コンパクトな「SIGMA 20mm F2 DG DN | Contemporary」と初夏の沖縄トリップ
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はじめに
シグマのIシリーズにラインナップされた、超広角単焦点レンズ「SIGMA 20mm F2 DG DN | Contemporary」は、小型・軽量なボディに高い描写性能と光学性能がギュッと凝縮された、実力派のレンズに仕上がっています。今回は、本レンズとSIGMA fp Lを持って、初夏の沖縄を撮り歩いてみました。
キリッとした描写が素晴らしいレンズ
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■撮影環境:F2 1/6000秒 ISO100 AWB
■カラーモード:風景
太陽のパワーが初夏とは思えないほど強い沖縄なら、テーブルの上の小物もインパクトのあるカットに仕上げてくれます。シグマのIシリーズは、高コントラスト時のキリッとした描写が得も言われず素晴らしいレンズが多く、仕上げる作品もふんわりムードより、くっきりムードのほうが似合うと感じていますが、本レンズもその魅力を受け継いでいます。
陶器の滑らかな、でも手に取ると少しザラッとするような質感を感じさせる丁寧な描写と、日陰のアンダー部がストンと暗くならず、黒色の一歩手前の濃いグレーで粘っている描写は「だからこのレンズで沖縄を撮りたかったのよ!」と、あらためて思わせてくれました。
隅々までシャープな描写
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■撮影環境:F2 1/200秒 ISO100 AWB
■カラーモード:ビビッド
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■撮影環境:F4 1/320秒 ISO100 AWB
■カラーモード:ビビッド
レンズ構成は高精度グラスモールド非球面レンズ3枚、SLDガラス1枚、FLDガラス1枚を採用しています。超広角レンズでは、画面隅の切れ味の悪さが悩みになることもありますが、本レンズは、一瞬、超広角レンズで撮影していることを忘れてしまうほど、隅々までシャープな画を作り出してくれます。
沖縄中部の北谷町にある美浜アメリカンビレッジは、どこを切り取っても画になる鮮やかな街で、買い物をしながらスナップしたり、海岸沿いのカフェでハンバーガーにかぶりついたり、日本らしくないムードに浸ることができる面白いスポットです。撮影時は、ポケモンとコラボしたイベントを行っていて、あちこちに隠し描かれていました。
コンパクトなボディは冒険シーンにも最適
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■撮影環境:F2 1/125秒 ISO640 AWB
■カラーモード:ビビッド
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■撮影環境:F2 1/125秒 ISO640 AWB
■カラーモード:ビビッド
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■撮影環境:F2 1/80秒 ISO640 AWB
■カラーモード:ビビッド
今回使用したLマウントの最大径は70mm、長さは72.4mm、重さは370gと、超広角レンズとは思えないほど小さくて軽いのが特徴です。足場の悪い鍾乳洞での撮影も、楽しく行えました。
うるま市にある鍾乳洞「CAVE OKINAWA」は、玉泉洞などと比べると規模は小さいですが、その分、様々な形状の鍾乳石を間近でじっくりと観察できます。ライトアップされた鍾乳石は感動的なほど綺麗で、ベンチに座ってゆっくりと眺めるのもお勧め。とても珍しく、縁起が良いと言われている紅白の鍾乳石が見られる、貴重なスポットでもあります。
フレアとゴーストを軽減してくれるコーティング採用
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■撮影環境:F5.6 1/400秒 ISO100 AWB
■カラーモード:ビビッド
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■撮影環境:F2 1/2000秒 ISO100 AWB
■カラーモード:ポートレート
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■撮影環境:F2 1/60秒 ISO100 AWB
■カラーモード:風景
南部から船で行ける久高島は、神聖な御嶽や、久高島特有の文化史跡が数多く残されている、神の島と言われる島です。久高島に上陸したときは降っていた雨も、このイシキ浜に着く頃は止み、美しい海と砂浜をゆっくりと目にすることができました。
島の中央部東南側にあるイシキ浜は、その対岸にある理想郷「ニライカナイ」から、五穀の種が入った壺が流れ着いた神聖な場所で、この種子が琉球の農耕の始まりになったと言われています。浜への入り口には御嶽があり、そこから木が生い茂る細い道を抜けると海岸に出られます。
聖地ですので遊泳は禁止。島内の植物や砂、サンゴや岩などは、もちろん持ち出すことはできませんが、その情景をカメラに収めて、思い出を持ち帰ることはできます。
