まるで顔のような写真が撮れる!?擬人化法を使用した撮影テクニックをご紹介
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はじめに
皆さんこんにちは。写真家の虫上です。私は普段はジャンルを問わず、様々な被写体をテーマとして撮影しています。下の写真はアイスランドの氷洞で撮影しました。スプーンですくったような氷の形の凄さや青の洞窟の美しさはもちろん素晴らしかったのですが、拡大してモニター画面を少し離して見ていただくと、まるで何かの「瞳」のようにも見えてきませんか?今回はこのように、まるで〇〇に見えてくるような撮影方法についてご紹介します。
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■撮影環境:8mm f/1.8 1/60秒 ISO200
擬人化法について
擬人化法というのは昨今、文章はもとより、歌や俳句など様々な場面で使用されることが多いです。今回紹介するのは写真表現での擬人化法という分野になります。主に人間でないものを人間に見立てて表現する方法は、フィルムカメラの時代からも多く見られた表現方法です。私の場合、撮影中はその点はあまり意識せず、何かの視線や形を感じた時にそれをよりもっと抽象化して想像力をふくらませつつ、何かにたとえるように撮影することが多いです。
擬人化法撮影に有効な機材
OM SYSTEM OM-1 Mark II
使用しているカメラですが、最近はOMシステムの最上位機種「OM-1 Mark II」を使っています。思いがけない被写体に出会うようなスナップとなると長時間歩きながらの撮影が多く、軽量で長時間の撮影でもあまり苦にならないこのカメラはとても便利です。ファインダーも広く見やすいので正確なフレーミングをするのにとても役に立っています。
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
レンズは使い慣れた高倍率ズームレンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO(35mm換算24-200mm)」をよく使用します。広角側で最短撮影距離15cmとかなり被写体に寄れるのでダイナミックな表現が可能なことも気に入っています。
M.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 Fisheye PRO
このレンズは超広角の魚眼レンズです。特殊なレンズですが実は他にはない特徴を備えていて、まずF1.8というとても明るいレンズなのにΦ62×80mm、約315gとポケットにも入る大きさで持ち運びにとても便利。画面周辺が大きく歪んだ対角線魚眼レンズの写りに加えて、ボディ側で「フィッシュアイ補正撮影」機能を使うと歪みが補正され、通常の11mm、14mm、18mm相当としても使用可能ですので、これ1本で4本の明るい単焦点レンズを持ち歩いているかのように使うことができます。
〇〇のように見えるテクニックあれこれ
なんだか〇〇に似ているな、とよく聞きますが、皆さんの住んでいる街や旅行先などでもそのような被写体にたまに出会うことがあるかと思います。それを具現化するにはまずはしっかりとその部分をフレーミングすることです。ファインダーを覗いている部分の水平はもちろん、四隅までしっかりと余計なものはないか確認します。私はこのような表現でフレーミングすることを擬人化フレーミングと勝手に名づけています(笑)。
この写真は倉敷美観地区にある、大原美術館のシンボルとなっている丸窓。実は三つあるのですが、そのうちの二つを目の部分に見立てることで、じっとこちらを見つめているような顔に見えてきませんか?
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■撮影環境:50mm f/6.3 1/100秒 ISO400
なんでもない普通の風景にも何かに見える瞬間があります。この日は雨の日の撮影で、この被写体は路地の奥で見つけました。
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■撮影環境:38mm f/11 1/100秒 ISO200
この被写体も路地裏の奥で見つけたものです。上部に沢山の丸い光が差し込んでいたので、それを取り入れてとても楽しそうな顔になるように表現しました。
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■撮影環境:50mm f/14 1/15秒 ISO200
観光名所である、敦賀赤レンガ倉庫の窓部分です。とても重厚かつ、歴史ある建物で見学者も多く訪れていました。しかし、見方を変えてみると空を見上げているような顔に見えたので即座に擬人化撮影に変更しました。
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■撮影環境:57mm f/10 1/160秒 ISO200
最近の電柱はとても複雑な配線がたくさんあります。下から見上げると……
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■撮影環境:47mm f/4 1/100秒 ISO200
周りの空間を多く取り入れることで大きさを表現できることがあります。この被写体はヘルメットを被った子供のように見えました。
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■撮影環境:86mm f/7.1 1/500秒 ISO200
この被写体は今は使われていない水門ですが、穴が開いている部分に着目していると人の顔に見えてきました。
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■撮影環境:54mm f/13 1/200秒 ISO200
