パナソニック LUMIX GH7が登場!|マイクロフォーサーズのハイエンド動画モデル ~商品企画担当者へのインタビューから魅力を紹介 ~
はじめに
パナソニックからマイクロフォーサーズのミラーレスカメラ LUMIX GH7を2024年7月26日(金)に発売するとアナウンスがありました。LUMIX GH7はGH6の後継というだけでなくGH5II独自機能も統合して進化したモデルになります。今回は本モデルを開発した経緯やコンセプト、製品の魅力についてパナソニック エンターテインメント&コミュニケーション株式会社 LUMIXマーケティング担当の矢野川 優(やのがわ ゆう)氏にインタビューしましたので是非ご覧ください。
概要
― 大人気シリーズGHの後継を企画する上で特に意識した点を教えてください。
昨今、社会情勢の影響や、クライアント企業のクリエイティブへの考え方の変化もあり、映像制作の撮影スタイルが変わってきております。その中でも、特に、「ワンマンオペレーション」つまり、一人でプリプロダクションから撮影、編集まで、複数の作業をこなすスタイルが増加しております。
GHシリーズは、昨今、そういったクリエイターへの貢献を意識して開発を進めております。具体的にはGH6からこだわってきた表現力や、豊富なフレームレート、フルサイズセンサーに迫るダイナミックレンジに加えて、GHシリーズのアイデンティティの一つである動画記録時間無制限などの信頼性については堅持しつつ、GH7では、編集耐性の自由度やワークフローへのさらなる貢献にチャレンジしたモデルとなります。
― GH7の最大の売りポイントを教えてください。
先の内容と重複しますが、GH7の特徴をまとめると、下記の3つのポイントが挙げられます。
(1) 表現力のさらなる拡張への貢献
(2) ワークフローへの貢献
(3) 信頼性の向上
後述しますが、(1)では、豊富な動画コーデックや、ハイスピード撮影などの時間軸表現はGH6から受け継ぎつつ、LUMIXとして初となるProRes RAWの内部収録や、ダイナミックレンジブーストのISO感度領域の大幅な拡大などを実現しております。
(2)では、チルトフリーアングル液晶モニターや、豊富な動画アシスト機能などをGH6から引き継ぎつつ、Proxy同時記録やFrame.ioなどへの対応に加えて、レンズ交換式デジタルカメラとして世界で初めて32bitフロート録音に対応しました。
また、(3)では、大きな進化ポイントはないものの、GHのアイデンティティの一つである4K 60p 4:2:2 10bit時の無制限記録、CFexpress TypeBの採用、USB-SSD記録への対応、防塵・防滴/耐低温設計など、耐久性、信頼性をGH6から引き継いでおります。
共通配置 左:GH6 右:GH7
― フルサイズ人気モデルのS5 II・S5 II Xや新モデルのS9との住み分けポイントを教えてください。
フルサイズとの比較でいえば、2つの優位性があります。
1つ目はシステム全体の小型・軽量性による機動力、2つ目はイメージセンサーの高速性に起因するハイスピード撮影時の時間表現を指します。
一方でフルサイズは、そのイメージセンサー特性に起因するリッチな絵作りやボケ表現が特徴となり、お客様の目的に応じて、使い分けていただけると考えております。
基本性能について
過去のGHシリーズからの進化ポイントを深掘りして伺っていきたいと思います。
― LUMIX全体で見れば採用されてから(2023年2月発売LUMIX S5IIから)1年以上が経過し、様々なデータが集約されてより進化していると思いますが、GH7での像面位相差×リアルタイム認識AFはどの様な進化を遂げていますか?
AFアルゴリズムなどは、順次改善しておりますが、大きな進化ポイントとしては、被写体認識の対象に「列車」と「飛行機」を追加しました。
加えて、被写体の特定部位の設定メニューもあり、ユーザーの皆様の「ここを撮りたい」に貢献してまいりたいと考えております。
― 静止画での手振れ補正機能はもちろん強力かと思いますが、より手振れに対してシビアになる動画撮影における手振れ対策はGH7でどう工夫していますか。
従来より、LUMIXの手ブレ補正については、お客様から一定の評価を頂戴しておりますが、GH7ではおっしゃる通り、さらなる動画撮影に向けた最適化にチャレンジしております。S5IIシリーズで採用した、”カメラのブレ補正の状態を適切に判断し、ブレ補正ユニットの能力を最大限発揮させることで、従来よりも大きな手ブレを補正する”「アクティブ I.S.」に対応しました。
加えて、G9PROIIで採用した電子手ブレ補正の「強」モードを追加しました。多少クロップされるものの、ブレを自然に抑制し、歩き撮り時、走り撮り時にも効果を発揮します。
また、広角レンズを使用した際に気になる周辺の歪みについても、補正する機能を搭載しておりまして、従来よりも、強力でありながらも、自然な映像表現を可能としました。
― LUMIXユーザーの間で浸透してきている「リアルタイムLUT」についてGH7での写真・動画それぞれでの活用ポイントを教えてください。
S5IIシリーズで初搭載したリアルタイムLUTも、GH7で大きな進化を遂げております。ご要望をいただいていたLUTの濃度調整や、重ね掛けも可能とし、さらなる色表現の自由度を向上しております。
リアルタイムLUTは、写真でも動画でも使用することができ、例えばWEB CMなどを制作する際に、商品の写真撮影を同時に行う場合に容易にトンマナを揃えることができます。
加えて、予めLUTを当てた状態での映像を取得できますので、たとえば、アフタームービーのような納期が非常にタイトな現場においても「撮って出し」での納品が可能で、完パケまでのリードタイム圧縮に貢献できると考えております。
また、今回、新たなスマホアプリ「LUMIX Lab」にも対応しました。LUMIX Labでは、予め準備している約90種類の有名クリエイターによるLUTをダウンロードし、カメラにすぐに適用できることに加えて、お客様ご自身のLUT作成も可能になっております。
LUMIX Labとのコンビネーションで、さらなる表現の自由度向上に貢献したいと考えております。
― GH5II独自の機能だったライブストリーミング機能を継承した狙いはなんでしょうか?
