より一層深く使いこなしたいRICOH GR III
はじめに
つい先日GR IIIxがリリースされたばかりで期待が高まる中、GR IIIもまだまだ使いこなしたい!という方も少なくないはず。以前のGR III記事でご紹介した内容に加え、今回は一歩掘り下げて、今までの設定でも問題ないけど、知っておくとさらに表現が広がる。プラスαの使い方で様々な楽しみ方ができる!そんなGR III活用法をお届けします。
測光モードを使い分ける
普段はマルチパターン測光でバランスの取れた露出で撮影をしている筆者ですが、時折ハイライト重点測光を活用しています。ハイライト重点測光は、画面内の明るい部分を重視した露出です。つまりスポットライトが当たっているような状況下でちょうどいい明るさになるように調整してくれる測光モード。被写体の一部分に光が当たる場合、明暗差が激しく、露出が取りづらいことがありますが、そうしたシーンでもハイライト部分の階調がなくなってしまうことがないような露出になる測光方式です。
全体的にアンダーな写真になりますが、白トビさせたくないハイライト部分のディテールが損なわれることがないため、晴天時の空もくっきりと描写されます。
光量が少ない路地裏での夜のスナップ撮影でもムードのある雰囲気が出せます。
クロップモードで焦点距離を変える
GR IIIは広角28mmの単焦点レンズですが、デジタルズームして(イメージをトリミング)、「35mm」「50mm」として撮影できるクロップ機能があります。近づきたいのに近づけない、ズームしたいのにできないと嘆かずぜひ活用したいもの。
クロップされる際の画像サイズはL/28mm:6000×4000px(24MP)、M/35mm:4800×3200px(15MP)、S/50mm:3360×2240px(7.5MP)で、どのサイズにクロップしてもモニター表示で使うのであれば十分すぎる画質です。アプローチするには遠すぎる、あるいは近づくことのできない場所でのクロップモードはやはり頼れる存在です。
50mmはマクロモードとの組み合わせが相性抜群。ピントの合う距離が6cmから12cmの範囲で小さな被写体にクローズアップでき、コンパクトカメラとは思えない美しいボケ表現が可能に。こういう描写はスマホカメラではまだまだ難しい領域です。
50mmクロップでもA4サイズのプリントまで問題なく使用できます。以前、写真展でA2サイズに伸ばしましたが、解像を損なわず描写力は見事で、プリントの仕上がりには高評価をいただいたほどです。
多彩なモノクロ表現を使い分ける
GR III発売当初、いままでになかった4つのモノクロ設定(モノトーン、ソフトモノトーン、ハードモノトーン、ハイコントラスト白黒)が搭載されたことに白黒撮影への本気度を感じました。長年「GR×ハイコントラスト白黒」はスナップシューターの間で定番になっていますが、モノクロはそれだけでなく陰影と階調の美しさや柔らかさを表現することもできます。
ここで理解しておきたいのがモノトーンと白黒の違い。モノトーンは「グレーの濃淡グラデーション(階調表現)」、白黒は言葉が示す通り「白」と「黒」の2階調表現と捉えておくとその違いが明確になります。
筆者はハイライトからシャドウにかけてモノトーンの滑らかな階調の美しさに魅かれるため、基本のモノトーンをローキーに調整してコントラストを加えています。
硬い光を和らげることができるソフトモノトーンでは、全体的に柔らかすぎると感じたらシャドウにコントラストを利かせています。
晴天時のハードモノトーンは青空が暗く落ち込み、コントラストも高くどっしりとした表現に。
ハイコントラスト白黒を選ぶときは、黒でグッと引き締めつつ、粒状のざらつき感を目立たせるよりも全体的のコントラストを抑えて使っています。
こうして、雰囲気に合わせた4つのモノクロ設定で被写体の持ち味を引き出しながら、自分好みを探るのがGR IIIらしい楽しみ方でしょう。
モノクロフィルターを使いこなす
イメージコントロールにプリセットされた設定をそのまま使っている方も多いと思いますが、モノクロ設定で一歩踏み込んで使っていただきたいのが、詳細項目「フィルター効果」です。かつて白黒フィルムで撮影する際に、レンズ先端に装着していた白黒用フィルターと同様の効果が得られ、コントラストを付けてくっきりさせる、人物の肌の調子を整えるなどのために使われていたフィルターと同様の効果をカメラ内で代替しています。
