OM SYSTEM OM-5 × 木村琢磨 〜ちいさな巨人OM-5と写真を楽しむ〜
はじめに
OMユーザーであれば「5」の数字にピンとくる人は多いだろう。
一眼スタイルのミラーレスE-M5が登場して早10年。「5」シリーズはOMの名を冠して新たにOM-5としてリブランディングしての登場だ。この「5」シリーズといえば一種の「実験機・変わり種」としてのポジションに近かった印象だが、E-M5 Mark IIIでは「フラグシップの小型版」というサブにもメインにもなれる質実剛健な一台に仕上がっていた。
そして、今回登場したOM-5はE-M5 Mark IIIの魅力はそのままにさらに機能をパワーアップ。さらに軍幹部のロゴが「OM SYSTEM」に変更された最初の一台でもあり、OM SYSTEMの本当の船出となる一台だ。
「5」シリーズの魅力はそのままに
OM-5はE-M5シリーズの魅力はそのままに新機能の搭載や、OMの魅力でもある防塵・防滴をさらにパワーアップさせた一台だ。特に私が「5」シリーズに魅力を感じているのはその小型軽量なボディだ。カメラは小さい方がいいと思っている私にとってOM-5はまさに理想のカメラボディである。
カメラスペックとしては約2000万画素(手持ちハイレゾ対応)、プロキャプチャー、ライブND(最大16)、バリアングルモニター、EVF搭載、4K30p(縦位置対応)…などコンパクトなボディに必要十分な機能が詰め込まれている。
手のひらに収まるサイズ感は一眼レフというよりもコンパクトデジカメの方に近い感覚だ。
小さなボディにファインダーも搭載されており、動体撮影やより集中して撮影したい時に活躍してくれる。何より、私が一番嬉しいと思っているポイントは「手持ちハイレゾショット」の搭載で、これをずっと待ち望んでいた。OM SYSTEMには今年3月に発売されたOM-1があり私のメイン機になっているが、OM-1を使う主な理由の一つに「手持ちハイレゾショット」がある。
OM-1とOM-5を比較してみるとボディのサイズの差は意外とあり、このちょっとした差で使うレンズにも違いが生まれ、使うカメラバッグも変わってくる。そしてそのちょっとした差はフィールドに出た時にさらに差が出てくるのだ。
私の場合は風景を撮影することが多く、撮影地が必ずしもアクセスがしやすい場所とは限らない。不安定な足場もあればアップダウンの大きな場所もある。そのことを考えると機材は少しでも軽く、小さい方が理想的だ。
OM-5のボディサイズはOM-1よりもさらに小さく、軽く、しかも風景写真で活躍してくれる手持ちハイレゾショットも搭載されている。通常撮影では約2000万画素だが手持ちハイレゾショットを使うことで5000万画素相当の高精細な一枚を撮影することができる。このボディサイズで5000万画素相当のクオリティを得られるのはワクワクする。
ボディサイズによる変化は色々とあり、一つは使うメインレンズの違いだ。OM-1はしっかりとしたボディサイズに大型グリップ設計であるためM.ZD12-100 IS PROをメインに使用している(9割このレンズ使っている)が、OM-5に対してこのレンズは少し大きく感じ、フロントヘビーになってしまうためM.ZD12-45 PROをOM-5のメインレンズとしてセレクトすることが多い。
M.ZD12-100 IS PROもカバーする焦点距離や描写を考えると特別大きなレンズというわけでもないのだが、OM-5がコンパクトすぎるためそう感じてしまう。M.ZD12-45 PROだけでなくPROレンズには他にもM.ZD20/1.4 PROやM.ZD8−25 PROなどの小型なレンズがラインナップされているためOM-5では比較的コンパクトなレンズをセレクトすることが多い。個人的にはOM-5にM.ZD12-45 PRO、M.ZD20/1.4 PRO、M.ZD8−25 PROのセットでほぼシステムが完成してしまう。
フィールドを選ばない全天候型カメラ
OMシリーズといえば防塵・防滴の話は避けて通れないだろう。OM-5の話だけではなく、初代「5」のE-M5の時点で防塵・防滴性能は既に群を抜いていた。防水と勘違いしてしまうほどの強力な防滴性能は撮影フィールドを選ばない。むしろ撮影者がしっかりと防滴・防水装備をしっかりしていないとダメなほどだ。
