機動力と万能性を兼ね添えた標準ズームレンズ|パナソニック LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6 レビュー

はじめに
焦点距離を広角側にシフトした標準ズームレンズLUMIX S 20-60mm F3.5-5.6は、LUMIX S5のキットレンズとして誕生しました。以降、LUMIXのフルサイズラインナップSシリーズにおける定番キットレンズとして採用されています。
私の愛用しているLUMIX S5IIの相棒となり、活躍し続けているLUMIX S 20-60mm F3.5-5.6を改めてレビューいたします。
LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6の特徴
LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6は、Lマウント採用のフルサイズミラーレス一眼カメラSシリーズ向けの標準ズームレンズで、超広角20mmから標準域60mmまでをカバーする3倍ズームレンズです。

質量は約350g、最大径77.4mm、全長87.2mm、フィルター径67mm。大きさ・質量ともコンパクトで、愛用しているLUMIX S5IIのボディと合わせると1kg程度で軽量といえます。
本レンズには手ブレ補正機構が搭載されていないこともあり、スイッチ類は鏡筒に設けられたAF/MFスイッチのみ。非常にシンプルな作りで軽量化に貢献しています。また、防塵防滴&マイナス10度の耐低温設計で、天候に左右されることなくさまざまなフィールドでの撮影が可能です。

今ではズームレンズの広角端として決して広すぎる感じのない20mmという画角ですが、一般的な標準ズームレンズよりも広いことでVlogなどにも活用できますし、スペースの限られた場所でもより広い範囲を写し込むことができます。望遠端60mmは標準らしい画角とありスナップ撮影メインの私にとっては痒い所に手が届く、いいとこどりのズームレンズです。
ズーム全域でダイナミックな表現が楽しめるLUMIX S 20-60mm F3.5-5.6
ズームレンズは広角端で樽型、望遠端で糸巻型の歪曲をするといった印象がありますが、LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6はズーム全域で歪曲が抑え込まれているので、ほとんど歪みを感じません。すぐれた描写性能は単にシャープなだけではなく、画面に瑞々しさが感じられて大変気持ちのいい写りをします。
公園に出かけ風景撮影を楽しみましたが、ヌケの良さを引き出すレンズと言ってもいいほど。キットレンズとは言い難い写りに納得感あり、満足度も高く、使っていて本当に爽快です。

■撮影機材:パナソニック LUMIX S5II + S 20-60mm F3.5-5.6(焦点距離21mm)
■撮影環境:絞りF9・1/640秒・ISO100・WB晴天・フォトスタイル/風景+オリジナルLUT

■撮影機材:パナソニック LUMIX S5II + S 20-60mm F3.5-5.6(焦点距離20mm)
■撮影環境:絞りF4・1/1300秒・ISO100・WB晴天・-0.3EV・フォトスタイル/風景+オリジナルLUT

■撮影機材:パナソニック LUMIX S5II + S 20-60mm F3.5-5.6(焦点距離60mm)
■撮影環境:絞りF9・1/500秒・ISO100・WB晴天・フォトスタイル/Lクラシックネオ+オリジナルLUT

■撮影機材:パナソニック LUMIX S5II + S 20-60mm F3.5-5.6(焦点距離20mm)
■撮影環境:絞りF9・1/100秒・ISO100・WB晴天・-0.7EV・フォトスタイル/LEICAモノクローム

■撮影機材:パナソニック LUMIX S5II + S 20-60mm F3.5-5.6(焦点距離54mm)
■撮影環境:絞りF8・1/500秒・ISO100・WB曇り・-0.7EV・フォトスタイル/ポートレート+Sample LUT1
最短撮影距離とボケ表現
最短撮影距離は広角端20mmで15cm(撮影倍率0.34倍)、望遠端60mmで40cm(撮影倍率0.19倍)と非常に短く、被写体に近づいてクローズアップ撮影も可能になっています。このレンズをすすめられた一番のポイントであり、魅力を感じている点です。
大口径の単焦点レンズで、派手なボケなどに慣れていると、ボケ量に物足りなさを感じるかもしれませんが、このレンズでの撮影時は、被写体にクローズアップしつつ背景を取り入れることで、肉眼で見たときと変わりない自然なボケが得られ、全体的にまとまりのある写真らしい表現になります。動画撮影時にもこのくらいのボケの方が臨場感が高まりますね。

■撮影機材:パナソニック LUMIX S5II + S 20-60mm F3.5-5.6(焦点距離60mm)
■撮影環境:絞りF5.6・1/400秒・ISO100・WB晴天・+0.3EV・フォトスタイル/Flat+オリジナルLUT

■撮影機材:パナソニック LUMIX S5II + S 20-60mm F3.5-5.6(焦点距離26mm)
■撮影環境:絞りF4.5・1/50秒・ISO400・WBオート・+1.0EV・フォトスタイル/ポートレート+LUT/Filmlike-V2

