ソニー α6700 レビュー|「Ai」によるオートフォーカスが進化したAPS-Cモデル
はじめに
今回、次世代プレミアムAPS-Cモデルとして新発売になった「α6700」を先行してお借りできたので、その進化をいろいろと体験してみました。特にフルサイズ機「α7R V」にも搭載されている被写体認識が強化された次世代のAFシステムが、このAPS-Cモデル「α6700」にも搭載され、そのAFシステムがどのくらい撮影をアシストしてくれるか、非常に気になるところです。
実際に様々なシーンで撮影してきたので、「α6700」の魅力とその写りを紹介したいと思います。
α6700の特徴と魅力
「α6700」は「α6600」の後継機になります。「α6700」の購入を検討されるユーザーの多くは、同じAPS-Cモデルの「α6600」のユーザーや「α6400」のユーザーが多いのではないでしょうか。そこでAPS-Cモデルの仕様を比較してみました。
α6700 | α6600 | α6400 | |
発売日 | 2023年7月28日 | 2019年11月1日 | 2019年2月22日 |
センサーサイズ | APS-Cサイズ | APS-Cサイズ | APS-Cサイズ |
センサー | Exmor R CMOSセンサー | Exmor CMOSセンサー | Exmor CMOSセンサー |
有効画素数 | 静止画時:約2600万画素、動画時:約1990万画素 | 約2420万画素 | 約2420万画素 |
画像処理エンジン | BIONZ XR、AIプロセッシングユニット | BIONZ X、フロントエンドLSI | BIONZ X、フロントエンドLSI |
手ブレ補正 | 光学式5軸ボディ内手ブレ補正、アクティブモード | 光学式5軸ボディ内手ブレ補正 | なし |
瞳AF / 被写体認識AF | [静止画] 人物/動物/鳥/昆虫/車・列車/飛行機 [動画] 人物/ 動物/鳥/昆虫/車・列車/飛行機 |
[静止画] 人物/動物 [動画] 人物 |
[静止画] 人物/動物 |
フォーカス検出方式 | ファストハイブリッドAF (位相差検出方式 / コントラスト検出方式) | ファストハイブリッドAF (位相差検出方式 / コントラスト検出方式) | ファストハイブリッドAF (位相差検出方式 / コントラスト検出方式) |
測距点数 | 静止画時: 最大759点 (位相差検出方式) 動画時: 最大495点 (位相差検出方式) |
425点(位相差検出方式)/425点(コントラスト検出方式) | 425点(位相差検出方式)/425点(コントラスト検出方式) |
検出輝度範囲 | EV-3 – EV20 (ISO100相当、F2.0レンズ使用) | EV-2-20 (ISO100相当、F2.0レンズ使用) | EV-2-20 (ISO100相当、F2.0レンズ使用) |
ファインダー | 1.0cm(0.39型) 電子式ビューファインダー (XGA OLED) | 1.0cm(0.39型) 電子式ビューファインダー | 1.0cm(0.39型) 電子式ビューファインダー |
ファインダー総ドット数 | 2,359,296 ドット | 2,359,296 ドット | 2,359,296 ドット |
ファインダー倍率 | 約1.07倍 (35mm判換算: 約0.70倍) |
約1.07倍 (35mm判換算: 約0.70倍) |
約1.07倍 (35mm判換算: 約0.70倍) |
モニターサイズ | 7.5cm(3.0型) TFT駆動 | 7.5cm(3.0型) TFT駆動 | 7.5cm(3.0型) TFT駆動 |
モニタードット数 | 1 036 800 ドット | 921 600ドット | 921 600ドット |
RAW出力形式 | ロスレス圧縮・圧縮 | 圧縮 | 圧縮 |
記録メディア | SD (UHS-I/II対応) | SD (UHS-I)、MS | SD (UHS-I)、MS |
連続撮影 | Hi+: 最高約11コマ/秒 | Hi+: 最高約11コマ/秒 | Hi+: 最高約11コマ/秒 |
バッテリー | NP-FZ100 | NP-FZ100 | NP-FW50 |
静止画撮影可能枚数(CIPA規格準拠) | ファインダー使用時:約550枚 液晶モニター使用時:約570枚 |
ファインダー使用時:約720枚 液晶モニター使用時:約810枚 |
ファインダー使用時:約360枚 液晶モニター使用時:約410枚 |
質量(g)(バッテリーとメモリーカードを含む) | 493g | 503g | 403g |
ボディサイズ | 122.0(W)x69.0(H)x75.1(D) | 120.0(W)x66.9(H)x69.3(D) | 120.0(W)x66.9(H)x59.7(D) |