OMのカメラをずっとメインカメラとして使っていることもあり、防滴性能と言えばOM SYSTEMが基準となっていたため過去に別メーカーのカメラを水没させてしまった経験がある。もちろん防滴と謳われていた機種である。偏に防塵・防滴と言ってもその性能には差があるということなので知っておいて欲しい。
OM-5の防滴性能はOM-1と同じくIP53であり、前半の5は防塵性能を6段階で表したもの(5は相当高いスペック)、後半の3は防水性能を8段階で表したものであり基本的には上からの水は防げるよというスペックだが、体感的としてはさらに高い等級に感じる。OM-1のメーカーパフォーマンスで強力な水圧のシャワーを浴びせる映像も公開されているので、その映像を見ると並大抵の使い方では水没はしないだろう…という安心感を得られる(笑
フィールドを選ばない理由は天候のみだけではなく、強力な手ぶれ補正が撮影をサポートしてくれるため、三脚の使用率が減ることにより機材をより軽量コンパクト化することができるというポイントだ。もちろん三脚がなければ撮影できないシーンもあるが、「手ブレを防ぐ」という意味での三脚の出番はほとんどなくなってしまった。夜に星を撮影するなどそういった場面であれば話は別だが(手ぶれ補正が強力なので頑張れば手持ちで星景写真も撮れるが)、基本的に日中は三脚を使うシーンは激減した。
三脚ももちろん持ち出す場面はあるが、OM-5がコンパクトなボディであるため組み合わせる三脚もコンパクトでいいのは嬉しい。つまり、ボディが小さい分周りのアクセサリー類もコンパクトにすることができるのだ。私が主に三脚を使うシーンとしては「三脚ハイレゾショット」を使用する時だ。手持ちハイレゾショットは5000万画素相当の画素数で撮影できるが、三脚ハイレゾショットはRAWで撮ることで8000万画素相当の撮影が可能となる。
手持ちハイレゾショットでも十分なクオリティの写真が撮れてしまうので、三脚ハイレゾショットの出番も減ってきている気はするが…。三脚を使わない分アングルの自由度が増し、よりクリエイティブな撮影に挑戦ができるのはOMのキャッチコピーでもある「機動力」そのものだ。
OM-5と冒険に出かけよう
OM-5はとにかく気軽に持ち出せるカメラだ。
写真はカメラがなければ撮ることができない、さらに言えばどれだけ高画質なカメラであっても持ち出さなければ意味がない。私にとって気軽さはカメラを選ぶ上でも最も重要な「スペック」といってもいいくらいだ。
私の撮影フィールドは主に風景だが、風景と言っても必ずしも険しい場所というわけではなく身近な自然や足元の植物、昆虫や光を被写体に撮影をすることも多い。気になったものにカメラを向けるスナップ的な風景写真スタイルだ。そこで活躍してくれるのがより小型軽量なカメラであり、いつでも気軽に持ち出せるカメラが僕にとっては重要となってくる。
小さなカメラと大きなカメラとではレンズを向ける被写体にも変化を感じるし、小さなカメラの方が普段ではあまり撮らないなというシーンや景色を撮影していることも多い。スマホのカメラロールを見返すと一眼では撮影しないようなシーンがたくさん保存されているのと同じように、OM-5で撮影した写真にも気軽さを感じた。
OM-5はエントリークラスなのだろうか?私個人が思うのはOM SYSTEMのラインナップはフラグシップやエントリーというよりも、シーンや目的に応じてカメラを使い分けるようなイメージだ。センサーサイズが統一されているのもポイントではないだろうか。私の場合はOM-1が登場する前はE-M5 Mark IIIの出番が多く次点でE-M1Xだった。使い分けのポイントはボディサイズと手持ちハイレゾショットの有無が大きかった。
OM-5ではE-M5 Mark IIIのボディサイズに手持ちハイレゾショットやライブNDも搭載されたことで、よりメイン機としての使い勝手が向上した。OM-1はOM-5よりもボディサイズに余裕がある分より多くの機能も搭載されているが、そこが使い分けのポイントとなる。
OM-1をメインで使うときも、OM-5がスペックアップされたことでOM-1のサブ機としても十分活躍してくれるしメインカメラとしても活躍できる。予備のボディとしてカメラバッグに忍ばせておいても邪魔にならないサイズ感なので、OM-5は一番オールマイティなカメラなのではないだろうか。
