パナソニック LUMIX S5製品レビュー|フルサイズ機デビューにぴったり!高性能な小型・軽量モデル
はじめに
パナソニックのフルサイズミラーレス一眼Sシリーズに、小型・軽量モデルの「LUMIX S5」が新たに追加されました。動画も静止画もプロの要望に答えてくれる機種として名高い同社のSシリーズですが、カメラ本体の重さと大きさは、中身が詰まっているだけにしょうがないのかなと思っていた筆者と同じ考えの方は、実機を触れば思わず声が出てしまうほどの軽さと小ささに驚くことでしょう。今回は、テスト機をパナソニックさんからお借りしましたので、人物撮影をメインに、動画と静止画の両方で本機のレビューをお送りします。
キットレンズでAF性能テスト
■撮影機材:LUMIX S5 + LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6
■フォトスタイル:709ライク
■出演:辻美咲
レビュー動画は、フォーカスモードは動き物を撮るAFCで、AFモードは自動認識(顔・瞳・人体)で撮影しています。
近付いてくる被写体のテストでは、座っているモデルの顔にピントが合った状態から何もせず、カメラ任せで撮影しました。モデルが立つとすぐに顔が見切れてしまう状況ですが、人体認識のおかげで体にピントを合わせ変えてくれています。
遠ざかる被写体のテストでは、最初のシーンでAFを作動させると手前の水の入ったコップにピントが合ったので、そのまま撮影をスタートしてみました。モデルが座って鎖骨が見えたあたりからモデルの体にピントが合って、意図通りのシーンが撮れました。構図右のペットボトルにピントが行くことも、見苦しくAFが迷うこともありませんでした。上手くピントが合わなければ、モデルが座ったときにタッチAFを使用してピント位置を指定しようかと思っていたのですが、本機には余計な心配だったようです。
フレームイン&フレームアウトの一本目のテストは、誰もいない、目立つものが何もない状態でカメラをスタートさせて、どのようにAFが動くのか見てみました。モデルが窓辺のコップに手をかけるときには、もうピントがモデルの体に合っているのがわかります。振り向いたモデルの顔も、見切れている状態からピントが合っています。
もともと、LUMIXシリーズの人体認識AF機能の高性能さは実感していたのですが、こんな意地悪なシーンでもしっかりピントを合わせてくれるなら、子供の運動会で動画デビューしたい保護者の方々にもお勧めしやすい機種だと感じました。
ちょっと話がそれますが、子供の成長動画なら、4KじゃなくてフルHDくらいでいいんじゃないかと思う方もいらっしゃいますが、お子さんが大きくなる頃は、4Kどころか8K画質が普通(むしろそれ以上)になっているのではないでしょうか。昔の思い出として見返す動画は、高画質で撮っておいてあげると、近い将来でより楽しく思い出の共有ができると思いますよ。
ピントが迷いやすい意地悪なシーンのテストでは、壁にピントが合った状態から撮影しています。一度顔にピントが合ってしまえば、後ろを向いても、人物が画面からいなくなりそうでも、粘ってピントを合わそうとしています。被写体がフレームから外れて、ピントを合わせられるところが背景しかなくなってしまった一瞬だけ、AFに迷いが見られましたが、すぐに顔にピントを合わせる適応力には脱帽しました。
コップの向こう側の被写体のテストでは、モデルの動きがない状態で、顔の前にピントの合いやすい明るい被写体を置いたらどこにピントを合わせるか、迷い出すかを確認したくて撮影してみました。これはもう、目が見えていれば人物の顔の圧勝ですね。
動画撮影にぴったりの高性能キットレンズ
今回はポートレートっぽい動画を撮りたかったので、かなり強い逆光での撮影が多かったのですが、キットレンズの「LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6」は擬色やモアレも出さず、優秀な働きをしてくれました。
マイクロフォーサーズ機からフルサイズ機に移行を考えている方は、レンズを買い直さなくちゃいけなくなることに懸念を抱かれると思うのですが、たとえば、Vlogにはまって、さらにシネマティックな映像を撮りたくなって本機の購入を考えている方は、まずはレンズキットを購入するだけでも、動画撮影を十分に楽しめると思います。
広角が20mmからなので、引きがない狭い室内での撮影もしやすく、旅先の風景などはダイナミックな広大さを演出できます。また、最短撮影距離15cmのマクロ撮影が可能なのも嬉しいところ。防塵・防滴・マイナス10度の耐低温設計と、どんなシーンでも臆せずに使用できる設計なので、海でも雪山でもキャンプでもどこにでも連れていけるでしょう。
