モノクロのススメ vol.3「光を使いこなす」|佐々木啓太
はじめに
モノクロのススメ vol.3は光の解説です。とはいえ光は目に見えません。見えないものをどう扱うかがポイントで、大切なのは光を感じることです。
参考までに写真は英語では「Photograph」(フォトグラフ)で、語源は「photo-」(光)+「-graph」(書かれたもの)となります。本来の意味からも写真の基本は光で、その扱い方を学ぶのはモノクロ写真だけでなくカラー写真でも大切です。
使用するカメラとレンズ
カメラ:PENTAX K-3 Mark III
レンズ:HD PENTAX-DA 15mmF4ED AL Limited / HD PENTAX-DA 70mmF2.4 Limited / HD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WR
逆光を使う
以前、当たり前のように逆光という言葉を使っていたら意味がわからないと言われたことがあります。写真をやっていると、このほかにも順光やサイド光、斜光線など被写体に対する光の向きを表す言葉が出てきます。その中でも逆光は光を使いこなすために理解しておきたいポイントです。
記念撮影で逆光はNGと言われます。これは被写体の後ろに太陽があるので、撮影するみなさんの顔が暗くなるからです。こんな話もあって逆光で撮影するのは抵抗があるかもしれませんが、使いこなせるようになると写真の印象は変わります。
順光は被写体に直接光が当たっている状態で、逆光は被写体の後ろから光が当たっている状態です。と、言葉で説明してもわかりづらいので順光と逆光の写真を比較しながら解説します。
左が順光で、被写体に光が当たっています。撮影者の後ろから太陽の光が当たっているので、写真の中の色が綺麗で文字なども読みやすくなっています。
右は逆光で、撮影者の前から太陽の光が当たっています。撮影しながら眩しく感じる状態で、色はくすんでモノトーンに近い感じです。
この二つを比較すると綺麗なのは順光です。しかし、ポイントは影で、順光の影は奥に伸びているので色ほど目立っていません。逆光は影が手前に伸びてしっかり主張しています。光は目に見えないので、この影の印象で光の向きと強さを確認します。逆光の影を使うと、モノクロ写真に必要な黒の強さを作りやすくなります。
ポイントはコントロール
逆光にすれば良いといってもコントロールは必要です。逆光でコントロールするのは主に太陽の光です。太陽の光はポイントには良いですが、影の再現性は難しくなります。逆光の強さを活かしながら、影の再現力を上げるのが腕の見せ所です。
逆光を学ぶときは太陽が出ている晴天が良いでしょう。太陽があると上の写真のようについつい画面の中にドカンと入れたくなりますが、逆に隠すと影の再現性が上がってトーンをコントロールしやすくなります。上の写真より下の写真の方がトーンは豊かになっているのはこのためです。この影とトーンのコントロールはモノクロ写真の印象を決めるポイントです。
形を見せる
逆光がオススメなのは形を強調しやすいからです。前の話も太陽の印象より形の印象を優先するためで、トーンが豊かになると形の質感が上がります。
モノクロは白と黒の表現で、メリハリを作ると自分の狙いを画面の中で目立たせることができます。メリハリを作るためにも光の使いこなしは大事です。
影を使って印象を上げる
影をわかりやすくするためにvol.1の「モノクロは引き算」を思い出して画面の中を整理してください。
印象を上げるためにデジタルの後処理は便利です。前回の「vol.2 モノクロームになれる」で紹介したエフェクトも同じように印象を上げる効果がありました。しかし、モノクロでは目で見て(色で判断して)印象が上がっていると思っていても、色がなくなると他と同化する場合があります。光と影で印象を上げる意識を持ってモノクロ写真のスキルを上げてください。
まとめ
逆光を意識して光を使いこなせると、モノクロ写真で大事なトーンコントロールができるようになります。問題は、逆光は自分に光が向かっている状態なので眩しいことです。この眩しさは疲れの元にもなるので、目を保護するためにもサングラスを使うことをお勧めします。ちなみに私は色の薄いサングラスをいつも使っています。色が薄い方が影に入ったときもずっとかけていられるので煩わしさがありません。
■写真家:佐々木啓太
1969年兵庫県生まれ。写真専門学校を卒業後、貸スタジオ勤務、写真家のアシスタント生活を経て独立。街角・森角(モリカド)・故郷(ふるさと)というテーマを元に作品制作を続けながら、「写真はモノクロ・オリジナルはプリント」という
フィルム時代からの持論を貫いている。八乃塾とweb八乃塾を主宰しフォトウォークなども行い写真の学びを広めている。