手のひらに収まるコンパクトさと高画質を両立する軽量な広角ズームレンズ|OM SYSTEM M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 II

礒村浩一
手のひらに収まるコンパクトさと高画質を両立する軽量な広角ズームレンズ|OM SYSTEM M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 II

M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 IIというレンズについて

OM SYSTEM M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 IIは、マイクロフォーサーズ規格に準拠した広角ズームレンズだ。35mm判換算にして広角端18mm相当から望遠端36mm相当をカバーする。この記事の制作時点においてはオリンパスブランドのM.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6も併売されているが、このM.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 IIはそのリニューアルモデルとして2024年2月に発売された。

基本的なレンズ構成は前モデルのものを継承したうえで、外装を現在ラインナップされているレンズシリーズのデザインに揃えるように一新された。そこでここでは新しくなった外観デザイン、継承されたコンパクトな設計、そして手頃な画角の広角ズームレンズとしての特徴について検証してみよう。

M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 IIの主なスペック

■マイクロフォーサーズ規格マウント
■広角端9mm~望遠端18mm (35mm判換算18〜36mm相当)
■レンズ構成 8群12枚(DSAレンズ2枚、非球面レンズ1枚、EDレンズ1枚、HRレンズ1枚含む)
■最短撮影距離 ズーム全域0.25m
■最大撮影倍率 Wide0.05倍/Tele0.1倍(35mm判換算 Wide0.11倍/Tele0.2倍相当)
■絞り羽枚数 7枚(円形絞り)
■開放絞り値 9mm時 F4.0 / 18mm時 F5.6
■最小絞り値 F22
■大きさ 最大径56.2mm 全長49.3mm フィルターサイズ52mm
■質量 154g (レンズキャップ、レンズリアキャップ、レンズフードを除く)
■防塵防滴仕様 なし

レンズ外観を見る

M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 IIは35mm判換算にして、広角端が18mm相当、望遠端が36mm相当の広角域から標準域にかけての焦点距離をカバーするズームレンズだ。ズーム倍率は2倍と控えめだが、日常的に扱いやすい画角となっている。

OM SYSTEM OM-5に装着したところ。OM/OM-DシリーズのミッドレンジモデルであるOM-5との組み合わせは、デザイン・サイズ感ともにとてもマッチしたものとなる。

鏡筒外装は樹脂製。マウント側に設けられたズームリングは細かいブロック状のパターンが、レンズ先端部に設けられたフォーカスリングには直線状のパターンが配置されており、操作時の滑り止めとなる。どちらも軽すぎず重すぎずの適度な力で回転できるトルクとなっている。

レンズ構成はDSAレンズ2枚、非球面レンズ1枚、EDレンズ1枚、HRレンズ1枚を含む8群12枚。開放絞り値はワイド端9mmでF4.0、テレ端18mmでF5.6となる変動タイプ。鏡筒の最大径は56.2mm、 全長は49.3mmととてもコンパクト。フィルター径は52mm。

M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 IIは未使用時には鏡筒の長さを短くして収納することができる沈胴構造を採用している。撮影時はズームリングを回転して鏡筒を伸ばす。収納する際には鏡筒に設けられたUNLOCKレバーをスライドした状態のままズームリングを回転して鏡筒を縮めればよい。

M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 IIの沈胴構造による鏡筒の長さの変化。左は鏡筒を縮めた収納状態。中は鏡筒を伸ばして広角端9mmに合わせた状態。右が望遠端18mmに合わせた状態となる。

このレンズはOM SYSTEMのレンズシリーズのなかではスタンダードクラスの製品となるが、上位クラスのレンズでも採用されている堅牢な金属マウントが採用されている。ただし防塵防滴性能はないので、マウント外周に防滴シールドリングは備えられていない。

前モデルのM.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6では角形のレンズフード(LH-55B)は別売だったが、このM.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 IIでは花形レンズフード (LH-55D)が付属する。個人的にはこちらの形状のフードの方が好みなので、今回の仕様変更は歓迎したい。

こちらは前モデルのM.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6。2010年発売であることから、当時に人気が高かったカメラPENシリーズとの組み合わせを想定したデザインとなっていた。

OM-5 + M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 IIとM.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO。新デザインとなったことで現在ラインナップされている他のレンズとの見た目の統一感が生まれた。

実写による画像から解像力を検証

M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 IIで撮影した桜の木の画像をピクセル等倍に表示したうえで、中央部・右上周辺部を切り出し、レンズの解像力を確認した。撮影時の焦点距離は広角端9mm(35mm判換算18mm相当)、絞りは開放絞り値であるF4から一段分となるF5.6まで絞り込み、レンズの解像力を高めた状態にすると同時に、被写界深度を適度に深めてアウトフォーカスによる影響を除いてある。

中心部、周辺部共に画面全体に広がる枝は細い枝も含めて極めて精細に描写されており、また輝度差のある空との境界でも色収差は見られない。このことからこのレンズの解像力はとても高いことがわかる。また広角端での撮影においても周辺部に像の流れもない。このレンズはスタンダードクラスのレンズではあるが、上位クラスのPROレンズにも引けを取らない画質を持っていることがわかる。

