ソニー α7C IIレビュー|AI新時代カメラと巡る秋の奈良

山本まりこ
ソニー α7C IIレビュー|AI新時代カメラと巡る秋の奈良

はじめに

あんなに暑かった夏の気配がすうっと引いて、トンボが飛びヒガンバナが鮮やかに咲き出した。少し涼しい風がひゅうと吹いたり。
秋がやってきた。

そんな秋の始まり、SONY α7C IIと奈良若草山へ。
鹿を撮りに行こう。

先日10月13日にα7C IIが発売になった。
2020年10月に発売のα7Cから約3年の時を経て、様々なバージョンアップをしての登場になる。

まず、α7C IIを手にしたファーストインプレッションは、
・小さい
・軽い
・かわいい
の三拍子。

筆者は普段、α7 IVとα7R IVを愛用している。
その二機に比べると、断然コンパクトで軽い。そして、シルバーの色がかわいい。
ブラック一色のバージョンもある。

この小さくて軽くてかわいいボディで、どんな写真が撮れるのだろう。

α7C IIの仕様とα7Cとの比較

まず、α7C IIの主な仕様について書き出してみよう。

静止画については、
・有効最大約3300万画素
・最高約10コマ/秒のAF・AE追随連続撮影
・7.0段ボディ内手ブレ補正
・リアルタイムトラッキング
・リアルタイム認識AF(人物、動物、鳥、昆虫、車、列車、飛行機)
・最大撮影可能枚数約560枚

動画については、
・最高4K 60p/4:2:2 10bitを記録
・リアルタイム認識AF(人物、動物、鳥、昆虫、車、列車、飛行機)
・オートフレーミング機能搭載
・ブリージング補正機能
・高性能手ブレ補正
・S-Cinetone搭載
・最大実動画撮影時間約105分
が挙げられる。

次に、α7Cとの比較をしてみよう。(α7C→α7C II)
□有効最大画素:約2400万画素→約3300万画素
□画像処理エンジン:BIONZ X→BIONZ XR
□AIプロセッシングユニット搭載へ
□最大位相差:693点→759点
□リアルタイムAF(人物/動物)→リアルタイム認識AF(人物、動物、鳥、昆虫、車、列車、飛行機)
□手ブレ補正:ボディ以内手ブレ補正5.0段→ボディ内手振れ補正7.0段
□4K動画記録方式:4K30P→4K60P
□プリセット:クリエイティブスタイル→クリエイティブルック
□質量:509g→514g

いろいろあるが、
筆者的に要約してみると、
「小型軽量、有効画素数3300万画素、AIにより人物・動物はもちろん昆虫や飛行機までもの被写体認識力があり、手持ちで夜景が楽々撮れる手ブレ補正が効いた、動画にも強い、SONYのフルサイズミラーレスエントリーモデルカメラ」だ。

これはすごい。

個人的には、
タッチパネルですいすいと全てが設定できるところが気に入っている。例えば、撮影画面の両脇には絵やマークのアイコンが並んでいて(例えるならばPhotoshopの画面のようなアイコン)、それを指でタッチすれば楽々と設定できてしまう。被写体認識は動物の顔のマークだったり飛行機だったり、絵を押して設定するイメージだ。だから、老若男女、幅広い年代で簡単に操作できるようになっている。子供でも、カメラ初心者でも簡単だろう。例えば、オートで、被写体認識を撮りたいものにタッチで設定すれば、驚くほど簡単に難しい撮影が出来てしまう。例えば、今までは難しい撮影とされてきた、動物や昆虫、飛行機までも簡単に撮影出来てしまうのだ。

鹿を撮る

さあ。
秋の若草山へ。

若草山は、個人的にとても好きな場所だ。
10年くらい前のこと。
春日大社の裏手から春日山原始林を歩いてみたことがある。春日山の圧倒的な自然の中を歩いて若草山に到着し、吹き抜ける風の中に鹿がたたずむ風景を見て、あまりにも美しくて感動したことを覚えている。
それから、奈良が大好きになり、個人的にもよく訪れている。