USB端子 | USB Type-C | USB Type-B | USB Type-B |
画作りのプリセット | クリエイティブルック | クリエイティスタイル | クリエイティスタイル |
「α6600」から大きく変わった点は、「Exmor R CMOSセンサー」と画像処理エンジン「BIONZ XR」が搭載された事。「α6700」は、有効約2600万画素のAPS-C裏面照射型「Exmor R CMOSセンサー」と「α6600」の最大約8倍の高速処理能力を持つ、最新の画像処理エンジン BIONZ XRを採用した事により、静止画・動画撮影における処理能力を大幅に向上されています。
そして高い処理能力のおかげで、高い階調表現や忠実な色再現性能、低ノイズ性能などの実現、メニュー操作におけるレスポンスも向上しています。
「α6700」の一番の魅力ポイントは、フルサイズ機「α7R V」に搭載されている「AIプロセッシングユニット」を搭載した事です。ディープラーニングを含むAI処理で、人物の骨格や姿勢などの詳細な情報に基づいた、より高精度な被写体認識が可能になり、動物の種類、乗り物、昆虫など、より幅広い被写体を認識が可能になっています。「α6600」よりも大きく進化した次世代AFシステムが、静止画・動画を問わず撮影を快適に支援してくれます。
そして「α6600」より広いイメージセンサーの撮像領域の約93%(静止画撮影時)のエリアに、最大759点の像面位相差AF点を高密度に配置することによって、従来より高画素かつ広範囲・高密度なAFによるデータ量にもかかわらず、最新の画像処理エンジン「BIONZ XR」の高速処理性能と見直されたアルゴリズムによりAF性能が向上しているのも見逃せないポイントです。
記録方式においては、RAWデータ撮影の「ロスレス圧縮」が加わりました。ロスレス圧縮RAWデータは、「可逆圧縮」と呼ばれていて、元の状態(圧縮前の状態)に戻すことのできる圧縮方法で、撮影RAWデータを小さくする事ができ、なおかつ非圧縮RAWデータと同じ状態に展開できるRAWデータになります。撮影データ容量を抑える事でたくさんの撮影が可能になり、撮影時のメリットは非常に大きいと言えるでしょう。
記録メディアは新たにSDカードのUHS-IIに対応しました。UHS-II対応のメモリーカードを使用する事で、圧縮RAWで59枚、ロスレス圧縮RAWで23枚、JPEG撮影時は1000枚以上の連写持続性能を実現しています。
またシステムの高速処理性能により、連続撮影後のメモリーカードへの書き込み中でも「Fnメニュー」上から撮影設定の変更が可能になっており、メニュー画面と設定変更、再生画面へのアクセスにも対応になった事も見逃せないポイントです。そして、USB端子も「USB Type-C」となりより使いやすくなっています。
外観の変更ポイントは、「前ダイヤル」や「静止画/動画/S&Q切り換えダイヤル」や「バリアングル液晶モニター」の採用が大きな変更点になっています。特に前ダイヤルに好みの機能をアサインできるので、絞りや露出補正以外にも好みの機能が割り当てる事もでき使い勝手が非常に良くなっています。
「静止画/動画/S&Q切り換えダイヤル」により、静止画と動画の撮影の切り替えも簡単にでき、動画機としてのハイブリッド性も備えています。
進化したオートフォーカス性能
「α6700」はα7R V譲りの新開発AIプロセッシングユニットを搭載。被写体認識が豊富になり、画像処理エンジン「BIONZ XR」の高速処理とあわせてオートフォーカスの精度が飛躍的に向上しています。実際に使ってみると、従来からある人物・動物の瞳AFに関して、明らかにAFの精度が良くなっているのを実感する事ができました。
これだけ、認識対象が増えると切り替えるのも面倒ですが、使わない対象は切替設定から非表示にする事も可能なので、普段撮影しないものを非表示にしておくと撮影の際にスムーズに切り替える事ができます。
実際に動物園や生物園など撮影をして、「α6700」の「新開発AIプロセッシングユニット」のAi認識の性能を確認してみました。
認識対象の切替で「動物/鳥」、「動物」、「鳥」と動物と鳥が一つになった項目があるので試してみましたが、単独とセットになった場合の違いは実感できませんでした。しいて言えば、鳥だけを撮るようなシーンでは単独の「鳥」を使い、動物園などで、鳥や動物をあわせて撮るようなシチュエーションであれば「動物/鳥」を選択すると撮影がスムーズにできると思います。
様々な被写体をAiによって認識し、オートフォーカスの精度が上がっているのは明らかです。「α6700」はフルサイズ機のαと違い「マルチセレクター」のボタンが無くフォーカスフレームを動かす際に「コントロールホイール」を使うことになります。「コントロールホイール」ではフォーカスフレームを斜めに動かしたりする事ができないので、やや動作に手間を感じます。
