フルサイズとの併用も視野に。OM SYSTEMで増える、広がる作品づくり。便利なだけではない“寄れる・ボケる”高倍率ズームレンズ撮影テクニック

高橋渉
フルサイズとの併用も視野に。OM SYSTEMで増える、広がる作品づくり。便利なだけではない“寄れる・ボケる”高倍率ズームレンズ撮影テクニック

マイクロフォーサーズシステムだからこそ得られる撮影領域

「便利そうだけど画質はどうなの?」
「開放絞り値が暗いから背景はボケないのでは?」

広角から望遠までカバーする便利な高倍率ズームレンズでよく聞く話です。これまでの連載記事 『フルサイズとの併用も視野に。OM SYSTEMで増える、広がる作品づくり』 で、周辺部までの解像度が高く、歪みの少ない映像を実現しているマイクロフォーサーズシステムのしくみ、フルサイズ(35mm判)とは違った最短撮影距離で得られる撮影領域や、浅い被写界深度など、小さくて軽いということだけではないOM SYSTEMの魅力をご紹介してきましたが、もちろん高倍率ズームレンズも例外ではありません。フルサイズ機(35mm判)やAPS-C機を使っているユーザーも併用してみたくなる、便利さだけではない、高倍率ズームレンズで広がる撮影領域の魅力を、作例を使ってご紹介しましょう。

小型軽量から高解像まで。3種類の高倍率ズームレンズ

「カメラにレンズ1本で身軽に出かけたい」

広角から望遠までをカバーする、利便性を重視した高倍率ズームレンズ、持ち歩きにはよさそうだが、画像の解像度や歪み、開放絞り値の暗さなど、実際のところ許容できるものなのだろうか、と気になるところです。OM SYSTEMでは200g台の小型軽量レンズから、画質にこだわったPROレンズまで、3種類の高倍率ズームレンズが用意されています。

1.大きさ・重さは?
小型のイメージセンサーを採用しているマイクロフォーサーズシステム、もちろん高倍率ズームレンズも小型軽量で携帯性に優れています。

2.画質は?
イメージサークルに対して2倍の大きさのマウントを採用することで、隅々まで歪みが少なく、明るくクリアな描写を実現しているマイクロフォーサーズシステム。高倍率ズームレンズも例外ではありません。

3.ボケは?手ぶれは?
利便性を重視し、開放絞り値がF2.8のような明るいレンズではありませんが、最短撮影距離が短いことによる浅い被写界深度で、背景や手前のボケを活かした撮影が可能です。望遠域でもカメラ本体の強力な手ぶれ補正により安定した撮影ができます。

4.防塵防滴は?
3種類の高倍率ズームレンズすべて防塵防滴に対応しており、さらに防塵防滴に対応したボディとの組み合わせなら、雨の日の撮影でも広角から望遠までレンズ交換なしで撮影ができます。中でもM.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROはIP53相当、より強力な防塵防滴機構で、ほこり、水滴の進入を強固にガードする12箇所の密封シーリングが、高い防塵・防滴性能を実現。どんな時でも安心して使えます。

最短撮影距離と35mm判換算 最大撮影倍率(イメージ)

M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6 II

「登山やトレッキング、できれば軽いレンズ1本で出かけたい」

フルサイズ換算28-300mm相当、小型軽量285gの10.7倍ズームレンズ。
ズーム全域で50cmまでの近距離でネイチャー撮影にも対応。
コンパクトに持ち歩けるフルサイズ(35mm判)換算28-300mm相当、285gの小型・軽量高倍率ズームレンズ。カメラ本体の重量が414g(※1)のOM-5との組み合わせで約700g、横幅・奥行13cm以内。カメラ・レンズ共に防塵防滴で、登山やトレッキング途中の急な雨でも安心して撮影ができます。

