ソニー フルサイズミラーレスカメラ α7C|サイクリスト目線で徹底レビュー

WATARU

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自転車とミラーレスは最高の組み合わせ

 皆さんはロードバイクやクロスバイクなどでサイクリングする際の撮影では、カメラに何を求めるでしょうか?突き詰めていくと車体を1g軽くするのに1万円かかるというのが通説のロードバイク界では、やはり軽さ・コンパクトさを重要視する方も多いでしょう。例えばスマートフォンのカメラ性能は年々劇的な進化を遂げていて、スマホでも十分綺麗に撮れるのでそれで満足しているという方もいらっしゃるかと思います。ただ、やはり画質にこだわる方はミラーレス一眼カメラや一眼レフを背負ってサイクリングに出かける、という方も多いのではないでしょうか。単に「記録を残すだけの撮影」から「記憶に残る思い出を撮影する」。それを実現出来るのは表現力豊かなミラーレス/一眼レフならではかと思います。

 特に近年、ミラーレスの進化は目を見張るものがあり、SONYが世界で初めてフルサイズセンサー搭載のミラーレス一眼カメラの製品化に成功して以来、各社競争が激化した事でデジタル一眼レフの出荷数を抑えミラーレスは世界的にシェアを拡大しています。

 そのミラーレスの心臓部とも言えるイメージセンサー。これは画素数よりも重要だと言える部分で、マイクロフォーサーズやAPS-C、そしてフルサイズなど様々なサイズが採用されています。小型のセンサーはカメラ本体の小型化に貢献し、大きなものはより多くの光を取り込むことが出来るので白飛びや黒つぶれが少なくなり、画角が広く、階調豊かで、大きなボケ表現をしっかりと楽しめる様になります。

 僕のミラーレスのスタートはマイクロフォーサーズでした。何より軽量・コンパクトさがサイクリングに適していて、明るい単焦点レンズを装着した時の大きなボケや夜ライドでの暗所撮影時のGoProやスマホとは別次元の映像美に魅せられ、マイクロフォーサーズの限界に挑戦するかの如く映像を撮り続けて来ました。そうする中で、自分の作る映像に更なる進化を追い求めフルサイズへの移行を考えていました。

 それまでフルサイズというと、ボディ自体が重く、大きいモデルしか無くサイクリングには向いていないと僕自身考えていましたが、2020年9月に「世界最小・最軽量」を実現したというSONY α7Cの発表に衝撃を受けたのを今でも覚えています。当時はα7 IVの発売前で、SONYがミラーレスの市場を大きく拡大させたと言える大ベストセラーモデルα7 IIIとの比較が大きな話題となっていましたが、サイクリングの相棒として最適な軽さを兼ね備えていて動画撮影時にリアルタイム瞳AF機能が使えるという点で、いちサイクリストとして望むものを全て兼ね備えたカメラはα7Cだと考えたのです。ただ、メインカメラを変更するというのは単にカメラを買い換えるだけではなくレンズも一式変える必要があった為、結果として一年もの間悩み、そして一年越しでα7Cを導入する事を決断したのです。

 今回の記事では、フルサイズ(SONY α7C)に移行したキッカケからサイクリングにおける実用性まで書いていきますので、是非参考にして頂ければ幸いです。

持ち出しやすいフルサイズ

 ミラーレスカメラを購入したからと言って、重くて持ち運びが億劫で結局出番が少なかったら元も子もないですよね。そんな心配のいらないサイズと軽さが魅力のα7C。「もっと自由なフルサイズへ」というキャッチコピーさながら、サイクリングにも気軽に持っていける軽快さが最大の魅力だと言えます。

 ボディ重量は509gと、APS-Cフラグシップモデルのα6600の503gとほぼ変わらない軽さ。ただ、フルサイズはレンズが大きく重くなってしまうもの。ですが、ボディだけで同じフルサイズのα7 IIIと比較しても140gも軽くなっているのは大きな進化と言えるでしょう。実際にサイクリングに出かけた時も、カメラが邪魔でライドに集中できないなどと言った場面はこれまでありません。フルサイズミラーレスを導入したいけど重さを気にする方に取ってはライド時の強い相棒となってくれる事でしょう。

フルサイズの魅力

 高画質、AE性能、動画性能など、SONYが持つフルサイズへの妥協のない性能をサイクリングしながらどこまででも持ち運ぶことが出来るポイント。ここが最大の魅力だと言えます。それはどこまでも広がる広大な自然や、美しく煌めく夜景をバックに撮影する際、大きなアドバンテージを獲得する事に繋がるでしょう。僕が注目する点は2つ。フルサイズならではのとろける様なボケ感、そして夜ライド時の暗所撮影への強さです。実際にボケを際立たせた映像と暗所撮影での美しさを表現した映像を観て頂きながらご説明していきましょう。