ワイドマクロ撮影に適した最短撮影距離

M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 IIの最短撮影距離はおよそズーム全域で0.25mと短い。最大撮影倍率は9mmで0.11倍、18mmで0.2倍(35mm判換算)となり、広角レンズ特有の画角の広さと組み合わせることで、背景を広く写し込みながら被写体を大きく捉えるワイドマクロ撮影が可能だ。

こちらは広角端9mm時および望遠端18mm時での最短撮影距離0.25mで撮影した際の描写と表現の違いを表したもの。どちらも近接撮影特有の遠近感のある写真となっているが、9mmでの撮影ではより背景を広く写し込むことができるため、周囲の情景を活かした写真となる。

撮影領域を拡張する軽さというメリット

M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 IIは沈胴機構を採用することで、撮影を行わない時には鏡筒を短くすることができるズームレンズだ。これにより持ち歩く時やバッグに入れる際には極めてコンパクトに収めることができる。さらにレンズ単体では154gと、OM SYSTEMの広角ズームレンズのなかでもダントツに軽量であることもこのレンズの大きな特徴だ。

*参考:M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO 534g、M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO 411g

このレンズの軽さはマイクロフォーサーズ規格のミラーレス一眼カメラボディとの組み合わせによって、優れた携行性を発揮する。また、それだけではなく一眼カメラとしては極めて軽量な撮影機材ともなる点にも注目したい。例えば積載する機材の重さに制限がある小型の三脚や、スタビライザー付きの手持ち式カメラジンバルなどで使用する際に、35mm判換算18mm相当の画角での撮影が可能でありながらも軽量な組み合わせとすることができるメリットは大きい。

■使用機材:OM-5 + M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 II(9mm) Bi Rod 6C-4500+延長ロッド(試作品)
■撮影環境:F8.0 1/250秒 ISO200 絞り優先モード +0.7EV WBオート 仕上がりモードVivid S-AF 単写S-IS1

満開となった桜の木を、およそ地上5.5m高のハイアングルから撮影。それにより通常の地上高からの撮影とは違った姿を捉えることができた。この撮影では株式会社ルミカ製のハイアングルスタンドBi Rod 6Cに、OM-5とM.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 IIを組み合わせたものを積載して撮影した。

Bi Rod 6Cは伸縮可能なカーボン製ロッドであり、専用三脚部と組み合わせることによって一般的な大型三脚よりも、より高くカメラを持ち上げて撮影することができる機材だ。ただし高所までロッドを伸ばして撮影するため、積載できるカメラの重さには安全面から厳格な制限が定められている。

ハイアングルからの撮影状況。Bi Rod 6C-4500を専用三脚と組み合わせて、およそ10kgのウエイトを併用し撮影位置にしっかりと据え付けた。そのうえでM.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 II を装着したOM-5を先端部の自由雲台に積載。桜の木より高い位置まで上げて撮影を行った。なお今回はBi Rod 6C(約4.5m)に延長ロッド(約1.3m*メーカー試作品)を継ぎ足して、地上からの高さおよそ5.5mまでカメラを上げている。この状態での積載可能重量はおよそ1.5kg(試作延長ロッド使用時)となる。OM-5とM.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 IIを組み合わせた重量は600g弱なので、自由雲台(Bi Rod付属のミニ自由雲台からベルボン製小型自由雲台に換装済)の重さ390gと合わせても、Bi Rod 6C+延長ロッドの積載可能重量内に収めることができている。

ハイアングル撮影の具体的な撮影方法としては、M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 IIの焦点距離を9mmに合わせたうえで、スタンドを上げた状態のカメラ位置を想定してカメラの仰角を桜の木に向かうように、自由雲台で若干下向きにセットしてある。OM-5はあらかじめスマートフォンとWi-Fi接続し、撮影高に持ち上げたうえでOM SYSTEMのワイヤレスコントロールアプリ「OI.Share」のライブビュー撮影モードでアングルを確認しつつカメラの方向の微調整を行った。シャッターはスマートフォンアプリからワイヤレスリモートで作動させた。

