シグマ 60-600mm F4.5-6.3 DG DN OS | Sports レビュー|葛原よしひろ
はじめに
今回はシグマの60-600mm F4.5-6.3 DG DN OS | Sportsのレビューをさせて頂きます。
シグマからは、既に光学式フルサイズ一眼レフカメラ用レンズとして、60-600mm F4.5-6.3 DG OS HSM | Sportsというレンズが発売されていますが、今回の60-600mm F4.5-6.3 DG DN OS | Sportsは、フルサイズミラーレスカメラ用レンズとして1から設計されたレンズになります。私自身といたしましては、前述の光学式用レンズをSIGMAのマウント変換アダプター MC-11を介してソニーのαシリーズで使用していたのですが、とても描写が気に入っているレンズなので、ミラーレス用の60-600mmが発売されるのを熱望しておりました。
60-600mm F4.5-6.3 DG DN OS | Sportsスペック
今回はソニーのEマウント用になります。長さ281.2mm、幅119.4mm、フィルター径105mm、重さ2,485gと決して小さく軽いレンズではありませんが、焦点距離が標準域60mmから超望遠600mmまでを、これ1本でカバーしていると思うと納得出来ると思います。
実際にソニーのフルサイズミラーレスα7R Vやα7 IVに装着してみると、かなりバランスが良いので実際の撮影中は数字程の重さは感じませんでした。それ以上に高級感と剛性感の有る、シグマのビルドクオリティの高さに、撮影意欲を駆り立てられます。
素早いAF・申し分ない描写力
撮影を始めるとAFのスピードが物凄く速くてビックリしました。このレンズには新開発のリニアモーターHLAが搭載されているので、ある程度は予想していましたが、モーターの違いで、ここまで速くなるものなのだと驚きました。使用していると感じるのですが、合焦スピードだけでなく動体撮影時の被写体保持能力も高くなっており、今まで以上に動体撮影が楽に出来るようになっています。
この写真は私の地元、滋賀県高島市に毎年越冬にやってくるコハクチョウを撮影したものですが、飛んでいるコハクチョウにしっかり合焦してくれています。
撮影中降雪が強くなってきたのですが、雪にピントが持っていかれるような事は無く、絶えず狙ったコハクチョウを捉え続けてくれます。勿論、ボディ側の性能の高さがあってのことですが、それを活かす事が出来るかはレンズの性能にかかっています。
降雪と同時に気温も低くなってきたのですが、レンズは晴天時と同じように動作しており、ビルドクオリティの高さと、防塵防滴に配慮された設計のSIGMAスポーツラインのおかげで撮影を中断することなく、安心して使用する事が可能でした。
焦点距離による描写力の違いを見たくて、滋賀県高島市の雪山と集落の写真を60mm、100mm、150mm、300mm、600mmで、それぞれ撮影してみました。
殆どの超望遠ズームの場合、テレ端の描写力が良くて広角端はイマイチといった具合なのですが、このレンズに関しては通常よりズーム幅の大きな10倍ズームでも、60mm~600mmまで、どの焦点距離も申し分のない描写力でした。
こちらの写真4枚は焦点距離による違いを見ようとした訳では無く、同じ撮影場所で私が自然にズームを使って撮影した写真です。この場所は高島市の琵琶湖畔で、対岸に竹生島と伊吹山が一直線に並ぶ、私の好きな場所です。1枚目と2枚目は湖岸の木々と対岸の島と雪山を絡めて撮影したくて、それぞれの大きさの写りを考慮して撮影していると、構図にウインドサーフィンが入って来たので、そちらを主役にズーミング撮影したくなり、背景に雪山と竹生島を入れた3枚目の写真を撮影して、最後に600mmで湖上のウインドサーフィンだけをターゲットに撮影してみました。
実は、3枚目と4枚目は連写での撮影なのですが、ズーミングによるフォーカスのズレが小さく、AFスピードがズレを上回るスピードで合焦するので、ズーミングしながらの連写でも被写体を逃すことが殆ど無く、ノーストレスでシャッターを切り続ける事が出来るという強い印象をあらゆるジャンルに対して持ちました。そして、風景を撮影中にウインドサーフィンが来たからと言ってレンズ交換無しに600mmの撮影が出来る、このレンズならではの醍醐味を肌で実感した撮影となりました。
