シグマ dp1 Quattroレビュー|Foveonセンサー搭載の名機に酔いしれる

三井公一
シグマ dp1 Quattroレビュー|Foveonセンサー搭載の名機に酔いしれる

はじめに

圧倒的な解像感と独特の描写でフォトグラファーの魂を捉えて放さない、シグマの「Foveon X3 ダイレクトイメージセンサー」搭載カメラ。レンズ交換式の「sd Quattro」シリーズとならび、レンズ一体型の「dp Quattro」シリーズがあったことを憶えている人も多いでしょう。

今回はその中でも35mm判換算28mm相当のレンズを搭載した名機、「SIGMA dp1 Quattro​​」について取り上げてみたいと思います。

SIGMA dp1 Quattro​​の特徴

レンズ一体型の「dp Quattro」シリーズは4機種存在しました。

35mm判換算21mm相当の「SIGMA dp0 Quattro​​」
35mm判換算28mm相当の「SIGMA dp1 Quattro​​」
35mm判換算45mm相当の「SIGMA dp2 Quattro​​」
35mm判換算75mm相当の「SIGMA dp3 Quattro​​」です。

シグマの高性能「単焦点レンズ」に独自の「Foveon X3 ダイレクトイメージセンサー」を組み合わせた、俗に言う高級コンパクトカメラシリーズとなります。両者の生み出す絵がどれほど素晴らしいものになるのかはフォトグラファーでしたら想像に難くないでしょう。

誉れ高き「Foveon X3 ダイレクトイメージセンサー」の描写は一度味わうと虜になると言われるほどです。シグマプライムレンズとのハーモニーで見せる解像感と豊かな階調、そして鮮やかな発色は素晴らしいとしか言いようがありません。

例えるならば、現像から上がってきたポジフィルムをライトボックスに置いて、ルーペでカットを確認する瞬間の感動を味わえるのです。ルーペを通してフィルムスリップからダイレクトに光が目に飛び込んでくるアレです。撮ったカットが視神経を介して脳内にバーン!と展開する感じなのです(Merrill ジェネレーションやそれ以前の「Foveon X3 ダイレクトイメージセンサー」搭載機で撮ったものはさらに!)。

ただし、その絵を手にするのにやや高いハードルがあるのも事実です。まず「dp Quattro」シリーズには手ブレ補正機能が搭載されていません。そして高感度性能は期待できません(自分はカラーの場合ほとんどの場合においてISO 100でしか撮りません)。さらにオートフォーカスがとてものんびりしています。ついでにカメラの動作そのものもゆっくりとしたものになっています。このように最新のカメラと比較すると幾世代前かのような仕様なのです。

そして「X3F」形式のRAWでの撮影がサイコー!なのでシグマ純正の「SIGMA Photo Pro」というPCアプリケーションを使って現像するわけですが、これが人によってはちょっと使いにくいかもしれません・・・。しかし、それでもこの「dp Quattro」シリーズで撮ったカットがツボにはまったら、そんなことはどうでもいいような興奮を味わうことができるでしょう。

SIGMA dp1 Quattro​​でブラブラ実写スナップ!

というわけで「SIGMA dp1 Quattro​​」を持って新春の熱海界隈をブラブラと撮影してきました。いやあ、やはり「Foveon X3 ダイレクトイメージセンサー」の絵はいいですね。掲載したものはX3Fと同時記録したJPEGとなります。「SIGMA Photo Pro」でRAW現像をするともっと「Foveon」の素晴らしさを堪能できますよ。

■撮影機材:SIGMA dp1 Quattro​​
■撮影環境:F2.8 1/125秒 ISO100

温泉街の谷間を歩行中、ホテルから生えている排気ダクト(?)を発見。そのどれもが凹まされていました。「Foveon X3 ダイレクトイメージセンサー」は金属や濡れたものの描写が得意なのですが、その質感を鈍い色合いとともにキャプチャーできました。

■撮影機材:SIGMA dp1 Quattro​​
■撮影環境:F8 1/500秒 ISO100

海へ出ました。交差点で空を見上げると見事な青空が。「SIGMA dp1 Quattro​​」はコントラスト高く深い色再現をしてくれました。カラーモード「FOVクラシックブルー」を使えばより一層記憶色に近づけられることでしょう。

■撮影機材:SIGMA dp1 Quattro​​
■撮影環境:F8 1/400秒 ISO100

「東洋のモナコ」と呼ばれる熱海ですが、その海岸線沿いに林立する温泉ホテル群を狙いました。「SIGMA dp1 Quattro​​」の35mm判換算28mm相当の画角はこうした風景やスナップ撮影で使いやすいと思います。

■撮影機材:SIGMA dp1 Quattro​​
■撮影環境:F8 1/250秒 ISO100

ハーバーに停泊するクルーザー。船のシャープなエッジと空を映しだす水面の描写がとてもいい感じです。白い部分がダイレクトに飛び込んでくる印象が「Foveon X3 ダイレクトイメージセンサー」ならではの絵作りだと感じます。

