パナソニック LUMIX GH6が登場!|商品企画担当者へのインタビューから魅力を紹介
はじめに
本日、パナソニックからマイクロフォーサーズミラーレス一眼カメラのLUMIX GH6を、2022年3月25日(金)に発売するとアナウンスがありました。開発発表されてから9か月が経過し、本製品の正式発表を待ち遠しく過ごされた方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。今回はそのLUMIX GH6の魅力や進化について、パナソニック株式会社 商品企画担当の中西智紀(なかにしともき)氏にインタビューしましたので是非ご覧ください。
概要
―どんな方におすすめのカメラですか
独自の表現を追究したいクリエイターにおすすめのカメラです。特にマイクロフォーサーズシステムの個性豊かなレンズ群を活かしつつ、従来とは異なる新たな表現にチャレンジしたいGHユーザーの方におすすめします。
―GH5S、GH5IIからの進化・変更点、基本的な動画性能について教えてください
エンジンとイメージセンサーが一新されており、基本的な描写性能が大きく向上しています。S1H比では2倍の演算性能を誇りS/Nに優れたエンジンと、GHシリーズで最高解像度となる25.2Mのセンサーを組み合わさることで、従来得られなかった解像感を実現しています。動画記録モードはフルサイズフラッグシップモデルのS1Hよりも大幅に拡張され、5.7K60pやC4K120pなどの高解像高速撮影や、最大1.9Gbpsの動画記録が可能になっています。
―フルサイズのDC-S5やS1Hとの住み分けポイントを教えてください
フルサイズセンサーの豊かな描写を得たい方や高感度性能を得たい方にはS1HやS5がおススメだと思います。特にS1Hはシネマカメラなどに慣れた業務用途のシーンにおいても使いやすいよう様々な設計上の配慮が施されています。S5はフルサイズならではの描写を得られる機種としては比較的小型軽量の機種となりますが、小型化にあたって犠牲としているプロフェッショナル性能も一部ありますので、結果として多くの性能においてフラッグシップモデルであるGH6が上回ります。
圧倒的に多彩な動画記録モードはもちろんのこと、AF性能、手ブレ補正、ファインダー、モニター機構、端子など、様々な側面でGH6の性能が上回りますので、プロで映像制作に携わる方や、仮に趣味でも少し踏み込んだ先進的な表現に興味がある方にはGH6がおすすめできます。
―今まで静止画メインでマイクロフォーサーズを使用されてきたユーザーに対するおススメポイントはありますか
何よりも、“描写”については、静止画/動画問わず今回お勧めです。今までにない解像感やS/Nの良さをご体感いただけると思います。通常の約2520万画素の描写はもちろん、1億画素のハイレゾは今回から新たに手持ち撮影に対応しており、より手軽にハイレゾ表現をお楽しみいただくことも可能です。また、全体的にエンジン性能向上によるサクサク感をご体感いただけると思います。
―液晶モニターまわりの撮影性能について教えてください
チルトフリーアングルモニターはチルト派にもフリーアングル派にもおすすめです。高輝度液晶を採用しているので屋外での視認性も高いです。
―凄くお求めやすい価格になっていると思うのですが、価格付けに関する狙いはありますか
手の届かないフラッグシップでは無く、手の届きやすいフラッグシップを提供し、もう一度マイクロフォーサーズファンを盛り上げたい狙いがあります。ボディ性能の進化により、お持ちのレンズの描写ももう一度楽しみなおすことができると思います。今回は特に、“予約購入”キャンペーンを実施しており、ボディで2万円、キットで3万円のキャッシュバック、それに加えて、128GBのCFexpressカードプレゼントも実施します。長らくお待ちいただいたGHファン、マイクロフォーサーズファンの方に喜んでいただければと思い、かなり踏み込んだキャンペーンとさせていただきました。
新開発のセンサーと画像処理エンジンについて
―画づくりでの拘ったポイントと進化ポイントがあれば教えてください
