パナソニック LUMIX G100レビュー|綺麗な画質とリアルな音声が魅力的!
はじめに
2020年8月20日に発売になったパナソニックのLUMIX G100は、Vlog(Video Blogの略。文章ではなく動画で自分の日常や好きなことを表現するブログ)を撮影して発信するVloggerをメインターゲットとした、小型・軽量のミラーレス一眼です。
常に持ち歩けるサイズ感と、自撮りがしやすい機能を搭載していますので、これからVlogやYouTubeチャンネルを始めたい方はもちろん、今まで写真だけを楽しんでいたけど、これから動画撮影にも挑戦したいと思っている方にもお勧めできる製品です。今回は、動画と写真の両方の視点でレビューをお送りします。
キットレンズと手ブレ補正機能でお手軽撮影
■撮影機材:LUMIX G100 + LUMIX G VARIO 12-32mm / F3.5-5.6 ASPH. / MEGA O.I.S.
■出演:大川成美/筆者
本機の販売形態は、ボディと標準ズームレンズ「LUMIX G VARIO 12-32mm / F3.5-5.6 ASPH. / MEGA O.I.S.」がセットになったKキットと、それにプラスしてトライポッドグリップ「DMW-SHGR1」がセットに加わるVキットの2パターンがあります。
このトライポッドグリップは、静止画シャッターボタン、動画記録ボタン、スリープボタンの3つを搭載し、ミニ三脚としても使用できるので、手持ち撮影や自撮りがしやすくなるアクセサリーとして、とても有能です。単体での重量は102gと軽量でコンパクトなので、カメラに付けたままでも邪魔になりません。自撮りが多い方はグリップがセットになったVキットのほうが便利に使えるでしょう。また、このグリップはG100以外にも、7月21日に公開されたファームウェアをダウンロードすることによって、LUMIXシリーズのGH5、GH5S、G9、G99、G8でも使用(一部機能制限あり)できます。
本機は20.3M Live MOSセンサーを搭載しており、解像力と繊細なグラデーションの表現力は、他のLUMIX機種と同様に高いクオリティを維持しています。動画にも力を入れてきたパナソニックだからこそ、静止画と動画の高い撮影機能が並び立つこの性能のカメラを、今、発売することができたのでしょう。
筆者はキットレンズの「LUMIX G VARIO 12-32mm / F3.5-5.6 ASPH. / MEGA O.I.S.」とは、GF9からのお付き合いなのですが、沈胴式で薄くて、焦点距離は35mm判換算で24~64mmと使いやすい画角のため、街中のスナップや海外旅行などで重宝しているレンズです。G100のキットレンズとしても、サイズのバランスはベストでしょう。
本機を使用する方は、歩きながら自分や周りを撮影することが多いと思います。動画撮影時の手ブレ補正はキットレンズを使用した場合、カメラ本体の5軸電子手ブレ補正(E.I.S.)と、レンズの2軸光学手ブレ補正(O.I.S.)が連動する5軸ハイブリッド手ブレ補正が、大きな歩きブレや、手持ち撮影によっておこる手ブレを補正してくれます(4K動画撮影時は4軸補正となります)。
この手ブレ補正は「OFF」、「標準」、「強」の3段階あり、「補正:強」を使用するとかなり画角が狭くなるので、手持ちでの自撮りの場合は自分が見切れないように気をつけましょう。作例動画は、モデル出演の作例は、筆者がカメラを持って一緒に歩いて撮影、筆者出演の作例は、トライポッドグリップに装着した本機を自分で持って撮影しています。
結果、キットレンズを使用した歩きながらの撮影は、なるべく上下に揺れないようにゆっくりと歩けば、「補正:標準」が補正力も画角もちょうどいいと感じました。どうしても荷物になってしまうジンバルを持ち歩きたくない方には、お手軽なトライポッドグリップと本機の組み合わせがいいでしょう。
内蔵マイクとスロー&クイック機能
■撮影機材:LUMIX G100 + LUMIX G VARIO 12-32mm / F3.5-5.6 ASPH. / MEGA O.I.S.
