パナソニック LUMIX S1RII レビュー|手抜きなしの進化を感じる高画素フルサイズ機

葛原よしひろ
パナソニック LUMIX S1RII レビュー|手抜きなしの進化を感じる高画素フルサイズ機

はじめに

今回レビューさせて頂くのはLUMIXのハイエンドミラーレス一眼、S1シリーズのS1RIIです。モデル名にIIと表記がある通り、S1Rの後継機で第二世代のカメラになります。

S1RIIは新開発4430万画素のフルサイズ裏面照射型CMOSイメージセンサーと新世代ヴィーナスエンジンを搭載した、LUMIX史上最高画質との呼び声も高い、高画素と低ノイズを両立したモデルになります。II型になってボディが小型軽量化され、LUMIXの中級機S5IIにかなり近いサイズと重量に収まっています。高さ約102.3mm、幅約134.3mm、奥行約91.8mm、重さ795g(バッテリー、SDカード装着状態)と1kg越えだった前モデルS1Rと比べると、性能が大幅にアップしているにも関わらずひと回り以上スリムになり、驚異的に軽量化も進んでいることが解ります。

長文レビューより作例多めが好きなので、まずは高倍率ズーム28-200mmだけを装着して京都の鉄道博物館で撮影した写真でレビューさせて頂きます。そのあとも色々なジャンルの作例を様々なLUMIXレンズで撮影しておりますので、LUMIXレンズ選びの参考にもして頂けると思います。最後まで、お付き合いください。

LUMIX史上最高の画質と呼び声高いS1RII

■撮影機材:パナソニック LUMIX S1RII + LUMIX S 28-200mm F4-7.1 MACRO O.I.S
■撮影環境:絞りF6.5 SS1/320 ISO200 28mm

京都鉄道博物館は私が子供の頃は梅小路蒸気機関車館でした。敷地を増やしリニューアルして蒸気機関車以外も展示する鉄道博物館になり、とても人気のスポットとして最近では間近にJRの駅まで開業しました。私は今でも蒸気機関車館のエリアの方が好きなので、蒸気機関車館の名残と子供の頃に憧れたD51の写真。

D511のプレートに薄日が射し、少し誇らしげに輝いているのが印象的でシャッターを切りました。ファインダーを覗いた瞬間からS1RIIのリアルビューファインダーの性能が極めて高く、約576万ドットの有機ELを搭載したファインダーの暗部から明部まで、とても確認しやすく、それでいて自然な見え方に、撮影意欲が高まりました。

■撮影機材:パナソニック LUMIX S1RII + LUMIX S 28-200mm F4-7.1 MACRO O.I.S
■撮影環境:絞りF8 SS1/250 ISO160 89mm

今回、ここに来た目的のほとんどが、この列車です。このSLは稼働していて短い距離ですが乗車する事も出来るのです。勿論、私は乗るより撮る為に来たので誇らしげな雄姿を撮影しました。約4430万画素の高画素機なので拡大すると細部まで解像しているのが解ります。

■撮影機材:パナソニック LUMIX S1RII + LUMIX S 28-200mm F4-7.1 MACRO O.I.S
■撮影環境:絞りF8 SS1/320 ISO200 28mm

発車前、真直ぐに立ち上る白い蒸気が青い空に届いてワクワクしてきます。

動画は8K30pや4K120pにも対応

蒸気の音を伝えたくて動画に変更。静止画から動画への切替もスイッチ一つなので、思いついた瞬間に切替できるので便利です。

静止画は蒸気が高く上がった瞬間をねらってシャッターを切りましたが、動画だと呼吸を整えるように連続して蒸気を上げている事が解ります。運転室で石炭を入れているのが見えたので後半クローズアップしました。完全にスムーズには行きませんでしたが、こういう時に高倍率ズームは便利ですね。

汽笛が鳴り響きいよいよ発車の瞬間です。博物館の構造上バック方向への発車ですが、本物のSLの発車シーンは最高に迫力満点です。二度目の手動ズームは先程より少しだけスムーズに撮影出来ました。

単線行き止まりのレールなので往路がバック、復路は前進になります。私の思うベストポジションにてスタンバイして、高架下にSLの影が見えたところから録画を開始、イメージに近い感じで撮影出来ました。

静止画から動画の撮影まで一貫して感じたのはAF性能が凄く進化している事でした。合焦スピード、追従性、レスポンス、どれをとっても明らかに撮影しやすく、LUMIX史上最高のAF機能やリアルタイム認識AFが、選択した被写体を逃さずAF精度に強いカメラになっています。

