ペンタックス HD PENTAX-DA 16-85mmF3.5-5.6ED DC WR レビュー|使用範囲が広く、あると便利な標準ズームレンズ
はじめに
今回紹介するペンタックスのHD PENTAX-DA 16-85mmF3.5-5.6ED DC WRは普及タイプのズームレンズで、35mm換算24.5~130mm相当の超広角から望遠域の画角をカバーしています。HDコーティングや特殊低分散(ED)ガラス、非球面レンズの採用で画質は良好な上、防滴構造になっているので、多少の雨ならあまり気にせず使うことができます。ちなみに DAシリーズはAPS-Cサイズのセンサーに最適化されたレンズシリーズです。
画角の比較
35mm換算24.5~130mm相当の超広角から望遠域の画角をカバーしているので、ズーミングひとつでかなり変化がつきます。自分は動かずにズーミングだけで広角端と望遠端で撮影しました。
広角側は狙い方で迫力も作りやすく、程よい広がりがあるので使いやすくなっています。
望遠側は自分の狙ったものをほどよく切り取りやすく、圧縮効果もあるので、まとめやすいはずです。 ズーミングでこれだけ変化があると実際の撮影では迷うことがあるので、ある程度使う画角を決めてからズーミングは微調整で使った方が狙いを絞りやすいはずです。
曇天気味で光が弱く、ナチュラルの設定で露出補正もアンダーという条件ですが、色合いを残しつつ質感も感じるのはレンズの描写性能が良いからでしょう。プログラムモードを使っているのはズーミングで絞り値が変わるタイプのレンズだからです。
森角(モリカド)
私は、最近よく聞くようになったネイチャースナップのことを「森角」と呼んでいます。その撮影ではこのHD PENTAX-DA 16-85mmF3.5-5.6ED DC WRを使うことがよくあります。森角は、自然の中で三脚を使わない手持ち撮影で自分が気になるところにレンズを向けます。
広角側の絞り開放でも画面周辺に像の流れなどはなく、スッキリしていてコントラストも良好です。自然の中では広角側が足りないと感じる場面も多いので、35mm換算24.5mm相当までの広さはかなり安心感があります。このシーンでは構図を整えるために少しズーミングしています。
少し離れたコンクリートの表面のザラザラした質感もしっかりと描写されています。この分離能力の高さと広いズームレンジが森角にあっていると考えているポイントです。
望遠側を使って葉っぱに当たる木漏れ日を狙ったシーンです。こんなシーンで大切なのは暗部の締まりで、レンズの透過率が高い方が締まりは良くなります。光が透過している葉っぱの質感もしっかり描写されています。
少し離れた山肌に新緑の木々を見つけたので、それをポイントにまとめました。このときに気をつけたのは画面周辺などに他の木などを入れないことです。できるだけスッキリした背景にポツンと新緑の緑が映えるようにズーミングで微調整をしました。春霞などの影響を受けそうな条件でしたが、濃度の違う緑をしっかり再現してくれています。
橋の上からの撮影で移動できる範囲は限られていたので、ズーミングで程よい広がりでまとまるように構図を追い込みました。絞りはそれほど絞られていませんが細かい葉っぱの分離は美しく、逆光での質感も良い感じです。
街角
街角はスナップですが、気軽に気になるところを狙うことがポイントです。その撮影では気軽と言っても、タイミングを狙うために次の動きを予想する場面があります。そんなときは使っている画角を把握してあらかじめ撮影するポジションを決めます。そんなことから、このレンズのようにズームレンズを使うときはある程度焦点距離を決めて使うようにしています。
望遠側を使うのは自分が狙っているものを切りとるときです。少し離れた場所から狙っても圧縮効果があるので背景を整理しやすいのもポイントです。このときは横を通り過ぎている人のタイミングを意識しました。
望遠側の良さは気になるところだけを切りとりやすいことです。それでも切りとりすぎず、周りの様子も少し残しておくと想像力を刺激する手助けになります。
標準域のポイントは変化です。これはどの画角を使っていても同じですが、標準域は特に平凡な写真になりやすいので、露出や自分の動きで変化を加えると、目で見たときと違う写真ならではの印象を作ることができます。このシーンではアンダー露出にして光が際立つようにしています。
窓越しのショーウィンドーです。ズーミングでもう少し周りを切りとりたくなるシーンですが、窓の映り込みを活かすとちょっと不思議な雰囲気を作れます。ズームレンズを使っていてもズーミングに頼りすぎず、自分が動いて角度を変えるとこんなアングルに出会えます。
切りとりすぎず入れすぎない、そんな微妙なまとめ方が問われるシーンです。これはガラスと質感の違う壁が平面的になるのが、このシーンのポイントだからです。狙う角度や距離も大事ですが、このときはズーミングで最後の追い込みをしました。
広がっている感じを強調するために歩道橋の上から撮影した1枚です。ズームレンズを使った街角で大切なのは、こんな感じでズーム域にあった動きをすることです。手前に白い車が入ってきたのはラッキーでしたが、画角を決めて狙っていたので迷うことなくシャッターボタンを押せました。
まとめ
今回紹介したように、超広角から望遠までをカバーするズームレンズはあると便利な1本で、それだけで十分に感じることがあります。ズームミングに頼って撮影しても楽しいですが、街角で紹介したようにズーム域にあった撮影ができるようになると自分らしい発見に繋がります。とはいえズーム全域での描写が良く、それほど重くもなく取り回しも楽なので、HD PENTAX-DA 16-85mmF3.5-5.6ED DC WRは何かと便利なレンズです。
■写真家:佐々木啓太
1969年兵庫県生まれ。写真専門学校を卒業後、貸スタジオ勤務、写真家のアシスタント生活を経て独立。街角・森角(モリカド)・故郷(ふるさと)というテーマを元に作品制作を続けながら、「写真はモノクロ・オリジナルはプリント」というフィルム時代からの持論を貫いている。八乃塾とweb八乃塾を主宰しフォトウォークなども行い写真の学びを広めている。