シグマ 24-70mm F2.8 DG DN | Artで撮る旅の記録
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シグマが誇る最高性能レンズ
今回は、SIGMAが最高性能のレンズとして世に送り出したArtシリーズの中から、世代が変わりミラーレス専用設計としてリニューアルされた24-70mm F2.8 DG DN | Artを持って旅に出ることにした。このズームレンズは焦点距離が標準域なので、使用頻度がとても高く、ミラーレスカメラを買った時に最初に揃えるべきレンズと言える。私が個人的に「これを買っておけば間違いない」と推すレンズでもある。
このレンズの説明を少し。SIGMAがミラーレス専用設計として開発したレンズシリーズはどれも高性能なのだが、その中でも最高性能を誇るのがArtシリーズである。このArtシリーズのズームレンズは、ズーム全域で圧倒的に高い解像度を誇りながらも、コンパクトに仕上がっており、 昨今のコンパクトボディー化したミラーレスカメラと組み合わせても、取り回しやすくバランスも良い。サイズだけではなく、リッチなレンズ構成にもかかわらず軽量に仕上がっているので、今回使用したSIGMAのfp Lと組み合わせても使いやすい。
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このように、ケージに入れたfp Lに合わせても程よいバランスで、見た目も良い。大口径と言っても一昔前の標準ズームレンズと比べてかなり小さい。
今回の旅は長崎県平戸市にある川内峠へと向かうことに。仕事を終えて夜のうちに移動し、車中泊して夜が明けるのを待つことにした。まずは今回撮影した動画を見ていただきたい。全編がこのレンズの作例となっている。カメラボディーはfp L。
繊細かつ緻密な描写力
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■撮影環境:0.8秒 f2.8 ISO4000
街灯もない峠道を走り、駐車場を見つけた。駐車場で寝床を整える。気温は5℃、季節がすっかり冬になっていることを実感した。まだ慣れない寒さに戸惑いながらキャンプ用ランタンを灯した。あたりは真っ暗、完全な闇の中で車内だけがランプに明るく照らされている。すっかり慣れた車中泊だが、こうも暗いといささか心細さを感じる。とにかく温かい寝袋にもぐり込んで仮眠しよう。
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■撮影環境:1/60秒 f2.8 ISO200
明け方、外気はさらに寒く風も強い。せっかくの撮影だが残念なことに、空は厚い雲がかかっている。しかし、それはそれで映画的というか快晴の時とは違う雰囲気があり、個人的には嫌いではない。この物悲しい雰囲気を写真と動画に収めようと思う。
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■撮影環境:1/60秒 f2.8 ISO200
川内峠は、山頂付近の一帯が広大な平野になっていて、この時期は一面ススキに覆われた黄金色の美しい景色を楽しむことができる場所。しかしこの日の太陽は雲に隠れているので、輝くススキの平原は見ることができないが、曇りの柔らかい光の中で風に揺れるススキはとても幻想的。 広角側24mm絞りは開放F2.8で撮影、手前のボケ感は柔らかくて自然、対照的にピントの合った丘の上の木は繊細に描写している。
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■撮影環境:1/60秒 f2.8 ISO200
ふわふわとした綿毛のようなススキの穂が風に揺れて温かそうだが、対照的に寒さは厳しい。ススキの隙間に通る細い道を抜けて、丘の上に向かう。
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■撮影環境:1/60秒 f5.6 ISO200
坂道の途中で振り返ると、かなり上の方まで登ってきたことに気づく。ススキの間から覗く島々が美しい。
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■撮影環境:1/60秒 f5.6 ISO200
登り切った先には円形の広場があった。この場所から360度で平戸の美しい景色を見渡せる。 中央にある岩に乗って少しでも高い目線で景色を見ようと背伸びをした。
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■撮影環境:1/60秒 f5.6 ISO200
最後まで登りきったご褒美だろうか、西の空が少し明るくなってきた、時折差し込む日の光が、冷え切った辺りを温めているかのようだ。
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■撮影環境:1/60秒 f2.8 ISO200
坂をゆっくりと登ってきたご老人と挨拶を交わす。「いい写真は撮れましたか?」と声をかけられ「天気は今ひとつですがそれはそれで素敵ですね」と返す。「それでは、頑張って」と笑顔ですれ違いまた別の道へ。
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■撮影環境:1/400秒 f2.8 ISO200
寒い中で撮影をする際に、シューティンググローブは必須とも言うべきアイテムなのだが、このレンズはスイッチ類が直感的に操作しやすい位置に配置され、クリック感も相まってグローブ越しでも操作がしやすい。こういった細かい配慮が、過酷な状況でもシャッターを切る楽しさを持続させてくれる。不意に思い付いた構図も億劫にならず撮影できる。使い勝手への配慮が撮影機材への信頼にもつながる。
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■撮影環境:1/60秒 f2.8 ISO200
車で簡単にスープを作り、景色を見ながら頂くことに。お湯が沸くまでの時間に70mmの望遠端で、雲間から射し込む光を捉える。繊細なグラデーションを滑らかに写し出す。それとは対照的に対岸の風車をとても緻密に表現している。
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■撮影環境:1/125秒 f8 ISO200
所々に射し込むスポットライトのような陽の光。海面に反射してキラキラと輝きながら揺れる。また晴れた日にこの場所へ訪れようと思う。
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■撮影環境:1/640秒 f5.6 ISO200
さいごに
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SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN | Artを使用してみて感じることは、絶対的な安心感である。どんな状況でも、クオリティーの高い美しい描写で応えてくれる。そのことを踏まえてフレーミングすることは、撮影に集中できることを意味する。自分の思い描く画を割増して返してくれるようなレンズ。仕事でもプライベートでも、様々な状況で最も頼れる相棒である。今後もこのレンズで多くの時間を切り取っていこうと思う。
■フォトグラファー/ ビデオグラファー:坂口正臣
雑誌の撮影を経て広告写真・建築写真・映像撮影など福岡を拠点に幅広く活動中。坂口写真事務所(SPO)を運営。