 ピントの合った部分から滑らかにボケが強くなっていき、狙った被写体がクッキリ浮き出てくる様な描写。こうした背景のとろける様なボケはフルサイズならではです。夜ライド時には、煌めく様な都内の夜景をバックに被写体であるクロスバイクのフレームのマット塗装の質感や、照明に照らされた各パーツの造形美まで伝わってくる様な映像を撮影できました。

レンズが豊富

 SONY純正の他に、TAMRON、SIGMAなどサードパーティからも高性能なレンズが豊富に発売されています。標準ズームレンズから単焦点、マクロレンズなど、美しい自然を撮影する際も、綺麗な花びらを近くに寄って撮影する際も、お洒落なカフェで「映える」写真/動画を撮影する際もレンズを交換して撮影するという楽しみ方がありますよね。

 ですが、ライド時に替えのレンズを持って行くにはバッグが必要。サイクリストに取ってそれは現実的ではないかもしれません。そこで僕がライド時のフットワークの軽さを追い求めた結果、現在愛用しているレンズがTAMRON 28-75mm F/2.8 Di III RXD(Model A036)です。28mmスタートというのは画角が狭く感じる方もいらっしゃるかもれませんが、僕自身のチャンネルの動画でも度々手持ちによる自撮り撮影をしているくらい十分な画角だと考えています。

 そして、何より通しF2.8という驚異的とも言える数字が全てを物語っています。大きなボケを生かした写真/映像を撮影する際にも、薄暗いカフェでのテーブル撮影でも、夜ライドでの夜景をバックに撮影する際にも、一本だけ持って出る時にどんなシーンでも対応出来る万能レンズだと言えるでしょう。

AF性能

 動画クリエイターとして活動しているのもあって動画性能に着目している部分は大きいのですが、動画撮影時にリアルタイム瞳AF機能が使えるという点は外せないポイントでした。これは自身のトークシーンにおける撮影時やインタビュー撮影時に大きく役立つ機能としてお伝えしておきます。

 それまでの顔認証では、認証されてはいるけどただ認証されているだけでちゃんとピントは合っているのかな?と言った不安要素が拭えなかったものですが、瞳AFが動画撮影時に使える事によってしっかりピントが合っているということがリアルタイムで分かります。追従性能も非常に高い次元で完成されており、一瞬画面から外れても画面内に戻ったらすぐに瞳にフォーカスが食い付いてくるのです。

バリアングル液晶

 手持ちでの自撮り撮影時やレビュー動画を撮影する際、自身の映りを確認しながら今どの様な構図で撮影されているのか確認出来るというのはYouTuberやVloggerにとって無くてはならない機能の一つだと言えます。画面を確認しながら撮影出来る、iPhoneなどのスマートフォンのインナーカメラを使用するクリエイターに取っては当たり前の様なスタイルですが、それまでα7シリーズには前方向に向けられるモニターを搭載したモデルがありませんでした。

 α7Cの発表によって話題となった機能の一つが、横に開くタイプのバリアングル式モニター。横方向に176度、上方向に180度、下方向に90度と自在に可動するバリアングル式モニターは、手持ちでの自撮り撮影はもちろん、地面ギリギリのローポジションでの撮影、運動会などで上に高く手を伸ばし下からモニターを確認しながら撮影出来るなど、状況に応じて自由なアングルでの撮影が可能となりました。バリアングル式というのは賛否両論あり、レンズの中心から左側にずれた位置にモニターが来る(光軸からモニターが外れる)ので、慣れるまで中心を取りにくいなどと言った声を聞くこともあります。実際、僕自身チルト式(背面モニターを引き出して上下方向に動かせる方式)に慣れていたのもあって、始めは手持ちでの水平が取りにくかったりする場面もありましたが、慣れてしまった今ではこれがスタンダードになりました。

 使っていれば慣れてしまうのでここはデメリットに値しないと考えますが、一つデメリットを挙げるとすれば、撮影しようと思ったタイミングでモニターを開き準備する際、チルト式と比べどうしても物理的にワンテンポ遅れてしまうというところ。チルト式がモニターを引き出すという一つのアクションで録画準備が完了するのに対して、バリアングル式はまず左側に開き、そこからくるっと回転させる必要があります。たかがこれだけの様に思えてしまいそうですが、一秒さえ無駄に出来ない撮影現場や今すぐ切り取りたい会話シーンなど、録画の開始は早ければ早いほど良いものです。こればかりは物理的な部分になってしまうので、その二つのアクションをいかに早く行えるかを考えスピードアップを目指しましょう。撮影中の自由度の高さはバリアングル式に軍配が上がるので、α7Cの「もっと自由なフルサイズへ」という謳い文句の如く「自由な角度」での撮影を楽しんでいければと思います。