昨今、よりライトでクイックなストリーミング需要も増加していると考えております。GH7のようなハイエンド機種においても、リッチな映像表現をベースにしたストリーミングも可能とするべく、GH5II時に採用したライブストリーミング機能を搭載いたしました。
プロフェッショナルに応える動画性能
― GHシリーズといえば「動画目的ユーザーに対する充実のアシスト機能」だと思います。低コスト化の影響で少人数でのワークフローが求められる今、メーカーとしてどの様にお考えでしょうか。
先ほどと重複しますが、日本国内においては、ビデオグラファースタイルと呼ばれる、一人でプリプロダクションから、撮影、編集までをこなす方々が近年急増しているほか、ミニチームでの制作も活発です。
その中で、クリエイターのワークフローを、もっと軽く、効率化することにより、貢献したいと考えており、動画アシスト機能については、豊富に搭載しております。
― GHといえば「無制限記録」での動画撮影における抜群の信頼性ですがGH7ではどのように引継がれていますか?
今回、ProRes RAW内部収録や、Proxyの同時記録など、電力的には、より難しい熱との戦いがありましたが、その中においても、何とかGH6から筐体サイズを変えることなく、GH7を生み出すことができました。一見、見た目には表れづらい、地味な進化ポイントになりますが、GH6同等のボディサイズに抑えつつ、新機能を盛り込むことにチャレンジした結果となります。
― 多彩な動画記録モード誇るGH7ですが、このクラスとしては珍しいProRes RAW内部記録対応や4K120p対応RAW出力連携などを採用されていますが、映像表現の幅広さを追求する事へのこだわりについて教えてください。
クリエイターにとってのゴールとしては、ご自身の映像作品が評価されることだと考えております。それが、クライアントワークの場合もあるでしょうし、あるいはご自身のクリエイティビティを詰め込んだ映像表現かもしれません。
いずれにせよ、クリエイターのクリエイティビティが、いかんなく発揮されるためには、映像表現の自由度や、幅の広さが必要と考えており、豊富な動画コーデックを搭載することへつながっております。
― GH7ではプロキシファイルの同時記録やAdobe Frame.ioへの接続に対応されていますが、使いこなしポイントを教えてください。
先に述べたように、小さい制作チームでスピーディに仕事をこなされるシーンも増えていると考えております。そういったシーンへのワークフロー貢献のために、ProRes RAW、Proxy同時収録、Frame.ioへ対応しました。
例えば、撮影班のみ現地に伺い場合でも、ProxyとFrame.ioを活用することで、遠隔地にいるクリエイティブディレクターやクライアントが画角やカットチェックをリアルタイムに行うことが可能です。また、編集班も、動画ファイルの共有を待たずして、すぐにProxyでのオフライン編集に取り掛かることができ、リードタイムを大幅に圧縮できます。
動画ファイルもProRes RAWで撮影しておくことで、カラコレ、カラグレでの自由度や耐性も担保したまま、映像クオリティを担保することができます。
よって、映像表現のリッチさを損なわず、制作のスピードを向上することで貢献できると考えております。
― 新アクセサリーDMW-XLR2との組み合わせでユーザー得られる恩恵について教えてください。
大きなポイントは32bitフロート録音対応です。特にカメラマンやディレクターが、音をコントロールしにくい現場、例えば、ブライダルや、ライブ/フェス、ドキュメンタリなどにおいて、ゲイン調整にリソースを取られることなく、カットやシーン構成に集中でき、より機動力にあふれた撮影が可能になります。
また、企業VPなどでインタビュー取材などの際にも、インタビュイーの声の大きさの調整や、突然の笑い声による音の破裂など、こちらもゲイン調整を気にすることなく、スムーズな現場進行が可能となり、幅広いシーンで活躍が期待されます。
加えて、今回XLR2では、XLR端子2chに加えて、Φ3.5mmステレオジャックも32bitフロート録音が可能なため、お手持ちのマイクですぐに32bitフロート録音をお試しいただける機会も増えていると感じております。
― 動画に強いフルサイズモデルが増える中、マイクロフォーサーズでのハイエンド動画モデルを出し続ける理由はありますか?
先に述べたように、フルサイズ比較で、マイクロフォーサーズには2つの優位性があります。
1つ目はシステム全体の小型・軽量性による機動力、2つ目はイメージセンサーの高速性に起因するハイスピード撮影時の時間表現を指します。当社としては、マイクロフォーサーズには、十分に優位性があると考えており、映像クリエイターの皆様のニーズに対応できると考えております。
一方でフルサイズは、そのイメージセンサー特性に起因するリッチな絵作りやボケ表現が特徴となり、お客様の目的に応じて、使い分けていただけると考えております。
さいごに
昨今流行しているフルサイズに比べて、イメージセンサーのサイズでは一見、不利に見えるマイクロフォーサーズですが、当社としては、現在でもしっかりとその優位性を発揮しながら、活躍できる現場が、まだまだあると考えており、当社としても、今後もマイクロフォーサーズの訴求を継続してまいります。
今回、GH7については、GHシリーズの最高傑作だと胸を張って申し上げられる商品として生み出すことができました。
ぜひ、お手に取っていただき、その性能の高さや、懐の深さをご体感いただければ幸いです。
これからも、マイクロフォーサーズにご期待ください。