラーフィルターをかけたような独特の色合いを作り出すことができる機能です。被写体によってこの機能が合う・合わないがあり、個人的には使いこなすのがちょっと難しい印象ではありますが、夕景撮影やお花・紅葉、そして水族館での撮影におすすめです。

明石海峡大橋の夕景をカラークリエイターを用いて撮影しました。カラー0から29までのフィルターをひとつずつ用いて撮影し(彩度は+3)、並べてみると、カラーチャートのような一覧が出来上がりました。(笑)

この中から、実際の色合いとは違うけれど「嵐の直前、やたら綺麗な夕景の日」や「むしろ朝日のような空」といったイメージのものを選んでみました。
■撮影環境:F8.0, 1/60秒, +0.7段, ISO 200, WB フラッシュ, 三脚使用
紅葉や梅も、カラークリエイターの色味を変えることで雰囲気や印象が変わることがおわかりいただけるかと思います。いずれもどれが正解、ということではなく、どう表現したいかに合わせて選び、撮影が楽しめる機能です。
■撮影環境:F2.0, 1/2500秒, +0.3段, ISO 200, WB 5600K
■撮影環境:F1.8, 1/2500秒, +1.0段, ISO 200, WB 曇天
そして実はつい最近発見したのですが、このカラークリエイターは水族館での撮影時に大いに活躍してくれます。水族館ではホワイトバランスを合わせるのが難しくて苦労されたことのある方も多いのではないかと思います。そんな時にモニターを確認しながらこのカラークリエイターの設定を色々変えることで、見た目に近い色へ整えたり、イメージに合わせた表現を楽しむことが可能です。
■撮影環境:F1.8, 1/800秒, -1.0段, ISO 800, WB オート
アートフィルター
アートフィルターは、全16種類のフィルターでイメージに合わせて写真をドレスアップさせることができる機能ですが、こちらも過去の記事で詳しく解説しているため、今回は実際の作例を数点ご紹介いたします。
金沢の路地ではドラマチックトーンを使用することで、雨上がりの階段や建造物、苔や焼杉のディテールがしっかり表現できました。

■撮影環境:F5.6, 1/100秒, ISO 400, WB 晴天, ドラマチックトーンI
クラシカルな駅の片隅に並んだ公衆電話。公衆電話というモノそのものがもはやレトロに感じられたので、ヴィンテージを選んでみました。

■撮影環境:F4.0 1/40秒, +0.3段, ISO 640, WB 晴天, ヴィンテージIII
ビーチを見下ろす高台からはジオラマを選択。本物の風景なのにまるでミニチュアの世界のようになりました。

■撮影環境:F9.0 1/1000秒, +0.3段, ISO 500, WB 晴天, ジオラマI
コンピュテーショナル・フォト機能が手軽に楽しめるCPボタン
PCなどを用いて合成処理を行うコンピュテーショナル・フォトグラフィ。HDR撮影や深度合成、多重露出といったこれらの撮影技法を、PCを使わずにカメラ内部で完結させることができる、という点がこれまでもOM SYSTEMのカメラが持つ大きな特徴のひとつでした。しかし設定に多少の手間が掛かるものもあり、ハードルを感じる方もいらっしゃったのではないでしょうか。
それが、OM-3では背面液晶モニターのすぐ上に「CPボタン」が新たに設けられ、「ハイレゾショット」「ライブND撮影」「ライブGND撮影」「深度合成」「HDR撮影」「多重露出」の6種類のコンピュテーショナル・フォトグラフィをボタンひとつで呼び出すことができるようになりました。今回はその中から3つの機能を抜粋してご紹介いたします

