LUMIX S5IIX レビュー|撮影現場で使用した感想とリグの組み方
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はじめに
Panasonicから発売されているミラーレスカメラLUMIXの中で、フルサイズセンサーを搭載したのがSシリーズ。その中でも軽量コンパクトで、ビギナーにも使いやすいラインナップとして2020年9月に登場したのがS5である。
S5発売から約3年後、後継機として新たに登場したのが、S5IIである。LUMIXが先代まで採用していたコントラストAFは、他社と比較すると精度やスピードで少々遅れをとっていた。頑なにコントラストAFを採用し続けた理由は、象面位相差方式による画素欠損を許容するか否かという判断において、常に画質を優先してきた結果だったと記憶している。
今回のS5IIから象面位相差AFを採用しても、LUMIXの求めるレベルの画質を担保できたのが新AFシステム採用の理由となったようだ。
S5IIXの簡単な説明
今回私が導入したカメラはS5IIの末尾にXの名がついた別バージョンである。そのS5IIの派生として登場し、業務としての動画撮影に適した機能を追加したのがS5IIXである。
S5IIとの主な違いは、動画の保存形式がこれまでのLong GOPに加え、ALL-Iに対応したこと。それに加えてSSDを直接カメラに接続することで、ProRes収録が可能になった。ProResという中間コーデックはファイルサイズこそ大きくなるが、H264などと比べて高画質で映像を記録できる。編集時のレスポンスも良いので、シネマカメラや外部録画機には多く用いられる保存形式である。
S5IIが持つ性能に加え、さらに映像撮影のクオリティーをアップする機能を追加したこのカメラが、実売30万円を切っているのはバーゲンプライスと言っても過言ではない。S5IIX発売から2ヶ月使用しての感想を、動画レビューしたのでこちらもご覧いただきたい。
S5IIXで写す村の暮らし
動画性能が強化されたS5IIXで撮影したショットから切り出した画像をご覧いただきながら、画質や使用感をレビューしていこうと思う。
今回は全てハンドヘルド撮影のショット。福岡県朝倉市東峰村の「自然と共存する丁寧な暮らし」を記録するドキュメンタリー映像からショットを抜粋した。記録設定は全てC4K 24p 10bit 4:2:2 ALL-Iで記録、カラー設定はV-Logに設定。Final Cut Proで編集とカラーコレクションを行った。
レンズはSIGMA 35mm F1.4 DG DN | Artと50mm F1.4 DG DN | Artと85mm F1.4 DG DN | Artの3本を使用して撮影した。
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■撮影環境:1/60 f2.2 ISO640 動画モード
東峰村の古民家で暮らす友人のお宅にお邪魔した。村の自然を慈しみながら丁寧な暮らしを営むご家族と、長年この村に暮らす村の人たちを撮影させていただいた。普段通りの自然な様子を撮影するために、カメラを意識させないことに気を配った。三脚やジンバルでも少なからず被写体に撮影を意識させてしまうので、撮影ポジションやアングルを状況に合わせて変更していくような撮影方法では、ハンドヘルド撮影が最も適している。
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■撮影環境:1/60 f1.4 ISO640 動画モード
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■撮影環境:1/60 f1.4 ISO640 動画モード
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■撮影環境:1/60 f1.4 ISO640 動画モード
この画像は全て、動画から切り出している。モニターで見ることを前提とすれば、写真としても充分なクオリティーがある。暗部の柔らかいグラデーションや愛犬の毛並も繊細に描写している。動画の場合こういったアンダーな設定ではノイズが気になることがあるが、とてもクリアである。
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■撮影環境:1/60 f1.4 ISO640 動画モード
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■撮影環境:1/60 f1.4 ISO640 動画モード
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■撮影環境:1/60 f1.4 ISO640 動画モード
深い茜色とモスグリーンも自然に発色していて、色の深みも充分である。発色の良い赤や緑から暗部へと変わる部分のグラデーションも柔らかい。
映像の最終的なルックは、編集時のカラーコレクションのやり方で変わるが、それらは写真のRAW現像と同じ感覚で行っている。今回の色の方針は「アンダーで柔らかいトーン・深くて自然な色」を意識して調整している。
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■撮影環境:1/60 f1.4 ISO640 動画モード
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■撮影環境:1/60 f1.4 ISO640 動画モード
S5IIは強力な5軸5.0段のボディー内手ブレ補正を搭載している。手持ちでの写真撮影はもちろん、動画撮影でも非常に安定したショットを得ることができる。カメラをホールドすることを特に意識ぜずラフに撮影したショットは、自然な動きを残しながら嫌なブレだけを打ち消すような効き具合で、動画撮影時の手ブレ補正による不自然さはほとんどない。
筆者が思う手ブレ補正の不自然さとは、録画中にアングルなどを意図的にかえた場合、手ブレ補正の限界値に達したところで、急激なシフトが起こることを意味してるのだが、これをLUMIXはなんとも自然に往なすので驚いた。これは撮影時の安心感につながる部分で、とても重要である。
リグ組みで使う主要アイテム
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ハンドヘルド撮影用の、カメラリグの組み方の一例をここで紹介しようと思う。今回使用したリグの組み方は、複数のスタッフで撮影をする際に適した仕様となっている。ワンオペではなく制作スタッフやディレクターやクライアントと意思疎通を図りながら撮影を進めていくセッティングである。
