シグマ 23mm F1.4 DC DN 富士フイルムXマウント レビュー|寄りも引きもコレ1本!価格以上のハイクオリティーレンズ
はじめに
シグマから2023年4月21日に発売されたAPS-Cミラーレス用の単焦点レンズ「23mm F1.4 DC DN | Contemporary」。富士フイルムXマウント用のみ2023年夏発売予定と発表されていましたが、ついに9月21日に発売されることとなりました。これにより、価格以上のハイクオリティーを実現した「23mm F1.4 DC DN | Contemporary」の描画力を、富士フイルムが誇る色調豊かな「記憶色」に変換して、表現することが可能となりました。
そんな、「23mm F1.4 DC DN | Contemporary」富士フイルムXマウント用を先行で使う機会をいただいたので、気になる描写性能などご紹介していきたいと思います。
軽量・コンパクトな外観
この「23mm F1.4 DC DN | Contemporary」富士フイルムXマウント用は、焦点距離が35mm判換算で35mm相当となり、準広角レンズとして、広角域と標準域それぞれの表現が可能な万能で実用性のあるレンズです。
また、大口径であるにもかかわらず重さは僅か335g(Xマウント用)、長さ79.2mm、フィルター径52mmと小型・軽量を実現しているので持ち出しやすく、一日中撮影してもレンズの重さが気にならないので、とても楽しく撮影することができます。
付属の花形レンズフードを装着しても、とてもスリムな設計となっており、大きさが気になりません。また、シンプルで落ち着いたデザインにより、一層レンズに愛着が湧いてきます。
富士フイルムXシリーズのカメラボディーとレンズカラーが違和感なくマッチしており、レンズの重量バランスも絶妙です。フォーカスリングのラバーも手にしっくりと馴染み、軽快で心地よい撮影が期待できます。
ハイクオリティーな解像力
フィールドでシャッターを切るたび、このコンパクトなレンズからは想像できない画が次々と生み出されていくのを目の当たりにして、心が踊りました。
「23mm F1.4 DC DN | Contemporary」は、準広角といわれる焦点距離を活かした撮影が可能です。寄れば広角域の表現が可能となり、引けば標準域に準じたパンフォーカスな表現も可能となります。風景撮影やスナップ撮影などにも最適なレンズです。
背景を空として認識できる絶妙なボケ感で、広角域の焦点距離を意識してダイナミックに硫黄の結晶を撮影しました。
最短撮影距離の25cmで撮影しましたが、精密なAF精度で結晶の中央部をしっかり捉えてくれました。また、高い光学性能のお陰で、結晶の鋭利で棘々しいディテールを忠実に細部まで描画してくれました。
準広角域の焦点距離を意識し、エゾシカと対峙した世界観を撮影しました。
フィールドで感じた、広大な草原の中に佇むエゾシカの周囲の少し寂れた空気感も、高い描画力で忠実に表現することができました。
木にぶら下がったまま葦を引き抜き根っこを食べるニホンザルを、目で見たままの標準域を意識した距離で、生息環境ごと撮影しました。
単焦点レンズで35mmという焦点距離は、「画角内に情報が入りすぎて、撮りたいモノが定まりにくく構図が難しい」というイメージを持たれがちですが、撮影の基本を学ぶ上でも、単焦点レンズで撮影することはとても重要です。
単焦点レンズは、ハイクオリティーな解像力を得ることができる一方で、撮影者みずから小移動を繰り返し、ズーム機能の代わりとならなければいけません。積極的な小移動で画角内の情報を整理し、「心地よい構図」を探ることができるようになるだけではなく、被写体との距離感の尺度を得たり、背景やボケ味をより考えて撮影する習慣も身につきます。ですので普段ズームレンズを多用している方は、ぜひ一度単焦点レンズを使用してみることをおすすめします。
雨降りのフィールドでアズマヒキガエルを最短撮影距離25cmで撮影しました。濡れた皮膚の質感やテカリ具合がリアルに表現されています。
写りこむ雨筋や広角効果が反映された背景の玉ボケにより、美しい独特な世界観が広がっており、「23mm F1.4 DC DN | Contemporary」のハイクオリティーな解像力が実感できました。
開放F値1.4のアドバンテージ
「23mm F1.4 DC DN | Contemporary」は、開放F値1.4と明るいレンズです。野生動物の活動時間や生息地は基本的に低照度の場合が多いため、明るいレンズを使用することにより、カメラの感度を抑えつつ速いシャッター速度で撮影することが可能となります。
強い日差しを避け、林の中でのんびり過ごすニホンザル。暗い林の中でも、開放F値1.4の優位性を活かして、美しい写真を撮影することができました。
短い焦点距離のレンズで、望遠レンズを意識し逆説的に撮影すると、広い画角の中で大きく被写体を表現できるため、望遠レンズで撮影した写真と比較すると、その印象は大きく違って見えます。
低照度の中、キクガシラコウモリを撮影しましたが、開放F値1.4の明るいレンズのお陰で、撮影の終始を通じピントが合わない等のストレスを感じることなく、シャープに撮影することができました。
まとめ
シグマ「23mm F1.4 DC DN | Contemporary」富士フイルムXマウント用で撮影した作例とともに、高い光学性能や優れた解像力について紹介しましたが、いかがだったでしょうか。小型・軽量はもちろん、シグマが「離れがたい1本」と呼称する「23mm F1.4 DC DN | Contemporary」は、まさしく価格以上のハイクオリティーな表現力を得ることができるレンズであることが、お分かり頂けたかと思います。
また、そんな魅力ある「23mm F1.4 DC DN | Contemporary」が富士フイルムXマウントに対応し、色調豊かな「記憶色」に変換して表現することが可能になったことも大きな魅力です。解像力に優れ、かつ手に取りやすい価格の「23mm F1.4 DC DN | Contemporary」富士フイルムXマウント用とともに、これから始まる秋の撮影に出掛けてみてはいかがでしょうか。
■自然写真家:高橋忠照
1982年北海道札幌市生まれ・山形県育ち。上富良野町在住。陸上自衛隊勤務を経て、2019年自然写真家に転向。自衛隊時代に培ったスナイパー(狙撃手)の技能を生かし、自然の中に同化して野生動物を探し出す独自のスタイルでの撮影を得意とする。作品は小学館、チャイルド本社、フレーベル館等の児童書や雑誌、カレンダーなど掲載多数。
公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員・富士フイルムアカデミーX講師