コハクチョウの幼鳥が羽根を広げた瞬間の写真ですが、解像感が素晴らしく、成長しきっていない羽毛の柔らかな部分と大人の羽根の硬い部分の質感の違いや、羽根を広げる為に使う筋肉の動きや躍動感が感じられるのは、このレンズの描写力の高さによるところが大きいです。
60-600mm F4.5-6.3 DG DN OS | Sportsで飛行機を撮影
超望遠レンズが使える被写体と言えば、野鳥と飛行機は定番ですよね。という事で、ここからは飛行機撮影の作例で、お話しさせて頂きます。
先程までの野鳥撮影をしていて、もう一つ気付いたことが有りました。それは、このレンズの手振れ補正が凄く良い点です。そこで、手持ち流し撮り撮影をしてみました。昼の伊丹空港で右から左に、シャッタースピード1/80秒での流し撮りは難なくこなせて、余裕が有りすぎるくらいの手振れ補正の効き具合でした。(手振れ補正OS2使用)
更に夕暮れの羽田空港で左から右に、シャッタースピード1/20秒での流し撮りも、少し慣れている人であればクリアできる印象で、手振れ補正も申し分のない性能でした。
飛行機撮影でも焦点距離による違いを見てください。同じ場所から撮影した3枚ですが、1枚目が望遠端600mmで滑走路に着陸した、タイヤスモークが上がる瞬間です。2枚目は300mmで着陸前の滑走路上空で山並にタイヤが差し掛かった瞬間。3枚目は広角端60mmで頭上を通り越した直後を、それぞれ撮影しました。どの写真も解像感が高くて撮っていて嬉しくなりました。
またこのレンズの場合、ズーミング時にレンズ先端の溝を持って直進ズームとして使えるようになっております。それが凄く秀逸で被写体へのフレーミング対応のレスポンスも上がりますので、私はこのレンズでは殆ど直進ズーム機能を使用して撮影しておりました。
先程の3枚は機体の後ろ側からの撮影でしたが、こちらは正面から着陸態勢の機体を600mmで撮影した写真です。パイロットさんのサングラスやマスクまでキッチリと描写しており、機体への写り込みもバッチリで満足のいく画質が得られます。
ここで動画撮影もしてみました。フォーカス自体の速さに加え静音性にも優れており、動作音が無音に近いので動画撮影にも使い易かったです。
このような逆光状態でもゴーストやフレアが発生する様な事が無く、逆光耐性についてもかなり優秀だと感じました。
夕暮れから夜にかけての暗所撮影でもAF性能が落ちる印象は少なく、写真の通り追従性も含め優秀でした。
60-600mm F4.5-6.3 DG DN OS | Sportsで京都をスナップ
少し重いレンズですがバランスが良く、一日中飛行機撮影をしても平気だったので、雪の日の京都をスナップ撮影してみました。久しぶりの雪の京都でしたが、ブラブラしてみると、梅に雪が積もっていたので露出を少しオーバー気味にして撮影してみました。
こちらは紅葉の時期には凄く賑わう寺院の門跡ですが、600㎜だと圧縮感が強すぎたので、周りの木々と門の大きさが自分の好みになる画角で撮影してみると180mmでした。
凍った池に雪が積もり始めており、それだけでも美しい光景だったのですが、そこに光が差し込むと更にフォトジェニックになったので、ボケ感と圧縮効果を使って600mmで撮影しました。因みに、このレンズ寄れるんです。
さいごに
最後に、このレンズで、野鳥、飛行機、風景、スナップと撮影してみた総合的な感想です。超速で正確且つ動体撮影時の被写体補足能力が素晴らしく、60mm標準域から超望遠域の600mmまで単焦点レベルの高い解像感も有り、悪天候時も安心して使用出来て、尚且つ寄れて手振れ補正も素晴らしい。少し重いけど、これ1本であらゆるジャンルやシチュエーションを撮影出来る万能バーサタイル性能は、私にとって夢のレンズに限りなく近い素晴らしいレンズでした。
■写真家:葛原よしひろ
ジャンルに捉われず何でも撮影するマルチプレイヤースタイルの写真家。カメラメーカー等の写真セミナー講師としても全国的に活動している。大阪芸術大学写真学科卒/滋賀県高島市公認フォトアドバイザー/JPS(日本写真家協会)正会員