シグマ 20mm F1.4 DG DN Art レビュー|描写を徹底追及した超広角レンズ
はじめに
シグマから久々となる「Art」レンズが発売されました。「SIGMA 20mm F1.4 DG DN | Art」、「SIGMA 24mm F1.4 DG DN | Art」の2本です。どちらも開放値がF1.4と明るく、「Art」ラインの名を冠するように素晴らしい描写の広角レンズとなります。いわゆるハイスピードレンズというカテゴリーになるので星景写真で大活躍しそうです。もちろんボケを活かした絵作りも堪能できることでしょう。
今回は「SIGMA 20mm F1.4 DG DN | Art」を「SIGMA fp」に装着して、ブラブラと街中をスナップ撮影してインプレッションしました。
SIGMA 20mm F1.4 DG DN | Artの特徴
現在販売されている20mmの中で一番明るい開放F値1.4を誇る「SIGMA 20mm F1.4 DG DN | Art」。緻密かつ正確な描写が要求される星空の撮影で高い点像再現性を実現しています。
「星をきちんと円形に点として写しとる」、そのために15群17枚というレンズ構成にSLDガラス2枚、非球面レンズ3枚を採用しました。これにより各種収差を良好に補正し、絞り開放から画面中央部はもとより四隅までクリアでシャープな安定した像を提供するのに成功しています。さらに、シグマが誇る同社最大級大型両面非球面レンズによって、サジタルコマフレアと像面湾曲を徹底的に抑制しており、星景写真マニア待望のレンズと言えるでしょう。
しかも、新機能の「MFLスイッチ」は「LOCK」位置にするとフォーカスリングを回してもピントが移動しなくなるのです。暗闇でついうっかりフォーカスリングに触れてしまい、せっかく合わせたピントがずれてしまう……なんという悲劇ともさよならです。
また「レンズヒーターリテーナー」を採用しました。これは結露防止のためのレンズヒーターを確実にホールドするためのものです。星景撮影だけでなく夜間のタイムラプス撮影でも頼りになる新しいファンクションとなっています。
もちろん一般的な撮影でも大活躍するワイドレンズと言えます。20mmというワイドな画角とF1.4という開放値は微弱な光の環境下はもちろん、絞りを開けてボケを利用した絵作りにと、撮影者次第で多彩なイメージを得ることが可能になっています。
「SIGMA 20mm F1.4 DG DN | Art」はシグマの「Art」ラインならではの圧倒的なビルドクオリティも魅力の一つです。節度感の高い絞りリングや防塵防滴に配慮した構造など、使って安心撮って楽しいレンズに仕上がっています。
ブラブラ実写スナップ!
「SIGMA 20mm F1.4 DG DN | Art」を世界最小最軽量のフルサイズミラーレス一眼カメラ「SIGMA fp」に装着してブラブラ撮影を楽しみました。
工事現場の表示を撮りました。白い壁面に落ちた影が印象的です。光のヌケ感が実にいい感じですね。チョイ絞りで「SIGMA fp」のシャッターを切ったので、シャープかつコントラスト豊かなカットになりました。
たまに訪れる小田原市早川にあるワインバー「enoteca E.G.」。料理もお酒も美味しいので大好きなお店なのですが、そのカウンターを撮らせてもらいました。F1.4でのボケ感がなんともイイ感じです。立体感を増長してくれて、ステキな店内をより雰囲気あるカットにしてくれました。
近くの漁港にやってきました。そろそろ日が暮れようかという夏の終わりの週末、ちょっともの悲しい感じですね。絞り開放だとやさしく周辺光量が落ちてくれました。うまい具合にはまって気に入った仕上がりに。チョイ絞りで撮ればフラットな描写になってくれますよ。
星景写真撮れるような場所にはあいにく行けませんでしたが、都内で薄暮の街を撮り歩きました。明るいレンズはやはり絞り開放域で使いたくなるもの。隅田川に架かる橋のリペットにF1.4で肉薄しました。ピント面はキリリとシャープですが、それ以外の部分がキレイにボケて立体感満点ですね。
竹林にやってきました。昼間でもこのような薄暗いシーンで「SIGMA 20mm F1.4 DG DN | Art」は活躍します。中央の竹にフォーカスし背景をぼかしてみましたが、品格を感じられるスムーズな「Bokeh」が美しいですね。絞り開放でも安心して使えるレンズに仕上がっています。
「SIGMA 20mm F1.4 DG DN | Art」は最短撮影距離が23cmとなっています。小さな栗の実に迫りましたが大きく写しとることができました。背景のボケ味も独特で何ともいえないですね。美しいです。
訪れた古民家の庭では梅を干していました。チョイ絞りで撮ると実にカリッとしたシャープな絵になりました。梅の実をしっかりと解像しています。見ているとつばが出てきそうなくらいです。風景撮影などでキリリとした写真が欲しい場合にも活躍するレンズですね。
昼間でも暗い古民家の内部を撮りました。昔の人はこんな薄暗い室内で生活していたのですね。その雰囲気を「SIGMA 20mm F1.4 DG DN | Art」はしっかりと再現してくれました。湯飲みにピントを合わせましたが、後方の広間が美しくボケています。20mmという画角は屋外だけでなく室内でも大いに使えるレンズと言えます。
「SIGMA 20mm F1.4 DG DN | Art」はボケがシルキーで美しいですね。王将のコマにフォーカスしましたが、他のコマや置かれたメンコの写りが本当にキレイな写りです。ため息が出るようなトーンですね。
ガラスと金属そしてコンクリートで構成された美術館を「SIGMA 20mm F1.4 DG DN | Art」はリアルに捉えてくれました。中央の柱を歪みなく真っ直ぐと、ハイライト部からシャドウ部まで繫がる描写がレンズの素性の良さを表しているといえるでしょう。
SIGMA 20mm F1.4 DG DN | Artの主要諸元
レンズ構成枚数:15群17枚(SLD2枚、非球面レンズ3枚)
画角:94.5°
絞り羽根枚数:11枚(円形絞り)
最小絞り:F16
最短撮影距離:23cm
最大撮影倍率:1:6.1
フィルターサイズ:φ82mm
最大径 × 長さ:L マウント φ87.8mm × 111.2mm
ソニー E マウント φ87.8mm × 113.2mm
※長さはレンズ先端からマウント面までの距離です。
質量:L マウント 635g
ソニー E マウント 630g
エディションナンバー:A022
付属品:ケース
ロック付花形フード(LH878-04)
フロントキャップ(LCF-82 III)
リアキャップ(LCR II)
ガイドプレート (GP-21)
まとめ
「SIGMA 20mm F1.4 DG DN | Art」はF1.4と明るく、各収差を徹底的に封じ込め、風景から室内まで広く活躍できるレンズに仕上がっています。星景撮影への配慮はもちろん、節度感ある絞りリングやロック付きレンズフードなど、細かい部分にシグマのフォトグラファーへの思いが詰まっていますね。明るくて広い画角のレンズを探しているLマウント、Eマウントユーザーは試す価値のある「Art」レンズと言えます。
■写真家:三井公一
新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、Web、ストックフォト、ムービー、執筆、セミナーなどで活躍中。有限会社サスラウ 代表。