はじめに

今回はパナソニックLUMIXのLマウント、フルサイズミラーレス一眼カメラ用交換レンズ「LUMIX S 28-200mm F4-7.1 MACRO O.I.S」をレビューしていきます。最後まで読んでいただけたら嬉しいです。

このレンズは焦点距離が広角28mmから望遠200mmまでの高倍率ズームレンズとなり、一般的に便利ズームと呼ばれたりする、これ1本で様々なジャンルの撮影をこなせるレンズになります。しかし良い事ばかりではなく、画質や機能面で劣る部分がある便利ズームなので、今回その使用感を色々お伝えしていきたいと思います。

LUMIX S 28-200mm F4-7.1 MACRO O.I.Sでポートレート撮影

今回は気心の知れたモデル3人に協力をお願いして、スナップポートレートを中心に撮影しました。

便利ズームと言えばAFが遅くて動き物が苦手というイメージが私にはありますので、りなぽそさんで高速シャッターの動体撮影を試してみました。

最近、愛車のコペンとモデルで撮影するのが私の流行りになっており、その撮影も兼ねたカットになります。車の横で、コートとスカートをふわっとさせるために車の横で回ってもらいながら、焦点距離33mm、シャッタースピード1/500で撮影しました。スカートの花柄もしっかり解像しており画像の歪みも少なく、良い雰囲気で撮影することが出来ました。

シャッタースピードを更に上げて焦点距離59mm、シャッタースピード1/1600で撮影しました。シャッタースピードを上げたのでISO1250まで上がりましたが画質の劣化も少なく、りなぽそさんの表情もしっかり表現出来ていて、電車の細かな文字も読めるくらい解像しており優秀だと思います。

この写真はエナガが桜の蕾を啄むところを撮影したのですが、シャッタースピード1/3200で撮影しており宙に舞う蕾がしっかり止まっています。

このように、ポートレートと野鳥の動体撮影を高速シャッターで撮影してみましたが、このレンズには最新のリニアモーターと制御機能が搭載されており、そのお陰でAFが迷う事も無く連写時においてもピントが外れる事も少なく、大変優秀なAFスピードと動体追従性能でした。

夜の撮影でもレンズ性能を試すため、仕事で上京した時に赤羽美妃さんをナイトスナップポートレート撮影しました。

広角端28mmでの撮影でシャッタースピード1/13のスローシャッターですが、レンズ側に2軸手ブレ補正機能O.I.Sが備わっており、ボデイ側の5軸手ブレ補正機能と合わせて約6.5段の強力な手ブレ補正効果が得られることで、手持ちでスローシャッターを切る事が出来ます。

こちらも広角端28mmでの撮影ですが、先程のカットから構図手前に移動してもらいました。こうすることで美妃さんを大きく写せるのは勿論ですが、ピント面がレンズに寄るので背景のボケ効果を大きくなり、より被写体を浮き上がらせる事が出来ます。

こちらも広角端28mmでの撮影ですが、より広角感を出す為にローアングル撮影で背景の橋の曲線を更に強調してみました。美妃さんのポージングのお陰で可愛いカットを撮影することが出来ました。ローアングルの支えづらいショットでも手ブレ補正が効いてくれるので、難なく撮影することが出来ました。

広角だけでなく望遠側でも手ブレ補正効果は強力なので、158mmの手持ち撮影も大丈夫です。このカットは、あざと可愛い表情を依頼したのですが、流石の現役アイドルは瞬間に、この表情で応えてくれました。

再び京都にて、咲き始めた桜と衣織さんを望遠端200mm、絞り開放F7.1でバストアップポートレートです。一番手前の桜がディテールを残しつつも柔らかくボケているので、優しい印象と程良く被写体の衣織さんを浮かび上がらせて良い感じです。

こちらは焦点距離96mm、絞りF6.3での撮影ですが、こちらも背景の桜がディテールを残しつつ優しく印象的なボケ感が有り、撮影時の状況も伝わり雰囲気良く写せています。解像感も高く衣織さんの髪の毛1本1本まで解像しています。

こちらの衣織さんとコペンのカットは、冒頭のりなぽそさんの写真でもお話ししました愛車のコペンとモデルさんのシリーズでの1枚になります。焦点距離53mm、絞りF5での撮影です。菜の花の黄色と風情の残る背景に、オープンカーならではの衣織さんのポージングが印象的な1枚です。主役の衣織さんとコペンにピントを合わせていますが、解像感もあり良い感じに表現出来ています。

衣織さんの撮影では望遠から中望遠そして標準域と焦点距離を変更して撮影しましたが、今まで撮影した写真も含め、このレンズは全体的にボケ感がとても良い印象です。

ボケ感と焦点距離の比較

美妃さんの撮影でボケ感の話をしましたが、このレンズの絞りによるボケ表現の違いを見て下さい。撮影は全て望遠端の200mmです。

▼F7.1

このレンズの200mmでの開放値はF7.1ですが、玉ボケが凄く綺麗で驚きました。ピント面の解像感も想像以上にシャープです。

▼F11

絞ることによってピント面が深くなっている事が、松ぼっくり下の年輪を見ると解ります。それと共に解像感がかなりアップしている事も確認出来ます。玉ボケは、より美しくなりますが少し小さくなっています。