ライブGND
画面内に日向と日陰、というように明暗差(輝度差)がある場合、肉眼ではどちらもしっかり認識することができますが、写真は明るい部分に露出を合わせると暗い部分が暗くなりすぎ、暗い部分に露出を合わせると明るい部分が明るくなりすぎる、ということが起こってしまいます。そんな時に、フィルターの半分だけが暗い「ハーフNDフィルター」を用いて、明るい部分にだけNDフィルターを重ねることで明暗差を減少させ、白飛びや黒つぶれを抑える、という撮影方法がありますが、このハーフNDフィルターがカメラに内蔵されている、しかもモニターで効果を確認しながら撮影できる、というとても便利な機能がこのライブGNDです。
NDフィルターの濃さもGND2/GND4/GND8から選択でき、またND効果のある・なしの境界ラインの強弱も3段階から選べます。しかも明暗差に合わせてフィルターの位置や角度をボタンとダイヤルで調整できるというすぐれもの!そして「ライブ」という単語がついているだけに、液晶モニターで効果を確認しながら撮影できます。
似た名前の機能として「ライブND」がありますが、こちらは画面全体にND効果がかかるということ、また使用できる撮影モードがSまたはMモードに限定される、という違いがあります。後者の点においてこの「ライブGND」はP/A/S/Mすべてのモードで使用できる、ということが非常に使いやすいポイントとなっています。

カフェのカウンターに置いたコーヒーカップを外の景色とともに撮ろうとすると、どうしても店内部分が暗くなってしまいます。そこでライブGNDを使うことで外の景色と店内の明暗差が少なくなり、見た目に近い印象となりました。(ピントの位置が1枚目はコーヒーカップ、2枚目は外の風景で撮ってしまった点はご愛嬌!)
■撮影環境:F8.0 1/1000秒(右1/200秒), -0.3段, ISO 200, WB 晴天
庭園内の小川に映り込んだ紅葉がとても綺麗でしたが、明暗差により日陰部分が真っ黒に。そこでライブGNDを用いたことで日陰部分の苔も綺麗に描写できました。
■撮影環境:F8.0, 1/500秒, -1.0段, ISO 400, WB 5600K
深度合成
こちらも機能の詳細については以前の記事(MZD 30mm F3.5 Macro)で解説しているため、今回はOM-3で撮影した作例のご紹介のみに留めます。
絞りを絞ることで被写界深度が深くなり、ピントの前後がボケにくくはなりますが、F16まで絞った状態で撮影、比較してみると……やはり深度合成のように手前から奥まで画面全体がくっきりはっきり、とはいかないことがわかります。
■撮影環境:F16 1/125秒, ISO 200, WB 晴天, Natural, 三脚使用
多重露出
多重露出はOM SYSTEMの前身、OLYMPUSのミラーレス一眼カメラの初号機、2009年7月に発売された「E-P1」から搭載されている機能で、デジタル一眼レフカメラとは違い1枚目に撮影した画像を液晶モニター(やファインダー)で確認しながら2枚目の画像を重ねてひとつの写真に仕上げることができます。
多重露出には4パターン(加算・加算平均・比較明合成・比較暗合成)がありますが、OM SYSTEMのカメラはこのうちの加算と、加算平均に近い自動ゲイン補正での撮影が可能です。なおOM SYSTEM機での多重露出撮影は、多重後の画像のRAWデータでの記録が可能、ということも大きな特徴のひとつです。
ただ一点、OM SYTEM機の多重露出撮影の難点として、撮影したものを再生して確認後、再び撮影に戻ると多重露出設定が解除されてしまう……ということがあるのですが、OM-3のCPボタンから多重露出設定を行うとこの点が解決、再生後も再設定の必要なく多重露出撮影に戻ることができます。個人的にはここに非常に感銘を受けたので、特筆すべき点としてご紹介したいポイントです。
明石海峡大橋にピントを合わせた画像と、マニュアルフォーカスでピントをずらしてライトアップされた光を玉ボケにした画像の2枚を1枚に重ねました。OM SYSTEM機では、続けて2枚を重ねる撮り方だと合成後の1枚のみが記録されます。(JPEGのみ、RAWのみ、JPEG+RAWから選択できます)

■撮影環境:F4.0, 2秒, ISO 400, WB 晴天, CP3, 三脚使用
先にRAWで記録しておいた画像を呼び出して2枚目を重ねることも可能です。この場合は1枚目の後、1枚目に2枚目を重ねた画像の計2枚が記録されます。なお、この2枚目もRAWで記録できるため、2枚目を呼び出してさらに重ねて3枚目、3枚目を呼び出してさらに重ねて4枚目……と重ねていくことも可能です。
■撮影環境:F4.0, 1/60秒(右1/125秒), -1.3段, ISO 800, WB 4000K, Natural
手軽に様々なバリエーションが楽しめる動画機能
OM-3には上部左型に静止画と動画、さらに「S&Q」というモードの切り替えダイヤルが設けられています。このS&QはSlow & Quick の略で、低倍速再生のような、動きをスローモーションで捉えてくれる動画と、逆に時間を圧縮してパラパラ漫画のように再生できるタイムラプス動画の撮影が手軽にできるようになっています。