近鉄奈良駅から若草山方面へ歩いていくと、鹿たちに出会う。
ぽつりぽつり。

奈良らしい風景。
人と共存する野生の鹿たち。

■撮影機材:SONY α7C II + FE 28-60mm f4-5.6
■撮影環境:F5.6 ISO100 SS1 100

まずは、ズームレンズキットで同梱されている標準ズームレンズFE28-60mm f4-5.6で撮影。
ここからしばらく、このレンズで撮影していこうと思う。

動物を撮るときは、
・フォーカスモードを「コンティニュアスAF」に
・フォーカスエリアを「トラッキング」に
・ドライブモードを「連続撮影」に
・認識対象を「動物」に

この設定をして、ファインダーの中に動物を入れてシャッターを切れば、驚くほど簡単に動く動物が撮影できる。

そろり
そろり
鹿に近づいていく。

■撮影機材:SONY α7C II + FE 28-60mm f4-5.6
■撮影環境:F5.6 ISO800 SS1/160
■撮影機材:SONY α7C II + FE 28-60mm f4-5.6
■撮影環境:F5.6 ISO800 SS1/80

そろり
そろり

もっと近づいてみる。

■撮影機材:SONY α7C II + FE 28-60mm f4-5.6
■撮影環境:F5.6 ISO500 SS1/40
■撮影機材:SONY α7C II + FE 28-60mm f4-5.6
■撮影環境:F5.6 ISO500 SS1/20
■撮影機材:SONY α7C II + FE 28-60mm f4-5.6
■撮影環境:F5.6 ISO500 SS1/30
■撮影機材:SONY α7C II + FE 28-60mm f4-5.6
■撮影環境:F5.6 ISO1000 SS1/100
■撮影機材:SONY α7C II + FE 28-60mm f4-5.6
■撮影環境:F5.6 ISO800 SS1/80
■撮影機材:SONY α7C II + FE 28-60mm f4-5.6
■撮影環境:F5.6 ISO800 SS1/80

くりくりとした瞳。
なんて可愛いんだろう。

鹿がこちらをむけば、ファインダー内の鹿の瞳に四角い枠が表れて、鹿が動けば瞳を追いながらリアルタイムで四角い枠も移動する。だから、あとは構図を決めて、シャッターを切るのみ。

鹿が横を向いたり後ろを向いていても、AIが後ろ姿であることを認識していてピントが合い、再びこちらを向いた瞬間に瞳部分に四角い枠が表れて、瞳にフォーカスがばっちりと合う。その認識力が、すごい。

もう一度書くけれど、これは、ズームレンズキットで同梱されている標準ズームレンズFE28-60mm f4-5.6で撮影している。短焦点レンズやマクロレンズなどで撮っているのではなく標準ズームレンズ。ここまで撮れる。

α7C IIは、AIがすごい。
被写体認識力がすごい。

若草山へ

若草山の階段にかなり息切れしながら、途中、紅葉し始めている植物を撮りながら、頂上に向かう。

ハアハア
ハアハア

■撮影機材:SONY α7C II + FE 28-60mm f4-5.6
■撮影環境:F5.6 ISO100 SS1/125 APS-Cサイズクロップ撮影
■撮影機材:SONY α7C II + FE 28-60mm f4-5.6
■撮影環境:F5.6 ISO100 SS1/100 APS-Cサイズクロップ撮影

標準ズームレンズFE28-60mm f4-5.6でどこまで撮れるのか確かめるために、色鮮やかな植物にググっと寄る。ボディ内でAPS-Cサイズにクロップして撮影。手前の葉っぱも優しくぼかして写った。

α7C IIをズームレンズキットで購入する方は多いと予想できる。
αのフルサイズカメラの中のエントリーモデルとも言えるα7C II。このα7C IIが初めてのフルサイズカメラ購入という方も多いだろう。だから、お得にレンズがついてくるレンズキットのレンズを使う方も多いだろう。

