シグマ fp Lの写真と動画をアウトドアで堪能する
はじめに
私の住む九州地方も11月になってグッと気温が下がり肌寒くなった、山の木々も鮮やかに色付き冬支度をはじめている。今回は、発売から変わらず魅力を放ち続けるSIGMA fp Lを一泊二日のソロキャンプで使用した。
fp Lとは
fp Lと言えば先に発売されているfpと同じく、非常にコンパクトなボディーの中に高解像度フルフレームセンサーを搭載したカメラだ。バランスが良くオールマイティーなfpと、写真の性能にシフトしたfp Lという位置づけとなる。写真の画質にシフトしたとは言え、動画撮影の性能がスポイルされたか言えば決してそうではなく、ムービー撮影でも充分な性能を発揮する。
fp発売から約1年半を経て登場したfp Lだが、ユーザビリティが向上し、操作系などが少し仕様変更された。いずれもボタンや一部端子カバーの形状の見直し、ダイヤルのクリック感の変更などユーザーのフィードバックを得て細やかな配慮がなされている。そしてなんと、それらの改良は購入済みのfpにも希望があれば提供してくれるという(有償サービス)。こういったところが、私がSIGMAというブランドを好きな理由のひとつでもある。
今回はキャンプの様子を動画に残してきた。日中の動画の性能はもちろん素晴らしいが、夜の撮影で少し心配していた高感度ノイズに関してもfp Lの性能は必要十分で心配することはない印象だ。夜の調理シーンでも問題なく使用できた。
今回の旅で使用したレンズ
私は景色を撮影するとなれば、まず広角レンズを手にする。SIGMAの広角レンズには、既にIシリーズの24mm F3.5 DG DN | Contemporaryという非常にコンパクトなレンズがあるのだが、今回は敢えてIシリーズの中望遠レンズ90mm F2.8 DG DN | Contemporaryをセレクトした。
このレンズとfp Lのセットは、とても90mmのレンズとフルサイズのカメラとは思えないほどコンパクトで軽い。できるだけ荷物を少なくしたいソロキャンプの相棒としてもマッチしていると感じる。そして、強靭なマグネシウム合金のボディーと防塵防滴性能が、激しい温度や湿度の変化があるアウトドアではとても心強い。
コンパクトで上質なデザインでありながら非常に高性能なこのカメラとレンズは、効率を突き詰めたキャンプギアと相性がよい。愛用しているギアのひとつ、SIGMAと同じMADE in JAPANのIWATANI FORE WINDS マイクロキャンプランタンとバーナーと一緒に。
fp Lと90mmで写す秋の景色
中望遠は個人的に程よい画角の狭さがなんとも楽しい。限られたフレームの中で「こっちが主役か?いや、それともこっちか?」と写真の主役を取り合い、フレームを調整するのがこのレンズの醍醐味だと思う。動画は初日の夕方から夜をメインに撮影したが、写真は翌朝から散歩や沢登りをしながら紅葉する秋の景色を記録した。早起きして朝日が昇る前の冷たい空気感を撮影、冷たさの中に湿度を感じさせる描写。気温は4℃、数日降り続いた雨の影響で湿度は夜通し80%を超えていた。
暗部に隠れた鮮やかな色は、濃厚で深い色合いに写し出される。暗部の階調が豊かなSIGMAの味付けは、アンダーな写真を撮りたくなる。山間部の谷にあるこのキャンプ場は、朝日が直接届くまでにまだ少し時間がかかる。
朝の霧が残る広場を情報豊かに描く。この画が開放絞りである事、レンズの高いクオリティーにも驚かされた。普段はあまり好まないイエローとブルーの組み合わせが心地よいのは、この日に使用しているテントとハリケーンランタンの組み合わせと同じだからか。
空だけが明るくなり始める時間にふと見上げると、やわらかな光がイチョウの葉を透過していた。これぐらいの控えめな黄色は好みだ。ひと歩きしてコーヒーを淹れるためにテントに戻る頃、ようやく朝日が射し込む。明るさと暖かさを感じる。テントの中にやわらかく映し出される木の葉のシルエットが美しい。
ポリコットンの素材感を繊細でシャープに描写しながらも、グラデーションは滑らかに表現する。テントの表面には霜がおりて雨でも降ったかのように濡れている。早く乾くように裏側から幕を弾いて水滴を飛ばすのがなぜか少し楽しい。
テントの表面についた霜をとても繊細に描写している。あとで拡大して見ると水滴をしっかり捕らえていた。朝のコーヒーを淹れて一息ついたら、カメラを手に撮影にでかける。
朝日が射し込んで、あちらこちらに木漏れ日のスポットライトが当たりはじめる。秋の訪れを実感する。
衣装を借りるかのように後ろにある木の葉を羽織って着飾る大樹。コントラストが輝く葉を際立たせる。
虫たちは時折ユニークなものを見せてくれる。まるでミニチュアのクレーンの様だ。
細い枝の先から伸びる蜘蛛の糸を繊細に描写する。シャープネスが強いという訳ではなく、超高解像度がもたらす豊富な情報量が緻密さを表現するのだろう。パッキングされたかのように種を包んでいる、来年またここに生えますように。
キャンプ道具は無造作に置いてもなぜか画になる。知人から頂いたランタン、フュアーハンド276。煤汚れとタンクの艶、相対する質感をありのままに表現する。
バックパックのナイロン生地とハチェットのヒッコリーの木目もリアルに写し出している。このアングルの主役は迷うことはない。
この写真も開放絞りで撮影している。驚くような解像感。白い岩肌が紅葉した葉の色鮮やかさを引き立てる。
手前のボケ感と合焦した部分のシャープさからもこのレンズのキレの良さが分かる。柔らかなラインが多くのレイヤーとなって表面に現れている。特に珍しいことではないが、実際何年かけてこうなったのだろう。
複雑な形状の岩肌の描写が美しい。水はスローシャッターで流すよりハイスピードで止めた方が冷たく感じる。写真の雰囲気と実際の温度は近い。
この高さまでは水位が上がってくるという印。よく観察すればこの様な自然のインフォメーションがたくさんある。
さいごに
今回一泊のキャンプで早朝から夜までfp Lを使用した。何よりもコンパクトで軽くデザインが美しいこのカメラは、アウトドアシーンにもマッチしている。使い込んで味がでるほどに愛着が湧く道具と言った感じだ。アクセサリーをあえて使用せず素のままで使用したが、とても楽しかった。面倒なことを敢えて楽しむキャンプと似て、背面モニターの反射を手で覆いながら覗いたり絞りリングを使ったりと、敢えて手間のかかる使い方をする事が何とも楽しい。
ひと手間かけて撮影した写真や映像は、有効画素数6100万画素の超高解像度で自分なりの特別な瞬間を最高の画質で記録してくれる。この頼もしい相棒とこれからも多くの撮影をしていこうと思う。
■フォトグラファー/ ビデオグラファー:坂口正臣
雑誌の撮影を経て広告写真・建築写真・映像撮影など福岡を拠点に幅広く活動中。坂口写真事務所(SPO)を運営。