【オールドレンズ】「ペンタックス スーパータクマー55mm F1.8」とジャンク品 「SMC タクマー 55mm F1.8 」を比べてみました
はじめに
今回は、今までとはちょっと違った機材選びのお話です。オールドレンズや古いカメラなどの入手方法は、店頭の中古カメラコーナーで買ったり、オークション・フリマなどを活用して購入したりします。そういった際によく「ジャンク品」という言葉を見かけます。「ジャンク品」と呼ばれるモノは非常に安かったりしますが、ジャンクと言うだけあって、不動品であったり傷・カビなどがあったりするものが多くなかなか手を出しにくいモノです。
とは言えたまには掘り出し物もあったりするので、筆者はお宝探し感覚でよくジャンクコーナーを物色したりしています。今回はジャンクコーナーで手に入れた格安オールドレンズで撮影したものを紹介いたします。
お宝探し!ジャンクコーナーに惹かれる魅力
お店にジャンクコーナーがあると吸い寄せられるように立ち寄ってしまい、お宝さがしのような感覚でいろいろ手に取って見てしまいます。ジャンクというだけあって、不動品や程度の悪いものもありますが、たまに自分が欲しかったものに出会ってしまうと、それがジャンク品であっても無性に手に入れたくなります。
ジャンク品にカテゴリーされているものは、「返品・交換不可」が大前提になっているので購入は自己責任のもとで対応しなければなりません。また写りや状態は全て個体差が非常に大きくなります。
そこで、例えばレンズであればマウントアダプターを持参して自分のミラーレス機に装着して、その場で撮影してある程度の状況を確認することもお店によっては可能だったりします。少しでもジャンク品を確認して購入したい人は、そういったお店を選ぶと少し安心です。
ジャンク品でもフィルムカメラなどは、実際に撮影テストはできないのでジャンク品を購入するには少々ハードルが高いアイテムです。
筆者がよく訪れる「新宿 北村写真機店」の3Fにはジャンクコーナーがあり、バスケットで売られているジャンク品からショーケースに並べられているジャンク品まで様々なものがあります。バスケットへ造作に入っているジャンク品に手を出すのは少々難易度が高いですが、ショーケースに並べられているジャンクレンズなどは、訳あり商品でカビやチリ、ホコリ混入などがあるものがほとんどで比較的手が出しやすいジャンク品です。初めての方でも手を出しやすいのではないでしょうか。
筆者が今回入手したジャンク品のレンズは、ペンタックス「SMC Takumar 55mm F1.8」です。外観は非常に綺麗なレンズなのですが、レンズにカビやチリ、ホコリの混入ありのジャンク品で購入価格はなんと2,200円という超お手頃価格でゲットしました。
今回はジャンク品で購入したレンズ「SMC Takumar 55mm F1.8」と、手持ちのオールドレンズ「Super Takumar 55mm F1.8」後期型で撮り比べをしてみました。
ともにタクマーの名前を持っている焦点距離55mmのレンズです。55mmのタクマーレンズは中古市場では非常に多く見られるレンズなので、比較的手ごろな値段で購入する事が可能なレンズです。またジャンクコーナーでも見かけることが多いレンズです。市場では「Super Takumar 55mm F1.8」の方が人気があり、「SMC Takumar 55mm F1.8」の方が人気も薄く価格も安く売られていることが多いようです。
ではこの2本のレンズのどんな違いがあるのか撮影をして比べてみました。あくまでもジャンク品で個々のレンズの状態や程度は異なるので、その点はあらかじめご了承ください。ジャンク品で安く購入したレンズでも、その個性や状態を上手く活かせれば、お得にフォトライフを楽しむ事ができます。
Super Takumar 55mm F1.8 後期型 と SMC Takumar 55mm F1.8 の違い
2本のレンズを撮り比べする前に、スペックの確認をしてみました。
Super Takumar 55mm F1.8 後期型 | SMC Takumar 55mm F1.8 | |
焦点距離 | 55mm | 55mm |
レンズ構成 | 5群6枚 | 5群6枚 |
開放絞り | 1.8 | 1.8 |
最小絞り | 16 | 16 |
フィルター径 | 49mm | 49mm |
絞り羽根枚数 | 6枚 | 6枚 |
最近接距離 | 0.45m | 0.45m |
マウント | M42 | M42 |
最大径x長さ | 57mm x 36mm | 59mm x 38mm |
重量 | 約215g | 約201g |
発売 | 1965年 | 1972年 |
