フィルムカメラの感覚で楽しむ|RICOH GR III&IIIx
はじめに
手軽に持ち運べて、撮りたい時にすぐ撮れるRICOH GR III&IIIx。日頃から手にして撮影を楽しんでいる方も多いと思います。画質の良さだけでなく、写し出される色や風合いも魅力的です。画像編集機能が搭載されているカメラなので、せっかくならカメラ内RAW現像を活用してフィルム写真のように仕上げてみませんか? また、今回は「スナップ距離優先モード」機能を使い、瞬発力を活かした撮影を楽しみました。
カメラ内RAW現像で自分好みの味付けを
シャッターを押すだけで素敵な写真が撮れるGR III&GR IIIx。プリセットされているイメージコントロールのままストレートに写すのも良いですが、撮影時に「RAW」または「RAW +JPEG」で撮影し、「RAWデータ」を残しておくことで、PCを使わずともカメラ内でRAWデータを現像することができます。
イメージコントロールの変更や、ホワイトバランスをシフトさせて微調整を加えたり、キーを高く(あるいは低く)することで、好みの色や、雰囲気を活かした写真に仕上げることができます。自分らしい色を模索する中で、カメラ内RAW現像のメリットを感じられるはずです。
「ネガフィルム調」の色味
GR III Diary Edition Special Limited Kitの発売とあわせ、新たな機能拡張ファームウェアがアップデートされ、追加となったイメージコントロール「ネガフィルム調」。1970年代の〝ニュー・カラー〟と呼ばれる作品を参考に、「毎日の生活を撮ることが楽しくなる色」として考えられたそう。トーンカーブの中間域からハイライト側、全体的にキーは少し明るめに設定されていることから、ストレートに撮影するとあっさりとした色味と、コントラストが低めの柔らかい画になります。
また、赤色と緑色に特徴が見られ、赤色はマゼンタを抜いた少しオレンジ寄りの色合いに、緑色はイエローが抜けたシアン味の強い色に仕上がります。
慣れ親しんだネガフィルムのように仕上げてみる
ネガフィルムといえば、レンズ付きフィルムカメラを使う方もいらっしゃるのではないでしょうか。私自身も長年親しんできたレンズ付きフィルムカメラに使われているネガフィルムの写りのように仕上げることができないか? と思い、設定を模索しながら撮影をしてみました。
実際のネガフィルムを想定し、ホワイトバランスはオートを使わず、基本的に「太陽光」(フィルムでいうDay Light)で撮影します。露出はマイナス補正にし、全体的にしっかりと発色するようにしました。さらに周辺光量補正を「オフ」にして、ビネッティング(光線のケラレ)をあえて加えます。そのことにより、レンズ付きフィルムカメラのような風合いになったのではないかと思います。とはいえ、あくまでも私好みの仕上がりです。
夏の日差しは「クロスプロセス」で楽しむ
イメージコントロールの「クロスプロセス」もGRらしい色の代表格。クロスプロセスとは、銀塩写真のカラーフィルムの現像処理において、リバーサルフィルムをネガ現像の工程で行う、あるいはその逆に、ネガフィルムをリバーサル現像の工程で行い、本来とは異なる現像方法(適した現像液で処理を行わないため、正しい結果を得られない)を意図的に行ったもの。その特性を活かした「クロスプロセス」は、独特な色の転び方をしますが、他のイメージコントロールと異なる雰囲気に仕上がるのが魅力の一つといえます。
真夏の海辺のように日差しの強い場所、思い切り青空が広がるシーンや、ビビッドカラーのファッションなどにぴたりとハマり、快活なイメージをさらに引き出してくれます。これからの季節に大活躍してくれるイメージコントロールです。こちらもプリセットされている画作りをベースに、カメラ内RAW現像で自分好みの仕上がりに調整しながら撮影を楽しんでいます。天候、時間帯、光の強弱や方向など、撮影条件により色の転び方が異なるのも面白いところです。
「スナップ距離優先モード」でスナップ撮影を楽しむ
GRシリーズには、街歩きしながらの撮影を優位に考えた「スナップ」モードや「フルプレススナップ」などの機能が搭載されています。予めピントの合焦距離を設定しておくことで、シャッターを押せばAFを気にする事なく、決めた距離でシャッターを押す事ができるというもの。さらにGR III&IIIxには、「スナップ距離優先モード」が追加されました。設定した合焦距離に対し、最適なF値を合わせてくれる機能です。設定できる項目は、距離と深度の深さ(DOF:Depth of Focus)になっています。
深度を深く撮影できるようになっているので、ISO感度AUTOに設定している場合には、シャッタースピードの低限値(今回の撮影では1/25秒に設定)を超えるとISO感度も連動して自動的に変更されます。夕方や曇天、雨のような薄暗いシーンでは、高感度になることによってノイズが加わり、シャッタースピードもスローになるため、ブレも生じて躍動感のあるス一枚に。イメージコントロール「ネガフィルム調」を選べば、一層フィルムカメラで撮影したような雰囲気になります。
深度が深くなることによって、ガラスや鏡に写り込んだ被写体もパンフォーカスされ、画面全体にメリハリの効いた画に仕上がります。撮影シーンに応じてモードを選ぶだけで簡単に撮影できるので、撮りたい瞬間にポケットからサッと取り出し、瞬発力を活かしたスナップ撮影を体感できるモードです。
おわりに
これまでにも、カメラ内RAW現像でイメージコントロールの調整を行い、自分らしい色づくりを楽しんできましたが、「ネガフィルム調」のカスタマイズと、「スナップ距離優先モード」との組み合わせでフィルムカメラのように撮影することが楽しみの一つに加わりました。好みの色だけでなく、撮影シーン、天候、時間帯に応じて様々な表現が広がる懐の広いカメラRICOH GR III&IIIx。深化し続けるGRにこれからも目が離せません。
参考出典:GR III/GR IIIxはカメラ内現像で画作りを|リコーイメージング
■写真家:こばやしかをる
デジタル写真の黎明期よりプリントデータを製作する現場で写真を学ぶ。スマホ~一眼レフまで幅広く指導。プロデューサー、ディレクター、アドバイザーとして企業とのコラボ企画・運営を手がけるなど写真を通じて活躍するクリエイターでもあり、ライターとしても活動中。