■撮影機材:SIGMA dp1 Quattro​​
■撮影環境:F8 1/160秒 ISO100

とある橋げたの装飾を撮りました。立体感、解像感、発色が素晴らしいですね。「SIGMA dp1 Quattro​​」は被写体を正確に写しとるカメラだと言えるでしょう。

■撮影機材:SIGMA dp1 Quattro​​
■撮影環境:F2.8 1/1000秒 ISO100

このカットも同様です。斜めに差し込む光が壁の凹凸感を浮き立たせていますが、その様子をリアルにキャプチャーできました。ランプシェードの透明感もステキですね。

■撮影機材:SIGMA dp1 Quattro​​
■撮影環境:F2.8 1/200秒 ISO100

商店と民家が一緒になった軒先をスナップ。35mm判換算28mm相当の画角は街中スナップでちょうどいいワイド感ですね。それに「Foveon X3 ダイレクトイメージセンサー」の描写が加わると実にシャープなカットになります。壁と洗濯物、トタンとバケツ、そして路面の様子がキッチリと撮影できました。

■撮影機材:SIGMA dp1 Quattro​​
■撮影環境:F2.8 1/125秒 ISO100

鮮魚店に並ぶ新鮮な魚たち。手前の赤い魚の目にフォーカスしてF2.8で「SIGMA dp1 Quattro​​」のシャッターを切りました。目玉と鰓の周囲が恐ろしいほど解像しています。さすが「Foveon X3 ダイレクトイメージセンサー」ですね。絞り開放なので上方のアジはボケてイイ感じです。APS-Cセンサーならではのリッチな絵となっています。

■撮影機材:SIGMA dp1 Quattro​​
■撮影環境:F4 1/60秒 ISO100

午後早い時間だったので熱海の歓楽街はまだ眠っていました。スナックでしょうか、店の室外機上にはこんなイヌの置物が。そのテクスチャーを克明にキャプチャーする「SIGMA dp1 Quattro​​」は本当に使っていて楽しいカメラだと感じます。フィルムカメラのように扱うとイライラしないかもしれませんよ(笑)

■撮影機材:SIGMA dp1 Quattro​​
■撮影環境:F5.6 1/250秒 ISO100

街角の壁画をストレートに撮ってみましたが、その写りの色合いと解像感に改めて驚かされました。ピクセル等倍で見ると、人間の眼をはるかに超えた緻密な描写力に舌を巻きました。やはりスゴいですね、「SIGMA dp1 Quattro​​」は。

■撮影機材:SIGMA dp1 Quattro​​
■撮影環境:F2.8 1/200秒 ISO100

駅前の帰り道、狭い階段にエサを待っているネコを見つけました。そっと近寄ると「ニャー」とご挨拶。その様子を「SIGMA dp1 Quattro​​」で撮りましたが、毛の質感がなんと素晴らしいこと。毛1本までわかるかのような描写力です。このようにじっとしているネコなら「SIGMA dp1 Quattro​​」でも問題なく撮影できます。

SIGMA dp1 Quattro​​の主要諸元

焦点距離 19mm(35mm換算:約28mm)
絞り値 F2.8~F16
絞り羽根枚数 9枚
レンズ構成枚数 8群9枚
撮影範囲 20cm~∞、LIMITモード (マクロ、ポートレート、風景、カスタムより選択可能)
最大撮影倍率 1:8.3
大きさ 161.4mm(幅) ×67mm(高さ) ×87.1mm(奥行)
質量 425g(電池、カード除く)
撮像素子 Foveon X3 ダイレクトイメージセンサー(CMOS)
撮像素子サイズ 23.5×15.7mm
有効画素数 約29MP
記録媒体 SDメモリーカード / SDHCメモリーカード / SDXCメモリーカード/ Eye-Fiカード連動機能搭載
電源 専用リチウム充電池(Li-ion Battery Pack BP-51)
撮影可能枚数 約200枚(バッテリーパック BP-51使用、25℃時)
付属品 レンズキャップ / ホットシューカバー / ストラップ / バッテリーパックBP­-51 / バッテリーチャージャー BC­-51 / バッテリー チャージャー用ACケーブル / USBケーブル / 使用説明書

まとめ

35mm判換算28mm相当のレンズを搭載する「SIGMA dp1 Quattro​​」は使いやすい画角ということもあり、「Foveon X3 ダイレクトイメージセンサー搭載機をはじめて使う人にも親しみやすいでしょう。キッチリとキマッタ写真を撮れた暁には、PCの大画面でじっくりとカットを鑑賞することをオススメします。きっとこのセンサーに向いた「Foveon物件」を撮ることに夢中になることでしょう。

もし「SIGMA dp1 Quattro​​」が気に入ったら、新宿 北村写真機店やキタムラの「ネット中古」を使って他の「dp Quattro」シリーズを探してみるのもいいかもしれません。

 

 

■写真家:三井公一
新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、ウェブ、ストックフォト、ムービー撮影や、執筆、セミナーなどで活躍中。さまざまな企業のイメージ撮影や、ポートレート撮影、公式インスタグラムの撮影などを多く手がける。スマートフォン撮影のパイオニアとしても活動中。

 

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