【フイルムカメラ】ゼンマイ仕掛けでフイルム巻き上げ自動のカメラ「リコー オートハーフ E」

坂井田富三
【フイルムカメラ】ゼンマイ仕掛けでフイルム巻き上げ自動のカメラ「リコー オートハーフ E」

はじめに

 今回セレクトしたカメラは、1966年に発売されたハーフサイズのコンパクトカメラ「リコー オートハーフ E」です。「リコー オートハーフ E」は、1962年に発売された初代「リコー オートハーフ」の後継機になります。初代の「リコー オートハーフ」の基本性能を引き継ぎながら、丈夫で安定型になったカメラが「リコー オートハーフ E」になります。この「リコーオートハーフ」には、前面のアルマイト板を変更することができたので、様々なデザインバリエーションが存在しているようです。有名なものは1970年の大阪万博で販売されていた万博ロゴ入りのモデルなどがあります。
 
 電池不要でシャッター速度も固定、巻き上げ操作も全自動のレトロなコンパクトカメラ「リコー オートハーフ E」の魅力と写りをご紹介します。

リコー オートハーフ Eの魅力と特徴

 「リコー オートハーフ E」は、その名前の通り35mm判の半分のハーフサイズ(24×17mm)判カメラです。ファインダーを覗くとハーフサイズなのでフレーミングはタテ位置になります。ハーフサイズのフイルムカメラは、スマホで撮影するのに慣れている人には違和感無く使えるのではないでしょうか。

 「リコー オートハーフ」のシリーズは、1962年に発売開始になってから改良が何回かあり、微妙なモデルチェンジをしています。

1962年「リコー オートハーフ」 ※裏ブタは取り外し式
1963年「リコー オートハーフ ゾーンフォーカス」 ※目測式3点ゾーンフォーカス
1965年「リコー オートハーフ S」 ※「リコー オートハーフ」の改良版、セルフタイマー搭載
1966年「リコー オートハーフ E」 ※「リコー オートハーフ」の改良版、セルフタイマー無し
1967年「リコー オートハーフ SE」 ※部分改良判、セルフタイマー搭載
1970年「リコー オートハーフ SL」 ※大口径レンズ「35mm F1.7」
1976年「リコー オートハーフ SE2 / E2」 ※SE2:セルフタイマーつき、E2:セルフタイマーなし
1978年「リコー オートハーフ EF」 ※フラッシュ付き
1979年「リコー オートハーフ EF2」 ※ポップアップフラッシュ付き

 初代の「リコー オートハーフ」は裏ブタが取り外し式になっていて、少し使い勝手が良くありません。また、大口径のモデルは中古市場で見かける事も少ないですし、フラッシュ付きのモデルはその分ボディが大きくなっていたり、デザイン的にも今一つといった感じです。

 という訳でおすすめの機種は「リコー オートハーフ S」、「リコー オートハーフ E」、「リコー オートハーフ SE」、「リコー オートハーフ SE2」、「リコー オートハーフ EF2」のタイプです。

リコー オートハーフ Eの基本スペック

「リコー オートハーフ E」の基本的なスペックです。

使用フイルム 35mmフイルム
画面サイズ 24mmx17mm
レンズ リコー25mm F2.8 3群4枚構成(設計理研光学、製造富岡光学)
シャッター速度 1/125(AE時) 1/30(フラッシュ時)
露出計 セレンメーター、針押さえ式AE
フイルム感度 手動 ASA(ISO)25~400
ピント合わせ 2.5mに固定焦点
大きさ 幅 89mm X 高さ 67mm X 奥行き 34.5mm
質量 330g
発売当時の価格 12,800円(ケース・ストラップつき)
発売年 1966年11月

 

カメラの大きさはフイルムの箱2.5箱分ほど(突起物除く)、厚さもフイルムの箱とほぼ同等サイズ
裏ブタを開けたカメラ内部フイルムに露光する面積は、35mm判の半分
カメラの下部にあるダイヤルを回すことでゼンマイを巻き上げ、フイルムを巻き上げる動力になる
ISO感度(ASA)設定は25~400まで。外のダイヤルで絞りの設定が可能。Aの設定で自動絞り

リコー オートハーフ Eで横浜みなとみらいをスナップ撮影

 「リコー オートハーフ E」はちいさなコンパクトカメラと言っても、実は少々厚みがあります。しかしジーンズのポケットに入れて持ち運びは無理でも、上着のポケット辺りであれば気楽に持ち運ぶ事が出来るカメラです。

 さらに、ハーフサイズのカメラなのでとても経済的。27枚撮りのフイルムを使えば2倍の枚数の55枚前後の撮影が可能です。今回の横浜みなとみらいのスナップ撮影では、58枚も撮れていました。最近のフイルム価格の上昇を考えると、ハーフサイズカメラは非常に経済的で、撮影する楽しみを増やしてくれる嬉しいカメラです。

 「リコー オートハーフ E」で撮影していると、必然的に縦位置構図が多くなってきます。それはカメラを持ってファインダーを覗くと、ハーフサイズカメラの特徴でもあるファインダーが縦位置になっている影響が大きいと思います。初めて使う人は違和感を感じるかもしれませんが、縦位置構図が好きな人にとっては好都合かもしれません。「リコー オートハーフ E」で横位置を撮るときにはカメラを縦に構えて撮影しますが、なんか窮屈で撮影がしにくかった感じです。