また、映画のような味わいの映像を撮影することができる、動画用の新しいピクチャーモード(色の仕上がり設定)「OM-Cinema1」と「OM-Cinema2」が登場。初期設定では動画モードとモードダイヤル「C1」の組み合わせに設定すると選択することができます。
OM SYSTEMの公式サイトでは「OM-Cinema1は山や森の自然風景、OM-Cinema2は海や空、人物描写におすすめです」と書かれていますが、今回、河津桜とミモザを通常のピクチャーモード「Natural」と「OM-Cinema1」「OM-Cinema2」で撮り比べてみました。結果として、河津桜にはOM-Cinema2がとても合う!と撮影しながらテンションが上がりました。
旅のスナップあれこれ
最後に旅のスナップをいくつかご紹介します。
富山の宇奈月温泉へ出かけた日、夜の間に雪が降り、朝起きると景色が一変していました。大急ぎでトロッコ列車の鉄橋を見下ろせるポイントへ。赤い橋の印象を強くするためにCP3でしっかり色を出しました。

■撮影環境:F8.0, 1/200秒, ISO 640, WB 曇天, CP3
シドニーは夏の間、Daylight Saving Time(サマータイム)の影響で日没が遅く、2月上旬は夜8時を過ぎてようやく暗くなります。ある日、ステイ先に戻る途中のマジックアワーの空と街並みを撮影。ライブGNDを用いて空の部分にNDフィルターをかけたことで、路肩に並んだ車の列が綺麗に浮かび上がりました。

■撮影環境:F4.0, 1/13秒, ISO 800, WB ,晴天, CP3, ライブGND04, Soft
浜辺を自由自在に飛び回るカモメですが、AI被写体認識AFを使うことでしっかりピントを合わせることができました。

■撮影環境:F7.1, 1/2500秒, ISO 400, WB ,晴天, CP3
雨の夜、濡れた路面に映るライトレール(路面電車)を狙って撮影に向かったものの、この日は雨が強過ぎて撃沈……。思い描いた写真が撮れなかったことは残念でしたが、OM-3とともに同日発売となった M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 IIとの組み合わせはどちらも防塵防滴仕様ゆえに、雨の夜でも安心して撮影することができました。

■撮影環境:F1.8, 1/160秒, -1.0段, ISO 1000, WB オート, Natural
夕方の浜辺をMP4で撮影。コントラストの低いMP4で遠景の木々や細かい波飛沫までを描写しつつ、粒状フィルム効果を既定値のLowからMediumに上げてザラっとした質感に仕上げました。

■撮影環境:F5.6, 1/4000秒, -0.7段, ISO 640, WB ,晴天, MP4, 粒状フィルム効果 Medium
まとめ
シドニーで撮影しているとき、通りすがりの年配の白人男性から「フィルムカメラで撮っているのかい?」と訊かれたことがありました。(まだ製品発表前でこっそり撮影していたので、さり気なくカメラを隠して笑顔を作りつつ、英語がわからない素振りで誤魔化しました笑)
一見フィルムカメラのようなクラシカルな外観に最新の技術が詰まったOM-3。プロファイルコントロールもカラークリエイターも、これまでの機種で使ったことはあったものの、正直なところ日常的に使っています、と言えるまでは使い込んでいなかったのですが、このOM-3でその魅力にしっかりハマりました。これらの機能、そしてライブGNDや各種動画が呼び出しやすい設計、それでいてこのサイズ感はこれからの旅と日々の撮影にはもってこいの相棒となってくれると確信しました。

■撮影環境:F7.1, 1/50秒, +1.0段, ISO 400, WB オート, CP4
■写真家:クキモトノリコ
学生時代に一眼レフカメラを手に入れて以来、海外ひとり旅を中心に作品撮りをしている。いくつかの職業を経て写真家へ転身。現在はニコンカレッジ、オリンパスカレッジ講師、専門学校講師の他、様々な写真講座やワークショップなどで『たのしく、わかりやすい』をモットーに写真の楽しみを伝えている。神戸出身・在住。晴れ女。
公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員