本レンズはスーパーマルチレイヤーコートと、ナノポーラスコーティングを採用しています。写真を見る人の視線を、主役の被写体から削いでしまうような意図しないフレアやゴーストを軽減して、沖縄の強い太陽相手の逆光撮影でも、クリアーで透き通るような画を生み出してくれました。
こっくりと深い色合いに仕上げてくれるアンダー部の粘りの良さ
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■撮影環境:F2 1/125秒 ISO200 AWB
■カラーモード:風景
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■撮影環境:F2 1/125秒 ISO200 AWB
■カラーモード:風景
那覇市にある「泊いゆまち市場」は、観光客向けの派手な市場ではなく、沖縄の台所として地元の方にも広く親しまれている市場です。筆者は沖縄に行った際は、必ずと言っていいほどここか、その奥にある「泊魚市場仲買人直売センター」でマグロの刺身を買います。赤身も、中トロも、大トロも、この値段で本当にいいのか?と、驚くほどのコスパで購入できるのです。
市場の中はほんのり薄暗いのですが、アンダー部の粘りの良い描写性能は、狙ったとおりのムードに仕上げてくれました。全体の色味を深みのあるこっくりとした色合いにするために、カラーモードは風景で撮影しています。
ひんやりと冷たい高級感あふれる金属の感触
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■撮影環境:F2 1/125秒 ISO400 AWB
■カラーモード:ビビッド
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■撮影環境:F2 1/400秒 ISO100 AWB
■カラーモード:ビビッド
車を降りて少し歩けば、趣深い造形の木や木の根、南国ムードたっぷりの月桃(げっとう)の花に出会えます。
シャッターチャンスを逃さず、さっと撮影するスナップもスナイパーのようで楽しいけれど、不思議な形や見慣れない植物をじっくりと観察して撮影するのも、また味わい深いものです。角度によってムードを変える木の根を見ながら、気が付けば何十枚も撮影していました。
本レンズはIシリーズ特有の金属製の外装が施されており、手に触れる感触はひんやりと冷たく、写真を撮ることに対して、真摯に向き合いたくなるほどの重厚感があります。フォーカスリングのトルクの重みもちょうど良く、ぜひオートフォーカスだけではなく、マニュアルフォーカスで、じっくりと被写体を見つめて撮る手法も体験していただきたいレンズです。
F2の開放F値で大きくて美しいボケも簡単に作り出せる
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■撮影環境:F2 1/400秒 ISO100 AWB
■カラーモード:ビビッド
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■撮影環境:F2 1/200秒 ISO100 AWB
■カラーモード:風景
沖縄南部の南城市玉城にある「垣花樋川」は、今も地域の生活用水や農業用水として使用されており、全国名水百選にも選ばれています。天気の良い日だったので順光で流れ出る水の反射を楽しんだり、逆光の緑の透け感を楽しんだりと、心地よい水音をBGMに撮影できました。
超広角レンズですが開放値はF2なので、広がりを持ちながらも大きな前後ボケを入れ込んだ写真が撮れるのが、大きなボケが好きな筆者の好みにマッチしました。
アンダー部の粘りの良さのお陰で、よりレトロな味わいが出る!
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■撮影環境:F2 1/160秒 ISO100 AWB
■カラーモード:ビビッド
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■撮影環境:F2 1/400秒 ISO100 AWB
■カラーモード:ビビッド
那覇市内は混み合っている国際通りよりも、少し外れたサンライズ通りのほうが、筆者好みの被写体がたくさんあります。また、旧・牧志公設市場の周辺も、懐かしい沖縄の匂いがして好きなスポットです。
屋外では、街自体が白飛びするほど太陽が強くて明るい沖縄ですが、裏道やアーケード街はほの暗く、アンダー部に味わいが出るレトロな色調が似合う被写体が多いので、高コントラストの描写が素晴らしい本レンズは、撮っていて楽しい、帰って大きなPCで見返してもう一度楽しいと、一粒で二度おいしく楽しめました。
街でも、市場でも、大自然のなかでも写欲を刺激してくれるレンズ
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■撮影環境:F2 1/5000秒 ISO100 AWB
■カラーモード:風景
今回は様々な場所で、バラエティーに飛んだ色調の被写体を撮影してみました。東京よりも強い沖縄の太陽は、被写体の色をより強く出してくれます。その色をクリアーに、そして印象的に捉えられるレンズは、写真を撮る欲を刺激してくれました。
■写真家:水咲奈々
東京都出身。大学卒業後、舞台俳優として活動するがモデルとしてカメラの前に立つうちに撮る側に興味が湧き、作品を持ち込んだカメラ雑誌の出版社に入社し編集と写真を学ぶ。現在はフリーの写真家として雑誌やWEB、イベントや写真教室など多方面で活動中。興味を持った被写体に積極的にアプローチするので撮影ジャンルは赤ちゃんから戦闘機までと幅広い。 (社)日本写真家協会(JPS)会員。