※1 CIPA準拠、付属充電池およびメモリーカード含む、アイカップなし

35mm判換算28-300mm 焦点距離のイメージ
35mm判換算28mm相当の広角で、木の下から見上げるようにねらった河津桜。広角の広い空間を活かします。
■撮影機材:OM-5 + M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6 II
■撮影データ:絞り優先オート / 焦点距離:14mm(35mm判換算:28mm相当)/ 1/250秒 F8.0 ISO200 露出補正:-0.3EV
望遠側35mm判換算300mm相当で最短撮影距離50cmまで近寄り、河津桜の花を最大撮影倍率0.44倍のクローズアップで撮影。背景のボケているつぼみや花も望遠により大きくなります。
■撮影機材:OM-5 + M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6 II
■撮影データ:絞り優先オート / 焦点距離:150mm(35mm判換算:300mm相当)/ 1/125秒 F5.6 ISO200 露出補正:+0.7EV
望遠側35mm判換算300mm相当で、手前の花にピントを合わせて撮影。望遠の効果により背景のネモフィラの花も大きく、浅い被写界深度でボケます。
■撮影機材:OM-D E-M5 Mark III + M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6 II
■撮影データ:絞り優先オート / 焦点距離:150mm(35mm判換算:300mm相当)/ 1/1000秒 F5.6 ISO800 露出補正:+0.3EV
35mm判換算140mm相当で、手前の花の隙間からねらったルピナスの花。近寄ることで被写界深度が浅くなり、手前の花も背景の花もやわらかいボケで表現ができます。
■撮影機材:OM-D E-M5 Mark III + M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6 II
■撮影データ:絞り優先オート / 焦点距離:70mm(35mm判換算:140mm相当)/ 1/1250秒 F5.5 ISO800 露出補正:+1.3EV
フルサイズ(35mm判)換算300mm相当、最短撮影距離50cmで真上から撮影したチューリップの花です。
■撮影機材:OM-D E-M5 Mark III + M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6 II
■撮影データ:絞り優先オート / 焦点距離:150mm(35mm判換算:300mm相当)/ 1/640秒 F5.6 ISO800 露出補正:+1.0EV

M.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm F3.5-6.3

「望遠はフルサイズ換算400mm相当まで欲しい」

フルサイズ換算24-400mm相当でレンズ全長10cm未満、455gを実現した小型軽量ズームレンズ。
広角側で22cm、望遠側で70cmまで近寄れることで広がる、マイクロフォーサーズ特有の撮影領域。
16.6倍の高倍率ズームレンズ1本で旅行、乗り物、スポーツまで身軽に持ち歩ける利便性だけではなく、近距離撮影に強いのも特徴。広角12mm側でレンズ先端から被写体までのワーキングディスタンスは約10cm、フルサイズ(35mm判)換算24mm相当の広角で、被写体をクローズアップで撮れるところや、フルサイズ(35mm判)換算400mm相当の望遠で拡大率0.46倍の撮影ができるところは、マイクロフォーサーズによる撮影領域が広がる部分で、ネイチャー撮影にも最適です。