1画素あたりの受光面積が小さくなる高解像機でありながら、従来よりもS/Nを良化させ、ダイナミックレンジを向上させている点がこだわりのポイントです。マイクロフォーサーズ機として従来の常識を覆す方向性の進化だと思っています。画づくりについては、特にG9の登場以降、一貫した思想の元に作ってきていますが、素性の描写性能が大幅に向上したことで、また新たな雰囲気をお楽しみいただけると思います。
―処理速度はどのくらい高速化され、どのような機能に影響を与えていますか
フルサイズフラッグシップ機であるS1Hと比較して2倍の高速処理が可能です。そのエンジンをそれよりも低単価のマイクロフォーサーズ機に載せることはある意味では価格破壊的な行為だと思っています。画質の向上はもちろん、AFの被写体検出速度も前機種比で3倍ほどに向上しております。
―ダイナミックレンジブーストの優位ポイントはどんなポイントでしょうか
マイクロフォーサーズの高解像度機でありながら、V-Log撮影時に13+ストップのダイナミックレンジを得ることが可能なところです。これは、GH5IIやGH5SよりもむしろS1HやS5に近いレベルのダイナミックレンジとなります。
プロフェッショナル動画性能
―今回一新された動画記録モードについて従来モデルとの進化ポイントを教えてください
まず、高速性能が大きく向上しています。Over4Kで当社初の60fps撮影を実現(5.7K60p)しました。また、C4Kでは120fps撮影、FHDでは最大300fpsからのスロー生成(VFR)が可能です。従来のVFRと異なり、今回スローモーション撮影も10bit対応しているため、グレーディング耐性も大きく向上しています。ALL-Intra撮影のビットレートは従来の上限値だった400Mbpsから800Mbpsに向上。Apple ProRes時には最大1.9Gbpsでの撮影も可能となっています。
―LUMIXシリーズで定評のある放熱性能ですがGH6はいかがでしょうか
C4K60p422 10bit以下の撮影においては40℃以下の温度環境において、バッテリー・メディアの続く限り無制限記録が可能です。Over4Kやハイスピード撮影時には若干熱の発生が増えますが、それでも短時間で記録停止することはありませんので、同温度条件で長時間撮影が可能です。
―Apple ProRes導入の狙いはどんなポイントですか
広告撮影でポスプロにデータを渡す際に、ProRes納品を求められる場合、従来は外部レコーダーでProRes記録するか、MOV記録後に一度フォーマット変換することが必要でした。まずはその手間を簡略化することで、ProResベースのポスプロへの対応を容易にできます。
また、必ずしもProResでの納品を必要とせず、撮影者自らが編集を行う際にも、ProResのように低圧縮の記録モードの場合、PC上でのデコード負荷が軽いこともあり、出先でノートPC等で編集する際も比較的軽快な動作が期待できると考えました。
―特に動画撮影時に気になるウォブリングについてのメーカーとしての対策はされていますか
今回、新たにウォブリングを重点的に抑制するアルゴリズムを導入したAF方式を採用しています。それ以外にも、被写体への追従性や、背景抜け、光源など、コントラストAFにおいて従来弱点とされてきたような領域を重点的に対策していますので、有意に性能向上を認識いただけると思います。
―動画に強いフルサイズモデルが増える中、マイクロフォーサーズでのハイエンド動画モデルを出し続ける理由はありますか
レンズ資産が安価に形成できるため、通り一遍のレンズ以外に個性的なレンズも思い切って購入しやすいことがクリエイターにとってのマイクロフォーサーズの存在意義だと思います。また、同じ予算で機材をそろえる時に、カメラ本体やレンズ本体への投資が抑制できるということは、音声、照明、三脚、フィルターなど、その他の周辺機材に積極的に投資しやすくなるとも言い換えられます。ここ数年間、マイクロフォーサーズ機のボディ性能の向上に不満を持たれていた方にとっても、今回のGH6は自信をもってお届けできる、まさにフラッグシップ性能のモデルです。
―高画質な動画の内部記録と外部出力が同時に出来るメリットを教えてください