■撮影機材:リコー オートハーフ E
■撮影環境:シャッター速度1/125 絞りオート 焦点距離35mm相当(35mm換算) ISO400(FUJIFILM SUPERIA PREMIUM 400)
※フジカラーCDデータ
■撮影機材:リコー オートハーフ E
■撮影環境:シャッター速度1/125 絞りオート 焦点距離35mm相当(35mm換算) ISO400(FUJIFILM SUPERIA PREMIUM 400)
※フジカラーCDデータ
■撮影機材:リコー オートハーフ E
■撮影環境:シャッター速度1/125 絞りオート 焦点距離35mm相当(35mm換算) ISO400(FUJIFILM SUPERIA PREMIUM 400)
※フジカラーCDデータ
■撮影機材:リコー オートハーフ E
■撮影環境:シャッター速度1/125 絞りオート 焦点距離35mm相当(35mm換算) ISO400(FUJIFILM SUPERIA PREMIUM 400)
※フジカラーCDデータ
■撮影機材:リコー オートハーフ E 
■撮影環境:シャッター速度1/125 絞りオート 焦点距離35mm相当(35mm換算) ISO400(FUJIFILM SUPERIA PREMIUM 400)
※フジカラーCDデータ
■撮影機材:リコー オートハーフ E 
■撮影環境:シャッター速度1/125 絞りオート 焦点距離35mm相当(35mm換算) ISO400(FUJIFILM SUPERIA PREMIUM 400)
※フジカラーCDデータ

 レンズの歪みや周辺光量の落ちもそれほど大きくはありませんが、仕上がった写真を見てみると思っていた以上に画面の切れが気になったので、ネガを確認してみました。上の写真はフジカラーCDのデータですが、元のネガを確認すると左のサーフボードのペイントはきちんと切れずに写っていました。どうもスキャンする際のマスクによってデータ化されない部分もあるようです。
 
 ミラーレス機のモニターではどこまで写るか簡単に分かる撮影に慣れている自分に、こういったところで大きな落とし穴が発生してしまいました。フジカラーCDなどのデータでフイルム撮影を楽しむ方は、構図には上下左右に少し余裕を持って撮影した方が良さそうですね。
 
 下の写真もネガではギリギリ屋根の部分が入っているのですが、データでは上部が切れてしまいました。

■撮影機材:リコー オートハーフ E 
■撮影環境:シャッター速度1/125 絞りオート 焦点距離35mm相当(35mm換算) ISO400(FUJIFILM SUPERIA PREMIUM 400)
※フジカラーCDデータ
■撮影機材:リコー オートハーフ E 
■撮影環境:シャッター速度1/125 絞りオート 焦点距離35mm相当(35mm換算) ISO400(FUJIFILM SUPERIA PREMIUM 400)
※フジカラーCDデータ
■撮影機材:リコー オートハーフ E 
■撮影環境:シャッター速度1/125 絞りオート 焦点距離35mm相当(35mm換算) ISO400(FUJIFILM SUPERIA PREMIUM 400)
※フジカラーCDデータ

 シャッター速度は1/125秒の固定なので、歩きながら横着に撮影するとブレてしまうことも。また「リコー オートハーフ E」は小さなボディの割には、シャッターボタンの押し込みをしっかりとしないとシャッターが切れないので、カメラをしっかりと持っていないとブレやすくなるので注意が必要です。

■撮影機材:リコー オートハーフ E 
■撮影環境:シャッター速度1/125 絞りオート 焦点距離35mm相当(35mm換算) ISO400(FUJIFILM SUPERIA PREMIUM 400)
※フジカラーCDデータ
■撮影機材:リコー オートハーフ E 
■撮影環境:シャッター速度1/125 絞りオート 焦点距離35mm相当(35mm換算) ISO400(FUJIFILM SUPERIA PREMIUM 400)
※フジカラーCDデータ

まとめ

 横浜みなとみらいで「リコー オートハーフ E」で撮影していると、「スマホ」や「写ルンです」で写真を撮っている若い子達に声をかけられ「エモい~」と言われました(笑)。ゼンマイでフイルムが巻き上がるのがとても新鮮だったようです。

 少し色あせたノスタルジーを感じる縦位置構図のファインダーを覗き、ボディの割にはガッツリと押し込むシャッターボタンを押すと、ゼンマイでフイルムが自動的に巻き上がる。その巻き上げ音を聞きながら撮影の余韻に浸る。

 そんなスローな世界を楽しませてくれる、電池も要らなく沢山撮れる「リコー オートハーフ E」はとても経済的で魅力的なカメラです。

 

■写真家:坂井田富三
写真小売業会で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。 撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ、ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。

・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・日本風景写真家協会 会員
・NPO法人 フォトカルチャー倶楽部 参事
・一般社団法人 日本フォトコンテスト協会 理事
・一般社団法人 日本写真講師協会 理事
・ソニーαアカデミー講師
・クラブツーリズム写真撮影の旅・ツアー講師

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