SAMYANG 135mm F2.0 ED UMC レビュー|高い光学性能をシンプル・低価格で実現
シンプルで低価格な135mmF2.0の中望遠レンズ
■絞り優先AE(F2.0、1/1,600秒)/ISO 100/露出補正:+1.0EV
■WB:オート/ピクチャースタイル:オート
SAMYANG 135mm F2.0 ED UMCは、開放F値2.0の明るい135mmの中望遠レンズになっています。標準画角の単焦点レンズに比べても、各社が光学性能の高いレンズを投入している135mmの中でも、頭ひとつ突き抜けてリーズナブルな点も魅力的な1本です。
サムヤンではキヤノン EF、EF-M、ニコンF、ソニー A、E、富士フイルム X、ペンタックス K、マイクロフォーサーズの一眼レフおよびミラーレス一眼のマウント用にそれぞれレンズを用意しています。さまざまなマウントに対応しているのもSAMYANG 135mm F2.0 ED UMCの魅力といえるでしょう。
多くのマウントに対応するモデルがそれぞれ用意されるSAMYANG 135mm F2.0 ED UMCですが、マウント部分にレンズ接点などをもたないフルマニュアルレンズとなっています。レンズ構成は7群11枚で非球面レンズは使っておらず、特殊レンズは低分散レンズ(ED)が1枚だけという素直な作りです。
また、手ぶれ補正機構やAF機構もレンズ内にもたないため、光学系だけでなくレンズ機構的にもとてもシンプルなレンズということができます。
■絞り優先AE(F2.0、1/3,200秒)/ISO 50/露出補正:+1.0EV
■WB:太陽光/ピクチャースタイル:オート
レンズコーティングには独自技術のウルトラコーティングを採用しており、フレアやゴーストを軽減し、優れたコントラスを再現しています。レンズサイズについては、マウントごとに多少差があるものの最大径は約Φ82mmで、長さは約119.6~148.4mm、質量は約815~880g、フィルター径は77mmに対応しているので、大柄な単焦点レンズです。
また、135mmF2.0の大口径中望遠では、ぼけの形や質が気になるところですが、ぼけの形に大きな影響を与える絞り羽根は9枚となっています。真円に近い形のぼけが得られるように配慮して設計されています。
卓越した光学性能の高い解像力
■SAMYANG 135mm F2.0 ED UMC/Canon EOS 6D Mark II/135mm
■絞り優先AE(F4.0、1/320秒)/ISO 100/露出補正:+1.3EV
■WB:オート/ピクチャースタイル:オート
さまざまなマウントで比較的手軽な価格で、135mmという中望遠の明るい大口径の描写が楽しめるSAMYANG 135mm F2.0 ED UMC。このレンズの光学的な性能について、電子書籍ぼろフォト解決シリーズの「SAMYANG 135mm F2.0 ED UMC 機種別レンズラボ」でCanon EFマウントモデルを使って、解像力、ぼけディスク、周辺光量落ち、最短撮影距離と最大撮影倍率の実写チャートを掲載し、詳細に検証しました。これを元にSAMYANG 135mm F2.0 ED UMCの光学性能を解説していきます。
EOS 6D Mark II、有効画素数約2,620万画素との組み合わせで解像力チャートを撮影した結果は、驚くべきものでした。開放F値が明るいので開放付近では中央部分は解像しても、周辺部分は多少あまいだろうと予測していたのですが、絞り開放から中央部分はもちろん、周辺部分までほぼパーフェクトに解像したのです。
有効画素数からの基準チャートは当然、それよりもひとつ小さなチャートまでほぼ解像したのには驚きを隠せませんでした。しかも、絞っても全体の高い解像力は、ほとんど変化せず、本レンズの解像力のピークだと思われるF5.6〜F8.0で多少コントラストが上がる程度で、どの絞りを選択しても解像力に問題が感じることはないといえる卓越した結果です。
また、解像力チャートでは、画面の歪曲や色収差などの発生も見受けられるのですが、これらもほぼ発生せず、惚れ惚れとするような結果になっています。ただし、絞り過ぎによる解像力低下、小絞りぼけなどはF16まで絞るとどうしても発生するので、必要のないときは絞り過ぎないように注意することをおすすめします。
■絞り優先AE(F5.6、1/320秒)/ISO 100/露出補正:+1.3EV
■WB:オート/ピクチャースタイル:オート
SAMYANG 135mm F2.0 ED UMCの最短撮影距離は約80cmで最大撮影倍率はマウントごとに異なるため非公開となっています。ただし、キヤノン EFマウント用のレンズで実際に撮影した結果からいうと約0.2倍程度と推察され、135mmの単焦点レンズのなかでは平凡な数値ですが、ポートレートの部分アップにも対応できるスペックといえます。