35mm判換算24mmから400mmまでカバーできる焦点距離のイメージ
フルサイズ(35mm判)換算24mm相当の広角で、下から見上げた撮影。桜の枝の隙間からの太陽の光が光条となるように、絞りをF22まで絞って撮影しました。
■撮影機材:OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm F3.5-6.3
■撮影データ:絞り優先オート / 焦点距離:12mm(35mm判換算:24mm相当)/ 1/60秒 F22 ISO200 露出補正:±0.0EV
フルサイズ(35mm判)換算24mm相当で画角は広く、満開の桜を背景に、手前に咲いているスイセンの花をねらいます。
■撮影機材:OM-D E-M1X + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm F3.5-6.3
■撮影データ:絞り優先オート / 焦点距離:12mm(35mm判換算:24mm相当)/ 1/1000秒 F3.5 ISO200 露出補正:-0.3EV
フルサイズ(35mm判)換算400mm相当で最短撮影距離70cmまで近寄れることで広がる撮影領域です。望遠で近寄ることでの浅い被写界深度で、背景のボケた花が大きくなります。
■撮影機材:OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm F3.5-6.3
■撮影データ:絞り優先オート / 焦点距離:200mm(35mm判換算:400mm相当)/ 1/160秒 F6.3 ISO200 露出補正:-0.3EV
フルサイズ(35mm判)換算400mm相当でバラの近距離撮影。手前の花びらを前ボケにしました。
■撮影機材:OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm F3.5-6.3
■撮影データ:絞り優先オート / 焦点距離:200mm(35mm判換算:400mm相当)/ 1/125秒 F6.3 ISO200 露出補正:+1.7EV
コスモスの花が重なり合っているところを、フルサイズ(35mm判)換算400mm相当での最短撮影距離で真上から地面があまり入らないようにねらいます。浅い被写界深度により、ボケのグラデーションとなって奥行きが表現できます。
■撮影機材:OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm F3.5-6.3
■撮影データ:絞り優先オート / 焦点距離:200mm(35mm判換算:400mm相当)/ 1/160秒 F8.0 ISO200 露出補正:+0.3EV
街角で咲いていたアジサイの花もこの通り。フルサイズ(35mm判)換算400mm相当で被写体に近寄り、奥にある花にピントを合わせます。近寄ることで被写界深度が浅く、開放絞り値F6.3でも手前の花が大きくボケます。撮影前に目視で判断せず、レンズを通して覗いてみなければ想像もできないイメージです。
■撮影機材:OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm F3.5-6.3
■撮影データ:絞り優先オート / 焦点距離:200mm(35mm判換算:400mm相当)/ 1/1000秒 F6.3 ISO200 露出補正:+0.7EV
低い木にやってくる小鳥なら、フルサイズ(35mm判)換算400mm相当でもこれぐらい大きく撮ることができます。OM-3のカラープロファイル機能で自然で鮮やかな仕上がりにしました。
◾️撮影機材:OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm F3.5-6.3
◾️撮影データ:絞り優先オート / 焦点距離:200mm(35mm判換算:400mm相当)/ 1/2000秒 F6.3 ISO800 露出補正:±0.0EV
◾️カラープロファイル:COLOR3:クロームフィルム ビビッド / AI被写体認識AF(鳥)

M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO

「広角から望遠までの高倍率で、画質にもこだわりたい」

高解像感にやわらかいボケ味が得られる、フルサイズ換算24-200mm相当のフルスペックズームレンズ。
フルサイズ換算、広角側で0.6倍相当、望遠側で0.42 倍相当の最短撮影倍率でネイチャー撮影もカバー。
広角から便利な高倍率とプロ写真家の要求に応える高画質を両立したプロフェッショナルズームレンズです。DSAレンズを含む非球面レンズ4枚を効果的に配置することで、ズーム変動による収差の発生を効果的に補正、EDレンズを5枚用いることで、望遠側で課題となる色にじみを抑え、ズーム全域で中心から画面周辺までの高画質を実現。最短撮影距離は広角側で15cm、望遠側で45cmの近接撮影を実現しているほか、開放絞り値は全域F4.0、高速連写SH2/プロキャプチャーSH2で最大50コマ/秒、深度合成、5軸シンクロ手ぶれ補正、マニュアルフォーカスクラッチ機構、L-Fn(ファンクション)ボタン搭載といったフルスペックの高倍率ズームレンズで、あらゆる環境でクオリティの高い撮影ができます。