そういった手間を省く上でも、Aiによる被写体認識オートフォーカスは非常に撮影を快適にサポートしてくれています。非常に便利な進化ポイントですが、場合によっては今までに無い被写体認識の切替作業が発生することも出てきます。少し使いこなすまで戸惑うこともあるかもしれませんね。
α6700で被写体認識を使って撮影
ここからは、各種被写体認識設定を使用して撮影したデータを紹介していきたいと思います。今回使用したレンズは、キットレンズにも設定されているAPS-C用の高倍率標準ズーム「E 18-135mm F3.5-5.6 OSS」とAPS-C用望遠ズーム「E 70-350mm F4.5-6.3 G OSS」、そしてフルサイズの単焦点「FE 35mm F1.8」です。
被写体が特定された状態であれば、Aiによる被写体認識オートフォーカスは非常に頼れる機能であり、撮影を快適にサポートしてくれます。
α6700でお祭りスナップ撮影
「α6700」を持って千葉県香取市の伝統的なお祭り「佐原の大祭」を撮影してみました。「α6700」とキットレンズ「E 18-135mm F3.5-5.6 OSS」の組み合わせは、非常にコンパクトかつ軽量で高倍率撮影できるイベント撮影にピッタリのカメラです。ボディとレンズの組み合わせても重さは約818gと軽く、一日中撮影しても疲れません。
今回はこのキットレンズにプラスもう一本「E 70-350mm F4.5-6.3 G OSS」を小さなカメラバッグに入れてお祭りを楽しみながら撮影をしています。カメラ1台+レンズ2本の総重量は約1443gで、快適にいろいろと撮影をする事ができました。やはり機材は軽い方がいいですね。
α6700の動画機能
ここまでは静止画をメインに紹介してきましたが、「α6700」は動画機能も大幅に進化しています。最新のイメージセンサーと画像処理エンジンを搭載した事により、6Kオーバーサンプリングによる4K映像を出力でき、「4K 120p」のハイフレームレート動画の撮影も可能になっています。加えて「静止画/動画/S&Q切り換えダイヤル」の搭載により、様々な動画撮影を比較的簡単に設定でき撮影を楽しむことができます。
メニューの「スロー&クイック設定」から「フレームレート設定」項目を選択して、記録フレームレート(24p,60p,120p)とフレームレート(1fps,2fps,4fps,8fps,15fps,30fps,60fps,120fps)の組み合わせ設定することで、簡単に4K映像で5倍のスローモーション動画から120倍のクイックモーション撮影まで楽しむことができます。
実際に下の映像は、「フレームレート設定」項目を選択して、記録フレームレート(24p)とフレームレート(120fps)を選択する事で5倍のスローモーション撮影をしています。
静止画で大活躍のAiによる被写体認識オートフォーカスは動画でも有効で、動画撮影を非常に簡単にしてくれています。下の動画は「α6700」を動画モードにした状態のファインダー情報を書き出したものになります。動物認識をしっかりとして被写体を捉え続けてくれています。
「α6700」には動画撮影をサポートしてくれる光学式5軸ボディ内手ブレ補正ユニットと、カメラに内蔵した高精度なジャイロセンサー、最適化されたアルゴリズムで手ブレ補正効果を向上させる「アクティブモード」が搭載されています。これによって手持ちでの動画撮影のブレを軽減し、動画撮影の補助をしてくれます。手ブレ補正モードは、メニューから切/スタンダード/アクティブを選択でき、撮影シーンによって使い分けられます。
シネマのようなルックを手軽に再現できる「S-Cinetone」をピクチャープロファイルのプリセットとして搭載しており、グレーディングすることなくシネマのようなルックを手軽に再現できるもの魅力のポイントです。「α6700」は静止画撮影だけでなく、動画撮影もどんどんチャレンジしてみたいユーザーにも満足度の高いカメラになっています。
まとめ
今回「α6700」を実際に使ってみて思っていた以上に良くできたカメラだと感じました。ファインダーがもう少し大きければ…とかの多少の不満を感じる事もありましたが、オートフォーカス性能の良さは非常に精度が高く、満足いくものでした。またAPS-C機ならではのコンパクト性は大きな魅力のポイントと感じました。
「α6700」は、静止画撮影もしっかり撮りたい、クリエイティブな動画も撮ってみたい、欲張りなユーザーを満足させてくれるカメラではないでしょうか。
■写真家:坂井田富三
写真小売業界で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ・ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・EIZO認定ColorEdgeアンバサダー
・ソニーαアカデミー講師