この被写体は瀬戸内海の離島で撮影したものです。小さな砂丘に標識が二つあり、なにかの顔に見えてきたので擬人化フレーミングして撮影しました。
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■撮影環境:12mm f/7.1 1/1000秒 ISO200
街歩きはカメラを所有してないことも多いですが、そんな時にもいい被写体にめぐり合う可能性が高いです。これはスマホでの撮影ですが、影の部分がまつ毛の長い、とても女性的な顔に見えたのでカメラモードでしっかりとフレーミングして撮影しました。
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兵庫県の室津漁港はとても歴史ある、魅力的な街並みと漁船がたくさんあることでも有名です。水面を覗き込むと水面から視線が……顔に見えるようにフレーミングして撮影しました。
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■撮影環境:23mm f/8 1/20秒 ISO200
この被写体は水族館の水槽なのですが、魚眼レンズを使用すると笑っている人の顔に見えたので撮影しました。このようにレンズの特性を利用するのも一つの表現方法だと思います。
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■撮影環境:8mm f/2.8 1/320秒 ISO200
人間のように見える部分を切り取る
私たちは人間なので、自分と同じように見える被写体は特に見つけやすいです。
この被写体は島によくある船を上げ下ろしするクレーンですが、頭の部分に耳があるような何かの顔に見えてきたのでフレーミングしました。
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■撮影環境:70mm f/6.3 1/250秒 ISO400
この被写体は尾道の老舗旅館でした。ハンガーの位置が目に見えたので擬人化フレーミングで笑っているかのような顔に仕上げました。
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■撮影環境:61mm f/13 1/0.4秒 ISO200
この被写体は古い鉄道博物館にあったもので草むらに放置されていて、青い部分に赤い目がまるで何かの顔のように見えました。
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■撮影環境:34mm f/14 1/30秒 ISO200
上下反転して別のものを表現してみる
この被写体は秋田県の横手市で毎年2月に開催されるかまくら祭りで、明るいうちに誰もいないかまくらを撮影したものですが、通常状態では普通過ぎる作品でした。しかし、上下を反転すると、とてもユーモラスな顔に見えました。
■撮影環境:28mm f/9 1/13秒 ISO200
光と影などを利用した表現
この被写体はよくあるカーブミラーを撮影したものですがカーブミラーのなかにカーブミラーがあり、陰影の部分により目の部分を強調できて良かったです。
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■撮影環境:44mm f/4 1/800秒 ISO200
夜の繁華街などを歩いていると沢山のネオンや電灯が輝いていて、昼間とは違う風景がたくさんあります。このような〇〇に見える被写体も夜ならではの被写体でした。
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■撮影環境:50mm f/4 1/5秒 ISO1600
私の住んでいる近所にも、夜になるとこのようなロボットのようにも見える被写体がありました。撮影時はかなり暗く、上部の耳の部分は肉眼では気づきにくいほどで、普通なら三脚が必要な場面です。しかし、OM-1 Mark IIの強力な手ブレ補正のおかげで手持ち1.3秒でもブレることなく撮影できました。
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■撮影環境:25mm f/4 1.3秒 ISO500
被写体そのものの個性を生かした作画
瀬戸内海の与島というところで撮影した被写体ですが、カニの甲羅の部分にもう一つの笑っている顔がありました。他にも昆虫をはじめ人の顔のように見える生物がたくさん存在していますね。
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■撮影環境:86mm f/8 1/50秒 ISO200
花の盛りが終わった秋のハス池にもこんな被写体を見つけましたよ。
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■撮影環境:100mm f/10 1/80秒 ISO200
おわりに
いかがでしたでしょうか。擬人化撮影は昔からある表現方法なのですが、デジタル時代になったことで撮影枚数やISO感度など制限された時代とは異なり、様々な表現方法を模索できることで、また新たな表現や可能性を秘めていると思います。このような表現は絵柄的に軽いノリの写真に見られるかと思いますが、私自身は楽しく撮影しているのでこれからもこのテーマは継続撮影していく予定なのです。皆さんも共感する部分があればぜひ挑戦してみてくださいね。
■写真家:虫上智
1968年岡山県生まれ。高校を卒業後、写真家 緑川洋一氏に師事。地元のカメラ店で撮影業務などを学び2000年に独立。現在はスタジオ撮影、フォト講座、執筆、フォトコン審査、講演等を受け持つ。ライフワークでは心象風景、自然写真、水中写真を撮影。
日本写真家協会(JPS)会員、日本写真講師協会 認定フォトインストラクター、OM SYSTEMゼミ講師、フォトカルチャークラブ講師、フォトマスターEX(総合)一級