このフィルター効果を加えることで、被写体の持つ色、光源の波長などにより、コントラストが強まりグッと引き締まったり、トーンがきれいに整ったりするので試してみてほしい機能です。その効果を確かめながらカメラ内RAW現像してみるのがおすすめ。
微調整可能な詳細項目はこの他にもあり、一層深い白黒写真表現に踏み込むことができるので、自分なりのチューニングで好みを探ればまるでフィルム時代にプリント暗室に入っているかのような楽しさが味わえます。
日中でも流れる表現が可能になるNDフィルター
ボディ内には約2段分の減光効果のあるNDフィルターも内蔵されています。日中屋外、明るい時間帯でも長秒撮影を楽しむためにはTvモードで、ISO感度を100に固定し、F値を絞り込みシャッタースピードを1秒程にする必要があります。その際に欠かせない設定がNDフィルターです。NDフィルター設定を「ON」にしておくことで、光量を減少させ、スローシャッターを切ることができます。
目の前を行き交う人がぶれて流れるような表現が日中でも可能に。
三脚が必要なシーンでも手ぶれ補正機能と合わせれば水の流れも撮影できてしまうので、風景写真を撮られる方にも嬉しい機能です。
広々とした視界を堪能する ワイドコンバージョンレンズGW-4
別売されているGR III専用のアクセサリーには、広角28mmをさらに超広角化できる大口径ワイドコンバージョンレンズ GW-4があります。すでに28mmが広いと感じている人には広すぎるかもしれませんが、超広角レンズらしい迫力ある描写が好みのならぜひ使ってもらいたいレンズです。フィルム時代のGR21を彷彿させる焦点距離21mm。撮影倍率0.75倍、口径72mmです。本体とGW-4レンズの間に挟み込むレンズアダプター GA-1を用いて装着します。
28mmとの画角差は明解で、21mmはやはりダイナミックで迫力があります。大胆にパースの効いた奥行きが気持ちよく、GRらしいシャープな描写が魅力。スケール感を引き立てるのに相応しいレンズと言えます。
また、ワイドコンバージョンレンズを使用しない状態ではレンズフードとして機能します。さらに、レンズアダプターは単体でも活用でき、アダプター径49mmに合わせてレンズフィルターを装着することが可能。一手間加えて撮影表現を楽しむことができるのも嬉しいです。
ブラックミストフィルターを付けて撮影をしてみました。ブラックミストはソフトフィルターの一つで、強い光源に柔らかさを加えた雰囲気が楽しめます。逆光での撮影時は、シャドウ部のコントラストを抑えた柔らかい表現が可能に。ポートレートなどにも使われることが多いフィルターです。
こちらはクロスフィルターを使用して撮影しています。玉ボケだけでも美しいですが、印象的な輝きを加えることができます。
GR IIIはカメラ内にデジタルフィルターのような機能を装備していないので、スナップ以外の被写体ではレンズアダプターGA-1+レンズフィルターを活用して表現方法を広げるのも一つの手段と言えるでしょう。
おわりに
私の相棒となりいつもカバンの中にいるGR III。様々な機能やプラスαのアイテムを加えてみることで活用範囲と表現が広がり、一眼レフに匹敵する撮影ができてしまう素晴らしいカメラです。自分らしい設定や使い方を探る楽しみもまたGR IIIらしさだと思います。
ポケットやバッグに忍ばせておけば撮影シーンの広がりは間違いなく、スマホカメラでは納得のいく写真が撮れない、物足りないと感じていたらぜひとも手元に置きたい一台です。
Instagram(@kobayashikaworu_gr)でもRICOH GRで撮影したその他の写真がご覧いただけます。
■写真家:こばやしかをる
デジタル写真の黎明期よりプリントデータを製作する現場で写真を学ぶ。スマホ~一眼レフまで幅広く指導。プロデューサー、ディレクター、アドバイザーとして企業とのコラボ企画・運営を手がけるなど写真を通じて活躍するクリエイターでもあり、ライターとしても活動中。