写真表現の原点に立ち返るカメラ|PENTAX K-3 Mark III Monochrome レビュー
はじめに
PENTAX K-3 Mark III Monochromeは、「モノクローム専用デジタル一眼レフ」として、発売当初に入手困難となった話題のカメラ。発売発表を聞いたとき、この時代に「モノクローム専用」「デジタル一眼レフ」とはかなり攻めているとワクワクしたことを覚えている。
今回、その話題のカメラ「PENTAX K-3 Mark III Monochrome」で撮影する機会に恵まれた。ファーストインプレッションから驚きとワクワクの連続だった。
ファーストインプレッション
繊細な表現に驚く
まずは、PENTAX K-3 Mark III MonochromeとHD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WRで撮影をしてみる。これはレンズキットとしても発売された組み合わせ。
再生で表示された写真を見て、思わず驚いた。ピントのあった部分の描写力。葉の質感がしっかりと表現されている。
その秘密は、モノクローム専用CMOSイメージセンサー。モノクローム専用に設計されたイメージセンサーは1画素1画素が取得した輝度情報をそのまま画像に反映でき、繊細な表現と解像力、階調の再現性に優れたモノクローム表現を実現。さらに、その特性にあわせ画質設計をモノクローム専用に再設計したというのだから驚きだ。だからこその、この表現力。
モノクロームは、光と影のグラデーションが命だ。それを存分に表現できるPENTAX K-3 Mark III Monochromeは「写真表現の原点に立ち返るカメラ」といっても過言ではないだろう。
HD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WR
まずはこの1本
HD PENTAX-DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WRは35mm判換算で30.5-61.5mm。広角から中望遠までを1本でカバーできる。重さも283gと軽く、防滴構造。まちなかスナップはもちろん、花や風景、ポートレートまでいろいろ楽しめる。
しかし、撮影を進めるにつれ、気が付いてしまった。
私がPENTAX K-3 Mark III Monochromeと見たい光景は、こちらのレンズのほうが叶えてくれるということに。
HD PENTAX-FA 77mmF1.8 Limited
筆者が組み合わせたいレンズ
私がPENTAX K-3 Mark III Monochromeと見たい光景。
それはこんな光景だった。
まちの気配をアップで捉えたい。
そのものだけを切り撮りたい。
そこに存在したということを残したい。
HD PENTAX-FA 77mmF1.8 Limitedは私の気持ちにしっかりと寄り添ってくれた。
HD PENTAX-FA 77mmF1.8 Limitedは35mm判換算で118mm相当。その繊細な描写と開放F1.8が主役を引き立て、撮影の可能性を広げてくれる。個人的には、アルミ削り出しのキャップが好きで、この写真でも思わずつけて撮ってしまったほど。
普段、ミラーレス一眼でまちスナップを撮るときは、35mm判換算で35~50mmのレンズをセレクトする。しかし同じまちスナップでも、PENTAX K-3 Mark III Monochromeでは全く逆の望遠レンズが好みだった。それはきっと、モノクロームならではの効果で、形や光や影をいつも以上に丁寧に見つめたところに理由があるように思う。だからこそ、被写体の確かな存在感をアップで捉えられるHD PENTAX-FA 77mmF1.8 Limitedが良かったのだろう。
モノクロームの表現を深めよう
さて、話題をPENTAX K-3 Mark III Monochromeに戻そう。
ひとくちにモノクロームといっても、その表現方法は様々で、柔らかく優しい雰囲気もあれば、力強さを感じる表現もできる。
その表現をコントロールするのが「カスタムイメージ」だ。スタンダード、ハード、ソフトの3種類がある。
▼スタンダード
▼ハード
▼ソフト
比べてみると一目瞭然。同じシーンでも印象が異なる。
さらに、調色やキー、コントラスト、シャープネスなどのパラメーター調整ができ、自分だけのモノクロームを追究することができる。
例えば、冒頭でお見せした下のこの写真。
撮影の途中で入ったカフェでのヒトコマ。
窓からやわらかい光が入り、テーブルの上には素敵なアイテムが飾られていた。
カスタムイメージはスタンダード。モノクロームで繊細な雰囲気をよく捉えている。
調色をセピアにしてみる。セピアはノスタルジックな印象。その印象に沿うように、他のパラメーターも変更する。
さらに調色を青に寄せてみる。こちらもパラメーターは都度変更する。
クールな印象になった。
調色の変更はカメラ内RAW現像で行った。撮影時と同じように細かな設定を変更できるので、モノクロームの表現を研究したいときにもおススメ。なお、今回お見せしている写真のうち上記の比較写真以外は、全て撮影時に設定している。
さらに、デジタルフィルターを活用することで、表現の幅が広がる。私は周辺を暗くする「シェーディング」を被写体にあわせてプラスした。
例えば、先ほどのこちらの写真。カスタムイメージ「ハード」でカッコよさを、デジタルフィルター「シェーディング」で周辺光量を落とし、見る者の視線を中央の白い矢印に集中させるよう工夫した。
おわりに
PENTAX K-3 Mark III Monochromeで撮影をすると、光や影を視る、ということがどういうことなのか、カラーとは違う気づきをもたらしてくれるだろう。
まさしく写真表現の原点に立ち返るカメラ。
それがPENTAX K-3 Mark III Monochrome。
撮影の新しい楽しみをもたらしてくれる、革新的なカメラだ。
ぜひ一度手に取ってみて。
■取材協力:ATELIER Morihiko
〒060-0061 北海道札幌市中央区南1条西12丁目4-182 ASビル1F
https://www.morihico.com/
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■写真家:渡邉真弓
札幌在住。日常をモチーフに「時の有限性」「薄れゆく記憶」について考察する作品を制作。「写真と一緒にくらしを楽しむ」をキーワードに、写真教室、写真にまつわる執筆・企画提案、撮影など幅広く活動している。北海道カメラ女子の会代表、フォトフェスCuiCui 事務局代表、京都芸術大学通信教育部美術科写真コース非常勤講師。富士フイルム公認X-photographer。地方自治体と地域振興プロジェクトも展開中。