圧倒的なボケを描くレンズは山のようにあるけれど、まずはこの標準ズームレンズFE28-60mm f4-5.6で撮る方がほとんどだと思う。FE28-60mm f4-5.6、ググっと寄ればここまで撮れる。

ハアハア
ハアハア

息切れの先には、奈良の街が一望できる場所が広がっていた。

鹿も
ぽつり
ぽつり

■撮影機材:SONY α7C II + FE 28-60mm f4-5.6
■撮影環境:F5.0 ISO100 SS1/500
■撮影機材:SONY α7C II + FE 28-60mm f4-5.6
■撮影環境:F5.6 ISO100 SS1/250 APS-Cサイズクロップ撮影
■撮影機材:SONY α7C II + FE 28-60mm f4-5.6
■撮影環境:F5.6 ISO320 SS1/320

なんて気持ちのいい景色なんだろう。

人間がいて
すぐ横に野生の動物がいて
大きな自然があって
目下には美しい都市の景色が広がっていて

人と動物
都市と自然
がこんなにも近くにあって共存している。

美しい奈良、美しい日本。

FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSSで撮影

さあここから。
レンズを変えて撮っていこう。

筆者は、FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSSで動物を撮るのが好きだ。
その描写力の美しさにとことん惹かれている。

さあ。

■撮影機材:SONY α7C II + FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS
■撮影環境:F5.6 ISO320 SS1/640
■撮影機材:SONY α7C II + FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS
■撮影環境:F5.6 ISO640 SS1/320
■撮影機材:SONY α7C II + FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS
■撮影環境:F5.6 ISO100 SS1/250
■撮影機材:SONY α7C II + FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS
■撮影環境:F5.6 ISO320 SS1/1250
■撮影機材:SONY α7C II + FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS
■撮影環境:F5.6 ISO320 SS1/1000
■撮影機材:SONY α7C II + FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS
■撮影環境:F5.6 ISO320 SS1/1000
■撮影機材:SONY α7C II + FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS
■撮影環境:F5.6 ISO320 SS1/640
■撮影機材:SONY α7C II + FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS
■撮影環境:F5.6 ISO320 SS1/1000
■撮影機材:SONY α7C II + FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS
■撮影環境:F5.6 ISO320 SS1/1000

フルサイズα7C IIとFE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSSの描写力が掛け合わさった、圧倒的な描写力、そして、背景のボケ味。鹿が、すくっと主役に躍り出てくるヒロイン感が描ける。

α7C IIは秒間10コマ撮影できるので、様々な表情が狙える。
そして、鹿が走っている後ろ姿もしっかり認識して撮影が出来た。
やっぱり、AIがすごい。

こんな一幕もあった。

■撮影機材:SONY α7C II + FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS
■撮影環境:F5.6 ISO320 SS1/1000
■撮影機材:SONY α7C II + FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS
■撮影環境:F5.6 ISO320 SS1/1000
■撮影機材:SONY α7C II + FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS
■撮影環境:F5.6 ISO320 SS1/1000
■撮影機材:SONY α7C II + FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS
■撮影環境:F5.6 ISO320 SS1/1000

鹿せんべいが、飛んできて、落ちた。
そのほんの1秒くらいの出来事。

なんとも言えず可愛らしい鹿の表情。
鹿せんべいが草むらに落ちて、あれ、と思った瞬間、そんな表情が写っていた。
時折写っている白目が、愛らしさを増大させて見せてくれている。

夜の街へ

さあ、帰ろう。

■撮影機材:SONY α7C II + FE 28-60mm f4-5.6
■撮影環境:F5.6 ISO320 SS1/500

街におりて夕飯を食べて外に出ると、街はすっかりと夜になっていた。
夜の猿沢池を手持ちで撮影。

■撮影機材:SONY α7C II + FE 28-60mm f4-5.6
■撮影環境:F4.6 ISO1600 SS1/2

1/2というシャッタースピードもなんのその。7.0段のボディ内手振れ補正が効くので、手ブレせずに撮影。

シャッターを切り、続々と美しい夜景が写し出されていくのを見ながら、もしかしたら今後、三脚を使って夜景撮影をしているなんて古いと思われる時代になるのかも知れないなんて思ったりした。夜景撮影をするのに三脚を使っていた時代なんてあったの?なんてみんなが言う時代がもうすぐ来るのかもしれない。そんな急速な進化を感じる、手ブレ補正力。