また、この最短撮影距離が80cmということが驚異的に浅い被写界深度を生み出すことになるので、覚えておきたい数値になっています。
描写も形も美しい自然なぼけ味
■絞り優先AE(F2.0、1/1,250秒)/ISO 100/露出補正:+0.3EV
■WB:太陽光/ピクチャースタイル:オート
135mmや85mmなどの中望遠レンズの性能のなかでも気になるのがぼけの描写と形です。SAMYANG 135mm F2.0 ED UMCのぼけディスクチャートの結果を読み解いていくと、その素晴らしい性能がみえてきます。
まずは9枚羽根を採用した絞りの影響を受ける形からみていきたいと思います。円形絞りを採用しているため、開放からF2.8くらいまでは中央部のぼけが、ほぼ真円に近い形を保ちます。また、F2.0、F2.5では周辺部のぼけの形は口径食などの影響で中央部に比べて変形がみられますが、F2.8まで絞ると中央部と周辺部のぼけの形がほぼ揃うことも覚えておきましょう。画面全体に玉ぼけが発生するイルミネーションなどの撮影で玉ぼけの形をそろえたいときなどに便利です。
次に気になるぼけ描写ですが、最上級レベルのぼけが楽しめるといえる結果でした。特殊レンズは低分散レンズ(ED)1枚のみのため、非球面レンズの影響といわれるぼけのディスクチャートのなかに同心円状のシワが発生する玉ねぎぼけの影響は皆無、ディスクのフチに発生する色収差による色付きも観察されず、ディスクのなかについてもザワつきなどを感じないほぼフラットな描写となっています。
実写作例もまったくザワつきを感じることなく、溶けていくような自然で素直なぼけが、これらの結果を裏付けてくれています。ぼけディスクチャートの結果をもちろん、実写でも最上級レベルのぼけが楽しめるといえます。
■絞り優先AE(F8.0、1/50秒)/ISO 100
■WB:色温度(4,500K)/ピクチャースタイル:オート
周辺光量落ちについては、SAMYANG 135mm F2.0 ED UMCはフルマニュアルレンズのため、カメラ本体とさまざまな情報をやりとりして周辺光量落ちや歪曲、色収差などをデジタル的に補正する機能の恩恵を得ることができません。そのためか、F2.0の開放では明確に、F2.8くらいまではどうしてもと周辺光量落ちが観察され、絞ると影響は小さくなり、F5.6あたりでほぼ気にならないレベルとなります。
F5.6以降に絞っても、それ以降でもゼロにはならないので、どうしても気になるシーンではRAWも撮影しておいて、RAW現像時に補正となりますが、F5.6以降の周辺光量落ちは気にするレベルではないと思います。
約2mmの被写界深度にピントを合わせる
■絞り優先AE(F2.0、1/640秒)/ISO 100
■WB:太陽光/ピクチャースタイル:オート
画面周辺まで高い解像力、形も描写も美しいぼけ、周辺光量落ちを除くと光学性能的な弱点の見当たらないSAMYANG 135mm F2.0 ED UMC、しかも実勢価格は135mmの大口径レンズのなかでも抜きん出て安いので、ある意味パーフェクトなレンズといえます。
しかし、SAMYANG 135mm F2.0 ED UMCだけでなく、135mmの大口径レンズに共通した悩みが極端に浅い被写界深度でのピント合わせです。135mm、F2.0、撮影距離80cmの際の被写界深度は約2mmになります。この浅い被写界深度のなかにピントを合わせる必要があるわけです。レンズ光学性能が高いので、光学ファインダーが見づらいわけではありません。
しかし、今回はEOS 6D Mark IIで撮影したのですが、開放での厳密なピントは光学ファインダーのみでは不安なことも多いのが素直なところです。可能なシーンではライブビューでのピント位置拡大で厳密なピント合わせを行うことをおすすめします。
また、ミラーレス一眼用ではピント位置拡大が併用できるので、より安心です。基本的な光学性能が高いので、一眼レフ用をマウントアダプターで変換してミラーレス一眼で使うといった方法もおすすめといえます。ピント合わせがグッと楽になるので、一眼レフで使うよりも楽に高い光学性能を引き出すことができるでしょう。
非常に高い光学性能をもちながら低価格、135mmのエントリーとしてもおすすめできる1本です。現在は一眼レフで使用するというユーザーにも将来的にはミラーレス一眼に乗り換えても、マウントアダプターを使って愛用してもらいたいマニュアルフォーカスの傑作135mmになっています。明るい中望遠がほしいと思ったら、85mmだけでなくSAMYANG 135mm F2.0 ED UMCもぜひ検討の対象に入れることをおすすめします。