サムヤンレンズ第3世代「Prima」になった SAMYANG AF 35mm F1.4 P FE
はじめに
今回紹介するレンズはサムヤン「AF 35mm F1.4 P FE」。サムヤンには、すでに2022年6月に発売されている「AF 35mm F1.4 FE II」という焦点距離・F値が同じモデルが存在していますが、約30%の軽量化に成功し第3世代のモデルとして今回新しく登場しました。
サムヤンのレンズはリーズナブルな価格で高性能なラインナップを揃えていて、特に単焦点レンズには魅力ある商品が揃っています。今回は新しいモデルがどのように進化し、どのような描写をするのかをご紹介します。
基本スペックと魅力
早くも第3世代になった「AF 35mm F1.4 P FE」は、新しくレンズ名に「P」の文字が表記されたモデルになっています。この「P」がなにを意味しているのかというと、ラテン語で「最初」と「重要」を意味する「Prima」からインスピレーションを得たものだそうです。その「Prima」シリーズの第1段となったのが「AF 35mm F1.4 P FE」です。高性能と実用性の両立と、小型軽量とハイエンドな描写を目指したモデルになっています。
「AF 35mm F1.4 P FE」のセールスポイントは、なんといってもコストパフォーマンスの高さではないでしょうか。焦点距離35mmF1.4の純正レンズと非常に似通ったスペックであるのに、レンズの市場販売価格はソニー「FE 35mm F1.4 GM」のおよそ半分の価格で購入できるお財布にも優しい高スペックレンズです。
「AF 35mm F1.4 P FE」のスペックがII型の「AF 35mm F1.4 FE II」、そしてソニー純正の「FE 35mm F1.4 GM」とどう違うのか気になったので一覧にしてみました。3本共スペック上では非常に似通ったレンズです。
SAMYANG AF 35mm F1.4 P FE | SAMYANG AF 35mm F1.4 FE II | SONY FE 35mm F1.4 GM | |
焦点距離 | 35mm | 35mm | 35mm |
レンズ構成 | 10群12枚 | 9群11枚 | 10群14枚 |
開放絞り | 1.4 | 1.4 | 1.4 |
最小絞り | 16 | 16 | 16 |
フィルター径 | 67mm | 67mm | 67mm |
絞り羽根枚数 | 9枚 | 9枚 | 11枚 |
最近接距離 | 0.30m | 0.29m | 0.27m(AF時) 0.25m(MF時) |
最大撮影倍率 | 0.17倍 | 0.18倍 | 0.23倍(AF時) 0.26倍(MF時) |
手ブレ補正 | 無 | 無 | 無 |
全長×最大径 | 75×99.2mm | 75×115mm | 76×96㎜ |
重量 | 約470g | 約659g | 約524g |
発売 | 2025年1月 | 2022年6月 | 2021年3月 |
肝心な写りの方ですが、焦点距離35mmF1.4の開放で撮影した時の、大きなボケからの奥行き感のある深みのある描写は非常に印象的に感じます。少しクラシカルな描写をする感じを受けますが、日常のスナップ撮影などをニュートラルに表現することができ、非常に扱いやすいレンズであると感じました。
ボケに関して言えば、バブルボケの傾向が出ており背景によってはかなりうるさい表現になってしまう事があります。下の写真はローアングルから逆光の状態で落ち葉を絞り開放で撮影したものになりますが、後方の落ち葉の輝度の高い部分にバブルボケの症状が大きく出てかなり雑然としています。
こういったボケを嫌う方も多いですが、個人的にはクセのあるボケが発生するのはそのレンズの特徴でもあり魅力の一つと考えているので、撮影シチュエーションによっては積極的にこのボケを活用していくものありだと思います。例えば下の写真のようなイルミネーションの撮影などでは、バブルボケは非常に印象的な表現をする方法の一つになります。
オートフォーカス性能に関しては高速で静かなリニアSTMモーターを使用しており、オートフォーカス速度・精度ともに不満を感じることはありません。
II型からの大きな変更点として、カスタムスイッチ(M1・M2)やカスタムホールドボタンが無くなっています。普段からレンズのカスタムホールドボタンに機能を割り当てて使う事が多いユーザーにはマイナスポイントになってしまいます。またII型では花形形状のフードでしたが、「AF 35mm F1.4 P FE」は一般的な形状のフードに変更になっています。
SAMYANG AF 35mm F1.4 P FE でストリートスナップ撮影
焦点距離35mmはスナップ撮影を楽しむには非常に扱いやすいレンズです。気になったものをメインに開放F1.4で撮影すれば、メインの被写体をより印象的に表現できます。観光スポットなどで撮影する際に写りこむ人の処理に悩むことが多いですが、明るいレンズは背景を大きくボカすことができるため、人の写り込みもボカすことでストリートスナップ撮影もしやすくなります。
最短撮影距離は約0.3mで、このクラスのレンズでは標準的な最短撮影距離を確保。実用的には十分な撮影距離で小さな被写体を撮影するのも容易です。
SAMYANG AF 35mm F1.4 P FE でお寺散策撮影
お寺を散策するのに「AF 35mm F1.4 P FE」を持って行ってみましたが、焦点距離35mmは建物全体を撮影したりするのには、少々画角に苦労します。しかし建物をよく観察して撮影ポイントを探すのは、単焦点ならではの楽しみ方の一つでもあります。「AF 35mm F1.4 P FE」は、しっかりと絞って全体をシャープに写したり、絞りを大きく開けて奥行き感を演出することにも柔軟に対応できるレンズです。
参道にいた猫をみつけて撮影してみましたが、被写体認識AF「動物」・瞳AFも精度高く動作し、シャッターチャンスを逃さないレンズです。
SAMYANG AF 35mm F1.4 P FE で夜のスナップ撮影
明るい単焦点レンズは、夕暮れから夜のスナップ撮影には最適なレンズです。「AF 35mm F1.4 P FE」には光学式の手ブレ補正はありませんが、ボディに手ブレ補正機能があれば暗いシーンでも気楽にスナップ撮影することが可能です。
またボケの特徴を活かした撮り方をすれば、目に見えている世界とは違った表現での撮影が可能になり、このレンズでの撮影の楽しさが増します。
焦点距離35mmの広角レンズですが、開放F値F1.4を活かしイルミネーションの電飾を大きくボカすことも可能な「AF 35mm F1.4 P FE」は、夜の撮影を楽しくしてくれるアイテムです。
まとめ
サムヤン「AF 35mm F1.4 P FE」は、開放F値F1.4と明るいレンズながら重量は約470gという軽量化を達成しているので、長時間のスナップ撮影でも身体への負担も少なくなります。明るいF値を活かして夜のスナップ撮影も気軽にできるレンズで、なによりもコストパフォーマンスの高さが魅力です。
スナップ撮影の他にも、室内でのペット撮影においても使いやすい明るい単焦点レンズなので、ワンちゃん・猫ちゃんを飼っているユーザーにもおすすめのレンズです。
■写真家:坂井田富三
写真小売業界で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ・ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・EIZO認定ColorEdgeアンバサダー
・ソニーαアカデミー講師