比較してみた表で見ても、2本のレンズの基本的なスペックは同じですが、この2本の違いはレンズのコーティングとレンズの材質の違いにあります。「Super Takumar 55mm F1.8」後期型は、ちょっと特徴があるレンズで別名「アトムレンズ」と呼ばれています。この「アトムレンズ」というのは放射性物質を含んだレンズの総称です。レンズに使用されていた「酸化トリウム」は、レンズの屈折率の精度をあげる効果がある為描写力が上がったり、色収差のない画像を得たりする事ができます。しかし「アトムレンズ」にも欠点もあり、経年劣化によりレンズが黄ばんでしまう症状がでているものが多く見受けられます。
対して「SMC Takumar 55mm F1.8」は、レンズに高性能のマルチコーティング「Super Multi Coating」がされており、逆光時の性能などが向上しています。描写的には「SMC Takumar 55mm F1.8」の方が発色良く現代的な写りをすると言われています。
実際にほぼ同じ条件下で撮り比べてみました。1枚目が「Super Takumar 55mm F1.8」で2枚目が「SMC Takumar 55mm F1.8」で撮影したものになります。それぞれのレンズの個体差もあるのですが、ほぼ同じ描写をしています。よく見ると「SMC Takumar 55mm F1.8」の方が、やや発色が良い感じが見受けられますが、正直その差はほとんど無いと言っていいでしょう。ともに50年以上経過したレンズのため黄変やコーティングの劣化があり、写りそのものは大きな違いを見いだせなくなっています。
こうやって撮影した画像を比較して見てみると、ジャンク品で購入した安価なレンズの実力も侮れない感じです。どっちのレンズを選ぶかはレンズの外観の好みで選んでも良いのではないかと思えてきました。
お手頃な価格で購入ができるジャンク品は、実際に撮ってみないとそのレンズの実力を計ることができないですが、どんな風に写るのか予想しながらレンズを探して選んでみるのも楽しみの一つかもしれません。
Super Takumar 55mm F1.8でスナップ撮影
実際にSuper Takumar 55mm F1.8で都内スナップ撮影をしてみました。写りそのものは、非常にニュートラルでオールドレンズらしい落ち着いた描写です。あいにくの曇り空の日の撮影でしたので、逆光などのシチュエーションがなくフレアーやゴーストを発生させた撮影ができませんでしたが、下の写真でも分かるように輝度差の激しい箇所(上部の窓の部分)には、色収差(パープルフリンジ)が盛大に発生しています。
中心部から左の玉ボケや下のほうにある玉ボケをよく見てみると、色収差が発生しています。このあたりはオールドレンズらしいものとは言え、少し好き嫌いがはっきりしそうな症状です。
SMC Takumar 55mm F1.8でスナップ撮影
ここからは、ジャンク品で購入したカビありレンズ「SMC Takumar 55mm F1.8」でスナップ撮影したものになります。レンズ周辺部にカビによる曇りがあるレンズですが、絞り開放で撮影しているので描写への影響はほとんど分からない状態で撮影ができています。マルチコーティングの劣化が程よいニュートラル感を醸し出し、オールドレンズらしい味わいが感じられます。
下の写真の東京駅の天井ドームは、「Super Takumar 55mm F1.8」と同じ条件で撮影したものです。上部窓ガラスの部分に発生している収差(パープルフリンジ)が「Super Takumar 55mm F1.8」同様に発生しており、「SMC Takumar 55mm F1.8」の描写は「Super Takumar 55mm F1.8」と瓜二つです。
水族館の中の暗い水槽でクラゲとイルミネーションの玉ボケを撮影してみましたが、大きなボケを演出できる明るい単焦点レンズは、やはり重宝します。ジャンク品で2,200円で購入したレンズでここまで撮れれば大満足です。
今回の場合カビの影響は見られませんでしたが、レンズの後ろ玉にカビやホコリ、傷などがあった場合にはボケの中にその影響がでてしまう場合もあるので、被写体によっては注意が必要になります。
まとめ
実際に格安ジャンク品の難ありレンズを購入して撮影してみましたが、状態によっては遜色なくオールドレンズを楽しむ事もできるものもあったりします。レンズ一本一本今まで過ごした環境が違うので、それぞれが違う個性をもっているものと考えていいかもしれません。オールドレンズを楽しむ選択肢の一つとして、ジャンク品のレンズを掘り出して、自分なりに撮影を工夫してみるのも楽しい撮影方法ではないでしょうか。
■写真家:坂井田富三
写真小売業界で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ・ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・EIZO認定ColorEdgeアンバサダー
・ソニーαアカデミー講師