木の下から見上げて、青空と雲を背景にねらいます。木の枝と雲の重なり具合を見ながら、カメラを構える位置を調整します。OM-3のカラープロファイル機能で自然で鮮やかな仕上がりにしました。
■撮影機材:OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
■撮影データ:絞り優先オート / 焦点距離:12mm(35mm判換算:24mm相当)/ 1/160秒 F8.0 ISO200 露出補正:+0.7EV
■カラープロファイル:COLOR3:クロームフィルム ビビッド
フルサイズ(35mm判)換算200mm相当で、最短撮影距離45cmまで近寄っての撮影。被写体のシャープさに、背景のボケ味はやわらかく表現できます。
■撮影機材:OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
■撮影データ:絞り優先オート / 焦点距離:100mm(35mm判換算:200mm相当)/ 1/320秒 F4.0 ISO200 露出補正:+0.3EV
フルサイズ(35mm判)換算200mm相当で、最短撮影距離45cmまで近寄っての撮影。被写体のシャープさに、背景のボケ味はやわらかく表現できます。OM-3のカラープロファイル機能で自然で鮮やかな仕上がりにしました。
■撮影機材:OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
■撮影データ:絞り優先オート / 焦点距離:100mm(35mm判換算:200mm相当)/ 1/160秒 F5.6 ISO800 露出補正:+1.3EV
■カラープロファイル:COLOR3:クロームフィルム ビビッド
背景に菜の花畑が入るように、低い桜の枝をねらいます。桜の花に近寄ることで背景の菜の花がやわらかくボケます。OM-3のカラープロファイル機能で自然で鮮やかな仕上がりにしました。
■撮影機材:OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
■撮影データ:絞り優先オート / 焦点距離:100mm(35mm判換算:200mm相当)/ 1/250秒 F6.3 ISO200 露出補正:±0.0EV
■カラープロファイル:COLOR3:クロームフィルム ビビッド
花壇に咲いている中から美しい花を見つけて近寄ります。近寄ることで背景の花がやわらかくボケます。OM-3のカラープロファイル機能で自然で鮮やかな仕上がりにしました。
■撮影機材:OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
■撮影データ:絞り優先オート / 焦点距離:12mm(35mm判換算:24mm相当)/ 1/20秒 F8 ISO200 露出補正:±1.0EV
■カラープロファイル:COLOR3:クロームフィルム ビビッド
フルサイズ(35mm判)換算200mmでオウバイの花をアップで撮影。最短撮影距離により被写界深度が浅くなるのでF8.0まで絞って撮影しました。OM-3のカラープロファイル機能で自然で鮮やかな仕上がりにしました。
■撮影機材:OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
■撮影データ:絞り優先オート / 焦点距離:100mm(35mm判換算:200mm相当)/ 1/320秒 F8.0 ISO800 露出補正:+0.3EV
■カラープロファイル:COLOR3:クロームフィルム ビビッド
下に咲いているピンクの花が背景になるように、真上から青い花をねらいます。フルサイズ(35mm判)換算200mm相当で最短撮影距離約45cmまで近寄ることで被写界深度が浅くなり、背景の花がやわらかくボケます。
■撮影機材:OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
■撮影データ:絞り優先オート / 焦点距離:100mm(35mm判換算:200mm相当)/ 1/250秒 F4.0 ISO400 露出補正:+0.3EV
後ろに咲いているピンクの花が背景になるように、正面からきれいな花をねらいます。フルサイズ(35mm判)換算200mm相当で最短撮影距離約45cmまで近寄ることで被写界深度が浅くなります。絞り値は開放F4.0で背景のボケを生かしながら、深度合成で手前の花全体にピントが合うように撮影しました。
■撮影機材:OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
■撮影データ:絞り優先オート / 焦点距離:100mm(35mm判換算:200mm相当)/ 1/400秒 F4.0 ISO200 露出補正:±0.0EV

まとめ

OM SYSTEM の高倍率ズームの特長は伝わりましたでしょうか。マイクロフォーサーズシステムだから、フルサイズ(35mm判)よりも小型軽量で持ち歩けることは最大の魅力かもしれませんが、それだけではありません。最短撮影距離が近く、近寄ることで得られる前ボケ、背景ボケを活かせることなど、OM SYSTEMで広がる撮影領域があります。いくつかの作例で見た目の情景との比較を入れていますが、目に入ってきた情景とは撮影したイメージがずいぶん異なります。すてきな花や被写体をみつけたときに、目視で判断をせず、レンズを通して覗いてみることが重要です。高倍率ズームレンズでの撮影の経験が増えてくると、見た目の情景から撮影のイメージが見えてくるかと思います。身軽に持ち歩き、広角から望遠まで手間もかからない便利なズームレンズで、新しい発見があるかもしれません。ぜひ、チャレンジしてみてください。

 

 

■写真家:高橋渉
1988年より写真業界に従事。雑誌・Webメディアなどへの執筆、カメラメーカーでの作例の撮影や展示、トークイベントや動画コンテンツ出演などを行っている。主な撮影のテーマは鉄道や乗り物、風景・花など。2019年11月より箱根・芦ノ湖で運航されている箱根海賊船の絶景に魅了され、2023年10月には「Hakone Pirate Ship 写真集・箱根海賊船」を発売、2024年4月には箱根海賊船をテーマにした写真展を開催。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・公益社団法人 日本広告写真家協会(APA)会員
・公益社団法人 日本写真協会(PSJ)会員

 

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