ソニー α1 レビュー|スポーツ撮影現場で使ってみました!(坂井田富三)

坂井田富三

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はじめに

 ソニーフラッグシップ機「α1」は色々な意味で筆者の予想を超えてきました。それは連写性能だったり、画素数だったり、そして価格だったり(笑)。正直に言うと購入するにあたり、ここまでの機能が本当に筆者に必要なのか凄く悩みました。

 現在、筆者はα9・α7RIV・α7RIII・α7C・α6400を所有しており、スポーツや動く被写体を撮影する時はα9をメインに使用し、風景を撮影する時はα7R IVをメインに使用するなど撮影用途によって使い分けています。またα9 IIが発売された時に、α9から移行しなかったのは自分の必要とする要素が無く導入を見送り、将来のα9 II後継機を期待して待つことにしました。

 今回発売になったのは新しい型番の「α1」。発表されたスペックをみている段階では、すぐの導入を見送ろうと考えていました。しかし実際に手に取って触ってみると、その思いはすぐに変わりました。α1の高機能に触れると、今使っているカメラに物足りなさを感じるようになりました。今回は筆者が今まで使ってきたα9との比較を交えて、スポーツ撮影などの動体撮影をメインにα1を紹介します。

α1の魅力的なスペックを確認:画素・連写性能など

 α9では、カメラ有効画素数約2400万画素で電子シャッターを使ってブラックアウトフリーで最高約20コマ/秒の連続撮影が可能でしたが、α1は、有効画素数約5010万画素で電子シャッターを使ってブラックアウトフリーで最高約30コマ/秒の連続撮影が可能になりました。

α1の画素数

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 α1の有効画素数約5010万画素は、撮影後のトリミング耐性に余裕を与えてくれる画素数。このスペックにはとても魅力を感じています。というのもα9使用時はAPS-Cモードを使用すると約870万画素(3936×2216ピクセル)となるためAPS-Cモードを使用する事はほぼありませんでしたが、α1はAPS-Cモード(焦点距離1.5倍)で撮影しても約2100万画素(5616×3744ピクセル)で撮影できα9に近い画素数を維持する事が可能で、スポーツ撮影などで望遠側を補足するのに積極的に使用する事ができる画素数となりました。

 しかし良い事ばかりではありません。ここまでの大きな画素数になると1コマのファイル容量も大きくなり、使用するメディアの容量も余裕のあるもの、そして書き込み速度の速いもので無いと連写性能に影響が出てきます。カメラボディも高額ですが、使用するメディアのスペックも要求されます。また1コマデータ容量が大きくなる為、画像保管や画像処理をする為のパソコンやハードディスクのスペックアップも要求される事になります。

α1の連写性能

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 この画像はα1で、RAW(圧縮)+JPEG(エクストラファイン)で連写撮影したRAWデータを一覧表示したものです。赤枠で囲まれたデータが、撮影時間16時5分17秒の1秒間に撮影されたデータでちょうど30コマになります。

 電子シャッターによるブラックアウトフリー撮影で、実際にシャッターを押して撮影している段階では、α9の20コマ/秒とα1の30コマ/秒の10コマ/秒の差を体感する事は出来ませんでした。ただ、実際撮影したデータをパソコンに取り込んで見てみると、明らかにα9で撮影したデータよりもα1で撮影したデータの方が、狙い通りの瞬間を撮影できている確率が上がっているのが分かりました。

 ボールインパクトの瞬間の前後もしっかりと収める事ができているので、1秒間に撮影できる枚数が1.5倍になっているのはとても凄い事なんだと感じます。1秒間に30コマというのは、ほとんど動画の様なもので、それを約5010万画素で撮れるという事は驚異的だと思います。

03_作例.JPG
■撮影機材:SONY α1 + FE400mm F2.8G
■撮影環境:シャッター速度1/640秒 絞りF2.8 ISO800 焦点距離400mm
04_作例.JPG
■撮影機材:SONY α1 + FE400mm F2.8G
■撮影環境:シャッター速度1/8000秒 絞りF3.2 ISO800 焦点距離400mm