ボディ内手ブレ補正

 動画撮影時も5軸の手ブレ補正機能が使えるというのは大事なポイントでした。より美しい映像を作るために手ブレを最小限に留める事は大きなアドバンテージに繋がります。ライドにジンバルを持って行くというのはあまり現実的ではない為、ボディ内手ブレ補正機能が搭載されているモデルを使用する事によりフットワークの軽い撮影が可能になると考えています。

 ボディに搭載されていなくてもレンズ内手ブレ補正機能が搭載されたレンズを使用するというのも一つの手ではありますが、ボディ内手ブレ補正機能が搭載されていればレンズ選びの幅はより広くなります。例えば僕が普段から撮影ライドで愛用しているメインレンズ、TAMRON 28-75mm F/2.8 Di III RXD(Model A036)にはレンズ内手ブレ補正機能は搭載されていませんが、高精度な手ブレ補正ユニットとジャイロセンサーを搭載したα7Cのボディで使用することで安定した映像の撮影が可能となっています。

 それではボディ内手ブレ補正機能がどの様なものなのか実際に観て頂きながらご説明しましょう。手ブレ補正をOFFにし撮影した映像では、細かい揺ればかりが目立ってしまい視聴者が映像に集中出来なくなってしまうかもしれません。ところが手ブレ補正をONにし撮影した映像では、極小さな揺れは残っているものの格段に安定した映像になっているのをご確認頂けると思います。ボディ内手ブレ補正機能を効果的に使う事によって、確実に映像のクオリティUPに繋がりますのでここは押さえておきたいポイントです。

外部マイク

 動画を撮るならレンズ選びと同様、音にこだわるのが大事なポイントです。綺麗な映像が撮れても風切り音でボーボー言っていたり、入力オーバーで音がバリバリ割れてしまっていたら動画のクオリティを下げてしまうことに繋がってしまいます。そこで積極的に使いたいのが外部マイクです。僕はしばらくの間RODEの「VideoMicro」を愛用していましたが、ケーブルを接続する必要があるという部分で撮影ライドで酷使する用途にはボディ側の端子の故障などのリスクを考えケーブルを介さない方法が理想的でした。

 そこで新しく導入したのがSONYの神マイクとして高く評価されている「ECM-B1M」です。ケーブルが必要なくなる事で断線などトラブルの心配がなく、拾った音をデジタル伝送するのでアナログと比べて圧倒的なノイズレスを実現しています。そしてバランスの取れたイコライジングと指向性の切り替えにより狙った音を明確に集音できるというポイントが価格以上の価値を見出してくれています。見た目もスッキリしていて、α7Cに装着すればモダンなロードムービー用カメラの完成です。ウインドスクリーンを装着すれば風吹かれノイズを低減し外での撮影でもクリアな音質をキープしてくれ、鋭指向性に切り替えれば周囲の音を抑えカメラ正面の音を強調して収録できるのでYouTuberやVloggerがトークシーンを収録する時には安心して撮影に集中できるものと思います。

それでは実際にマイクの音質を比較してみましょう。内蔵マイク、RODE VideoMicro、SONY ECM-B1Mの順で比較していきます。

 いかがでしょうか?内蔵マイクの音質も悪くないですが、周りの音全てを均一に収録してしまう為、声だけをクローズアップした音にはほど遠い印象です。RODE VideoMicroでは狙った音がしっかり拾える様になりました。音質は高音域が強めに出ており、トークシーンの声が聴き取りやすい様になりました。SONY ECM-B1Mでは指向性の切り替えが出来るので鋭指向性に設定しテストしてみましたが、狙った音だけをより正確に捉えているのを確認出来ました。低音域もしっかり入っており音声の存在感が増している点が印象的で、絶妙なイコライジングによりバランスの良い音で収録する事が出来ました。

サイクリングの相棒に最適なフルサイズ

 サイクリングで出かける際、そこで見た素晴らしい景色や一緒にライドした仲間とのかけがえのない時間、そんな一瞬を鮮明に残してくれるミラーレスカメラという存在。もちろんライド時には身軽な方が良いものですが、お気に入りのカメラとレンズを持って出ることでライドの楽しみ方というものを何倍も広げてくれる存在だと思います。今までスマホで済ませていた方も、フルサイズ以外のミラーレスカメラで撮影されていた方も、この機会にa7Cのフットワークの軽さとフルサイズならではの魅力を感じ取って頂ければ幸いです。

▼今回の記事で紹介した内容は総編集した動画からもご覧頂けます。是非こちらもご覧ください。

■執筆者:WATARU
東京を中心にロードバイクでのライド動画をはじめガジェット系・パーツなどのレビュー動画を配信しているYouTuber/動画クリエイター。ロードバイクのある風景をお洒落に映し出す事を得意とし、ミラーレス一眼・GoProを駆使し大自然の絶景や美しい都心の夜ライド動画を季節感のある映像に仕上げる事に定評がある。

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