▼F22

更にピント面が深くなり年輪の端以外はピントが合っている事が解ります。
解像感は回析の影響でしょうか、低下している事が松ぼっくりの傘を見ると一目瞭然となり、玉ボケに関しては小さくなり輪郭が硬くなっています。

▼F45

200mmでの最小絞りはF45になります。回析の影響で更に解像感が低下しカラーノイズと輝度ノイズが目立ち始めていますが、ピント面は年輪全域に広がっています。玉ボケは小さすぎて玉ボケと呼んでよいのか解らない感じです。

総合的に見て、この4枚だと2枚目のF11が良い感じですね。松ぼっくりをこの大きさで写せるのは、このレンズの近接撮影能力の高さであり魅力的な機能になりますが、こういったテストでは望遠での近接撮影ではより回析等の現象が解りやすい、ある意味悪条件であることを考えると優秀な結果だと思います。

　

　

次に焦点距離の比較です。

▼28mm

▼35mm

▼50mm

▼102mm

▼135mm

▼200mm

同じ桜の花にピントを合わせて焦点距離を28mm、35mm、50mm、102mm、135m、200mmの6枚撮影しました。どの写真もピント面の解像感が高く発色も良いので、ズーム全域を安心して使用できる印象です。

軽くて小さい高倍率ズーム

ここまで、りなぽそさん、赤羽美妃さん、衣織さんと3名のモデルポートレートを中心に解説しましたが、ここからは、このレンズレビューの、まとめとして伝えたいことを書かせて頂きます。

このレンズを語るうえで、本当は一番にお伝えしても良い部分なのですが、このレンズは7倍以上の高倍率ズームとしては世界最小最軽量を実現しており（2024年4月現在）、実際撮影に使用してその小ささと軽さに驚きました。いくら1本で焦点距離をカバー出来る範囲が多くても、大きく重いと持ち出す気になりませんし、それなら単焦点レンズを数本持って出たくなります。小さく軽いだけではなく操作感もしっかりしていて、とても安心感のある造りも印象的でした。

この写真は東京のビル群の上を通過する旅客機を撮影したものですが、真上を向きながら広角端28mmからほぼ望遠端の190mmに伸ばしながら撮影しました。素早くしっかりとした操作感のお陰でフレーミングがしやすく、旅客機を捉え続ける事が出来ました。レンズが大きく重いとこの写真を手持ち撮影するのは難しいと思うのですが、本当に簡単に撮影することが出来ました。

高倍率ズームレンズとしては解像感がとても高い事も印象的でした。

上の写真は、望遠端に近い193mm開放F7で撮影した木の葉の写真と、2枚目はこの写真を拡大トリミングした写真なのですが、拡大すると葉脈までしっかりシャープに描写しており解像力の高さが解ります。

動画撮影に対してもリニアモーター搭載の為、AF性能が高速性、追従性、静音性に優れ高レベルで対応出来ています。
この動画はジンバル等の補器類無しの手持ちでの定点撮影ですが、手ブレ補正機能が充分に機能している事が解ります。

こちらの動画も補器類無しの手持ち定点撮影ですが、強風下でも安定して撮影可能でした。

ジンバル等の補器類無しの手持ち撮影に関しては先の2本の動画と同じで、こちらは手持ちでカメラを動かしながら撮影しておりますが、手ブレ補正機能が優秀であることを理解して頂けると思います。

逆光耐性も優れており、ハレーションやゴーストの発生は少なかったです。

このレンズのボケ表現力はすごく好みの柔らかさで、特に前ボケの優しさが魅力でした。

おわりに

今回使用したボディLUMIX S5IIXの性能がすごく良い事もありますが、LUMIX S 28-200mm F4-7.1 MACRO O.I.Sが高性能かつ小型軽量なレンズであることは間違いありません。操作系こそ小型軽量化の為に、ズームリング、フォーカスリング、AF/MF切替スイッチ、O.I.S手ブレ補正ON/OFFスイッチと必要最小限な装備に留まりますが、AF性能、ハーフマクロまで寄れる近接撮影能力、防塵防滴性能、描写力どれも高次元に応えてくれるので、撮影に1本しか持って行けない状況下ではこのレンズを選んでも決して後悔しないクオリティのレンズだと思います。Lマウントユーザーにはぜひお手に取って確かめていただきたいレンズです。

　

　

■写真家：葛原よしひろ
ジャンルに捉われず何でも撮影するマルチプレイヤースタイルの写真家。カメラメーカー等の写真セミナー講師としても全国的に活動している。大阪芸術大学写真学科卒/滋賀県高島市公認フォトアドバイザー/JPS(日本写真家協会）正会員