OM-5のボディだから組み合わせたいレンズも出てくる。中でもM.ZD14−42 EZなどはOM-5にぴったりであり、組み合わせることで本当にコンパクトデジカメのような気軽さで持ち歩くことが可能となる。このレンズはキットレンズとして手元に持っている人も多いかもしれないが、「5」シリーズのボディサイズとの相性は抜群で、描写も侮れない。
どうしてもPROレンズに目が行きがちだが、スタンダードやプレミアムシリーズには小型軽量で描写も素晴らしいレンズがたくさんラインナップされている。OM-5はPROレンズだけでなくスタンダードやプレミアムシリーズのレンズとも組み合わせて使ってみて欲しい。
写真を表現のツールに
私は写真は必ずしも忠実である必要はないと思っている。自己表現のツールとしての写真も表現方法の一つだろう。OM SYSTEMは何年も前からその可能性を追求していてその代表的な一つが「アートフィルター」ではないだろうか?
私は絵画が好きなこともありアートフィルターが大好きだ。実際にOM-5で撮影した大半の写真が「アートフィルター」か「カラークリエーター」機能を使用している。特にカラークリエーターはハイレゾショットと併用できるため使い勝手が良く、自分の好みの色を再現できるのでよく使う機能だ。
ちなみに、ハイレゾショットとアートフィルターはカメラ内では組み合わせができないが、OM Workspaceを使用することによってハイレゾショットで撮影した写真にもアートフィルターを後掛けすることができるので、興味がある人は是非試して欲しい。
アートフィルターの中でも特に好きなのはポップアート、ファンタジックフォーカス、ブリーチバイパスだが今回は普段はあまり使わないパートカラーを使ってちょっと実験的な撮影もしている。小さなカメラほどフィルター機能を使って撮影したくなる傾向があるのだが、それは気軽さが影響しているのかもしれない。
■撮影機材:OM SYSTEM OM-5+M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO
■撮影環境:f/4.0 1/1250秒 ISO200 焦点距離23mm(35mm判換算46mm)ファンタジックフォーカス
彩度がより鮮やかになるので風景との相性も非常に良い。同じアートフィルターでも「I」と「II」と種類があり私は「II」の方が好きでよく使っている。ピンホール効果を組み合わせることでスポットライトの様な効果に。
■撮影機材:OM SYSTEM OM-5+M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO
■撮影環境:f/5.6 1/25秒 ISO200 焦点距離16mm(35mm判換算32mm)ポップアートII
■撮影機材:OM SYSTEM OM-5+M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO
■撮影環境:f/8.0 1/15秒 ISO200 焦点距離45mm(35mm判換算90mm)ポップアートII
■撮影機材:OM SYSTEM OM-5+M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO
■撮影環境:f/8.0 1/8秒 ISO200 焦点距離8mm(35mm判換算16mm)パートカラーI
■撮影機材:OM SYSTEM OM-5+M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PRO
■撮影環境:f/4.0 60秒×10コマ ISO2000 焦点距離52mm(35mm判換算104mm)ファンタジックフォーカス
■撮影機材:OM SYSTEM OM-5+M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO
■撮影環境:f/8.0 1/8秒 ISO200 焦点距離19mm(35mm判換算38mm)ファンタジックフォーカス
■撮影機材:OM SYSTEM OM-5+M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO
■撮影環境:f/7.1 1/125秒 ISO200 焦点距離22mm(35mm判換算44mm)カラークリエーター
■撮影機材:OM SYSTEM OM-5+M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO
■撮影環境:f/8.0 1/25秒 ISO200 焦点距離12mm(35mm判換算24mm)カラークリエーター 手持ちハイレゾショット
■撮影機材:OM SYSTEM OM-5+M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PRO
■撮影環境:f/5.6 1/125秒 ISO200 焦点距離49mm(35mm判換算98mm)カラークリエーター 手持ちハイレゾショット
OM-5ではライブNDも搭載され最大ND16の効果をカメラ内で再現可能だ。ライブNDがあることでNDフィルターを使わずともスローシャッターを切ることができるのはもちろん、手持ちのNDフィルターの効果を助長させるという意味でもかなり便利な機能なのだ。
例えば手持ちのNDフィルターが16だった場合、OM-5のライブNDを組み合わせることでND32、ND64、ND128、ND256と効果を高めることが可能だ。物理的にNDフィルターの装着が難しい超広角レンズや魚眼レンズでもNDの効果を得ることが可能なのは嬉しいポイントだ。ライブNDはデジタル補正によるND効果であるため、フィルターの経年劣化もなく、装着の手間もない。ライブNDを使用するときは手ぶれのリスクも高まるため三脚の使用も考えておこう。
スチルだけでなく動画も気軽に撮ってみよう
OM-5では動画撮影機能もブラッシュアップされている。OM-Log400に対応したこと、30分制限がなくなったこと、そして面白いのは縦位置動画に対応したことだろう。スマホの普及により縦位置で鑑賞する動画も増えてきているため、撮影時に縦位置で記録されているとスマホに動画を転送したときにそのまま鑑賞することができる。スマホのスペックも劇的に向上しているのでOM-5で撮影してスマホで編集するということも十分可能だ。
OM-5がコンパクトなカメラだったこともあり縦位置に構えての撮影はかなり楽だった。バリアングルモニターも縦位置動画との相性が非常によく合いアングルやローアングルでの撮影もかなり楽だ。
OM-5では縦型動画にも対応した。
スマホに転送すればそのまま縦向きに再生される。動画をスマホで鑑賞する機会が増えたので今後は縦向きでの動画撮影は当たり前になってくるかもしれない。
OM-5で撮影する動画は私の場合はカラークリエーターで自分好みの色を作っての動画撮影が多く、より本格的な編集が必要とされる動画撮影の場合はOM-Log400で収録することでカラーグレーディングでよりイメージに近い仕上がりに作り込むことが可能だ。
まとめ
私が思っていた「こんなカメラがあれば良いな」の理想の一台にさらに近づいた。
OM-5は私の作品制作の良きパートナーになってくれると確信した。
OM-1が発売されて1年経たずにOM-5が登場したことに正直驚いた。「5」シリーズのファンとしては嬉しいサプライズであり、待ちに待った「手持ちハイレゾショット」の搭載によりOM-5の完成度が一気に高まったのではないだろうか。私と同じくE-M5 Mark IIIに手持ちハイレゾショットが搭載されていれば…と感じていた人は少なくないはず。まさにそんな人のためにOM-5は登場したといってもいいだろう。
マイクロフォーサーズはボディとレンズのバランスが良く、小型軽量なシステムにまとめられることが最大の強みだ。OM SYSTEMの「5」シリーズは「これぞマイクロフォーサーズ」という規格の強みを全面的に打ち出したシリーズだろう。OM SYSTEMにブランド名が変わりラインナップも一新されるだろうと思っていたが「5」シリーズがコンセプトを引き継いで登場してくれたことにホッとした。
「5」シリーズはまさに小さな巨人。より理想の一台に近づいたOM-5は写真家としての、表現者としての私を支えてくれる大切なパートナーとなってくれるだろう。
■写真家:木村琢磨
1984年生まれ。岡山県在住のフリーランスフォト&ビデオグラファー。広告写真スタジオに12年勤務したのち独立。主に風景・料理・建築・ポートレートなどの広告写真の撮影や日本各地を車で巡って撮影。ライフワーク・作家活動として地元岡山県の風景を撮影し続けている。12mのロング一脚(Bi Rod)やドローンを使った空撮も手がけ、カメラメーカー主催のイベントやセミナーで講師を務める。
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