いずれは色々なレンズが欲しくなるだろうし、使っていただきたいですが、せっかく動画撮影にぴったりの画角と性能のレンズがキットレンズで手に入るので、ぜひこのレンズも使い倒していただきたいものです。
動画のムード作りに便利なフォトスタイル
■撮影機材:LUMIX S5 + LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6
■出演:辻美咲
LUMIXならではの色味を味わえるフォトスタイルも、本機には「V-LOG」を含めると13種類搭載されています。動画レビューでは同じシーンでの撮り比べをしました。カラーグレーディング前提の撮影もいいのですが、メーカーの打ち出した色味を味わうのも、シーンによっては好みのムードや、さらなるインパクトが出るのでお勧めです。
ここでは13種類を紹介しましたが、この他にも、ダイナミックレンジの広いHLG階調で動画を撮影するための「2100ライク(HLG)」、HLGフォトを撮影するための「スタンダード(HLG)」、HLGフォトをモノクロームで撮影するための「モノクローム(HLG)」が搭載されています。
LUMIX S5でVlog風ムービー
■撮影機材:LUMIX S5 + LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6
■出演:辻美咲
今回は、モデルの辻美咲さんに出演していただき、モーニングルーティーン風の動画を制作しました。逆光を多用しているので、フォトスタイルは白飛びを抑えながらも自然な画にしてくれる「709ライク」を使用しています。レンズはキットレンズのみを使用、三脚と手持ちの両方で撮影しています。
さすが!Sシリーズの高い解像力!
静止画の性能を見るのに、筆者が一番好きなレンズを使用しました。「LUMIX S PRO 50mm F1.4」は、高い解像感となめらかでとろけるような優しい描写力の融合が見事なレンズです。ポートレートはもちろん、スナップも風景も、これ一本でどんな被写体でも印象的に描き出してくれます。
撮影日は、夏の最後を惜しむかのような暑い日でした。秋っぽい作品にしようと思っていたのですが、せっかくなのでこの強い日差しを利用して、夏カットの撮り納めにしました。
背後の窓からの日差しはかなり強く、レンズ的には意地悪な状況となっていますが、ピントが合っている目はキリッと力強さを、なめらかなボケのグラデーションは優しさを表現してくれて、強い光とのコントラストで印象的なカットに仕上げてくれました。
しっかり描写するキットレンズ
こちらはキットレンズでのポートレートです。前述の「LUMIX S PRO 50mm F1.4」よりも、しっかり目に描写するのは開放F値の違いもありますが、画作り的にも、コントラストを抑えながら全体にきっちりと輪郭を取るように感じました。
過度な描写をしない、ストレートな表現をしてくれるレンズで、ボケのグラデーションも自然ですので、望遠側はポートレートでも十分に使用できます。
レンズジプシーにならないために
今まで静止画メインでポートレートを撮ってきた方は「LUMIX S PRO 50mm F1.4」を使うと、光と影を自分で操作する楽しみを堪能できると思います。本機と「LUMIX S PRO 50mm F1.4」の相性は抜群で、2本目のレンズなら思い切ってこのレンズを購入することをお勧めしたいです。あれこれ買っても、なんだかしっくりこないレンズジプシーになるくらいなら、最初から性能の高いレンズを買ったほうが、結果的にはコスパがいいです。
静止画も動画もシネマティックな作品を生み出してくれるカメラ
今回の裏テーマは、強い日差しの中での撮影でした。筆者は、腕や手に光と影の部分を作ってモデルの体に立体感と艶感を出す手法が好きなのですが、白飛びとの戦いでもあるので、機種やレンズによっては難しいこともあります。「LUMIX S5」と「LUMIX S PRO 50mm F1.4」のコンビは、この手法を問題なく使わせてくれました。
動画と静止画の撮影時間は合わせて約2時間程度、Sシリーズの中でぐっとコンパクトな本機は女性の手でも握りやすく、ほとんど疲れを感じませんでした。フルサイズ機デビューにぴったりの性能、コスパを実感した2時間でもありました。
写真家:水咲奈々
東京都出身。大学卒業後、舞台俳優として活動するがモデルとしてカメラの前に立つうちに撮る側に興味が湧き、作品を持ち込んだカメラ雑誌の出版社に入社し編集と写真を学ぶ。現在はフリーの写真家として雑誌やWEB、イベントや写真教室など多方面で活動中。興味を持った被写体に積極的にアプローチするので撮影ジャンルは赤ちゃんから戦闘機までと幅広い。 (社)日本写真家協会(JPS)会員。
モデル出演:辻 美咲(株式会社BABYBOO)
LUMIX S5 発表日のLUMIX GINZA TOKYOでの取材記事はこちらからご覧頂けます。