用途によって使い分けていただけることがメリットです。もちろん、外部レコーダーで収録する場合もあると思いますが、足場の悪い環境や移動が多い撮影の際など、より機動力が必要な撮影の際に、一眼カメラの機動性が低下してしまうのは事実です。内部収録の性能向上は、カメラ単体で持ち運んで撮れる映像のクオリティが上がることを意味します。もちろん、同時に内部と外部で記録することで、プロキシ的にデータを取り扱うこともできますし、バックアップ的に取り扱うことも可能だと思います。
―内蔵マイク・外部マイクでの24bit記録に対応した事での4ch音声収録で得られるメリットを教えてください
4ch撮れれば、純粋に4人までの出演者のピンマイクを、オンカメラで収録可能です。それ以外にも、2chのピンマイク+アンビエントなどの使い分けや、2ch+2chでバックアップデータを作っておくなど、様々なシーンで活躍すると思います。それらが全て24bitで撮れることにより、品位の差が少ない記録が可能ですし、何らかのノイズが入り込んだ際にも編集が容易です。
AF・連続撮影・手振れ補正について
―コントラストAF方式を引き続き採用されていますが、メーカーとして考える課題やGH6での進化ポイントはありますか
上記にもある通り、コントラストAFの弱点については今回重点的なアルゴリズム対策を施しています。エンジンの演算速度の向上と合わせて、是非性能向上を御確認いただけると嬉しいです。また、今回から測距点数は315点に増え、認識AFもその他のAFモードと掛け合わせて使えるようになっています。例えば、ダイナミックに動きながらジンバルなどで人物を撮影する際には、フルエリア×人物認識AF(顔・瞳+人体)が便利だと思いますし、メイン被写体以外に多くの人物が画面内に収まる場合は、ゾーン×顔・瞳認識(人体OFF)などが便利です。
それ以外に、“フォーカスリミッター”と言って、AFの効く距離に制約を付けてから撮影することも可能です。手前の範囲に限定することで、被写体を追っかけて撮影する際などに背景抜けを抑制したり、奥の範囲に限定することで動物園で檻にピンがいってしまうことを抑制することも可能です。
―手ブレ補正は強化されていますか
新開発のジャイロセンサーを採用し、5軸7.5段のボディ内手ブレ補正を実現しました。これにより、電子接点のないレンズなどを使う際にもボディ内で強力な補正を使うことが可能です。また、Dual.I.S.2では、換算280mmまでの撮影で7.5段分の補正効果が得られますので、中望遠領域でも強力に補正されます。もちろん、強力に高周波の揺れを抑制するだけでなく、低周波の動きをなめらかに補正する動画用アルゴリズムもS1H以降踏襲されており、当社の強みになっています。また、手ブレ補正機構を活かし、ハイレゾ撮影において当社として初めて手持ちモードを採用。手持ちで1億画素のハイレゾ写真が撮影可能です。
その他の特長
―従来のモデルのバッテリーが使用出来ると聞きました
はい、BLF19というGH5やGH4の同梱バッテリーもお使いいただけます。ただし、4Kを超える解像度やハイスピード撮影時など、一部の電力負荷の大きいモードではご使用いただけないので、その際にはアラート表示が出るようになっています。そのため、100%互換というわけではありませんが、同梱バッテリー同様、USB充電していただくこともできますので、もしもの時のために忍ばせておいていただくと心強いかもしれません。
―外部接続でのカメラ操作は対応されていますか
はい、LUMIX Tetherのアプリに対応致します。
―メモリーカードに新たにCFexpressを採用した理由を教えてください
SDカードとして最も高速なV90の保証上限値(720Mbps)を超える記録モードを実装し、物理的にSDカードで記録ができなくなったためです。ただし、600Mbps以下のモードにおいてはCFexpressとSDでのDual RECを可能としています。
今後のファームアップについて
時期は未定ですが、C4K120pの動画RAWデータ出力や、4K120pHDMI出力、ProResの対応モード拡充、USB SSDへのダイレクト記録など、様々な機能強化ファームアップを実施予定です。
LUMIX GH6の記事はこちらでもご覧いただけます
■パナソニック LUMIX GH6 開発発表を受けて、期待する進化について語る|Osamu Hasegawa
https://www.kitamura.jp/shasha/article/482919488/