 もちろん30コマ/秒までの連写が必要無い場合は、ドライブモードのHi、Mid、Loそれぞれに20コマ/秒、15コマ/秒、5コマ/秒を割り当てることが可能です。

α1のシャッター速度・感度

 この写真は、α1の性能を確認する為にシャッター速度1/32000秒・ISO感度を3200まで上げて撮影した写真です。実際にはシャッター速度1/3200秒も必要とするシーンではありませんでしたが試してみました。ISO感度3200なので少しノイズが発生しているものの問題の無いレベルで、スポーツ撮影する上でシャッター速度を稼ぎたい場合、室内競技などの少し暗い環境などで積極的に使用できる範囲です。

05_作例.jpg
■撮影機材:SONY α1 + FE400mm F2.8G
■撮影環境:シャッター速度1/32000秒 絞りF3.2 ISO3200 焦点距離400mm

 今回は屋外でのスポーツ撮影でしか試すことができませんでしたが、室内スポーツで強力な武器になる機能がα1には搭載されています。

 α1には、世界で初めて電子シャッターでフリッカーレス撮影が可能になりました。電子シャッターでフリッカーレス撮影が可能になったことで、蛍光灯などの人工光源下においてもブラックアウトフリー撮影、最大120回/秒の演算によるAF/AE追随、最高30コマ/秒連写、サイレント撮影など、照明環境を気にすることなく電子シャッターならではの機能を使用できるようになりました。室内体育館などのスポーツ競技でフリッカーに悩まされてきたカメラマンにとっては、とてつもなく朗報な機能です。また音楽関連や舞台撮影においても、フリッカーレス撮影&サイレント撮影の組み合わせは鬼に金棒といった感じです。

α1の魅力的なスペックを確認:使用メディアによる性能の影響

 ここで実際にメディアによってどの程度連写性能に影響がでるか試してみました。α1のメディアスロットは2スロットあり、どちらのスロットもSD(UHS-I/II対応)カード、CFexpress Type Aカード用マルチスロットになっています。

06_3種類のメディアカードの画像.jpg
【左】CFexpress Type A:最大書き込み:700MB/s、最大読み出し:800MB/s
【中】ソニー TOUGH SDXC UHS-II:最大書き込み:299MB/s、最大読み出し:300MB/s
【右】サンディスクのエクストリーム プロ SDXC UHS-I:最大書き込み:90MB/s、最大読み出し:170MB/s

 α1の連写性能を最大限に活かすためには、CFexpress Type Aカードが必要です。SD(UHS-I/II対応)カードでは、残念ながら連写性能の最大限の能力を引き出すことが出来ません。

 RAW+JPEG(エクストラファイン)約66.4MBでメディア「CFexpress Type A」カードに連写した状況です。シャッターを押して5秒弱あたりで本体バッファが一杯になり、メディアに書き込みながら連写していきます。このタイミングで連写の速度が遅くなります。秒30コマが可能な状態は約5秒程度と推測されます。

 RAW+JPEG(エクストラファイン)約66.4MBでメディア「SDXCカード TOUGH SF-G」シリーズに連写した状況です。シャッターを押して5秒弱あたりで本体バッファが一杯になり、メディアに書き込みながら連写していきます。ここまでの状態はCFexpress Type Aカードとほぼ同じ状況で秒30コマの撮影ができますが、ここからメディアの書き込み速度が多く影響してきます。メディアに書き込む速度がCFexpress Type Aカードに比べて遅いために、本体バッファがなかなか開放されず連写速度が大きく低下してきます。

 RAW+JPEG(エクストラファイン)約66.4MBでサンディスクの「エクストリーム プロ SDXC UHS-I」カードに連写した状況です。シャッターを押して5秒後あたりからメディアに書き込みながら連写していきます。書き込み速度に時間がかかりすぎて、もう連写という感じでは無くなってしまいます。この動画を見て頂ければ分かるように、α1では書き込み速度の遅いメディアで連写をするような撮影では正直おすすめはできません。

 ソニーのタフシリーズの高速UHS-II対応のSDメモリーカードで比較しても、CFexpress Type Aカードは2倍以上の書き込み・読み込み速度であり、書き込み速度の速さが連続撮影等のバッファ解放時間の短縮などに貢献してくれます。α1でスポーツや動物・鳥などで連写撮影する際には、CFexpress Type Aカードを使用する事をおすすめします。

α1の魅力的なスペックを確認:AF性能

 イメージセンサーの撮像画面の約92%の領域に、759点の位相差測距点が高密度に配置され、高速性と追随性に優れた位相差AFと高精度なコントラストAFを併用するファストハイブリッドAFシステムが、複雑な動きやスピードに緩急のある動体も高速に捕捉し粘り強く追随し続けるα1。