今回の動画3本は全て、S1RIIに搭載された8K30pで撮影しています。8Kのまま再生出来る環境は少ないですが、将来の再生や編集を考えると8K撮影が可能であることは頼もしく嬉しい機能です。8K以外に4K120p撮影も可能なので、動きの速いものを撮影する時など、より繊細な動画撮影が可能となります。8段B.I.S手ブレ補正機能が強力で、8Kの動画を手持ち撮影可能な事に驚きました。動画撮影時の熱対策に優れたLUMIXなので夏の長時間動画撮影にも心強いです。

■撮影機材:パナソニック LUMIX S1RII + LUMIX S 28-200mm F4-7.1 MACRO O.I.S
■撮影環境:絞りF9 SS1/200 ISO200 139mm
■撮影機材:パナソニック LUMIX S1RII + LUMIX S 28-200mm F4-7.1 MACRO O.I.S
■撮影環境:絞りF8 SS1/320 ISO160 200mm

動くSLの静止画も撮りたくて次発の時間まで待って撮影しました。往路、復路共に撮影位置を変えて正面からの撮影が出来て満足でした。

様々なレンズを使ってポートレート撮影

次は、三人のモデルを違うシチュエーションでポートレート撮影をしてみました。

■撮影機材:パナソニック LUMIX S1RII + LUMIX S 85mm F1.8
■撮影環境:絞りF1.8 SS1/1250 ISO500

一人目のモデル、のりえもん。梅の咲く中、屋外での日中ポートレートです。この写真はLUMIX S 85mm F1.8を装着して撮影。前後共に梅の花の自然なボケ表現が、のりえもんを柔らかく包む春らしいポートレートです。柔らかく表現したかったのでカメラのフォトスタイルをポートレートに設定して撮影しました。

■撮影機材:パナソニック LUMIX S1RII + LUMIX S 18mm F1.8
■撮影環境:絞りF1.8 SS1/400 ISO80

この写真ではカメラ側の設定をフォトスタイルのLモノクロームDに変更して、レンズはLUMIX S 18mmF1.8を装着して撮影しました。少しコントラスト高めの超広角ポートレートが、のりえもんの表情を引き立ててくれました。

■撮影機材:パナソニック LUMIX S1RII + LUMIX S PRO 70-200mm F2.8 O.I.S
■撮影環境:絞りF2.8 SS1/500 ISO250 200mm

フォトスタイルにはヴィヴィット、レンズはLUMIX S PRO 70-200mm F2.8 O.I.Sを装着して、少し引き気味の望遠ポートレート。主役の、のりえもんが浮き立つように春の木漏れ日が照らした瞬間を狙ってシャッターを切りました。瞬間を切り取りたいときにS1RIIのレスポンスの良さは頼りになります。

■撮影機材:パナソニック LUMIX S1RII + LUMIX S 85mm F1.8
■撮影環境:絞りF1.8 SS1/160 ISO400
上の画像を拡大トリミング

二人目のモデル、くれは。東大阪のphoto studio Latirasでスタジオ撮影しました。
アラビアンナイトなテーマで撮影。人物撮影時、ほとんどの場合リアルタイム認識AFの設定を瞳、顔にしていますが、瞳を逃さず精度が高いまま合焦し続けてくれますので安心して構図に集中することが出来ます。2枚目の写真は、1枚目の写真の瞳部分を拡大トリミングしたものです。LUMIX S 85mm F1.8のピントが浅い中望遠の明るいレンズを使用しているのですが、見ての通りAFの精度に納得して頂けると思います。

■撮影機材:パナソニック LUMIX S1RII + LUMIX S 50mm F1.8
■撮影環境:絞りF1.8 SS1/160 ISO320

LUMIX S 50mm F1.8の標準レンズを装着して撮影した1枚。前ボケを活かそうとして被写体の前に障害物を配置しても、リアルタイム認識AFが瞳を捉え続けてくれます。少し戻って、のりえもんの梅の花の写真も参考にして頂けるとより解りやすいと思います。

■撮影機材:パナソニック LUMIX S1RII + LUMIX S 50mm F1.8
■撮影環境:絞りF1.8 SS1/160 ISO400

この写真もLUMIX S 50mm F1.8の標準レンズを使用。S1RIIにおいても、LUMIXらしい鮮やかな色調表現は継続されており、マイクロフォーサーズ機からフルサイズ中級機まで、LUMIX同士の違う機種を使用しても、ほとんどの機種で一定の統一感があります。複数台のカメラを同時に使用する場合でも、凄く使いやすいのはLUMIXの特徴だと思います。

■撮影機材:パナソニック LUMIX S1RII + LUMIX S 85mm F1.8
■撮影環境:絞りF1.8 SS1/200 ISO6400

三人目のモデル、りなぽそ。夜スナップ撮影してみました。
撮影時は照明としてGODOXの小型LEDライト「R1」をカメラにオンダッシュしました。暗い場所なので明るいLUMIX S 85mm F1.8のレンズを使用してもISO6400まで上がってしまいますが、高画素機としてはかなりノイズ感が少ない事に驚きました。