ハンドヘルドで一日中撮影をするのは、多くの体力を使う。重すぎたり重量バランスが悪い組み方をすると、負担は何倍にもなる。疲労すると結果的には、撮影する映像に影響が出てしまうので、撮影テクニックと同様に、疲れないリグを組むことは大切なことである。ハンドヘルド撮影に適したリグの組み方のコツは、ズバリ「軽量でコンパクトにまとめる」こと。
取り付ける機器が、上や後ろや横に分散しカメラボディーから離れて配置されていると、重量が分散してしまい実際の重量よりも重く感じたり、体の特定の部分に負荷が集中したりする。その状態を避けるには、いかに「凝縮」するかを考えてパーツや機器を選ぶと良い。
それでは、「リグをこれから組んでみたい」という読者のために主要アイテムと選んだ理由を、簡潔に説明したいと思う。
■カメラケージ
カメラを守ると同時に拡張パーツを取り付けるのに必須なアイテム。全体に1/4やARRI規格のロックピンに適合する3/8ネジ穴が開けられている。カメラケージは拡張性重視で大きく重いものが多いが、このケージは細くて軽いのが購入の決め手になった。
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Panasonic LUMIX S5II / S5IIX専用ケージキット 4024
■サイドグリップ
カメラの左右どちらかにグリップを追加するアイテム。右にはカメラのグリップがあるので、左に取り付けて使用している。両手でしっかりと握ることで録画中のカメラを安定させる。移動時にはこのグリップを握ることでカメラを運びやすい。耐荷重15キロと頑丈なのに比較的軽めで握りやすい形状が購入のポイント。
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■モニター
カメラ用モニターは5インチから7インチが多い。このモニターは5インチで、撮影用モニターとしては最小で軽量である。見やすい7インチを選ぶのも良いが、大きく重い。ハンドヘルド撮影を意識するなら小さくて軽いモニターが好ましい。
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現在はモデルチェンジしてIIになってますが、僕が所有してるのはIの方です。見た目はほぼ一緒です。
■マットボックス
昨今のビデオグラファースタイルでは、便利な可変NDフィルターを使う場合が多いが、弊害としてレンズフードが使えなくなる。画質よりも機動性を重視するスタイルではその方が良いのだが、ハンドヘルドでラフな撮影をするならば画質にはこだわりたい。バリアブルNDで気になるムラが出ない、角形フィルターと大きなバーンドアでハレーションをカットして画質を担保するのに有効なアイテムである。このマットボックスも他のアイテムと同じく、小さくて軽いのがポイント。
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■ワイヤレストランスミッター
個人的な作品を自分だけで撮影する場合は、特に必要ないのだが、複数のスタッフで映像を共有する必要がある、業務としての撮影では必須アイテムと言ってもよい。カメラに取り付けた送信機から、離れた場所にあるモニターに映像をワイヤレスで飛ばすことができる。
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右:DJI Ronin RavenEye
ワイヤレストランスミッターは、大きく分けて2種類ある。
1. SDIやHDMI出力を備えた受信機で任意のモニターに接続するタイプ
2. アプリを介してタブレット端末に映像と音声を送るタイプ
自分の撮影環境に合わせてセレクトするとよい。筆者は現場によって使い分けている。
リグの組み方
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SmallRig 15mmロッドクランプ 1549
SmallRig 90°15mmロッドクランプ
NICEYRIG 15mmロッドクランプ付き Miniマウントプレート
NICEYRIG 15mmマイクロロッド 1/4ネジ付き
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様々な用途に応じて組み方を自由に変えられるのが、リグの良いところであるが、その分組み方もいろいろである。今回はハンドヘルド撮影の為の組み方なので、凝縮することを中心に考えた。カメラのトップ部分にリグの標準規格である直径15mmのロッドを追加した。モニターとトランスミッターの2つを取り付けたことで、機能的でコンパクトなリグに仕上がった。
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■撮影環境:1/60 f1.4 ISO800 動画モード
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■撮影環境:1/60 f1.4 ISO800 動画モード
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■撮影環境:1/60 f1.4 ISO800 動画モード
フットワークの軽いリグを組んでいるからこそ、状況に応じて即座に撮りたいアングルへと移行できる。おかげで写真のような自由さで、様々なシーンを切り取ることができた。何かと大掛かりになる映像撮影の現場でも、自由度の高い撮影を可能にした。
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■撮影環境:1/60 f1.4 ISO800 動画モード
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■撮影環境:1/60 f1.4 ISO800 動画モード
撮影に夢中になっていたら強い夕立に。撮影を中止しようかと思ったが、続行した。マットボックスのバーンドアが、レンズに雨粒が付くのを防ぐので、雨のシーンも苦労せずに撮影ができた。
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■撮影環境:1/60 f1.4 ISO640 動画モード
まとめ
S5IIXは、カメラの基本性能が高い上に、価格も控えめで非常にコストパフォーマンスに優れたカメラである。クリエイティブな映像撮影で使う際に、欲しい機能を付加したS5IIXは、プロの仕事にも、作品を作るクリエイターにもマッチする素晴らしいカメラであることを、2ヶ月使ってみて実感している。今後も多くの作品をこのカメラで撮影していこうと思う。
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■フォトグラファー/ ビデオグラファー:坂口正臣
雑誌の撮影を経て広告写真・建築写真・映像撮影など福岡を拠点に幅広く活動中。坂口写真事務所(SPO)を運営。