M.ZUIKO DIGITAL ED9-18mm F4.0-5.6 II 実写作例

■使用機材:OM-5 + M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 II(17mm)
■撮影環境:F5.6 1/1250秒 ISO200 絞り優先モード +0.7EV WBオート 仕上がりモードVivid S-AF 単写S-IS1
■使用機材:OM-5 + M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 II(18mm)
■撮影環境:F5.6 1/30秒 ISO200 絞り優先モード WBオート 仕上がりモードVivid S-AF 単写S-IS1
■使用機材:OM-5 + M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 II(18mm)
■撮影環境:F5.6 1/200秒 ISO200 絞り優先モード +1EV WBオート 仕上がりモードVivid S-AF 単写S-IS1
■使用機材:OM-5 + M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 II(18mm)
■撮影環境:F5.6 1/50秒 ISO200 絞り優先モード +1.3EV WBオート 仕上がりモードVivid S-AF 単写S-IS1
■使用機材:OM-5 + M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 II(9mm)
■撮影環境:F5.6 1/30秒 ISO200 絞り優先モード +0.7EV WBオート 仕上がりモードVivid S-AF 単写S-IS1
■使用機材:OM-5 + M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 II(18mm)
■撮影環境:F16 1/10秒 ISO200 絞り優先モード +0.7EV WBオート 仕上がりモードVivid S-AF 単写S-IS1
■使用機材:OM-5 + M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 II(18mm)
■撮影環境:F5.6 1/50秒 ISO200 絞り優先モード +0.7EV WBオート 仕上がりモードVivid S-AF 単写S-IS1
■使用機材:OM-5 + M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 II(18mm)
■撮影環境:F8.0 1/20秒 ISO200 絞り優先モード WBオート 仕上がりモードVivid S-AF 単写S-IS1
■使用機材:OM-5 + M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 II(18mm)
■撮影環境:F5.6 1/640秒 ISO200 絞り優先モード +1.7EV WBオート 仕上がりモードNatural S-AF 単写S-IS AUTO
■使用機材:OM-5 + M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 II(9mm) Bi Rod 6C-4500+延長ロッド(試作品)
■撮影環境:F8.0 1/250秒 ISO200 絞り優先モード +1.3EV WBオート 仕上がりモードVivid S-AF 単写S-IS1
■使用機材:OM-5 + M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 II(9mm) Bi Rod 6C-4500+延長ロッド(試作品)
■撮影環境:F8.0 1/250秒 ISO200 絞り優先モード +0.7EV WBオート 仕上がりモードNatural S-AF 単写S-IS1

今回の撮影では軽量でコンパクトなサイズであることを活かし、OM-5との組み合わせを持ち歩きながら主にスナップ撮影を行った。OM-5との組み合わせはサイズ感もちょうどよいことから人混みのなかでも不用意に目立ってしまうこともなく、また歩きながらでも軽快に撮影を進めることができた。スナップスタイルの撮影には最適な組み合わせであるといえるだろう。ちょうど桜の花が咲き始めた時期であったことから、頭上に広がる桜の花の下を歩きながら、M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 IIの広い画角を活かし画面いっぱいに桜の淡い色の花々を収めることができた。

ただ撮影後の画像を見て気になった点として、逆光での撮影や直射日光など強い光がレンズに直接が差し込むようなシーンでは、画像がわずかに白く霞む傾向がある。おそらく弱いハレーションの発生によるものと思われる。ただカメラ位置をわずかにずらして光が差し込む方向を変えるなど、状況に応じて対処できる程度のものなので、必要以上に気にすることはないだろう。また形状が改善された付属の花形フードは、レンズに不要な直射日光が差し込むのを防ぐ効果が高まっているので、基本的には常に装着しておくようにしたい。

画質と携行性を兼ね備えた常用広角ズームレンズ

M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 IIは前モデルのM.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6のレンズ設計をそのまま受け継ぎつつ、現在のOM SYSTEM製品のデザインコンセプトに合わせ刷新された製品だ。扱いやすい画角を持つズームレンズであるうえ、レンズラインナップのなかでは比較的手にしやすい価格設定となっていることからも、初級~中級者が初めて購入する広角ズームレンズに最適と言えるだろう。

それでいながら画質はとても高く、状況に応じてPROレンズを常用する上級者の要求にも応えてくれるはずだ。さらに本製品は特筆すべきほどの軽量かつコンパクトサイズであることから、組み合わせるカメラ次第ではミニマムなカメラ構成とすることができる。広角端の画角は上位モデルのPROレンズほど広くはないといえども、9mm(35mm判換算18mm)であればほとんどの撮影において十分に広い画角であり、広角レンズ特有の遠近感を強調した画作りも可能だ。

これらの特徴からも、このM.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 IIは初中級者はもちろんのこと、PROレンズを使用する上級者にとっても便利な一本となるだろう。鏡筒を縮めた状態であれば手のひらに収まるサイズの広角レンズ。カメラバッグの片隅に常に忍ばせておけば、きっといざという時にはあなたの撮影の手助けとなってくれるに違いない。

 

 

■機材協力:株式会社ルミカ Bi Rod https://birodstore.com/

■写真家:礒村浩一
広告写真撮影を中心に製品・ファッションフォト等幅広く撮影。著名人/女性ポートレート撮影も多数行う。デジタルカメラ黎明期よりカメラ・レンズレビューや撮影テクニックに関する記事をカメラ専門誌に寄稿/カメラ・レンズメーカーへ作品を提供。国境離島をはじめ日本各地を取材し写真&ルポを発表。全国にて撮影セミナーも開催。カメラグランプリ2016,2017外部選考委員・EIZO公認ColorEdge Ambassador・(公社)日本写真家協会正会員

 

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