シグマ 50mm F1.2 DG DN | Artレビュー 柔らかくとろけるボケを堪能できるポートレートにピッタリのレンズ
はじめに
2024年4月に発売されたシグマの「50mm F1.2 DG DN | Art」は、開放値F1.2の明るさを保ちながら、最大径81mm、長さ108.8mm、重さ745g(Lマウント)と、35mmフルサイズミラーレスカメラ用50mm F1.2 AF対応のレンズとして、最軽量(2024年3月調べ)に仕上がっています。今回は、描写性能の高さに定評のあるシグマArtラインの本レンズのレビューを、ポートレートでお送りします。
なによりもボケの柔らかさが抜群!
やはり特筆すべきは、開放値F1.2のとろけるような大きなボケでしょう。背景を滑らかに溶かしてくれるので、主役の人物が立体的に浮き上がって見える効果が、ぐっと増しています。
去年の2月に発売された「50mm F1.4 DG DN | Art」もこちらでレビューをいたしましたが、ボケの質感、柔らかさは、本レンズが上回っていると感じました。ボケの大きさだけではなく、建物などの硬い質感の被写体を、より柔らかくボカしてくれています。
大きなボケが特徴ではありますが、ピントが合った被写体の輪郭のシャープさは現代的で、くっきりと鋭角に描いてくれます。
レンズ構成は12群17枚(非球面レンズ4枚)、絞り羽根枚数はシグマ初の13枚(円形絞り)が採用されていて、玉ボケの美しい表現が可能とのこと。確かに、撮影日はとても天気の良い日で、明暗の差が激しいシチュエーションでしたので、強い光が反射してできた丸ボケの角のない柔らかさが、より際立っているのが確認できました。
サイズ感良好
筆者は、ポートレート撮影時はフットワーク軽く動きたいので、撮影機材はコンパクトであればあるほど有り難いです。
本レンズは「50mm F1.4 DG DN | Art」と同じように、花形のレンズフードを付けるとそこそこの存在感になりますが、レンズ自体はF1.2の大口径を考えればとても小型で軽量です。
今回使用したカメラボディが、フルサイズ機としては驚異的な小ささの「SIGMA fp L」なので、バランス的にはレンズの方に比重が行きますが、ストレートで持ちやすい形状をしているので、撮影時にアンバランスさは感じませんでした。
さらに上がったAF性能
AFは新方式のデュアルHLA(High-response Linear Actuator)を採用しており、小さなボディに高速なAF機能を入れることに成功しました。新方式のHLAは従来のHLAに比べて重量約44%の軽量化を実現し、本レンズのような大口径のレンズでも、フォーカスを素早く動かす推力を確保しています。
このような背景の賑やかなシーンで、モデルに軽く動いてもらうシチュエーションの場合、今までのシグマのレンズだとピントが合うまでに少々時間を必要としたのですが、本レンズは若干ではありますがAF性能が高くなっていると感じました。
グラデーションの美しさはぜひ味わってもらいたい!
とにかくボケが綺麗なので、絞り開放で撮りたくなるレンズです。特にポートレートでは、大きくて柔らかいボケは主役のモデルをより魅力的に引き立ててくれます。
ピント面からボケへのグラデーションも美しく、逆光でふんわりと光る髪の輪郭はもちろん、髪の毛一本一本を繊細に描きながら、毛先の柔らかさを潰さないようにボケていくグラデーションは、ポートレートを撮る方でしたら、ぜひ味わっていただきたい描写性能です。
被写体が浮き上がって見える立体感
立体感が美しいので、街中のポートレートで使用すると、とても楽しいと感じました。サイズ的にも主張が激しくないコンパクトさなので、街中で構えていても注目を浴びにくいです。
色収差も良好に補正されており、色数の多い背景や丸ボケの多いシーンでも、滲みのない、ナチュラルで滑らかなボケの描写が味わえます。
今回はムービーは撮影していなかったのですが、フォーカスブリージングの抑制もされているので、大きなとろけるようなボケの美しいポートレートムービーの撮影ができそうです。最近のレンズに増えてきた機能の、クリック、デクリックの切り替えスイッチも、もちろん搭載されています。
常用レンズとして強くお勧めできるレンズ
撮影日の天気の良さゆえ、明暗差のあるシチュエーションが多くなったのですが、難しい白飛びギリギリのシーンも、破綻することなく解像感を残しており、髪の毛の艶感も手触りを感じられるほど丁寧に描写してくれています。
おわりに
レンズ名の数字を見た瞬間に、ポートレートにピッタリのレンズだと思いましたが、実際に撮影してみて本当にその通りでした。
対応マウントはLマウントとソニーEマウントがありますが、どちらかのユーザーで2本目のレンズに何を買おうか迷っている方、ポートレート用の1本目のレンズが欲しい方は、ぜひ手に取ってみることを強くお勧めします。
■モデル:沙倉 しずか
https://www.instagram.com/sakura_shizuka
https://twitter.com/shi_saaa
■写真家:水咲奈々
東京都出身。大学卒業後、舞台俳優として活動するがモデルとしてカメラの前に立つうちに撮る側に興味が湧き、作品を持ち込んだカメラ雑誌の出版社に入社し編集と写真を学ぶ。現在はフリーの写真家として雑誌やWEB、イベントや写真教室など多方面で活動中。興味を持った被写体に積極的にアプローチするので撮影ジャンルは赤ちゃんから戦闘機までと幅広い。日本写真家協会(JPS)会員。