携帯電話で星空も美しく撮れてしまう現代。3年後なんてもう、想像もつかないくらい進化したカメラに出会うのだろう。αもどんな進化を遂げてゆくのだろうか。

FE 35mm F1.4 GMで撮影

奈良から神奈川県の小さな海まち二宮に戻り、お庭を眺めると、秋が咲いていた。
FE 35mm F1.4 GMで撮影してみる。

■撮影機材:SONY α7C II + FE 35mm F1.4 GM
■撮影環境:F1.4 ISO400 SS1/4000
■撮影機材:SONY α7C II + FE 35mm F1.4 GM
■撮影環境:F1.4 ISO400 SS1/4000
■撮影機材:SONY α7C II + FE 35mm F1.4 GM
■撮影環境:F3.2 ISO100 SS1/500
■撮影機材:SONY α7C II + FE 35mm F1.4 GM
■撮影環境:F1.4 ISO100 SS1/3200

バタフライピーのブルーの花びら、キバナコスモスのオレンジ色、ピーマンとターメリックの葉のグリーンが、開放値f1.4で踊るように描かれる。さすがフルサイズの解像感とボケ感描写力。

おわりに

AI新時代カメラ。
そんな言葉が頭をぐるぐるとする撮影になった今回のα7C IIとの旅。

人間が手作業で設定して撮影しているそれ以上の力が働いて、今までを超える美しい撮影が出来るようになった、そんなことを感じた。

SONY αのフルサイズエントリーモデル機ではあるけれど、今回実際に撮影してその実力を知り、この描写力は仕事の実践機としても十分活躍するカメラだと思った。何と言っても、この描写力にしてこのコンパクトさは、とっても有難い。遠方に旅に行くときは、率先して選びたいカメラだ、そう思う。

最後に。

7.0段ボディ内手ブレ補正の実力を試したくて、再び夜の撮影をしてみた。夜の海岸へ。7.0段の手振れ補正となると、例えば、シャッタースピード2秒で撮影したときに手振れ補正が効き1/60感覚で撮影出来る、ということになる。

中秋の名月、近くの海岸へ。
厚い雲に覆われた空の中の満月を待ちながら、真っ暗な海岸で三脚を使わず手持ちでシャッターを切った。シャッタースピード2秒で。
長秒露光しているので、暗い海岸が明るく写った。そして、拡大してみると、しっかりと撮影出来ていた。本当に、2秒を手持ちで撮影することが出来た。
その後、2.5秒にして撮ってみた。撮れていた。
すごい時代がやってきた。

ちなみに。
この後しばらくして、空にはまんまるなお月様が現れた。

カメラ選びに悩んでいる方、
フルサイズ機に挑戦してみたい方、
今までのカメラからステップアップした撮影をしたい方、
コンパクトで描写力の美しいカメラを探している方、
是非、試してみてほしい。

■撮影機材:SONY α7C II + FE 28-60mm f4-5.6
■撮影環境:F5.6 ISO800 SS2.5S
■撮影機材:SONY α7C II + FE 28-60mm f4-5.6
■撮影環境:F5.6 ISO100 SS1/80 APS-Cサイズクロップ撮影

 

 

■写真家:山本まりこ
写真家。理工学部建築学科卒業後、設計会社に就職。25歳の春、「でもやっぱり写真が好き」とカメラを持って放浪の旅に出発しそのまま写真家に転身。風通しがいいという意味を持つ「airy(エアリー)」をコンセプトに、空間を意識した写真を撮り続けている。

 

 

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