 α9/α9IIで最大60回/秒の演算によるAF/AE追随だったものが、2倍多い最大120回/秒に大きく進化し、速度変化に緩急のある被写体や、フレーミングが難しい被写体に対する追随安定性と精度がさらに向上しています。

この動画はα1撮影時のファインダー情報を書き出した動画です。
コンティニュアンスAFの動作(画面上の緑の枠)とシャッターを連写で切っている状態(画面の黒枠と左上のメディア撮影可能枚数)に注意して見て頂くとα1の凄さが分かると思います。

07_作例.JPG
■撮影機材:SONY α1 +FE400mm F2.8G
■撮影環境:シャッター速度1/2000秒 絞りF2.8 ISO800 焦点距離400mm

 筆者の飼っている猫でリアルタイム瞳AF(動物)の動きをチェックしてみました。
 α1は、従来の機種の瞳AFよりさらに動物の瞳認識精度が向上していると実感できました。演算処理が2倍になっている事により、精度の向上とAFの追随が確実に進化しています。

08_作例.jpg
■撮影機材:SONY α1 + FE35mm F1.8
■撮影環境:シャッター速度1/250秒 絞りF2 ISO1600 焦点距離35mm

 下の写真は、この2021年春で退役する航空自衛隊の戦闘機F4JファントムIIです。あいにくの曇り空でしたが、ホッケーの練習風景の取材場所の近くで飛行していたので撮影をしてみました。

 FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSSのレンズに2倍のテレコンバーターを装着し焦点距離1000mmでの撮影です。テレコンバーターを使用する事によって絞りF13になってしまいますが、α1ではAF追随の絞り上限がF22(α9はF16)までの対応しているので問題なくAF追随しました。
 また、FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS + 2X テレコンバーター(SEL20TC)の組み合わせでも秒30コマの撮影ができており、その凄さを実感することができました。

09_作例.JPG
■撮影機材:SONY α1 + FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS + 2X テレコンバーター(SEL20TC)
■撮影環境:シャッター速度1/800秒 絞りF13 ISO800 焦点距離1000mm

まとめ

 α1を使用する前にあった懸念点は、まったくの杞憂に終わった。それどころか一度α1を使ってしまうと、今まで使っていたα9が物足りなく感じてしまっている自分がいます。α1はソニーのフラッグシップ機として、圧倒的な性能を持っているのは間違いありません。これからいろいろなシーンでの撮影が楽しみな1台。次回はもう一つの撮影テーマ、風景写真を中心にα1の魅力をレビューしたいと思います。

撮影協力:ソニーHC BRAVIA Ladies(ソニー・ホッケークラブ・ブラビア・レディース)
https://www.sony-global-mo.co.jp/hockey/

10_作例.JPG
■撮影機材:SONY α1 + FE400mm F2.8G
■撮影環境:シャッター速度1/1250秒 絞りF3.5 ISO1600 焦点距離400mm
11_作例.JPG
■撮影機材:SONY α1 + FE400mm F2.8G
■撮影環境:シャッター速度1/1600秒 絞りF2.8 ISO1600 焦点距離400mm
12作例.JPG
■撮影機材:SONY α1 + FE400mm F2.8G
■撮影環境:シャッター速度1/2000秒 絞りF4 ISO6400 焦点距離400mm
13_作例.jpg
■撮影機材:SONY α1 + FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS + 2X テレコンバーター(SEL20TC)
■撮影環境:シャッター速度1/500秒 絞りF13 ISO800 焦点距離1082mm

■写真家:坂井田富三
写真小売業会で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。 撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ、ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・日本風景写真家協会 会員
・NPO法人 フォトカルチャー倶楽部 参事
・一般社団法人 日本フォトコンテスト協会 理事
・一般社団法人 日本写真講師協会 理事
・ソニーαアカデミー講師
・クラブツーリズム写真撮影の旅・ツアー講師

「α1」はこちらの記事でも紹介されています

■ソニー α1 レビュー(前編:野鳥・ポートレート)|葛原よしひろ
https://www.kitamura.jp/shasha/sony/a1-5-20210323/

■ソニー α1 レビュー(後編:風景・ステージ撮影)|葛原よしひろ
https://www.kitamura.jp/shasha/article/480649337/

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https://shop.kitamura.jp/special/sale-fair/camera/feature/sony/a1/

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