■撮影機材:パナソニック LUMIX S1RII + LUMIX S 18mm F1.8
■撮影環境:絞りF2.2 SS1/200 ISO5000

新開発のチルトフリーアングルモニターが搭載されているので、あらゆるローアングル撮影にも対応していて、とても撮影しやすく便利です。

■撮影機材:パナソニック LUMIX S1RII + LUMIX S 85mm F1.8
■撮影環境:絞りF1.8 SS1/250 ISO6400

街灯が強く当たる位置に、りなぽそを配置して、GODOX R1をカメラから外しマゼンダ色に変更して暗がりの梅の花に当て、レンズはLUMIX S 85mm F1.8を装着して撮影。色の変更が可能なLEDは表現する幅が広がります。

この写真もISO6400まで上がっていますが、ノイズ感が少なく街灯を利用すれば夜の人物も楽に撮影可能です。夜ポートレートには、もう少し光量のあるストロボや大型のLEDを使えれば尚良いと思いますが、小型軽量なLEDは機動性に優れカメラバッグに入れて常備でき、S1RIIのように高いAF性能やノイズ耐性を有したカメラの場合、このくらいの写真が撮れるのだと思いました。

■撮影機材:パナソニック LUMIX S1RII + LUMIX S PRO 70-200mm F2.8 O.I.S
■撮影環境:絞りF2.8 SS1/640 ISO250 200mm

ウメジローではなくウメインコです。オジサンがインコを散歩?させていましたので撮らせて頂きました。試したかったリアルタイム認識AFの鳥に設定するとバッチリAFがインコを認識してくれました。羽根の解像感を見て、野鳥撮影もしたくなりました。

■撮影機材:パナソニック LUMIX S1RII + LUMIX S 28-200mm F4-7.1 MACRO O.I.S
■撮影環境:絞りF5.6 SS5 ISO160 28mm

S1RIIの8段B.I.S手ブレ補正の優秀さは動画撮影でもお話しさせて頂きましたが、改めて手持ちで5秒の夜景撮影をしてみました。以前LUMIX S9のレビューでも手ブレ補正の優秀な機能を紹介しましたが、S9は約2400万画素でした。今回S1RIIは約4430万画素と倍近い画素数なので手ブレが目立ちやすいはずなのですが、この写真を見ての通り5秒の手持ち夜景撮影も可能です。ここまでくると長年の常識が崩れるほどの驚きを感じます。

この後も手持ち長秒撮影を楽しんだのですが、私の感覚では手持ち2秒くらいまでは気軽な感じで普通に撮れてしまいます。撮影時にモニターの遅延もなく撮影しやすいのも印象的で、より気軽に夜景撮影が楽しめるよう進化していました。

夜間の動体撮影にトライ

■撮影機材:パナソニック LUMIX S1RII + LUMIX S 18mm F1.8
■撮影環境:絞りF1.8 SS1/320 ISO6400

夜スナップ中にスケボーをしている人がいたので、声をかけて撮影させて頂きました。S1RIIにLUMIX S 18mm F1.8を装着して、チルトフリーアングルモニターを広げ下からローアングルに構えての撮影。カメラの前で飛んでほしいという私の無茶ぶりにも快く応じて数回アタックしてくれました。

離れた場所からAFを追従モードで連写撮影して、一番高い位置に飛んだ写真を並べてみました。夜に、かなり速いスピードで近づきながらカメラの前で飛び上がるというAF泣かせのシチュエーションですが、撮影中にAFが外れる事は一度もなく、夜の街を背景に舞うように飛ぶ彼の姿はとてもカッコよくて、撮影していてとても楽しかったです。

おわりに

今回、LUMIX S1RIIを使用してみてLUMIXの進化の凄さに驚きました。ファインダー、モニター、AF、画質、手ブレ補正、全て一切の手抜きなしに進化しており、高画素機としてはレスポンスの高さや精度を含め高い性能を有した、あらゆる被写体を静止画、動画共に高画質で撮影しやすいカメラだと思います。色の面でも、リアルタイムLUTやフォトスタイルでイメージに近い撮影が可能な事も好印象です。

カメラマウントが昨今広がりを見せるLマウントシステムなので、レンズの選択肢が急速に増えているのもユーザーにとって良い点と言えるでしょう。ぜひ一度手にして頂きたいと思える優秀なカメラでした。

 

 

■写真家:葛原よしひろ
ジャンルに捉われず何でも撮影するマルチプレイヤースタイルの写真家。カメラメーカー等の写真セミナー講師としても全国的に活動している。大阪芸術大学写真学科卒/滋賀県高島市公認フォトアドバイザー/JPS(日本写真家協会)正会員

 

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