ペンタックスらしさ満載!手のひらサイズのナノ一眼「PENTAX Q」
はじめに
2011年8月にHOYA株式会社PENTAXイメージング・システム事業部(現リコーイメージング株式会社のカメラブランド)から発売された、手のひらサイズのデジタル一眼「PENTAX Q」は、当時のコンデジと比べてもそれよりも小さい、極小サイズのレンズ交換式デジタルカメラです。
発売当時、筆者はカメラ雑誌の編集をしており、記者向けの新製品発表会でひと目惚れをして即予約しました。残念ながら現在は販売終了となっていますが、中古市場ではよく見かける本機を、あらためてレビューいたします。
13年前に発売されたとは思えないサイズ感と盛り沢山の機能
ペンタックスというと、今なお、こだわりを持って作り続けているデジタル一眼レフや、新たに発表されたフィルムカメラが話題のカメラブランドですが、ペンタックスブランドを愛する人は「PENTAXIAN(ペンタキシアン)」として、自分のカメラに愛と誇りを持っているイメージが今も昔も強いです。筆者もペンタックス100周年スペシャルミーティングには、講師として参加させていただき、その熱い思いを体感いたしました。
そんな筆者が、発売から10年以上経っても愛し続けているのが、このPENTAX Qシリーズです。今回は、ペンタックスQマウント第1号機の「PENTAX Q」と、メインで使用しているQマウントレンズを紹介いたします。
本機は1/2.3型CMOSセンサーを搭載したミラーレス機で、もっと小型のデジタル一眼が欲しいという、ユーザーの声に応える形で製品化されました。有効画素数は約1240万画素、手振れ補正は撮像素子シフト方式、ISO感度は125-6400、背面液晶モニターは3.0型のTFTカラーLCDを搭載しています。AFはコントラスト検出式を採用し、顔検出や追尾機能も使用できます。
約5コマ/秒の連写、フルHD 30fpsの動画撮影も可能で、内蔵ストロボも搭載しており、幅98mm、高さ57.5mm、厚み31mm、重さ約180g(本体のみ)の超小型・軽量のボディとは思えないほど、盛り沢山の機能が搭載されています。カラーラインナップはホワイトとブラックで、2012年には限定カラーのシルバーも発売されました。
小型機にありがちな、写真初心者向けのオート撮影がメインの操作系統ではなく、詳細な設定を自分で決定したいハイアマチュアに対応した、操作しやすいボタン類が好印象な機種です。
開放値F1.9の大口径単焦点レンズ「01 STANDARD PRIME」
ラインナップ上、一番最初に発売されたのが、「01 STANDARD PRIME」付きのレンズキットでした。このレンズは、Qマウントレンズの中では高性能レンズに位置づけられており、本機に装着すると35mm判換算で47mm相当の画角になる、単焦点レンズです。
開放F値が1.9とかなり明るいので、小さなセンサーサイズでもボケが得られやすく、暗い所での撮影も優位なため、筆者の撮影時には一番出番の多いレンズとして活躍しています。レンズ構成は高性能非球面レンズ2枚を採用した5群8枚の仕様で、絞り羽根枚数は5枚、最短撮影距離は20cmと結構寄れるのもポイントが高いです。
PENTAX Qには、上級機に使用されるマグネシウム合金ボディが採用されており、見た目、手触り共にかなり高級感のある仕上がりとなっています。そのボディにシルバーカラーの薄型の本レンズを装着すると、見た目のバランスも格好良くなります。
歪曲収差の補正はかなり良好ですが、強い逆光の状態の撮影時には光の影響を思いっきり受けた、オールドレンズ的な写りになることがあります。筆者はこういう状況を楽しみたい撮り手ですが、気になる方は別売のフードを使用すると、影響を多少軽減できるでしょう。
背面液晶はかなり見やすく、タッチ操作には対応していないものの、INFOボタンから色々な設定が行えるので、ペンタックス機を使用するのが初めての方でも馴染みやすいでしょう。
ワンタッチで写真の色味やムードを変えられるカスタムイメージは、通常は「鮮やか」使用がお勧めです。見た目に近い、でも少しだけ華やかな画を生み出してくれます。次にお勧めしたいのが「ポップチューン」。ビビッド系でメリハリの効いた、元気な画に仕上げてくれます。逆にふんわり系は「ほのか」が、その場の空気を包み込むかのような、すべてを優しく仕上げてくれます。