■出演:大川成美
※イヤホンでご視聴いただくと、さらに臨場感を体感できます
臨場感ある音声を収録できる内蔵マイク
本機はNOKIA社製のOZO Audioを採用した内蔵マイクを搭載しているので、シーンや好みに合わせた臨場感満載の音声を収録できます。作例ではモデルがカメラの周りを回ったり、左右を行き来していますが、本当にその方向から声が聞こえてきますので、音声の臨場感をさらに感じていただくために、イヤホンでのご視聴をお勧めします。
音声収録の目玉は、業界初搭載の「トラッキングモード」です。これは、顔・瞳認識AFと画角に連動して、人がどこにいるかをカメラが判別して、収音範囲を自動調整してくれます。LUMIXシリーズのカメラは顔・瞳認識AFの精度がとても高いので、この「トラッキングモード」との相性は抜群にいいです。特にイヤホンを使用すると、本当に写っている方向から声がするので、その場にいるような臨場感を体感できます。
続いて、筆者が気に入ったのが「サラウンドモード」でした。360度ぐるり周囲の音を収音してくれるので、人の声はもちろん、足元の水音や、木の上で鳴いているセミの声、遠くでケンカする犬の吠え声などを、距離感もそのままに再現してくれます。
初期設定の「オートモード」は、撮影するシーンに合わせてカメラが自動的に音声を調節して記録します。前述の「トラッキングモード」と「サラウンドモード」を状況によって自動的に切り替えてくれるので、特に意図がある撮影でない限り、オートモードで撮影すれば手軽にリアルなサウンドを手に入れられます。
「フロントモード」は、カメラの前方の音を収音しますので、出演者が全員前にいるシーンや、後ろの操作音を拾いたくないときに便利です。「ナレーションモード」は、カメラの後ろの音を収音します。少し後ろや上から話しているような、動画を見ている人が画面に集中できる音声になりますので、説明動画や自分目線のVlogなどに使用すると素敵でしょう。
なるべく持ち物をミニマムにしたいVlog撮影時に、外付けマイクが無くてもここまで臨場感あふれる音声収録ができる内蔵マイクはとても楽しくて、これからも色々なシーンで試してみたいと思いました。ただ一点、カメラ本体に直接開いている穴のような形状のマイクなので、風防が装着できません。風音キャンセラー機能も搭載していますが、ビルの間や海辺のような強い風のなかではあまり意味を成しませんので、何かいい方法を探さないといけないかなと感じました。
個性的な動画が撮れるスロー&クイック機能
動画で多用されるスローモーションを簡単に撮影できる「スロー&クイック動画」機能は、モードダイヤルに単独して搭載されています。ここに合わせるだけで、1/4倍スロー、1/2倍スロー、2倍クイック、4倍クイック、8倍クイックの動画を撮影できます。
作例には1/4倍スローと8倍クイックを収録しましたが、クイック撮影の動画は少し長めに撮影すると楽しいでしょう。動物や子供を撮影すると、コミカルで楽しい動画になりそうです。編集を勉強しなくても、スローとクイックの動画を気軽に楽しめるので、日常をもっと印象的に撮影したい方はもちろん、動画初心者の方が動画の楽しさに触れられる、面白い機能だと思います。
美肌モードを自分で作れるフォトスタイル
■撮影機材:LUMIX G100 + LUMIX G VARIO 12-32mm / F3.5-5.6 ASPH. / MEGA O.I.S.
■出演:大川成美
LUMIXのカメラで特筆したいのが、人肌を綺麗に描写してくれることです。筆者はLUMIX G9でポートレートを撮影することが多いですが、その理由として女性の肌色を美しく、健康的に表現してくれるからです。
キットレンズの「LUMIX G VARIO 12-32mm / F3.5-5.6 ASPH. / MEGA O.I.S.」は、コントラストの高いくっきりとした写りのレンズなので、被写体を鮮やかに描き出してくれます。風景やスナップではそれがいい味を出してくれるのですが、動画で自撮りや人物を撮影するときはフォトスタイルを人物モードにすると、シャープさが少し和らぎ、全体に優しく顔を描写してくれます。
さらに、自撮りをしたいけど今日は顔のコンディションがいまいちと思うときは、メニュー画面から各フォトスタイルの詳細調整ができますので、人物モードのコントラストとシャープネスをマイナス2くらいに調節すると、全体にさらにふんわりとした描写の美肌モードを自分で作成することができます。
また、本機はLog撮影機能「V-Log L」がフォトスタイルとして搭載されています。「V-Log L」とは、マイクロフォーサーズセンサー用に最適化されたLog特性で、通常のV-Logと同じLUT(ルックアップテーブル)を利用したカラーグレーディング編集作業が可能です。
G100でPV風ムービー
■撮影機材:LUMIX G100 + LUMIX G VARIO 12-32mm / F3.5-5.6 ASPH. / MEGA O.I.S.
■出演:大川成美
動画の作例として、グラビアアイドルの大川成美さんにモデルとしてご協力いただき、PV風のムービーを作成しました。レンズはキットレンズのみを使用しています。
レンズ交換できるのは最高のメリット!
自撮りだけなら、気軽に撮影できるスマホでもいいのでは……と思う方も、レンズ交換できる本機で、ポートレートの神レンズを使用すれば、ガラッと気持ちが変わることでしょう。
作例で使用した「LEICA DG NOCTICRON 42.5mm / F1.2 ASPH. / POWER O.I.S.」は、35mm判換算で85mmの中望遠画角、F1.2の大口径で柔らかく繊細なグラデーションを描き出してくれる、ライカの名称を冠するに相応しいレンズです。
筆者が普段からポートレート撮影で頻繁に利用するレンズですが、高性能ながら手のひらサイズでコンパクトなので、本機とのサイズバランスもしっくりきました。G9とこのレンズを使って動画を撮ったときは、仕上がった画の綺麗さに感動したので、G100とこのレンズとの組み合わせの動画撮影が楽しみになりました。
「LEICA DG NOCTICRON 42.5mm / F1.2 ASPH. / POWER O.I.S.」の作例はこちら(モデルの気持ちがわかるポートレート撮影術 ~オススメLUMIXカメラ&レンズ~)の記事でもご覧頂けます。
動画も静止画も高いクオリティの日常用カメラ
本機の購入を検討しているのは、動画撮影に興味を持ち始めたばかりの方も多いと思います。4K動画撮影が可能で、V-Log Lも搭載されている、AFの性能は高く、顔・瞳認識AF機能は特に秀逸、3.0型のフリーアングルタッチパネルモニターは炎天下でも見やすいので、ローアングルやハイアングルの撮影も無理なく行える、滑らかで解像度の高い画質を再現するヴィーナスエンジン搭載で、ハイクオリティな撮影が手軽に行える。そして、とても有効的な価格設定になっています。
動画機が高くて手を出しにくかった方も、気負いなく購入検討ができるレンズ交換式の動画カメラとしてお勧めできるのと共に、小さくて硬派なデザインの持ち歩き用常用スチールカメラとしてもお勧めできる、パナソニックらしい機種に仕上がっていると思いました。