SAMYANG AF 18mm F2.8 FEレビュー | わずか145gに潜む解像力
レンズ構成の約9割が特殊レンズという贅沢仕様
SAMYANG AF 18mm F2.8 FEは、手に取った瞬間から、その軽さとコンパクトなことに驚かされる1本に仕上がっています。サイズは最大径63.5mm×長さ60.5mm、質量は約145gでありながら、35mm判フルサイズに対応するソニー Eマウント用のAFレンズです。
ソニー Eマウント向けのAFレンズのなかに外観デザインや大きさなどに共通点その軽さとコンパクトなことに、SAMYANG AF24mm F2.8 FE、AF35mm F2.8 FE、AF45mm F1.8 FEなどを発売しており、明確なシリーズ名ではありませんが、「サムヤンのソニー用のちっちゃなAFシリーズ」などと呼ばれ、小型軽量でしかもコストパフォーマンスの高いお手軽価格の、よく写るレンズシリーズとして好評を博しています。
そんな同シリーズの最新作が、最広角となるSAMYANG AF 18mm F2.8 FEです。レンズ構成は8群9枚で、そのうち8枚が特殊レンズ、3枚の非球面、同じく3枚の特殊低分散ガラス、2枚の高屈折ガラスレンズが使用された非常に贅沢なものになっています。
また、Linear Stepperモーターを採用し高速で安定したオートフォーカスを実現しているそうです。同シリーズのほかのレンズ同様に高い性能を実現する為、様々な技術がこの小型軽量のボディーに詰め込まれていますが、手ごろな価格になっています。
F5.6前後では画面全体をしっかりと解像
今回も「解像力」「ぼけディスク」「周辺光量落ち」「最短撮影距離と最大撮影倍率」の実写チャートを掲載して制作した『SAMYANG AF18mm F2.8 FE レンズラボ』(※Amazon Kindle電子書籍にて近日発売予定)の各チャートの結果から、詳細にSAMYANG AF18mm F2.8 FEの性能を解説していきます。
SAMYANG AF18mm F2.8 FEは、8群9枚というレンズ構成で非球面レンズを3枚も入れてきている時点で、きっと解像力重視なのだろうと推測されます。18mmという焦点距離的にも、ボケの美しさより、解像力を重視して設計されたことが伺えます。
具体的に解像力をみていくと、中央部分については、絞り開放のF2.8から、素晴らしくシャープです。絞ってもほとんど変化のないレベルのシャープさで絞り過ぎによる小絞りぼけが発生するF16くらいまでは、どの絞りでも素晴らしいシャープネスが享受できます。
一方、周辺部分については、さすがに絞り開放のF2.8から抜群にシャープとはいえませんが、しっかりと解像しており、絞るほどにコントラストがアップ、F5.6前後で解像力のピークを迎えます。F16程度から絞り過ぎによる解像力低下が起きるのは中央部分と同じです。
また、解像力チャートからは、歪曲、色収差、周辺光量落ちの影響も観察できるのですが、歪曲は陣がさ型で発生、色収差はほぼ観察されず、周辺光量落ちはやや多めに発生するといった印象でした。
小型でコンパクトな35mm判フルサイズ対応の広角レンズですが、しっかりと周辺部分まで解像するレンズです。中央部の被写体のみを重視するなら開放付近、全体の解像力を重視するならF5.6前後といった使い方がおすすめです。
周辺光量落ちはデジタルの後処理で対処
前玉のレンズ直径が実測で約30mmと小さく、35mm判フルサイズ対応の開放F2.8で広角18mmになりますので、周辺光量落ちはある程度発生します。
開放のF2.8からF4.0あたりまではかなりしっかりと、F4.0でほぼ落ち着くのですが四隅が暗くなる傾向はF4.0以降に絞っても残る印象です。掲載した作例では、私はF4.0以降の周辺光量落ちは、さほど気になりません。
どうしても気になる条件での撮影では、RAWも撮影しておいて、RAW現像時のレンズ補正などを行うとよいでしょう。
最大撮影倍率は0.1倍を切る0.09倍
最短撮影距離と最大撮影倍率は25cmで0.09倍となっています。同じような焦点距離の単焦点レンズと比較しても、あまり接写に強いレンズというわけではないようです。
ある意味、この部分は高い解像感と小型軽量を優先させる為に割り切って制作されたのだと思います。
設計時点から重視されてない? ぼけ味
最後にSAMYANG AF 18mm F2.8 FEのぼけについて解説します。18mmで開放F2.8のレンズにどこまでぼけ味を求める方がいるかは不明ですが、多くはないでしょう。
贅沢に3枚も使用された非球面レンズの影響は明確に観察され、玉ねぎぼけの傾向が強くなります。
また、絞り羽根枚数は7枚と少なめで、開放のF2.8以外では絞り羽根の形が確認できる傾向になっています。
さいごに
きっと「AFで軽快に撮影できて安くて軽くて小さい。でもちゃんと写るレンズ」といったコンセプトで設計されてきたサムヤンの小さくて軽くて安いソニー Eマウント用のシリーズですが、本レンズで4本目となります。
売れているから、新しいレンズが続々と発売されるのでしょうが、売れるほどに多くの方に理解しやすいレンズに、すべてにおいて中庸な傾向が強くなるように感じます。
SAMYANG AF 18mm F2.8 FEも
「AFで軽快に撮影できて安くて軽くて小さい。でもちゃんと写るレンズ」
だけでなく、やっぱりぼけもきれいなほうが、最短撮影距離も短くして、その変わり少し解像力が落ちたり、ちょっと大きく重くなるのは仕方なしとして、コンセプトのはっきりしないレンズになってしまうのではと心配したのですが、完全に無用の心配でした。
0.1倍を切る最大撮影倍率、決してほめられるレベルではないぼけ、しかし、絞り開放から中心部分は驚くほどのシャープで、F5.6まで絞れば画面全体で高いシャープネスを楽しめる解像力、それでいながら約145gの軽量でコンパクトな設計、しかもLinear Stepperモーターを採用したAFは予想以上に小気味よく動作してくれました。
なんでもを求めるうちにすべて中庸になってしまうレンズも多い中、SAMYANG AF 18mm F2.8 FEは、軽くて小さくて普段から気持ちよく使えて、ちゃんと写り、しかも安価でコストパフォーマンスも高いというユーザーの要求にしっかり応えたレンズに仕上がっています。
広角の単焦点レンズというと、どうしても大仰になるものが多いなか、SAMYANG AF 18mm F2.8 FEは非常に現実的で使いやすい1本に仕上がっています。いつも使う広角単焦点としてレンズラインアップに入れると幸せになれるレンズといえるでしょう。