天気の良い日に撮影していて、絞りを開放にしてボケを最大限に作りたいのに、明るすぎてしまって白トビしてしまうなんてこともありますが、Qマウントの高性能レンズシリーズにはNDフィルターが内蔵されています。カメラ側の操作で簡単にフィルターをONにできるのは、とっても便利です。
広角から中望遠をカバーするオールマイティーズームレンズ「02 STANDARD ZOOM」
本機と「01 STANDARD PRIME」のレンズキットに続けて発売されたのが、「02 STANDARD ZOOM」をプラスしたダブルレンズキットでした。筆者は2011年9月に発売されたこちらを購入しました。
本機に装着すると35mm判換算で27.5-83mm相当の画角になり、開放F値は2.8-4.5になります。レンズ構成は7群8枚で特殊低分散非球面レンズ、異常低分散非球面レンズなどの特殊光学ガラスが合計4枚使用されています。
このレンズを持ったときに感じるのは、広角から中望遠の画角をカバーしているとは思えないほどの小ささでしょう。最大径48.5mm、長さ48mm、重さ約96gのコンパクトさは、バッグの中で迷子にさせてしまうほどです。
また、ズーム全域で最短30cmの近接撮影が可能なので、望遠側で使用すると簡易マクロのような使い方もできるので、近景も遠景も撮りたくなる旅行での使用にぴったりです。
この小さいレンズの中にどのような設計が詰められているのだろう?と思えるほど、写りは良好で、オールドレンズのふんわり感を求めている方にはお勧めしません。変わった写りを楽しみたい方は、カスタムイメージの「クロスプロセス」を使用すると、フィルムのクロスプロセスの現像手法と同じように、独特の色味とムードの画を、毎回違うパラメーターで仕上げてくれる初期設定になっているので、シャッターを押すたびにドキドキが楽しめますよ。
本機を中古で購入するときは、前述の「01 STANDARD PRIME」と、この「02 STANDARD ZOOM」をセットで揃えると、一眼らしいボケとどんなシーンでも撮りやすいオールマイティーさの両方が得られます。
トイカメラっぽい写りを楽しめるユニークレンズ「07 MOUNT SHIELD LENS」
Qマウントレンズのラインナップは高性能レンズシリーズの他に、ユニークレンズシリーズがあります。その中で一番のお勧めがこの「07 MOUNT SHIELD LENS」です。
本機に装着すると、35mm判換算で63.5mm相当の画角になるこのレンズは、いわゆるボディキャップレンズの形状をしています。トイカメラのような、中央部に少しだけ芯が残るような描写で、画像周辺部はとろけるように大きく流れる写りが特徴的です。
最大径が40.8mmで厚みが6.9mmなので、バッグの中では確実に迷子になります。本機を使うときは、交換レンズもものすごく小さいので沢山持ち出せるのですが、細かい仕切りのあるバッグを使うことをお勧めします。
高性能レンズの写りがかなり綺麗なので、この「07 MOUNT SHIELD LENS」を持っておくと、一昔前のトイカメラのような写りと、PENTAX Qの様々な高機能の両方を楽しめます。
PENTAX Qシリーズについて
PENTAX Qのラインナップは、今回ご紹介した初代の「PENTAX Q」の次に「PENTAX Q10」が登場しました。続いて、撮像素子が1/1.7型CMOSセンサーになった「PENTAX Q7」が、最後に「PENTAX Q-S1」が発売されました。
レンズも、マウントアダプターを含めると9本発売されていますので、ぜひ、中古品を探してみてほしいです。カラーバリエーションも豊富なので、あっと声が出てしまうような、自分好みのQに出会えるかもしれませんよ。
■写真家:水咲奈々
東京都出身。大学卒業後、舞台俳優として活動するがモデルとしてカメラの前に立つうちに撮る側に興味が湧き、作品を持ち込んだカメラ雑誌の出版社に入社し編集と写真を学ぶ。現在はフリーの写真家として雑誌やWEB、イベントや写真教室など多方面で活動中。興味を持った被写体に積極的にアプローチするので撮影ジャンルは赤ちゃんから戦闘機までと幅広い。日本写真家協会(JPS)会員。