■撮影機材:パナソニック LUMIX S5II + S 20-60mm F3.5-5.6(焦点距離60mm)
■撮影環境:絞りF5.6・1/125秒・ISO400・WBオート・-0.3EV・フォトスタイル/Flat+LUT/ Filmlike-V2
スナップならLUMIX S 20-60mm F3.5-5.6一本で大満足
S5IIとの組み合わせで街歩きすると、ちょっと大きめに感じられますが、広角側の焦点距離の魅力が一番感じられるのは街中でのスナップ。路地などでこれ以上引きさがれないというシーンに度々出会うことがありますが、広角寄りで撮影しているとストレスを感じません。
望遠に頼りすぎない60mmという焦点距離も、足で稼ぐといわれているスナップ撮影の上達につながりますし、ズーム領域内で自分がもっとも使用頻度の高い焦点距離も見えてきます。

■撮影機材:パナソニック LUMIX S5II + S 20-60mm F3.5-5.6(焦点距離24mm)
■撮影環境:絞りF8・1/640秒・ISO400・WB晴天・オリジナルLUT

■撮影機材:パナソニック LUMIX S5II + S 20-60mm F3.5-5.6(焦点距離50mm)
■撮影環境:絞りF6.3・1/400秒・ISO400・WB晴天・オリジナルLUT

■撮影機材:パナソニック LUMIX S5II + S 20-60mm F3.5-5.6(焦点距離36mm)
■撮影環境:絞りF5.6・1/320秒・ISO400・WBオート・フォトスタイル/風景+オリジナルLUT

■撮影機材:パナソニック LUMIX S5II + S 20-60mm F3.5-5.6(焦点距離60mm)
■撮影環境:絞りF6.3・1/320秒・ISO400・WB晴天・-1.0EV・フォトスタイル/Lクラシックネオ+Smple LUT3
久しぶりに熱海まで散策に出かけました。旅先での移動中のレンズ交換は手間をとられてしまったりすることも多いので、レンズはつけっぱなしということも少なくありません。となると、標準ズームレンズの出番が一番増えるわけです。
路地で立ち止まったり、見上げたり、見下ろしたり、手元を見たりと、撮影環境や距離の取り方に変化が生まれやすい旅先でこそ、このレンズの良さが発揮されます。やはり、被写体との距離のつかみやすさが抜群に良いのです。

■撮影機材:パナソニック LUMIX S5II + S 20-60mm F3.5-5.6(焦点距離42mm)
■撮影環境:絞りF8・1/2000秒・ISO1250・WBK5500・+0.7EV・オリジナルLUT

■撮影機材:パナソニック LUMIX S5II + S 20-60mm F3.5-5.6(焦点距離23mm)
■撮影環境:絞りF5・1/160秒・ISO100・WBK5500・フォトスタイル/Lクラシックネオ+オリジナルLUT

■撮影機材:パナソニック LUMIX S5II + S 20-60mm F3.5-5.6(焦点距離32mm)
■撮影環境:絞りF4.3・1/50秒・ISO100・WBオート・+0.7EV・オリジナルLUT

■撮影機材:パナソニック LUMIX S5II + S 20-60mm F3.5-5.6(焦点距離60mm)
■撮影環境:絞りF5.6・1/50秒・ISO1250・WB晴天ト・-0.7EV・オリジナルLUT

■撮影機材:パナソニック LUMIX S5II + S 20-60mm F3.5-5.6(焦点距離29mm)
■撮影環境:絞りF8・1/1300秒・ISO1250・WBオート・+0.7EV・オリジナルLUT

■撮影機材:パナソニック LUMIX S5II + S 20-60mm F3.5-5.6(焦点距離50mm)
■撮影環境:絞りF5.3・1/50秒・ISO100・WB曇り・-0.7EV・オリジナルLUT
スタジオポートレート撮影でも大活躍
ポートレート写真は中望遠レンズで撮影することが多いですが、使用目的のある宣材写真は寄りも引きも撮影が必要であるため、屋外でのボケを活かしたイメージ的な表現とは異なり、むしろズームレンズの方が活躍してくれます。
少し絞り込むことで、スタイルにメリハリがつき、洋服の素材や髪の繊細な質感までいきいきとした印象が強まり、モデルさん自身の魅力を素直に引き出してくれます。それでいてカチッとした硬さが感じられず自然な仕上がり。きちんとこなしてくれる安心感。それがLUMIX S 20-60mm F3.5-5.6の良さと信頼性でしょう。実際にプロモーションの選考を通過したと聞くと実感が強まります。
おわりに
仕事で必ず使うだろうと購入したレンズですが、幅広いシーンに対応でき、特に広角側が絶妙に使いやすく、とっさに動画を記録するのにも最適で、今では出番が多く手放せない1本になりました。
〝これさえ押さえておけば間違いない〟という、信頼性のある写りもあり、使えば使うほどこのレンズの魅力にハマっていきます。これからも長く愛用し続けたいレンズの一つです。
■撮影協力:合同会社ミセス日本エージェンシー
https://mrsnipponagency.com/
■写真家:こばやしかをる
デジタル写真の黎明期よりプリントデータを製作する現場で写真を学ぶ。スマホ~一眼レフまで幅広く指導。プロデューサー、ディレクター、アドバイザーとして企業とのコラボ企画・運営を手がけるなど写真を通じて活躍するクリエイターでもあり、ライターとしても活動中。